日本人long COVIDの特徴は?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/03

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆる「long COVID」の日本人での実態が報告された。症状としては倦怠感や抑うつなどが多く、女性や就労が制限されている人および非就労者でパフォーマンスの低下が顕著だという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Medicine」に10月31日掲載された。

 COVID-19罹患者のlong COVID発症率は25~60%とされており、研究対象によって大きな差がある。また、性別や年齢、就労状況、教育歴などの属性との関連も検討されていて、それらが関連ありとする研究と関連なしとする研究が混在している。加えてこれまでに報告されている研究は主として海外で行われたものであり、国内発のデータは少ない。日本は他国よりもCOVID-19の有病率と死亡率が低く、long COVIDの実態も海外とは異なる可能性が考えられる。これらを背景として藤原氏らは、日本人のlong COVIDの特徴の把握を試みた。

 解析対象は、2020年1月6日~2021年10月2日に都内の外来診療所(ヒラハタクリニック)を受診したlong COVID患者のうち、COVID-19発症から28日以上経過後に持続、または発症した症状のある1,898人から、解析に必要なデータが欠落していた7人を除外した1,891人。平均年齢は37.8±12.2歳で、女性が59.7%を占め、受診の時期は、パンデミック第1波が1.8%、2波が5.9%、3波が41.8%、4波が18.2%、5波が32.2%。ワクチン接種が完了しているのは3.1%だった。

 Long COVIDの症状による日常生活動作への影響を、パフォーマンスステータス(PS)スコアという10点満点の指標で評価すると、平均3.1±2.4点だった。なおPSは、日常生活への影響が全くない場合は0点、終日臥床し全介助状態のいわゆる“寝たきり”の場合は10点と判定する。平均点に近い3点は、症状のために仕事を月に数日休む必要がある状態に当たる。実際、解析対象者のうち罹患前と同様に就労しているのは23.7%に過ぎず、14.2%は勤務時間を短縮して就労していて、20.9%は休職中か退職・解雇後だった(そのほか、8.3%は非就労、32.8%は不明)。

 訴える症状の数は平均8.4±3.2種類であり、頻度の高い症状は、倦怠感(90.3%)、抑うつ(81.2%)、ブレインフォグ〔頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態(76.2%)〕、頭痛(71.2%)、呼吸困難(68.9%)、不眠症(63.8%)、動悸(61.7%)、体の痛み(60.6%)、嗅覚障害(52.4%)、食欲不振(50.6%)、味覚障害(45.2%)、脱毛(44.8%)などだった。

 PSスコアが6点(週の50%以上を休息している場合)以上をPSが特に低下した状態と定義すると、24.0%が該当。年齢や性別、受診時期(パンデミック第何波に当たるか)、ワクチン接種状況、就労状況などを調整後に、PS6点以上であることと関連する因子を検討すると、女性〔β=0.27(95%信頼区間0.08~0.47)〕、時短勤務者〔通常勤務者を基準にβ=1.59(95%信頼区間1.27~1.91)〕、休職中または退職・解雇後〔同3.64(3.35~3.93)〕、非就労〔同1.67(1.22~2.21)〕が有意な関連因子として抽出された。

 発現している症状も調整因子に加えた場合、多くの個々の症状が有意な因子として抽出され(倦怠感β=1.11、抑うつβ=0.47など)、女性については有意性が消失した。ただし前記の就労状況に関する三つの状態は全て、引き続きPSが低いことと有意な関連が認められた。

 著者らは、「女性はlong COVID罹患時にPSが低下しやすいことが示唆され、就労状況とPSとの有意な関連も認められた」と結論を述べるとともに、「日本のlong COVID患者の特徴の全体像を把握するためには、さらなる研究が必要」としている。

[2023年1月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら