妊娠糖尿病女性の出産後の糖尿病リスクをコーヒーが抑制

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/21

 

 妊娠糖尿病女性の出産後の糖尿病発症リスクを、コーヒーが抑制する可能性を示唆するデータが報告された。シンガポール国立大学のCuilin Zhang氏らが、妊娠糖尿病と診断された女性を20年以上追跡した結果、出産後に1日4杯以上コーヒーを飲む習慣のあった女性は、全く飲まない人より糖尿病発症リスクが半減していたという。この研究の詳細は、「The American Journal of Clinical Nutrition」に11月14日掲載された。

 妊娠糖尿病は、妊娠後に発症した糖尿病の診断基準には至らない程度の高血糖のことで、妊娠中の血糖コントロールが不十分だと巨大児出産や難産のリスクが高くなる。出産後には多くの場合、耐糖能は正常に戻るものの、加齢とともに2型糖尿病を発症するリスクが高くなり、妊娠糖尿病でなかった女性に比べると糖尿病リスクが10倍に上るとするデータもある。一方、コーヒーに糖尿病発症抑制効果のある可能性が、一般集団を対象とする疫学研究の結果として既に報告されている。しかし、妊娠糖尿病になった女性に焦点を絞った研究はこれまで行われていなかった。

 Zhang氏らは、1991~2017年に妊娠糖尿病と診断された女性4,522人を対象に、2~4年おきに追跡調査を行い糖尿病の発症を把握。食物摂取頻度調査票で評価したコーヒー摂取量と、糖尿病発症リスクとの関連を検討した。

 追跡期間中に979人が2型糖尿病を発症。解析の結果、カフェイン入りコーヒーの摂取量は、2型糖尿病発症リスクと逆相関していた。具体的には、コーヒーを全く飲まない人を基準として、コーヒー摂取量が1日1杯以下の人では交絡因子調整後のハザード比(HR)0.91(95%信頼区間0.78~1.06)、1日2~3杯の人ではHR0.83(同0.69~1.01)と有意差がないものの、4杯以上の人ではHR0.46(同0.28~0.76)と54%有意に低リスクであり、全体的に見ると、コーヒー摂取量が多い人ほど2型糖尿病発症リスクが低いという有意な関連があった(傾向性P=0.004)。

 得られたデータを基に統計学的な計算を行った結果、1日1杯の加糖飲料を1杯のカフェイン入りコーヒーに置き換えた場合、2型糖尿病発症リスクが17%有意に低下する可能性のあることが分かった〔リスク比(RR)0.83(95%信頼区間0.75~0.93)〕。同様に、1日1杯の人工甘味料入り飲料を1杯のカフェイン入りコーヒーに置き換えた場合も、2型糖尿病発症リスクが9%有意に低下する可能性が示された〔RR0.91(同0.84~0.99)〕。

 なお、デカフェ(カフェイン抜き)のコーヒーを飲んでいる女性では、2型糖尿病発症リスクの有意な低下が認められなかった。ただし研究者によると、これはデカフェコーヒーを飲む習慣のある女性が少なかったために、有意性が示されなかった可能性もあるという。

 Zhang氏らは大学発のリリースの中で、「コーヒーには、天然の植物性微量栄養素であるポリフェノールなどの化合物が含まれており、それが有益性につながっているのではないか。コーヒーの有益性はアジア人を含む多様な人種/民族で一貫して示されてきている」と述べている。ただし、「抽出方法や摂取頻度、砂糖やミルクを加えるか否かなどで、影響は異なる可能性があり、コーヒー摂取の健康への影響に関して、さらに多くの研究が必要とされている」と付け加えている。また、別の問題として、妊婦や胎児、子どもに対するコーヒーの負の影響についても、より詳細な調査が必要とのことだ。

 なお、本研究は、米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院と米国立衛生研究所(NIH)の研究者が協力して行われた。

[2022年12月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら