分娩第3期の積極的管理、臍帯牽引は省略できるか?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/05/17

 



分娩第3期の積極的管理では、コントロール下の臍帯牽引を省略すると重度出血のリスクがわずかながら高まる可能性があることが、世界保健機構(WHO)のA Metin Gulmezoglu氏らの調査で示された。分娩第3期の積極的管理により分娩後の出血リスクが低減する。積極的管理に含まれるコントロール下の臍帯牽引は高度な技術を要するが、出血抑制への影響が大きくないことが証明されれば省略が可能となり、医療資源の有効活用などへの寄与が期待されるという。Lancet誌2012年5月5日号(オンライン版2012年3月6日号)掲載の報告。

臍帯牽引省略の可能性を検証する非劣性試験




研究グループは、分娩第3期の積極的管理において、重度出血のリスクを増やさずにコントロール下の臍帯牽引の省略が可能なことを検証するために、無作為化非劣性試験を行った。

2009年6月1日~2010年10月30日までに、8ヵ国(アルゼンチン、エジプト、インド、ケニア、フィリピン、南アフリカ、タイ、ウガンダ)の16の病院と2つのプライマリ・ケア診療所から、単胎経膣分娩(すなわち計画的帝王切開ではない)が予定されている女性が登録された。これらの妊婦が、胎盤を自然に娩出する群(省略群)あるいは子宮収縮を確認後に臍帯を結紮し、即座にコントロール下に臍帯の牽引を行う群(臍帯牽引群)に無作為に割り付けられた。

分娩直後に、全妊婦に出血の予防を目的にオキシトシン(10IU)を筋注し、各施設の規則に従って子宮マッサージが行われた。主要評価項目は分娩後の1,000mL以上の失血(重度出血)とし、95%信頼区間(CI)の上限値が1.30未満の場合に非劣性と定義した。

95%CI上限値が非劣性境界値をわずかに超える




省略群に1万2,227人が、臍帯牽引群には1万2,163人の妊婦が割り付けられた。緊急帝王切開となった妊婦を除き、省略群の1万1,861人および臍帯牽引群の1万1,820人が解析の対象となった。

1,000mL以上の失血がみられた妊婦は、省略群が239人(2%)、臍帯牽引群は219人(2%)であり、リスク比は1.09(95%CI:0.91~1.31)であった。わずかだが、95%CI上限値が1.30を超えたため、非劣性は証明されなかった。

臍帯牽引群で1人の妊婦に子宮内反症がみられた。ほかの有害事象はいずれも出血関連のものだった。

著者は、「非劣性の仮説は検証されなかったが、コントロール下の臍帯牽引を省略しても重度出血のリスクへの影響はきわめて小さいことが示唆された」と結論し、「専門病院がない環境で出血予防プログラムを拡充するには、オキシトシンの使用に重点的に取り組む必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)