コーヒー摂取で腸内環境が改善?

コーヒーを摂取すると、腸内細菌叢のバランスが改善する可能性があることが、米ベイラー医科大学消化器内科准教授のLi Jiao氏らが行った研究で明らかになった。研究の詳細は、米国消化器病学会(ACG 2019、10月25~30日、米サンアントニオ)で発表された。
近年では、カフェインを摂取すると2型糖尿病や一部のがん、パーキンソン病などのさまざまな疾患の発症リスクが低減するとの研究結果が報告されている。一方で、カフェイン摂取は腸内細菌叢の組成を変える可能性があり、疾患リスクや健康全体に影響するというエビデンスが蓄積している。
そこで、Jiao氏らは、カフェイン摂取と腸内細菌叢の組成との関連を調べる研究を行った。なお、これまでは便サンプルを用いた研究が多かったが、同氏らは今回、大腸内視鏡検査中に、結腸のさまざまな部位から組織の一部を直接採取して、腸内細菌叢の組成を分析した。また、食物摂取頻度調査票を用いて、カフェインの摂取量について尋ねた。
研究では、34人の参加者から採取した97カ所の生検サンプルを分析。その結果、過去1年間にコーヒーを1日2杯以上飲んでいた人は、それ以下か全く飲まなかった人と比べて腸内細菌叢のバランスが優れていたことが分かった。また、コーヒーの摂取量が多い人の腸内細菌は種類が豊富で、大腸全体により広く、均一に分布していることも明らかになった。さらに、このような人の腸内細菌叢は抗炎症的で、Erysipelatoclostridiumなどの代謝異常や肥満と関連する細菌が存在する可能性は低かった。
Jiao氏は「コーヒーが腸内細菌叢に良い影響を及ぼす理由は分かっていない」としながらも、「カフェインなどの一部の成分が細菌の代謝に影響を与え、その代謝の最終産物が体と相互作用している可能性がある」と説明。「1日1~2杯のコーヒーは安全で、健康に保護効果をもたらす可能性がある。コーヒーが好きなら、我慢せずに楽しんで欲しい」と付け加えている。
腸内環境を整えることが健康維持に重要であるという説は、科学者の間で確信に変わりつつある。今回の研究には参加していない非営利団体「責任ある医療のための医師会(PCRM)」のHana Kahleova氏は、「腸内細菌叢は、食事と慢性疾患の発症を結びつける鍵であるようだ」と指摘する。
例えば、脂肪と加工食品が多い西洋型の食事を取る人では、肥満やインスリン抵抗性、心血管疾患などとの関連が指摘される悪玉菌の有毒成分であるエンドトキシンが多い傾向がみられる。一方で、コーヒーに含まれるポリフェノールや他の抗酸化物質、植物性食品に自然に含まれている化合物は、より健康的な腸内細菌叢と関連する可能性が高いことが示唆されているという。
しかし、腸内細菌叢のバランスを整えるために、無理にコーヒーを飲む必要はないようだ。「コーヒー以外にも、あらゆる自然の植物には、がんや糖尿病、心血管疾患の予防につながる食物繊維やポリフェノール、抗酸化物質が豊富に含まれている」とKahleova氏は助言する。また、人によっては、コーヒーは胃を刺激したり、不眠症が悪化したり、心臓病の人には危険をもたらす可能性があるとしている。
なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けた医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。
[2019年10月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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