PCI前提で早期にabciximabを投与しても転帰改善に寄与しない

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/04

 

急性のST上昇型心筋梗塞患者に対して、プライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行する直前に抗血小板薬abciximabを投与するより、もっと早い段階で、abciximabとreteplase半量を投与する「併用facilitated-PCI」、もしくはabciximabを単独投与する「abciximab facilitated-PCI」を行ったほうが、転帰が改善する可能性があるのではないか。大規模な試験が行われていたが、米国・クリーブランド・クリニックのStephen G. Ellis氏らは「PCIを前提として早期にfacilitated-PCIを行っても、臨床転帰は改善されない」との結果を報告した。NEJM誌2008年5月22日号より。

2,452例を対象にPCI「前処置」と臨床転帰を比較




これは、患者計2,452例を対象に行われた国際的な二重盲検プラセボ対照試験で、患者はST上昇型心筋梗塞を発症してから6時間以内に、「併用facilitated-PCI」または「abciximab facilitated-PCI」もしくは「プライマリPCI」に無作為に割り付けられた。

すべての患者には、PCI前に未分画ヘパリンまたはエノキサパリンが投与され、PCI後には12時間のabciximab静脈投与が行われた。

主要エンドポイントは、全死因の死亡、無作為化後48時間以降に発生した心室細動、心原性ショック、無作為化後90日間に発症したうっ血性心不全の複合とした。

ST上昇は解消するがエンドポイントには有意差なし




ST上昇がいち早く解消された患者は、併用facilitated-PCI群の43.9%に対して、プライマリPCI群31.0%、abciximab facilitated-PCI群は33.1%と、後二者に比べて有意に高かった(それぞれP = 0.01と同 = 0.003)。

これに対して主要エンドポイントの発生は、併用facilitated-PCI群は9.8%だったが、abciximab facilitated-PCI群は10.5%、初回PCI群が10.7%だった(P = 0.55)。また、90日間の死亡率はそれぞれ5.2%、5.5%、4.5%だった(P = 0.49)。

この結果、ST上昇型心筋梗塞の患者に対して、PCI施行直前になってからabciximabを投与するのではなく、PCIを前提として発症後早期にabciximabおよびreteplaseを投与する「併用facilitated-PCI」または「abciximab facilitated-PCI」を行っても、臨床転帰は有意に改善されないと結論している。

(武藤まき:医療ライター)