食中毒発生率がパンデミック前の水準に増加

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2023/11/03

 

 米国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生とともに低下していた食中毒発生率が、パンデミック前の水準に戻ったことが報告された。米疾病対策センター(CDC)のMiranda J. Delahoy氏らの研究によるもので、詳細はCDC発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」6月30日号に掲載された。

 2020年以降、COVID-19パンデミックに伴う人々の行動変容、公衆衛生対策、患者の受療行動の変化、検査施行件数の変動などの影響によって、さまざまな感染症の罹患率が低下していた。食中毒も同様に、米国ではカンピロバクターやサルモネラ菌による消化器感染症が、2020~2021年にはその前年より減少していた。しかし、感染症減少につながった多くの要因が取り除かれたことによって、再びそのリスクが増大してきている。

 米国の食中毒アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)は、米国内10カ所において、主に食品を介して伝播する8種類の病原体(カンピロバクター、サルモネラなど)によって生じる食中毒のサーベイランスを行っている。Delahoy氏らの研究はそのデータを用いて行われた。

 解析の結果、2022年のカンピロバクター、サルモネラ、赤痢、リステリアによる食中毒の年間発生率は、パンデミック前と同等のレベルになっていた。また、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)やエルシニアなどによる食中毒はパンデミック前よりもむしろ発生率が高くなっていた。2016~2018年を基準とした2022年の病原体別の発生率比(IRR)、および2022年の粗発生率(人口10万人当たりの発生件数)は以下のとおり。

 IRR(95%信頼区間)・粗発生率の順に、カンピロバクターは1.02(0.96~1.08)・19.2、サルモネラは0.95(0.89~1.02)・16.3、赤痢は0.95(0.75~1.18)・4.9、リステリアは1.06(0.93~1.22)・0.3であり、これらは2016~2018年の平均発生率と有意差なし。STECは1.18(1.02~1.36)・5.7、エルシニアは2.41(2.03~2.88)・2.0、ビブリオは1.57(1.37~1.81)・1.0、サイクロスポーラは4.77(2.60~10.7)・0.9であり、これらは2016~2018年の平均発生率より有意に高かった。

 米国は現在、2030年までに達成すべき公衆衛生上の目標を「Healthy People 2030」として設定し、国レベルでの対策を推進している。食中毒についても病原体別に発生率の目標を掲げ、例えばカンピロバクターは人口10万人当たり10.9以下とするとしている。今回の研究結果について著者らは、「COVID-19パンデミックの影響が沈静化したことで、2022年には消化器感染症の減少が見られなかった」とまとめ、「食中毒を防ぐには、食品生産者、加工業者、小売店、レストラン、および規制当局間の協力が必要」と述べている。

 なお、消化器感染症の診断法として近年、培養によらない診断(culture-independent diagnostic test;CIDT)が急速に普及してきている。著者らはこの変化によって、パンデミック以前には検出されていなかった食中毒が検出されるようになり、それがIRRの上昇に部分的に関係している可能性があるとしている。

[2023年7月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら