新型コロナワクチン接種後にギランバレー症候群の発症リスクは増大しない

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/10/26

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン(以下、新型コロナワクチン)の接種により、ギランバレー症候群(GBS)の発症リスクが増大するとのエビデンスは認められなかったことが、新たな研究で報告された。研究論文の筆頭著者である、米ラトガース・ニュージャージー医科大学のMustafa Jaffry氏は、「この情報は、客観的な統計的分析によるアプローチによりワクチンの信頼性を裏付けるものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Vaccine」9月号に掲載された。

 米食品医薬品局(FDA)は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製の新型コロナワクチンと、GBS発症との関連を示唆する最初の報告を受け、2021年7月13日に、同ワクチンの接種によりGBSのリスクが増大する可能性があるとの警告を発していた。GBSはまれな神経学的疾患で、致死的となることもあるが、細菌感染により引き起こされることが多いため、原因を突き止めるのが難しい。Jaffry氏は、「最初の報告の内容は、単にワクチンを接種した人が、数週間後にGBSを発症したというものだった。しかし、同時期にワクチンとは無関係の感染症に罹患していた可能性もある」と説明する。

 ワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System;VAERS)は、FDAおよび米疾病対策センター(CDC)が管理しているデータベースであり、種類にかかわらずワクチン接種後に生じた有害事象がもれなく記録されている。Jaffry氏らは、VAERSより取得したGBSに関する情報を集めて分析した。その目的は、種類を問わず、ワクチンの接種によりGBSの発症リスクが高まるのかを調べることだった。GBSは、新型コロナワクチンをはじめとするさまざまなワクチンと関連することが以前から示唆されており、「医学界では切実な問題となっている」と同氏は言う。

 Jaffry氏らは、集めたデータを3つの期間に分割し、各期間に何回ワクチンが投与されたかを算出した。3つの期間とは、1)パンデミック発生前およびワクチン開発前(コントロール期間;2019年1月1日〜2019年11月31日)、2)新型コロナワクチン接種開始前のCOVID-19パンデミック期(2020年1月1日〜2020年11月31日)、3)新型コロナワクチン接種期(2020年12月1日〜2021年10月31日)である。GBS発症の報告率を、1)のコントロール期間と3)のワクチン接種期で比較するとともに、同時期に、インフルエンザワクチン、HPVワクチン、髄膜炎菌ワクチン、および肺炎球菌ワクチンの接種後に生じた報告率とも比較した。

 その結果、新型コロナワクチン接種後のGBS発症の報告率は、インフルエンザワクチン接種後や、その他のワクチン接種後に比べて有意に高く、100万人当たりの報告率は同順で、4.97、0.02、0.02人であった(P<0.0001)。しかし、新型コロナワクチン接種後のこの報告率は、一般集団で予想されるGBSの発症率の範囲に収まるものであった。

 研究論文の上席著者である、同大学神経学教授のNizar Souayah氏は、「この研究から、新型コロナワクチン接種後に、他のワクチンに比べてGBS発生の報告が増えたものの、一般集団でのGBS発症率を上回るものではないことが示された」と述べ、「新型コロナワクチンとGBSのリスク増大との関連は統計的に認められない」と結論付けている。同大学の研究グループは、ワクチンと他の疾患との関連についても研究を続ける予定だとしている。

[2022年10月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら