腎デナベーション、降圧薬服用患者への効果を確認/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/01

 

 降圧薬を服用中の高血圧患者において、主要腎動脈および分岐部の腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し、重大な安全性イベントを伴うことなく血圧を有意に低下させることが示された。米国・Piedmont Heart InstituteのDavid E. Kandzari氏らが「SPYRAL HTN-ON MED試験」の結果を報告した。カテーテルを用いた腎デナベーションの試験では、これまで一貫した有効性は報告されておらず、降圧薬服用中の患者における有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2018年5月23日号掲載の報告。

降圧薬で血圧コントロール不良の患者、腎デナベーションとシャムで比較
 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を対象に、無作為化単盲検概念実証試験を行った。適格基準を、診察室収縮期血圧(SBP)150~180mmHg、拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、2回目のスクリーニング時に24時間自由行動下SBPが140~170mmHg、1~3種の降圧薬を6週間以上継続して服用している患者とし、腎血管造影後、腎デナベーション群またはシャム群に無作為に割り付けた。患者、介護者、血圧評価者は、割り付けについて盲検化された。

 主要有効性評価項目は、自由行動下血圧測定に基づくベースラインから6ヵ月後の血圧変化で、服薬アドヒアランスについても評価した(intention-to-treat解析)。安全性については、6ヵ月間における主な有害事象を評価した。なお、本試験では現在も追跡調査が進行中である。

6ヵ月後に腎デナベーション群で有意に低下、群間差7.0mmHg
 2015年7月22日~2017年6月14日に467例が登録され、最初の80例が腎デナベーション群(38例)とシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。

 6ヵ月後におけるベースライン時からの診察室および24時間自由行動下の血圧値の低下は、ベースラインの血圧で調整した場合、シャム群に比べ腎デナベーション群で有意に大きかった。ベースライン補正後の平均群間差は、24時間SBPが-7.0mmHg(95%信頼区間[CI]:-12.0~-2.1、p=0.0059)、24時間DBPは-4.3mmHg(-7.8~-0.8、p=0.0174)、診察室SBPは-6.6mmHg(-12.4~-0.9、p=0.0250)、診察室DBPは-4.2mmHg(-7.7~-0.7、p=0.0190)であった。

 ベースライン血圧非補正の場合も同様に、診察室SBP(群間差:-6.8mmHg、95%CI:-12.5~-1.1、p=0.0205)、24時間SBP(-7.4mmHg、-12.5~-2.3、p=0.0051)、診察室DBP(-3.5mmHg、-7.0~-0.0、p=0.0478)、24時間DBP(-4.1mmHg、-7.8~-0.4、p=0.0292)いずれにおいても、腎デナベーション群がシャム群より血圧値の低下が有意に大きいことが確認された。

 24時間SBPおよびDBPの1時間ごとの変化を評価したところ、腎デナベーション群では24時間にわたって血圧値の低下が確認された。

 なお、3ヵ月時点の評価では、両群間に有意差は認められなかった。また、服薬アドヒアランスは約60%であったが、試験期間中の個々の患者のアドヒアランスには、ばらつきがみられた。重大な有害事象は、両群とも報告されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 冨山 博史( とみやま ひろふみ ) 氏

東京医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員