1型糖尿病は子どもの学業成績に影響を及ぼしていない

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/01/17

 

 1型糖尿病の子どもは、そうでない子どもよりも学校を欠席することが多いが、学業成績や大学進学率は差がないことを示すデータが報告された。英カーディフ大学のRobert French氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に12月1日掲載された。

 この研究は、2009~2016年に英国の義務教育年齢(6~16歳)だった、ウェールズ地方の学校の生徒の通学や進学の状況を解析するという手法で行われた。解析対象となった生徒のうち、糖尿病でない生徒が26万3,426人、1型糖尿病と診断されていた生徒が1,212人含まれていた。評価項目として、欠席日数、16歳時点の学業成績、18歳以上の高等教育への進学率が設定され、また血糖コントロール状況とそれらとの関連も調査された。

 まず欠席日数に着目すると、1型糖尿病の生徒は年平均約9セッション欠席していた(この研究では半日を1セッションと定義)。HbA1cの五分位で5群に分類して比較すると、最も厳格にコントロールしている第1五分位群は年約7セッションの欠席であった。反対にコントロールに難渋している第5五分位群は年約15セッション欠席していた。

 French氏は、「最も重要なことは、1型糖尿病の子どもたちは学校を欠席しがちであるにもかかわらず、おしなべて非常によくやっているということだ。家族と子どもたちの負担は少なくないが、彼らは頑張っている」と語る。同氏の評価は、学業成績が糖尿病でない生徒との間に有意差がなく、高等教育課程への進学率も同等〔オッズ比1.067(95%信頼区間0.919~1.239)〕という結果に基づくもの。

 ただし、血糖コントロールの達成状態別に見ると、糖尿病の管理に苦労している生徒は勉強面でも苦労している状況が浮かび上がった。例えば、HbA1c第1五分位群の生徒の学業成績や進学率は、糖尿病でない子どもの平均よりも有意に優れていた一方で、HbA1c第5五分位群の生徒は有意に低い値だった。なお、糖尿病罹病期間は、学業成績や進学率と有意な関連がなかった。

 1型糖尿病は、膵臓がインスリンをほとんど、または全く分泌しなくなる病気。患者は1日数回のインスリン注射により高血糖を防ぎ、かつ血糖値の下がり過ぎを防ぐために血糖測定を繰り返したり、補食(低血糖の予防や改善のための軽い食事)を取ったりする必要に迫られる。「学校教育と医療関係者は、1型糖尿病の子どもたちとその家族に、さらに多くの支援を提供する必要がある。それによって、より多くの1型糖尿病患児が、健康的に成長し、学業を伸ばし、可能性を最大限に発揮できるのではないか」と、French氏は語っている。

 今回の研究報告に関連して、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のChristina Reh氏は、「糖尿病の子どもたちの欠席を完全になくすことは困難だ。たとえ糖尿病を適切にコントロールできていたとしても、年に4回は専門医の診察を受ける必要がある。また、糖尿病に関連する何らかの理由で欠席しなければならないこともある」と話す。そして、「本研究の結果は、糖尿病の子どもたちが糖尿病でない子どもと同等の学業成績を収めていることを示していて、心強い」と論評。ただし、「メンタル面の問題や家族の支援の不足など、1型糖尿病の治療に多くの障壁を抱えている子どもほどHbA1cが高い傾向がある。そのような患児は、学校でも何らかの問題に直面していることが多い可能性がある」とも付け加えている。

[2022年12月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら