LGBTQの若者に「転向療法」は有害

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/04/15

 

 LGBTQ(性的マイノリティ)の人々に対する、性的嗜好・ジェンダーアイデンティティ(性同一性)変更の取り組み(SOGICE)、いわゆる「転向療法(コンバージョンセラピー)」は、精神面へ深刻な悪影響を及ぼすとともに、治療に関連して生じる経済的負担も相当な額になることが報告された。米Cytel社のAnna Forsythe氏らによるこの研究結果の詳細は、「JAMA Pediatrics」に3月7日掲載された。

 転向療法は、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、およびクィアまたはクエスチョニング(Q)と呼ばれる人々を「ストレート」に転向させることを試みる療法だ。これまで複数の研究で、その安全性と有効性に対する疑問が指摘されている。

 今回の研究では、LGBTQの人に対する転向療法に関する28件の発表済み研究のデータを基に、転向療法と有害事象との関連を検討するとともに、経済的負担についても調べた。これらの28件の研究には、LGBTQの人が計19万695人含まれており、そのうちの12%(範囲7〜23%)が転向療法を受けていた。転向療法の開始平均年齢は25歳(範囲5〜58歳)で、治療期間は平均26カ月だった。

 その結果、転向療法を受けた人では、何も受けなかった人に比べて、精神的苦痛(47%対34%)、抑うつ(65%対27%)、物質乱用(67%対50%)、自殺未遂(58%対39%)を経験した人の割合が高かった。また、経済的負担に関する解析からは、転向療法を受ける人では何も受けない人に比べて、推定される生涯の経済的負担が1人当たり9万7,985ドル(約1146万円、1ドル117円換算、以下同)余分にかかる一方で、質調整生存年(QALY)は平均1.61QALY失われることが判明した。

 一方、セクシュアリティやジェンダーアイデンティティの肯定的な表現の正当性を認める「アファーマティブセラピー」では、何も受けない場合に比べて、1人当たり4万329ドル(約472万円)のコスト削減が得られ、0.93QALYを獲得することが明らかになった。

 米国での2021年の転向療法の実施に関するデータを基にすると、推定50万8,892人のLGBTQの若者が転向療法を受ける可能性があり、それにかかる総費用は年間6億5016万ドル(約760億6872万円)になるという。また、有害事象など関連事項を含めたコストは85億8000万ドル(約1兆38億6000万円)、総合的な経済的負担は総計92億3000万ドル(約1兆799億1000万円)に上ると推定された。

 こうした結果を受けて研究グループは、「LGBTQの若者を、彼らにとって受け入れがたい医療行為から守り、また、こうした療法への資金供給を止めるべき責務を担っているのは政策立案者だ。LGBTQの若者には、アファーマティブセラピーの利用を促すと、ストレスに対処するスキルや方法が身に付き、それが健康の増進につながる可能性がある」と指摘している。

 転向療法は、米国の一部の州や都市では禁止されているが、その一方で、この療法の保護や、禁止の無効化を求める法案もいくつか提出されているという。今回の研究はLGBTQの若者を支援する非営利団体The Trevor Projectの援助により実施された。

 米テキサス大学ジェンダー・セクシュアリティ・行動医学研究所のMike Parent氏は、「今回の研究は、転向療法が個人にとって有害なだけでなく、社会が負う経済的負担の増加にもつながっていることを明らかにするものだ」と述べている。また、米フェンウェイ研究所の健康政策研究部長Sean Cahill氏は、「多くの場合、親は子どもを傷つけるつもりはなく、助けようとしているのだと思う。転向療法により子どもがいかにリスクを負うかを知れば、多くの親は受けさせたいとは思わないはずだ」と指摘している。

[2022年3月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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