抗がん剤を半減しても精巣がんの再発率上昇は見られず

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/23

 

 非セミノーマ(非精上皮腫)に分類される精巣がんに対する治療において、標準的な化学療法を半分に減らしても再発予防につながることが、英ロンドン大学がん研究所(ICR)のRobert Huddart氏らが実施した臨床試験で示された。非セミノーマ患者を対象にブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3剤併用療法(BEP療法)を標準の2サイクルから1サイクルのみに減らしても、標準治療と同等の再発予防効果が認められたという。この研究結果は「European Urology」1月1日オンライン版に発表された。

 精巣がんの現行治療では、患者はまずがんがある精巣を摘出する手術を受け、その後、がん細胞が残っている可能性を考慮して化学療法を2サイクル行うまたは経過観察(サーベイランス)のどちらかを選択する。経過観察を選択してがんが再発した場合は、化学療法が3サイクル行われる。精巣がん患者の生存率は極めて高いが、多くの患者は20代や30代であるため、化学療法の副作用に長期にわたって苦しめられる可能性がある。

 Huddart氏らは今回、術後再発リスクが高い早期精巣がん(非セミノーマ)患者約250人を対象とした臨床試験を実施。対象者に3週間にわたるBEP療法を1サイクル実施して、治療後2年以内における精巣がんの再発率を、過去の研究で報告されているBEP療法2サイクルにおける再発率と比較した。

 その結果、治療後2年以内の精巣がんの再発率は1.3%(3人)であった。これは、過去の臨床試験で示されている再発率とほぼ同じ率だった。また、今回の研究では、患者の約41%が治療中に感染症や敗血症、嘔吐などの重篤な副作用を1回以上経験した。しかし、聴覚障害などの長期的な副作用を経験した患者はわずか2.6%だった。

 結果について、Huddart氏は「化学療法の全体的な量を減らすことで、未来のある若い男性患者を長期的な副作用から守れる可能性がある。また、治療のために病院を受診する回数を減らすこともできる」と説明している。

 この治療による恩恵を実際に受けたという男性が、英ウェスト・ミッドランズ州在住のKris Taylorさんだ。35歳になるTaylorさんは、サッカーのセミプロ選手として活躍していたときに精巣がんと診断された。「予後は良好だったが、自分はがんだと分かっているのはとても怖い。当時の私にとって最も重要なのは、できるだけ早く日常生活に戻ることだった」とTaylorさんは診断時のことを振り返る。

 ICRのニュースリリースによれば、Taylorさんは手術のために休暇を取る必要があったため、化学療法を減らす選択肢を提示され、再発リスクも上昇しないと聞いて、提示された治療を受けることを即決したという。

 今回の臨床試験の報告を受けて、米スタテン・アイランド大学病院のNikolaos Karanikolas氏は「患者にとって“less is more(少ないことが良い)”であることを明確に示した重要な研究だ」とした上で、「患者の生活の質(QOL)や生殖機能を維持しながら、がんに対して有効な治療を行うことを最優先すべき」としている。

 一方、米ノースウェル・ヘルス傘下のアーサー・スミス泌尿器研究所のMichael Schwartz氏は、今回の臨床試験には長期の毒性や化学療法の用量を変えることが生殖機能に与える影響などについての報告がないことを指摘。また、臨床試験の対象者はさまざまな条件を満たした患者であり、「全ての非セミノーマ患者にこの治療法を実施できるわけではない」と述べている。

[2020年1月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら