新たなアジュバントによる抗原節減法が鳥インフルエンザワクチンの免疫原性を増強

提供元:ケアネット

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公開日:2007/08/30

 

次なるヒトインフルエンザの汎流行(爆発的大流行、パンデミック)の原因となる可能性が高いウイルスとしてH5N1型鳥インフルエンザが考えられているが、その対策としてのインフルエンザワクチンの生産能には世界的に限界がある。抗原節減法は1接種に要する抗原量を少なくできるため、パンデミックワクチンの開発において重要なアプローチと考えられており、アジュバント(免疫増強法)は抗原節減の重要な戦略である。

 ベルギー・ヘント大学病院ワクチンセンターのIsabel Leroux-Roels氏らは、独自に開発した新たなアジュバント法で調整した遺伝子組み換えH5N1スプリットウイルス粒子ワクチンの安全性および免疫原性を評価し、交差反応性免疫の誘導能について検証を行った。8月18日付Lancet誌掲載の報告から。

4種類の抗体量とアジュバントの有無で8群に分け、2回ずつ接種


試験には、不活化されたスプリットA/Vietnam/1194/2004 NIBRG-14[逆遺伝学(reverse genetics)の手法で作製された遺伝子組み換えH5N1]ワクチンが用いられた。2006年3月27日~6月15日の間に18~60歳の健常ボランティア400人が登録された。

これらの対象は、4種類の抗体量(ヘマグルチニンH5抗体3.8、7.5、15、30μg)とアジュバントの有無によって分けられた8つのワクチン群に無作為に割り付けられ、それぞれ2回ずつワクチン接種が行われた(1回目の21日後に2回目を接種)。液性免疫応答の解析のために血液サンプルを採取し、有害事象は51日目(2回目の接種後30日)まで記録した。

安全性が高く、少ない抗原量で十分な免疫応答が得られた


8つの群すべてにおいて良好な安全性プロフィールが示され、重篤な有害事象は認めなかった。アジュバントワクチンは非アジュバントワクチンに比べ接種部位の症状および一般症状の頻度が高かったが、ほとんどが軽度~中等度であり、本質的に一過性であった。

全抗原量において、アジュバントワクチンは非アジュバントワクチンよりも免疫原性が優れた。抗原量が最も少ない群(3.8μg)においても、アジュバントワクチンの遺伝子組み換え同種ワクチン株(A/Vietnam/1194/2004 NIBRG-14、clade 1)に対する免疫応答は、アメリカおよびEUの基準を十分に満たした。また、3.8μgアジュバントワクチン接種者の77%において、H5N1の分離株(A/Indonesia/5/2005、 clade 2)に対する中和抗体が陽性化した。

Leroux-Roels氏は、「独自の新アジュバントは抗原の節減法としてきわめて有用であり、パンデミックインフルエンザワクチンの生産能を高めると考えられる」と結論、「cross-clade中和抗体反応からは、パンデミック前の予防接種に本ワクチンが使用可能なことが示唆される」と指摘している。

(菅野 守:医学ライター)