糖尿病黄斑浮腫が透析で改善する

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/07/15

 

 糖尿病黄斑浮腫のために低下している視力が、透析を始めると改善する可能性のあることが報告された。国内多施設共同研究の結果で、福井大学医学部眼科の高村佳弘氏らによる論文が、「Scientific Reports」5月8日オンライン版に掲載された。

 糖尿病黄斑浮腫は、眼底の中央にあり視力を司る「黄斑」に浮腫(むくみ)が起き、視力が大きく低下してしまう糖尿病の合併症。同じように糖尿病の眼合併症の一つである網膜症は、治療の進歩により失明頻度が低下した一方で、黄斑浮腫に関しては効率の良い治療法の模索が続いている。

 今回の研究では、新たに血液透析療法が開始された20歳以上の糖尿病黄斑浮腫患者70人、132眼を対象とし、黄斑部の網膜の厚さ(以下、網膜厚)と矯正視力(以下、視力)のデータを、1年にわたり後ろ向きに解析した。なお、70人中8人は、片眼に血管新生緑内障や牽引性網膜剥離を有していたため、対側眼のみを検討対象とした。

 主な患者背景は、平均年齢58.91±10.37歳、男性66%、糖尿病罹病期間16.18±9.03年、HbA1c8.52±1.01%、eGFR6.08±2.76mL/分/1.73m2。透析開始前時点で118眼(89.4%)に黄斑浮腫が認められた。観察期間中に行われた眼科的治療は、抗VEGF薬またはステロイドの局所投与が7眼(6.8%)であり、他の93.2%には網膜厚や視力に直接影響する治療は施行されていなかった。

 結果について、まず網膜厚の変化をみると、透析開始前は334.0±142.6μmだったものが、透析開始1カ月後には273.4±95.3μm、1年後は266.8±78.5μmで、有意に減少していた(すべての時点でP<0.0001)。ベースライン時の網膜厚が平均値よりも厚いケースに限って検討しても、373.2±149.5μmから1カ月後に285.5±102.5μm、1年後に268.5±68.7μmと有意な改善が認められた(すべての時点でP<0.0001)。また、網膜厚は両眼において同様の変化を示したことから、透析による全身状態の変化が網膜厚に影響を及ぼしたと考えられた。

 次に視力の変化を見ると、透析開始前の0.353±0.365から1カ月後には0.318±0.426(P=0.0011)、1年後は0.258±0.361(P=0.0030)と有意に改善していた(logMAR視力のため数値の低下は視力改善を表す)。両眼のうち、ベースライン時の網膜厚が厚い眼のみに限った解析でも有意な改善が認められた。

 ただし、透析開始前の視力が0.4以上と未満で群分けして解析したところ、0.4未満の群では有意な視力改善が得られていなかった。透析開始前視力が0.4未満の群でも網膜厚は透析によって有意に改善していたことから、透析開始時にすでに視力が悪い症例においては、透析の導入により浮腫が改善しても、良好な視力改善が得られない可能性が示された。

 このほか、漿液性網膜剥離のある眼において特に網膜厚の改善幅が大きいこと、HbA1cやeGFR、BUN、血圧、血清脂質などの全身性因子の値に関係なく、透析により網膜厚や視力の改善が期待できることが分かった。

 以上の結果から研究グループでは、「透析開始後、少なくとも1年間は、網膜厚や視力の改善効果が得られることが示された。透析開始前の視力が不良の場合、透析による視機能改善を期待できない可能性があることから、透析開始タイミングの判断に視力も考慮する必要があるかもしれない」とまとめている。また「この研究により、透析による全身状態の改善が、糖尿病黄斑浮腫の形態的、機能的改善に寄与することが示された」との考察を加えている。

[2020年6月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら