母乳を介した新型コロナウイルス感染の可能性は低い

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/09/22

 

 授乳中の母親から、母乳を介して新型コロナウイルスが乳児に感染する可能性は低いことが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)小児科教授のChristina Chambers氏らによる新たな研究で報告された。研究結果の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」8月19日オンライン版に掲載された。

 新型コロナウイルスへの感染が世界中で拡大し続ける中、母乳育児中の母親の中には、子どもへの感染を心配する人も少なくないだろう。ウイルスを含んだ母乳を通して乳幼児が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したという事例は、今のところ報告されていないが、この形での感染リスクの可能性については疑問が残ったままである。

 そこでChambers氏らは、2020年3月27日〜5月6日の間にRT-PCR検査で新型コロナウイルス陽性が判明した米国の女性から母乳検体を採取し、母乳による乳幼児の新型コロナウイルス感染リスクについて調べる研究を実施した。研究対象となった女性は総計18人(77.7%が非ヒスパニック系白人、平均年齢34.4歳)で、一人を除き全員にCOVID-19の症状が現れていた。対象者の子どもの月齢は、新生児から生後19カ月までであった。総計64点の母乳検体は、対象者が、新型コロナウイルス陽性が判明する前後のさまざまなタイミングで提供した。それらの検体について、RT-PCR検査による母乳中のウイルス検出と、組織培養法による増殖性新型コロナウイルスの検出が行われた。

 その結果、1点の母乳検体が新型コロナウイルスRNA陽性を示した。この検体は、症状が現れた日に採取されたものだった。しかし、同じ対象者から採取された発症2日前の検体1点と、発症後12日目および41日目に採取された2点の検体からは、新型コロナウイルスは検出されなかった。増殖可能な新型コロナウイルスは、この陽性が確認された検体も含め、どの検体からも検出されず、母乳から乳児に感染する可能性はないことが明らかになった。

 こうした結果を受けて、Mommy's Milk - Human Milk Biorepositoryの代表も務めるChambers氏は、「新型コロナウイルスのRNAが検出されたからといって、ただちに感染が生じるわけではない。ウイルスが感染力を持つには増殖が必要であるが、今回調べた検体では、ウイルス増殖は認められなかった」と説明している。そして、「この知見から、母乳自体が乳児への感染源となる可能性は低いことが示唆される」と結論付けている。

 現在、授乳中のウイルス感染予防として推奨されているのは、マスクの着用と手洗いや、搾乳器の使用後の消毒などである。論文の共著者で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)マテル小児病院感染症科長であるGrace Aldrovandi氏は、情報がない中、新型コロナウイルスへの感染を受けて、母乳育児を諦めた母親もいることに触れ、「今回の結果と今後の研究により、女性が安心して授乳できるようになることを願っている。母乳は、母親にも乳児にも計り知れないベネフィットをもたらすのだから」と述べている。

[2020年8月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら