術中の肺がん組織を視覚化する新技術に期待

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/02/26

 

 新しい蛍光剤を用いたイメージング技術により、肺がん組織を光らせて視覚化することで、術前に見逃した腫瘍を術中に取り除ける可能性があることが、米ピッツバーグ大学医療センター胸部外科のInderpal Sarkaria氏らの研究で示唆された。小規模な予備研究の結果、「術中蛍光イメージング(IMI)」と呼ばれるこの手法により、非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約4人に1人は手術成績が向上する可能性が示されたという。研究結果の詳細は、米国胸部外科学会(STS 2020、1月25~28日、米ニューオーリンズ)で発表された。

 早期のNSCLC治療の中心は手術であるが、病変を完全に切除することは難しく、手術した患者の30~55%は再発することが報告されている。そこで、Sarkaria氏らは今回、「OTL38」と呼ばれる蛍光剤を用いた分子イメージング技術による術中の肺がん検出能について調べた。OTL38は、がん細胞の受容体を標的とする分子と、近赤外光が当たると光る蛍光剤からできていて、腫瘍組織を可視化できる特徴を持つ。なお、この蛍光剤は、米食品医薬品局(FDA)の認可はまだ受けていないという。

 今回の研究は、米国内6カ所の病院で肺切除手術が予定されているNSCLC患者92人を対象としたもの。全ての対象患者にOTL38を静脈内投与した。研究は、「肺検査」「腫瘍切除」「検体検査」の3つの段階に分けて行われた。

 その結果、肺検査の段階では、術前の画像検査で特定された領域を切除した後、外科医が目視および触診により見逃していたがんがないかを探した。外科医は2人の患者に疑わしい病変を見つけることができたが、IMI技術を用いると患者7人に10カ所のがんが新たに見つかった。腫瘍切除の段階では、IMIにより新たに11人の患者で病変が見つかり、さらに、検体検査では、8人の患者で顕微鏡的残存腫瘍が発見された。全体として、IMIにより、患者の26%では手術成績が向上する可能性が考えられたという。

 Sarkaria氏は「IMIにより、術中に腫瘍組織を完全に切除することで、再手術やがんの再発を防ぎ、患者の生存率を高められる可能性がある」と述べている。

 今回の研究には参加していない米ニューヨーク・プレスビテリアン病院の胸部外科医であるBrendon Stiles氏は「この新技術は、肉眼や触診で発見できなかった早期の病変については役立つ可能性がある。副作用もなく、使いやすいといった利点もある」と評価。その一方で、近赤外光は、身体の深部までは届かないため、技術には限界がある可能性を指摘した上で、「術前の画像診断技術は著しく向上しており、ごく早期のがんも発見されるようになっている。CT検査で発見できなかった結節陰影が新たに見つかるとは考えにくい」と同氏は付け加えている。

 なお、共同研究者の一人で米ペンシルベニア大学病院のSunil Singhal氏によると、研究チームはこの春にも、この蛍光イメージングの有用性を検証する多施設のランダム化比較試験を開始する予定だという。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2020年1月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら