待機的THRより股関節骨折手術は死亡リスクが高い/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/02

 

 待機的人工股関節全置換術(THR)患者と比べて股関節骨折手術患者は、年齢、性別および術前併存疾患を補正後の術後院内死亡リスクが有意に高いことが明らかにされた。カナダ・マックマスター大学のYannick Le Manach氏らによる、フランスの大規模コホートを対象とした検討の結果、明らかにされた。股関節骨折手術後患者は、待機的THR患者と比べて死亡や重大合併症のリスクが高いことは知られていたが、この術後リスクの増大が、高年齢や併存疾患の影響を受けているかは不明であった。今回の検討で、死亡の相対リスクは5.88倍であったという。著者は、「さらなる検討により、この差の原因を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA誌2015年9月15日号掲載の報告。

フランス国内69万995例について評価
 研究グループは、年齢、性別および周術期合併症補正後、股関節骨折手術群と待機的THR群で院内死亡率に差があるかどうかを調べる検討を行った。

 2010年1月~13年12月のFrench National Hospital Discharge Databaseから、フランスの病院に入院した45歳以上の股関節手術患者を包含。ICD-10コードで、術後の患者の併存疾患や合併症を調べた。年齢、性別、術前併存疾患で適合した患者を、待機的THR群または股関節骨折手術群に、多変量ロジスティックモデルと貪欲適合アルゴリズム法を用いて1対1に無作為に割り付け評価した。

 主要評価項目は、術後院内死亡率であった。

 フランス国内864センターから総計69万995例の適格患者が包含された。待機的THR群(37万1,191例)のほうが、年齢が若く、男性が多く、併存疾患が少なかった。

死亡リスク5.88倍、重大術後合併症リスク2.50倍
 結果、股関節骨折手術群(31万9,804例)は、術後1万931例(3.42%)が退院前に死亡。一方、待機的THR群の死亡は669例(0.18%)であった。

 適合集団(23万4,314例)の多変量解析の結果、股関節骨折手術群のほうが、死亡リスクが高い[1.82% vs.0.31%、絶対リスク増:1.51%(95%信頼区間[CI]:1.46~1.55%)、相対リスク[RR]:5.88(95%CI:5.26~6.58)、p<0.001]、重大術後合併リスクが高い[5.88% vs.2.34%、絶対リスク増:3.54%(95%CI:3.50~3.59%)、RR:2.50(95%CI:2.40~2.62)、p<0.001]ことが示された。

(武藤まき:医療ライター)