断続的断食がCOVID-19重症化リスクを抑制?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/17

 

 断続的断食が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクを抑制するのではないかとする論文が、「BMJ Nutrition, Prevention and Health」に7月1日掲載された。筆頭著者である、米インターマウンテン心臓血管/遺伝疫学部門の責任者、Benjamin Horne氏は、「断続的断食に関しては既に、炎症や心血管リスクの抑制につながることが示されているが、本研究によって新たなメリットの可能性が明らかになった。断続的断食を長期間続けている人はCOVID-19との戦いに有利かもしれない」と述べている。

 この研究は、インターマウンテンの患者データを集積した「INSPIREレジストリ」を用いて行われた。COVID-19に対するワクチンが臨床応用される前の2020年3月~2021年2月にウイルス検査で陽性と判定され、かつ、断続的断食に関する調査に回答していた205人を解析対象とした。このうち73人(35.6%)が月に1回以上、習慣的に断食を行っていた。なお、INSPIREレジストリにはユタ州ソルトレークシティーの住民が多く登録されており、ユタ州の住民の約62%は宗教上の理由から定期的に断食をしている。

 解析対象者の平均年齢は63.5±15.1歳、女性37.1%、BMI31.1±7.9であり、糖尿病患者が41.5%を占めていた。これらのパラメーターは、断続的断食の習慣の有無で有意差がなく、また、人種/民族、基礎疾患の有病率なども有意差がなかった。ただし、断続的断食群は、喫煙者や飲酒習慣のある人が少なかった。なお、断続的断食群では平均40.4±20.6年(最大81.9年)、断続的断食を続けていた。

 断続的断食群の11.0%、対照群の28.8%に、COVID-19による入院または死亡が発生していた。単変量解析では、断続的断食群で約4割の重症化リスク低下が認められた〔ハザード比(HR)0.61(95%信頼区間0.42~0.90)〕。二つの交絡因子(年齢に加えて、人種、民族、飲酒、喫煙、何らかの基礎疾患などのうちの一つ)を説明変数に加えた多変量解析の結果も、追加した説明変数にかかわらず全ての解析で、断続的断食群での有意な重症化リスク低下が認められた。また、三つの交絡因子(年齢と民族に加えて、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、腎不全のいずれかの既往)を説明変数に加えた多変量解析の結果も同様だった。

 断続的断食群のCOVID-19重症化リスクが低いことの理由についてHorne氏は、「正確なことは不明であり、より多くの研究が必要」とした上で、三つのメカニズムを考察として述べている。その一つは、COVID-19重症化を促す炎症が、断続的断食により抑制されるというもの。

 もう一つのメカニズムは、体のエネルギー源が12〜14時間の絶食後に、糖からリノール酸などの脂質を基に産生されるケトン体に切り替わることに関係している。新型コロナウイルスの表面にはリノール酸と結合するポケット構造が存在するため、断食によりリノール酸濃度が上昇すると、そのポケットとリノール酸の結合が増えて、ウイルスは他の細胞に付着しにくくなる可能性があるという。また断続的断食によって、ダメージを受けた細胞を分解し再生するプロセスであるオートファジーが亢進することも、COVID-19重症化抑制のメカニズムとして考えられるとのことだ。

 なお、本研究の断続的断食群は、断続的断食を数十年続けてきた人たちである。Horne氏は、「これから断続的断食を始めるのであれば、まず医師に相談する必要があり、特に高齢者、妊婦、糖尿病や心臓病、腎臓病などの患者はその点が重要」と強調している。また同氏は、「断続的断食はワクチン接種の代替と見なすべきではなく、COVID-19重症化抑止のためのワクチンと抗ウイルス療法を補完するアプローチと位置付けるべきだろう」と述べている。

[2022年7月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら