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現在広く使われている麻酔薬リドカインの脊椎注射による硬膜外ブロックが、炎症性の皮膚疾患である乾癬に有効である可能性を示唆する小規模な予備的研究の結果がこのほど明らかになった。上海交通大学医学院(中国)のHonglin Wang氏らによる研究で、詳細は、「Journal of Investigative Dermatology」8月号に掲載された。
乾癬は、慢性の炎症性皮膚疾患の1つで、異常な免疫反応によって皮膚細胞のターンオーバーが速まり、皮膚の表面にそれらの細胞が蓄積する。患者のほとんどが尋常性乾癬と呼ばれるタイプの乾癬で、かゆみや痛みを伴うこともある。米国乾癬財団(NPF)によると、米国には800万人以上の乾癬患者がいるという。
標準的な治療法は炎症を標的としたもので、最も広く行われているのは局所ステロイド薬を用いた治療だ。より重症の乾癬患者に対しては、光線療法や免疫システムを抑制する注射薬などが治療選択肢となる。
Wang氏は今回の研究を実施した背景について、「乾癬患者に、手術中に麻酔薬を硬膜外投与すると、乾癬の症状が大幅に軽減したとする症例研究が報告されている。このことは、神経系が乾癬の発生に重要な役割を果たしている可能性を示唆している」と話す。
今回Wang氏らは、4人の重症乾癬患者を対象に、従来の治療法とは完全に異なるアプローチを試した。それは、局所麻酔にしばしば使用されているリドカインによって痛みのシグナル伝達に関わる感覚神経をブロックするという治療法である。対象者のうちの2人には全身に、残る2人には主に下肢に皮膚病変があった。同氏らは、脊髄のT12(第12胸椎)とL1(第1腰椎)の間の硬膜外腔にカテーテルを挿入し、リドカインを投与した。投与回数は、最も少ない患者で2回(1、64日目)、最も多い患者で4回(1、48、94、165日目)であった。その結果、乾癬の重症度の評価スコア(Psoriasis Area and Severity Index;PASI)が35~70%低下し、その効果は少なくとも6カ月以上にわたって持続したという。
この報告について、乾癬の専門家で米ベイラー大学皮膚科学部門長のAlan Menter氏は、「興味深い結果だ」とした上で、「神経学的な問題がある患者で、神経が損傷している部位の皮膚からは乾癬の病変が消失したという症例報告がある」と説明。ただ、その理由については、「十分に解明されていない」と付け加えている。
Wang氏らは今回の研究の一部として、なぜリドカインが有益なのかについても明らかにすべく、ラットに乾癬に似た症状を誘発した上で、一部のラットにはリドカインを投与する実験を行った。その結果、乾癬様の症状が現れている皮膚部分では感覚神経が過剰に発達していたが、リドカインの投与によってそれが抑えられることが明らかになった。また、リドカインは神経細胞が炎症を引き起こすタンパク質であるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の放出を阻害することも確認された。
ただし、まだ答えの出ていない疑問点も数多く残されている。研究の対象となった4人の患者では安全性の問題は生じなかったが、Wang氏らは「より大規模な研究で、乾癬患者に対するリドカインの硬膜外投与をプラセボ投与と比較する必要がある」と強調している。その上で、「もし今後の研究でこのアプローチが安全かつ有効であることが証明されれば、標準治療では効果が得られない乾癬患者の治療選択肢の1つになる可能性がある」との見方を示している。
[2022年8月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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