糖尿病が発症/寛解する脂肪蓄積量の閾値は個人で異なる

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/20

 

 肥満や過体重でない2型糖尿病患者であっても、約10%の減量によって7割の人は糖尿病が寛解するという研究結果が報告された。研究者らは、「誰もが糖尿病が発症または寛解する“脂肪蓄積閾値”を持っていて、その値は個人個人で異なるのではないか」と語っている。この研究は、英ニューキャッスル大学のRoy Taylor氏らによるもので、欧州糖尿病学会(EASD2022、9月19~23日、スウェーデン)で発表された。

 Taylor氏によると、2型糖尿病は肥満と密接な関連のある疾患だが、肥満または過体重でない患者も少なくなく、そのような人たちは自分自身の脂肪蓄積閾値を超えてしまっている可能性があるという。「その人にとって過剰なエネルギーは皮下脂肪として蓄積される以外に、肝臓や膵臓内にも脂肪として蓄積され、糖代謝に影響を及ぼす。この状態が続いていると、膵臓のインスリン産生細胞の機能が低下し、糖尿病が発症・進展する」と同氏は解説する。また、「脂肪蓄積閾値を測定する検査法は現時点ではないが、脂肪細胞にかかっているストレスは血液検査によって推し量ることができ、今後の研究によって、それらを脂肪蓄積閾値の信頼できるマーカーとして利用できるようになるのではないか」とのことだ。

 この研究は、平均BMIが24.8±1.7と、肥満や過体重ではない2型糖尿病患者20人(平均年齢59.3±7.1歳、女性が13人)を対象に行われた。摂取エネルギー量を1日800kcal(低カロリーのスープやシェイク、非でんぷん質の野菜などから摂取)とする食事療法による減量を2~4週間続け、その後の4~6週間は体重が増えない程度に食事をするというサイクルを計3回実施。その結果、平均で10.7%の減量を達成し、BMIは22.5±0.47と有意に低下した(P<0.0001)。また、減量の最終サイクル終了時点と1年後の体重は、それぞれ64.1±2.9kg、64.11±2.6kgであり、リバウンドは観察されなかった(P=0.86)。

 研究参加者の70%にあたる14人が糖尿病の寛解(血糖降下薬を使用せずにHbA1c6.5%未満)に至った。肝臓内の脂肪は4.1%から1.5%(P<0.001)、膵臓内の脂肪は6.1%から5.0%となり(P<0.01)、ともに有意に減少し、膵臓のインスリン産生細胞の機能(disposition index)にも有意な改善が認められた。Taylor氏は、「膵臓の脂肪は通常ごくわずかであって、余分な脂肪はインスリン産生細胞の機能を阻害する」と話す。そして、「2型糖尿病の患者はBMIカテゴリーに関係なく、体内に余分な脂肪が多く蓄えられており、約10%の減量によって寛解に至る可能性が十分ある」と、研究の成果を総括している。

 この研究報告に関連して、米国ワシントンD.C.にある体重・ウェルネスセンターの所長のScott Kahan氏は、「肥満と糖尿病の関係は強固であり、わずかな体重増加でさえ2型糖尿病のリスクを大幅に高める可能性がある。これは比較的痩せている人にも当てはまる」と述べている。また、「報告された研究は、2型糖尿病の予防と治療のための体重管理の重要性を強調するものと言える。体重がやや超過している程度の人であっても体重コントロールが必要であるという情報の周知や、そのサポートおよび介入にベネフィットがある可能性が高いことを示している」と付け加えている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年9月23日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら