ハイテクデバイスでの血圧管理は本当に有効か

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/20

 

 近年、家庭血圧測定(self monitoring of blood pressure;SMBP)が重要視されるようになってきている。その際に用いる血圧計として、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリに接続でき、血圧を含めたさまざまな健康情報が得られるハイテクデバイスは、従来のカフ式の血圧計と比べて降圧効果に優れているわけではないとする研究結果が報告された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)疫学・生物統計学分野教授のMark Pletcher氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に8月15日掲載された。

 Pletcher氏らは今回、2,101人の高血圧患者を、6カ月にわたって従来の標準的な血圧計を用いる群(1,050人、標準血圧計群)とスマホのアプリに接続できるなどの高度な機能が備わった血圧計を用いる群(1,051人、高機能血圧計群)にランダムに割り付け、高機能デバイスにより従来の血圧計よりも高い降圧効果や患者満足度を得られるのか否かを検討した。主要評価項目は、試験開始時から6カ月後時点でのクリニックで測定した収縮期血圧(上の血圧)の低下量とした。

 その結果、試験開始から6カ月後時点での収縮期血圧の平均低下量は、高機能血圧計群で10.8mmHg、標準血圧計群で10.6mmHgと同程度であった。患者満足度については、高機能血圧計群の70%、標準血圧計群の69%が、「自分たちが使った血圧計を友人にも薦めたい」と回答した。

 この結果についてPletcher氏は、「スマホのアプリに接続できるデバイスには、アプリで測定値を確認でき、フィードバックやリマインダーも得られるという付加価値があると思っていた。そのため、この結果は予想外だった」と驚きを表す。

 Pletcher氏はさらに、「価格的には、高度な機能が備わったデバイスは最大で100ドル(1ドル135円換算で1万3,500円)かかる上に、設定にも時間がかかる。これに対して、従来の血圧計は50〜60ドル(6,750〜8,100円)程度とより安価だ」と付け加える。

 これからSMBPを始める人に対するアドバイスとしてPletcher氏は、「1日に数回、5日間続けて血圧を測定して、その記録を取ることだ。そうすることで、自分の平均的な血圧値の感覚をつかむことができる。また、その数値の記録を基に、現在の治療で効果が出ているのか、あるいは微調整が必要なのかについて担当医と話し合うこともできる」と述べる。さらに、SMBPで使う血圧計についても、「Bluetooth対応のカフとアプリを持っているのなら、それを使えば良い。従来の血圧計と同じようにちゃんと機能する」と話している。なお、研究チームは現在、経時的に血圧を自動で測定できる、新しいウェアラブルデバイスの開発を検討しているところだという。

 この研究報告を受けて、米シカゴ大学総合高血圧センター所長のGeorge Bakris氏は、「患者は血圧の測り方を知り、また測定値の意味するところを説明してもらう必要がある。SMBPは、朝に正しく測定できるのであれば、クリニックで測定するより優れているとは言わないまでも同じくらいに良い」と話している。

[2022年8月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら