アルツハイマー病の進行予測にタウPETが有用か

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/01/21

 

 脳画像検査の最新技術を用いた研究から、アルツハイマー病の進行には、アミロイドβタンパク質(Aβ)よりもタウタンパク質の方が強く関与している可能性が示された。この研究を実施した米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRenaud La Joie氏らによれば、陽電子放射線断層撮影(PET)により、アルツハイマー患者の脳内にタウタンパク質が蓄積している場所を特定すれば、その後に萎縮する脳領域を、ある程度の精度で予測できることが分かったという。この研究結果は「Science Translational Medicine」1月1日号に発表された。

 La Joie氏らは今回、早期アルツハイマー病患者32人を対象に、PETの最新技術を用いて、脳内のAβの沈着やタウタンパク質の神経原線維変化を評価。これらの異常タンパク質によって、脳萎縮を予測できるかどうかを調べた。なお、このPET検査は、タウタンパク質の神経原線維変化に結合すると微量の放射線を発する薬剤を用いたもので、かつて死後に解剖しないと確認できなかった脳内の異常タンパク質を、生体内でも可視化できるという。

 その結果、研究開始時における脳内のタウの蓄積量は、その後1~2年以内に、脳内にどの程度の神経変性が起こるのかを予測するのに有用であることが分かった。また、タウタンパク質による神経原線維変化の量が多い部位を調べることで、その後に現れる記憶障害や言語障害などの症状も予測できたという。

 さらに、タウの蓄積が見られる部位によって、脳のどの領域が萎縮するのかを40%以上の精度で予測できることも明らかになった。一方、Aβの蓄積では、将来の神経変性の約3%しか予測できなかった。

 これらの結果を踏まえ、La Joie氏は「研究開始時のタウタンパク質のPET画像だけで、どの脳領域がダメージを受けるのかを予測できることが分かった。タウの蓄積が見られる部位は、その後1~2年以内に萎縮する脳領域を強く予測していた」と結論。同氏らは「タウタンパク質の神経原線維変化は、アルツハイマー病の治療標的になるのではないか」と期待を示している。

 アルツハイマー病患者の脳内に沈着する異常タンパク質には、Aβがよく知られている。しかし、今回の研究結果は、Aβよりもタウタンパク質の方が、より直接的にアルツハイマー病患者の神経変性に影響するという説を支持するものであった。

 今回の研究には関与していない、アルツハイマー病協会のRebecca Edelmayer氏によると、アルツハイマー病患者の脳内では、Aβの沈着とタウタンパク質による神経原線維変化はどちらも生じやすい。これらのタンパク質異常と他領域の脳萎縮が同時に見られることは、アルツハイマー病が進行していることを示す特徴的な変化だという。

 これまで、アルツハイマー病の治療標的としてはAβが注目されてきた。しかし、Aβを標的とした新薬の研究は相次いで中止されている。つい最近も“アミロイド仮説”を揺るがす別の研究結果が「Neurology」に報告された。この研究では、アルツハイマー病患者の記憶力や思考力の低下は、Aβの沈着が見られる以前から始まっていることが結論づけられている。

 Edelmayer氏は「今回の研究結果から、Aβがアルツハイマー病の原因物質である可能性を完全に否定するのは時期尚早だ」とする一方で、La Joie氏らの研究は「アルツハイマー病患者の脳内の病理学的な変化を解明する一歩となるものだ」と高く評価。その上で、「タウタンパク質の神経原線維変化は、アルツハイマー病の進行の予測能を向上させるほか、新たな治療法の開発につながる可能性がある」と話している。

[2020年1月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら