かかりつけ医のあり/なしでパンデミック中の予防医療実施率に有意差

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/05/31

 

 かかりつけ医を持っている人はそうでない人に比べて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の予防医療の実施率が有意に高いというデータが報告された。東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部の青木拓也氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に3月16日掲載された。

 COVID-19パンデミックにより、検診受診率やCOVID-19以外のワクチン接種率が低下したことで、予防可能な疾患の罹患率が将来的に上昇するのではないかとの懸念が高まっている。一方、かかりつけ医は疾患罹患時の治療のみでなく、住民のふだんからの健康管理を担っており、パンデミックのような特殊な状況下でもその役割に期待がかかる。そこで青木氏らは、パンデミック発生以降の一般市民の予防医療実施率が、かかりつけ医のあり/なしによって異なるか否かを検討した。

 この調査は、パンデミック第4波が発生していた2021年5月に実施された。日本リサーチセンターに登録されている一般住民パネルから、地域別人口構成(年齢と性別)に合わせて抽出された20~75歳の一般市民2,000人に回答協力を依頼し、1,757人(平均年齢50.1±15.1歳、女性51.1%)から有効回答を得た。

 かかりつけ医の有無は、「体調が悪いときや健康について相談したいときに、いつも受診する医師はいるか?」という質問に「はい」と答え、その医療機関が大学病院以外である場合に「かかりつけ医あり」と定義した。予防医療については、一般的な生活習慣病やがん、うつ病のスクリーニング、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種、および禁煙や体重管理などのカウンセリングの実施率で評価した。

 また、「JPCAT-SF」という評価指標を用いて、回答者がふだん受診している医師のかかりつけ医機能を評価した。JPCAT-SFは100点満点で評価され、点数が高いほどかかりつけ医機能が優れていることを意味する。

 解析の結果、全体の57.5%が「かかりつけ医あり」に該当した。かかりつけ医のある群とない群を比べると、前者は高齢で(平均53.1対45.9歳)、女性の割合が高く(53.9対47.3%)、非就労者が多く(29.7対20.2%)、慢性疾患の有病率が高い(慢性疾患が2つ以上の割合が34.5対11.9%)という差が認められた。

 予防医療の実施について見ると、まず疾患スクリーニングの実施率の平均は、かかりつけ医あり群56.3%、なし群45.0%で、住民属性を調整後の平均差が7.0%(95%信頼区間4.4~9.6)であり、かかりつけ医あり群の方が有意に高かった。ただし、スクリーニングの受診率を対象疾患ごとに見ると、生活習慣病やがんについては全般的に高いものの、うつ病のスクリーニングについては、かかりつけ医なし群で7.8%、あり群でも11.2%であり、かかりつけ医がうつ病の早期発見にあまり寄与していない可能性が示された。

 そのほか、ワクチン接種率の調整後平均差は7.9%(95%信頼区間5.4~10.3)、カウンセリングの実施率は同8.0%(1.6~14.3)であり、いずれもかかりつけ医あり群の方が有意に高かった。スクリーニング、ワクチン接種、カウンセリングの全てを統合した全体的な解析では、かかりつけ医あり群43.9%、なし群33.9%で、調整後平均差は7.2%(5.2~9.1)だった。

 次に、かかりつけ医あり群をJPCAT-SFスコアの四分位で4群に分類し、かかりつけ医なし群と比較した。その結果、JPCAT-SFスコア第1位四分位群(ふだん受診している医師のかかりつけ医機能が低い下位25%)であっても、かかりつけ医なし群よりスコアが有意に高かった〔41.1対33.9%、調整後平均差3.5%(95%信頼区間0.5~6.4)〕。

 この結果から著者らは、「COVID-19パンデミックという特異な状況においても、かかりつけ医を持っていることが予防医療の実施率向上に寄与することが明らかになった」と結論付けている。ただし、うつ病のスクリーニングを受けていた割合が低値であったことから、「かかりつけ医がメンタルヘルスの問題に取り組むことが、パンデミック中およびパンデミック後の重要な課題と言えるのではないか」と述べている。

[2022年5月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら