自治体の介護予防事業とフレイルの関係――100人に1回の介入がリスク1割減に相当

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/15

 

 介護予防事業の実施回数が多い自治体に住む高齢者は、要介護予備群のフレイルになるリスクが低いことが明らかになった。東京大学大学院医学系研究科客員研究員の佐藤豪竜氏らの研究によるもので、詳細は「Social Science & Medicine」11月30日オンライン版に掲載された。

 この研究の対象は、日本老年学的評価研究(JAGES)に2010~11、2013、2016の各年に参加した人のうち、要介護認定を受けていない65歳以上の人。述べ81の市町村に住む37万5,400人(平均年齢74.1歳)について、各自治体の介護予防事業と、当該地域住民のフレイル該当者率との関連を検討した。フレイルの判定には、厚生労働省が作成した、外出頻度やBMIなどに関する25項目の質問からなる「基本チェックリスト」を用い、8点以上をフレイル、4点以上をプレフレイル(フレイル予備群)とした。

 フレイルの該当者率は2010~11年25.1%、2013年16.1%、2016年9.9%で、プレフレイルは同順に59.9%、47.3%、38.5%であり、いずれも減少傾向が認められた。これは日本人高齢者の身体的・精神的健康が年々向上している影響が一部あると考えられる。なお、フレイルおよびプレフレイル該当者率は自治体間で開きがあり、2016年において前者は7.1~14.3%、後者は29.0~44.9%の範囲にあった。

 自治体による介護予防事業は、講演会や相談会の開催を主体とする「介護予防普及啓発事業」(教育イベント介入)と、住民参加型の“通いの場”やボランティア活動への参加を主体とする「地域介護予防支援事業」(社会活動介入)に大別される。今回の調査の結果、教育イベント介入は高齢者100人当たり調査年により2.09~3.63回/年、社会活動介入は1.74~3.49回/年実施されていた。また、高齢者100人当たり年40回以上実施している自治体がある一方で、全く行っていない自治体も存在した。

 フレイルの発症に影響を与える可能性がある性別、年齢、教育年数、所得、婚姻の有無、就労状況などで調整の上、予防事業との関連を解析すると、社会活動介入を多く実施している自治体ほどフレイル該当者率が低いことが明らかになった。具体的には、社会活動介入を高齢者100人当たり1回実施するごとに、フレイル該当者率が11%有意に減少することがわかった(オッズ比0.89、95%信用区間0.81~0.99)。市民がこうした活動に参加する機会が少ない地域ほど、介入効果が高いことも示された。

 一方、教育イベント介入には明確な効果が見られなかった(高齢者100人当たり1回の実施によるオッズ比0.92、95%信用区間0.78~1.08)。また、プレフレイルに対しては、社会活動、教育イベントのいずれの介入も効果が明らかでなかった。

 研究グループは、本研究を「自治体が地域の全高齢者を対象にポピュレーションアプローチとして行う介護予防事業とフレイルの関係を、世界で初めて検証したもの」と位置付けている。これまでの介護予防事業は運動や筋力トレーニング、栄養指導など、ハイリスクな対象への個別介入に主眼が置かれてきたが、国内でフレイル状態の高齢者は500万人以上とも推計され、ハイリスクアプローチのみでは実効性に限界がある。本研究でポピュレーションアプローチとフレイル該当者率の低下に相関関係が認められたことから、佐藤氏らは「今後は因果関係の証明など、さらなる研究成果を期待したい」と述べている。

[2019年12月23日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら