坐骨神経痛に早期の理学療法が有効か

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/10/29

 

 坐骨神経痛と背部痛のある患者には、早期の理学療法開始が良い結果につながる可能性のあることを示唆する臨床試験の結果が明らかになった。米ユタ大学College of HealthのJulie Fritz氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」10月6日オンライン版に掲載された。

 坐骨神経痛とは、腰背部から臀部、左右の脚の裏側へと続く坐骨神経に沿って痛みが生じる症状で、椎間板ヘルニアなどで坐骨神経が圧迫されて発症することが多い。一般的に、坐骨神経痛の患者は安静にする必要はなく、むしろ普段の活動を維持すべきとされている。その一方で、坐骨神経痛の症状に特化した運動を行うべきとする考え方もある。そこで、Fritz氏らは、坐骨神経痛の診断後、早い段階での理学療法の開始により、回復が早まるかどうかを調べるための臨床試験を実施した。

 この試験には、過去90日以内に坐骨神経痛を発症した、18〜60歳の患者220人が参加した。これらの患者が坐骨神経痛で苦しんでいた日数の平均は、35日間だった。このうちの半数(110人)を、4カ月にわたり理学療法(PT)を行う群(早期PT群)に、残る半数を、経過観察のみ行う群(対照群)にランダムに割り付けた。早期PT群では、患者の症状に合わせて内容を調整した運動療法と腰椎モビライゼーションなどの徒手療法が行われた。介入の結果は、歩く、座る、物を持ち上げるといった日常生活動作における困難の有無を調べる標準的な質問票(Oswestry Disability Index;OSW)で評価した。

 その結果、早期PT群では、治療開始から4週間後、6カ月後、および1年後のいずれの時点でも、対照群と比べて、OSWスコアが大きな改善を示した。

 ただし、この結果についてFritz氏は、「坐骨神経痛を発症した全ての患者が、すぐにPTを受け始めるべきだと解釈すべきではない。誰にでも効く治療法などないのだから」と強調している。

 実際、坐骨神経痛患者の中には、発症から数週間以内に特別な介入を行わなくても症状が改善する患者がいる一方で、痛みが続く患者もいる。今回の臨床試験では、1年後に症状が「大幅に改善した」と回答した患者の割合は、対照群の27.6%に対して、早期PT群では45.2%と高かった。しかし、この結果は、早期にPTによる介入を行っても、過半数の患者で症状が大幅には改善しなかったと見ることもできる。ただ、Fritz氏によれば、どのような患者に早期PTが有効なのかを予測する方法は今のところないという。

 一方、今回の研究には関与していない、米ニューヨーク大学ランゴン整形外科センターのSalvador Portugal氏は、「坐骨神経痛の原因は患者によってさまざまであり、身体的な要因ではなく、心理的な要因が関与している場合もある」と指摘。また、抑うつや不安を抱える患者や痛みを大げさに捉えがちな患者は、体を動かすことに恐れを抱きやすく、痛みが持続するリスクが高くなる可能性もあるという。同氏は、「患者の中には、身体活動により痛みが増すのではないかと不安になる人もいる。しかし、実際はその逆であり、活動レベルは維持した方が良い」と話している。

 とはいえ、PTを始めるには痛みが強過ぎるため、運動を行える状態になるまで鎮痛薬の使用が必要な患者もいる。Portugal氏もFritz氏と同様に、全ての坐骨神経痛患者に有効な治療法は存在しないとし、今回の臨床試験では“管理された方法”で身体活動を維持することの有用性が示されたとの見解を示している。

[2020年10月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら