ワキガの真の原因を解明

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/09/01

 

 ワキガの原因となる酵素を発見したとする研究結果を、英ヨーク大学生物学分野のMichelle Rudden氏らが、「Scientific Reports」7月27日オンライン版に発表した。この研究チームは、過去の研究で、脇の下にすむ数種類の細菌がヒトのワキガの原因菌であることを明らかにしていたが、今回のユニリーバR&D社との共同研究では、これらの細菌が産生する特定の酵素が、臭いの原因であることを突き止めたという。

 ヒトの汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類がある。体中に密に張り巡らされたエクリン腺は、皮膚の表面に直接開口しており、主に、体温調節のための汗を分泌する。一方、アポクリン腺は、脇の下や乳輪、外陰部など、体の限られた部分に存在する。

 ワキガの臭いは、アポクリン腺によって皮膚の表面に分泌された無臭の前駆体分子を細菌が分解することで生じると考えられている。ワキガの悪臭は、主に、揮発性脂肪酸(VFA)とチオアルコール類から成る揮発性有機化合物の混合物が原因とされる。チオアルコール類は、産生量自体は微量だが、非常に刺激的な臭いを発する揮発性物質である。

 脇の下に存在する主な細菌としては、Staphylococcus属(ブドウ球菌属)、Cutibacterium属、Corynebacterium属などが知られている。Rudden氏らが行った過去の研究では、Staphylococcus属のうちの限られた種が、汗に含まれる無臭の前駆体Cys-Gly-3M3SHを分解し、チオアルコール類の一種である3M3SHを産生することが明らかになっていた。しかし、この前駆体からチオアルコールが形成される詳しい仕組みについては明らかになっていなかった。

 今回、同氏らが、脇の下にすむさまざまなStaphylococcus属での3M3SH産生能力について調べたところ、この能力は主にStaphylococcus hominisS. hominis)という種で認められ、皮膚に広く分布するS. epidermidis(表皮ブドウ球菌)をはじめ、S. capitisS. aureus(黄色ブドウ球菌)などの他の種では認められなかった。チオアルコール(3M3SH)は、S. hominisが持つ酵素であるシステイン-チオールリアーゼ(C-Tリアーゼ)が、Cys-Gly-3M3SHを分解することで形成されるのだという。興味深いことに、このCTリアーゼを産生する遺伝子を、通常はワキガには関係しない黄色ブドウ球菌に発現させたところ、この細菌から3M3SHが測定された。これは、この酵素のみがチオアルコール類の産生に必要であり、かつこの酵素のみで十分であることを示唆している。

 Rudden氏らは、「この“ワキガ酵素”の構造を解明することにより、細菌内で臭い分子が作り出される分子レベルでの仕組みを突き止めることができた」と評価する。そして、「この知見は、ワキガの機能を解明する上で重要な前進であり、また、脇の下の微生物叢を乱すことなくワキガの臭いを抑える阻害因子の解明と新しいデオドラント商品の開発を可能にするものだ」と付け加えている。

 さらに、研究チームが、Staphylococcus属の多くの種類の遺伝関係を調べたところ、人類誕生よりもはるか以前の原始的な霊長類が、既にこの酵素を持っていたことも判明したという。このことからRudden氏らは、「ヒトの祖先である霊長類の間で、ワキガの臭いが個体間でのコミュニケーションにおいて重要な役割を担っていた可能性がある」と推測している。

[2020年8月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら