音楽は心臓の健康に良い、AHAニュース

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/04/19

 

 ひどい嵐の中、交通渋滞に巻き込まれて通勤ストレスが増すのを感じた米マウントサイナイ・ベス・イスラエル病院ルイ・アームストロング音楽療法センター所長のJoanne Loewy氏は、カーラジオをつけた。そのときのことを同氏は、「心拍数が上がるのを感じた」と振り返る。「だから、“交通問題”のプレイリストの中にあるバッハのチェロ組曲に切り替えた。すると、いつの間にか、“もう心配するのはやめよう。呼吸するように、全てを受け入れて解き放てばいいのだ”とつぶやいていた」と話す。

 一方、ユニバーシティ・ヘルス・ネットワーク(カナダ)の循環器専門医で、音楽による心臓の健康促進について研究しているDavid Alter氏は、ワークアウト中にローリングストーンズを聞いてパワーを得ていると話す。同氏らが、「Psychology of Sport and Exercise」2021年3月号に発表した論文では、音楽に運動のつらさから気をそらす力があることを明らかにしている。「だからこそ、音楽を聞きながらだと、普段より長めに、あるいは強度を上げて、運動できるのだろう。音楽は薬といっても過言ではない」と同氏は強調する。

 古代ギリシャでも音楽のこのような治癒力は認識されていたようだ。古代の医師たちは、患者を癒すためにフルートと弦楽器を利用していたという。現代の研究者たちも、音楽が健康にもたらすベネフィットの解明に向けて研究を続けている。Alter氏は、「音楽は人間に有益だという認識は大方の人が持っている。しかし、それを科学的に証明する必要がある」と話す。その上で、最近、より厳密な科学的アプローチで実施された研究の成果をいくつか挙げている。

 まず、2020年5月に「Journal of Cardiothoracic Surgery」に掲載された研究では、冠動脈バイパス術から回復した患者の痛みや不安、抑うつが、音楽療法により緩和されたことが示された。また、2020年3月の米国心臓病学会のバーチャル会議では、梗塞後早期狭心症の患者に音楽を1日30分、7年にわたって聞かせたところ、音楽を聞いていなかった患者に比べて、不安と胸痛が少なく、心臓死の割合が低かったとする予備的研究の結果が発表されている。さらに、「Scientific Reports」に2018年1月に掲載された研究では、音楽療法を取り入れることで高血圧治療がより効果的になる可能性のあることが示唆されている。

 Alter氏によると、音楽療法の有効性については一般的に2通りの考え方があるという。一つは、音楽自体に、健康に関わるあらゆるホルモンと体の機能を刺激して、血圧を下げ、心拍数を改善する力があるとする考え方。これに対して、もう一つの考え方では、心臓の健康を促しているのは自分自身の行動であり、音楽はそうした行動の改善に役立っているに過ぎないとみなす。同氏は、「後者の考え方を最もよく表すのは運動だろう。生存、長寿、生活の質が運動により劇的に変わり得ることは周知の事実だ。運動が音楽の直接的な影響を受けているとは思わないが、音楽が健康的なライフスタイルの選択と行動に役立ち、心臓の機能を改善させる可能性はある」と話している。

 Loewy氏は、「音楽は、ストレス軽減に役立つだけではない。音楽のリズムは呼吸に影響を及ぼす可能性があり、それが心機能にも影響する。ゆっくりと大きく息を吸い込むと、より多くの酸素が血液に吸収され、心臓に良い影響を与えることができる」と説明する。そして、「その人の文化、過去、遺伝子、レジリエンス(困難に対する回復力)などにより聞く音楽は異なっても、全ての人が音楽による恩恵を受けられる可能性がある」として、「音楽は全ての人々の健康計画に組み込まれるべきだ」と主張している。

[2021年3月3日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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