世界の成人の4人に1人はNAFLD―AHAが心疾患リスクとして注意喚起

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/05/27

 

 飲酒が肝臓に良くないことは、広く知られている。しかし、世界中の成人の4人に1人は、飲酒と関係のない肝臓病を患っているという。そして、そのような肝臓病を持つ人は、心臓病のハイリスク状態でもあるとのことだ。この実態に注意を促す、米国心臓協会(AHA)による科学的声明が、「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に4月14日掲載された。

 飲酒とは関係のない肝臓病とは、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれるもの。NAFLDは、肝臓に脂肪が大量に沈着することで発症し、肝臓の繊維化や炎症を引き起こすことがある。ただし、大半のNAFLD患者は診断されずにいる。

 今回発表されたAHAの科学的声明の筆頭著者である、米オレゴン健康科学大学のP. Barton Duell氏は、「NAFLDは患者数の多いよく見られる疾患であり、かつ、慢性肝障害や心血管疾患のリスク因子であるため、病状を把握して早期に治療することが重要だ。それにもかかわらず、日常診療ではしばしば見逃されたり、診断されても治療されないことがある」と語る。

 NAFLD患者の主要な死因の一つが心臓病であり、NAFLDと心臓病は多くのリスク因子を共有している。例えば、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病または前糖尿病状態などだ。またAHA科学的声明によると、同程度の心臓病リスク因子を持っているNAFLD患者とNAFLDでない人を比較すると、NAFLD患者の方が、実際に心臓病を発症してしまうリスクが高いとのことだ。

 NAFLDは、健康的な体重を維持し、習慣的な運動を続け、心臓に良い食事を取り、2型糖尿病や高トリグリセライド(中性脂肪)血症などをコントロールすることで、その多くを予防できる。一方でDuell氏によると、「健康的な生活は多くの人のNAFLDの回避に役立つが、最善の努力にもかかわらずNAFLDを発症する人もいる。反対に、肥満や2型糖尿病、メタボリックシンドローム、不健康な食生活、運動不足であるにもかかわらず、NAFLDの発症を抑えられる遺伝的背景を持っている人もいる」という。

 NAFLD患者の大半は症状がなく、一般的な血液検査では異常が発見されない可能性がある。健診における肝機能検査として行われているASTやALTは、感度と特異度が十分でなく、NAFLDのスクリーニングには向かない。そのため、診断されていないケースが少なくない。それに対して、超音波検査などで肝臓への脂肪蓄積、弾力性・硬さ(線維化の進行程度)を非侵襲的に評価する検査によりNAFLDを検出することが可能。ただし、「そのような検査が十分に活用されていない」とAHAの声明には述べられている。また、NAFLDの診断において最も信頼性の高い検査は肝生検だが、侵襲を伴うことや医療コストの面からも、一般的に行うにはハードルが高い。

 NAFLDを早期に診断できれば、生活習慣の改善などによって肝臓のダメージを修復することができる。AHAの声明によれば、2型糖尿病の治療、血清脂質の低下、減量のために薬物治療が必要なことがあり、また一部の患者には減量手術が適用されるという。体重を5~10%減少させることによって多くの場合、病態の進行が抑制され、場合によっては寛解に至る。ただし、この減量目標を達成することは容易ではない。

 薬物治療としては、「グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト(GLP-1RA)の使用は、血糖の改善、体重減少、および主要心血管イベントのリスク低下に関連しており、NAFLDを改善する可能性もある」と声明に述べられている。

[2022年4月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら