ワクチン接種後も大気汚染でCOVID-19が重症化

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/25

 

 ワクチン接種済みか否かにかかわらず、大気汚染が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時の重症化リスクを高める可能性を示すデータが報告された。米カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院のAnny Xiang氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に9月20日掲載された。論文の上席著者であるXiang氏は、「ワクチンによる重症化リスクの抑制は明らかだ。しかしそれでも大気汚染にさらされた人がCOVID-19に罹患した場合の入院リスクは、大気汚染の影響が少ない人よりも高い」と述べている。

 Xiang氏らは、カイザーパーマネンテの匿名化された医療データベースと、公開されている大気環境モニタリングデータをリンクさせ、大気汚染とCOVID-19による入院との関連を検討した。デルタ株が主流だった2021年7~8月にCOVID-19と診断された12歳以上の患者は5万10人で、平均年齢は40.9±16.9歳であり、34.0%がワクチン接種を完了し、4.2%は部分的に終了(2回接種が必要なタイプで1回のみ終了)していた。大気汚染への曝露レベルは、COVID-19診断前の1年間および1カ月間のPM2.5、二酸化窒素の平均濃度で評価し、1年間の平均値は「長期曝露」、1カ月間の平均値は「短期曝露」と定義した。

 3,073人(6.1%)が診断後30日以内に入院を要していた。ワクチン接種者は入院のオッズ比(OR)が有意に低いことが確認された。具体的には、年齢、性別、BMI、喫煙状況、人種/民族、医療保険加入の有無、チャールソン併存疾患指数、人口密度、地理的剥奪指標などの影響を調整後、ワクチン接種を完了していた人はOR0.16(95%信頼区間0.15~0.18)、部分的に終了していた人はOR0.46(同0.37~0.57)だった。

 次に大気汚染曝露の影響を見ると、PM2.5の長期曝露レベルが1標準偏差高いと入院のオッズ比が1.25(同1.18~1.33)と有意に高く、短期曝露との関連もOR1.17(1.11~1.24)と有意だった。二酸化窒素との関連も同様に、長期曝露はOR1.19(1.13~1.25)、短期曝露はOR1.13(1.07~1.20)と有意だった。調整因子にワクチン接種状況を追加した解析では、以下のようにオッズ比はより高くなり、入院リスクは最大3割上昇する可能性が示された。PM2.5の長期曝露でOR1.30(1.22~1.38)、短期曝露でOR1.21(1.14~1.28)、二酸化窒素の長期曝露でOR1.23(1.17~1.30)、短期曝露でOR1.16(1.10~1.23)。なお、オゾンについても検討されたが、オゾン曝露量と入院オッズ比との間に有意な関連がなかった。

 ワクチン接種の有無で層別化して解析すると、未接種者の入院オッズ比はより高く、摂取済みの人のオッズ比はやや低下した。ただし群間の交互作用は非有意であり(全てP>0.09)、たとえワクチン接種済みであっても大気汚染曝露の影響を受けて入院リスクが上昇する可能性が示唆された。

 これまでの研究によると、大気汚染の曝露は短期間でも肺の炎症を悪化させ、免疫反応を変化させる可能性があるとされている。さらに曝露期間が長期に及んだ場合は、心臓や肺の病気のリスクが上昇することが示されている。

[2022年10月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら