胃薬が歯周病を改善する可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/11/19

 

 胃食道逆流症や胃潰瘍などに広く使用されているプロトンポンプ阻害薬(PPI)が、歯周病の重症度を低下させる可能性のあることが報告された。米ニューヨーク州立大学のLisa Yerke氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Dental Research」に9月21日掲載された。

 PPIは胃酸の分泌を抑制する薬で長く使われてきているが、近年では消化管内の細菌叢の組成に影響を及ぼす可能性が報告されている。また、骨の吸収にかかわる破骨細胞の働きを調節する作用を有することも明らかになっている。一方、歯周病は歯周に付着した微生物が歯周組織に炎症を引き起こし、歯槽骨(歯を支える骨)が吸収されて歯が抜けやすくなる病気。このようなPPIの作用や歯周病進行のメカニズムから、Yerke氏らはPPIが歯周病のリスクを抑制する可能性を想定し、以下の検討を行った。

 研究の対象は、歯周病健診を受けた1,093人。PPIが処方されているか否かで2群に分け、歯周ポケットの深さを比較した。歯周ポケットとは、歯と歯茎の間にある溝のことで、歯周病の重症度の指標。歯肉(歯茎)が歯にぴったりと付着していて歯周ポケットが浅ければ、歯肉の状態は良好と判定される。なお本研究では、歯周病のハイリスク者である、喫煙者および糖尿病患者は対象から除外されている。また解析に際しては、歯周病リスクに影響を及ぼし得る自己免疫疾患を有する患者や化学療法の既往者などを除外する前と除外後とで検討を行っている。

 検討の結果、PPIが処方されている人は歯周病の重症度が有意に低いことが明らかになった。例えば、自己免疫疾患患者や化学療法の既往者などを除外後の検討で、PPIが処方されていない群では深さ6mm以上の歯周ポケットがある人が23.7%を占めていたのに対し、PPIが処方されている群でのその割合は14.0%だった(P=0.030)。深さ5 mm以上の歯周ポケットのある人の割合で比較しても、同順に40.0%、27.2%だった(P=0.039)。

 PPIの使用が歯周病の重症度の低さと有意に関連しているというこの結果についてYerke氏は、「PPIの持つ骨代謝や腸内細菌叢への作用の影響の表れではないか。将来的には歯周病の治療に際して、PPIの処方を追加することが検討されるようになるかもしれない」と述べている。

 ただし本研究は観察研究であるため因果関係は不明であり、Yerke氏も「PPIがどのような機序で歯周病の重症度を低下させているのかを解明するために、さらなる研究が必要」としている。なお、同氏らは現在、背景因子の異なるほかの集団でも同様の関連が認められるかを確認し、かつPPIが歯周病の進行にどの程度影響を及ぼすのかを明らかにするための研究を計画中とのことだ。

[2021年10月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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