血液がん患者でもブースター接種で一定程度の免疫を獲得

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/09

 

 悪性リンパ腫などの血液がん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(以下、新型コロナワクチン)を接種しても抗体が作られにくいと考えられている。こうした中、ワクチンの初回接種後には抗体が検出できなかった血液がん患者でも、ブースター接種後には新型コロナウイルスに対してある程度の免疫を獲得できることが、新たな研究から明らかになった。米ブラウン大学アルパートメディカルスクールのThomas Ollila氏らが実施したこの研究の詳細は、「Cancer」に7月11日発表された。

 白血病やリンパ腫、多発性骨髄腫などの血液がんの患者は、がんが原因で免疫システムが低下した状態となる。また、化学療法などのがん治療は免疫システムにさらにマイナスに働くと考えられている。Ollila氏らは今回の研究で、18歳以上の血液がん患者378人のデータを後ろ向きに解析し、血液がん患者における新型コロナワクチンの初回接種後およびブースター接種後の抗体反応について調べた。

 その結果、初回接種後に抗体が検出可能だった血液がん患者は48%(378人中181人)と半数に満たないことが分かった。最も抗体が獲得されにくいのは、活動性がんの患者や、がん治療(B細胞除去治療)中の患者であった。しかし、初回接種後に抗体が確認できなかった“ノンレスポンダー”の患者でも、1回目のブースター接種後には56%(85人中48人)が新型コロナウイルスに対する抗体を獲得できていた。また、追跡期間中に33人がCOVID-19に罹患し、3人がCOVID-19に起因する疾患が原因で死亡していたが、ワクチン接種後に抗体反応が確認された患者では、COVID-19による死亡例はなかった。

 こうした研究結果についてOllila氏は、「血液がん患者は新型コロナワクチンの効果が得られにくいことを示した数多くの文献があるが、本研究は、そのような文献の蓄積を進める結果となった」と話す。その上で、「重要なのは、初回接種後にはワクチンに対する反応が見られなかった血液がん患者の多くが、ブースター接種後には反応することが示された点だ」と強調している。

 なお、この研究の対象者には、2種類の長時間作用型抗体(チキサゲビマブとシルガビマブ)を組み合わせた抗体カクテル療法のEvusheldによる治療を受けた患者も含まれていた。EvusheldはCOVID-19パンデミック時に高リスク者の感染予防のため米食品医薬品局(FDA)による緊急使用許可を取得している。Ollila氏らは、この抗体カクテル療法を受けていた血液がん患者の中で、追跡期間中にCOVID-19と診断された患者はいなかったことも明らかにしている。

 Ollila氏は、血液がん患者に対して新型コロナワクチンのブースター接種を行い、適応があれば予防目的の抗体療法を優先して行うことを有効な対策として挙げた上で、「われわれの研究から、これらの対策によって患者の命を救えることを示すリアルワールドのエビデンスが得られた」と付け加えている。

[2022年7月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら