脳は馴染みのある曲を瞬時に聞き分ける

提供元:HealthDay News

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公開日:2019/12/06

 

 ラジオから馴染みのある曲が流れてきたときに、すぐにメロディや歌詞を全て思い出せたという経験は誰にでもあるだろう。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン聴覚研究所のMaria Chait氏らが行った研究で、人間の脳は、聞き慣れた曲であれば、わずか0.1~0.3秒で聞き分けられることが分かった。研究の詳細は「Scientific Reports」10月30日オンライン版に掲載された。

 今回の研究では、まず、計10人の参加者(男女各5人)に、良い思い出と関連する馴染みのある5曲を選んでもらった。次に、Chait氏らは、各参加者が選んだタイトルから1曲を選び、テンポやメロディ、ハーモニー、ボーカル、演奏に使う楽器が似ているが、その参加者には馴染みのない曲を対照として用意した。

 その後、参加者には、馴染みのある曲と馴染みのない曲から、長さ1秒未満のメロディ断片をランダムに計100回再生して聞かせ、脳の電気活動と覚醒の尺度となる瞳孔径を記録した。脳が曲を認識したか否かは、覚醒の亢進と関連する可能性がある「瞳孔の散大」に続いて、「記憶想起に関連する脳活動」が生じたかどうかで判断した。

 研究では、馴染みのない曲だけを聞く12人の対照群でもテストを行った。その結果、参加者は、馴染みのある曲と馴染みのない曲を瞬時に判別していることが分かった。馴染みのある曲の断片を聞くと0.1~0.3秒で瞳孔がより散大し、脳活動が活性化していた。一方、馴染みのない曲だけを聞いた「対照群」では、どのメロディの断片に対する反応にも差はみられなかった。

 Chait氏は「この研究結果からは、私たちの脳は、聞き慣れた曲を瞬時に認識することが示された」と述べ、「今回の発見は、非常に高速で一時的な脳回路の存在を指し、馴染みのある曲は私たちの記憶の中に深く残るという事実とも一致する」と付け加えている。

 また、Chait氏は「基礎科学の範疇を超えて、脳が馴染みのある曲を認識するメカニズムを明らかにすることは、音楽をベースとしたさまざまな治療的介入に役立つだろう」と指摘。「例えば、近年では、記憶に問題があっても、知っている音楽はよく覚えているという認知症患者に対して、治療のブレークスルーとして音楽を活用することへの関心が高まっている」と説明。「音楽の聞き分けを司る神経回路やプロセスを特定することは、このような現象の基礎を解明する手掛かりになるかもしれない」と期待を示している。

[2019年11月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら