心停止蘇生後の「低体温療法」に脳保護効果

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HealthDay News

心停止蘇生後の「低体温療法」に脳保護効果のイメージ

 心停止から蘇生した患者に対する低体温療法は、これまで考えられていたよりも多くの患者を救える可能性があることが、ナント大学病院(フランス)のJean-Baptiste Lascarrou氏らが実施した臨床試験で示された。心電図波形が「ショック非適応リズム」の心停止患者に低体温療法を実施したところ、標準的な治療を行った場合に比べて、蘇生後に良好な脳機能が保たれる確率が約2倍に上ることが分かった。この結果は「New England Journal of Medicine」10月2日オンライン版に発表された。

 ショック非適応リズムの心停止には、心臓が停止し、心電図で波形の動きがみられない「心静止」と、心電図上は波形が認められるが、脈拍が触れない状態である「無脈性電気活動(PEA)」が含まれる。これまで、ショック適応の心停止患者に対しては、脳機能の保護を目的に低体温療法が実施されており、今ではほとんどの病院で治療できる環境が整っている。しかし、ショック非適応の患者においても、低体温療法が予後に差をもたらすかどうかは明らかになっていなかった。

 そこで、Lascarrou氏らは今回、フランスの複数カ所のICU(集中治療室)に搬送されたショック非適応リズムの心停止患者584人を対象に、臨床試験を行った。対象患者の平均年齢は67歳で、約3分の2が男性だった。また、半数以上の患者には慢性心疾患が、約3分の1の患者には慢性呼吸器疾患があった。心停止を起こした場所は、約半数は自宅、約4分の1は外出先、残りの約4分の1は病院内だった。全患者の90%以上はバイスタンダー(その場に居合わせた人)に目撃されており、3分の2には心肺蘇生が行われていた。

 試験では、対象患者の半数を24時間の低体温療法を実施する群に、残る半数を標準的な治療を実施する群にランダムに割り付けた。患者の体温は、標準治療では37度(華氏98.6度)としたのに対し、低体温療法では摂氏33度(華氏91.4度)まで冷却した。

 その結果、ランダム化から90日後の死亡率は、低体温療法群では81%、標準治療群では83%と予想通り高く、両群間に統計学的な有意差は認められなかった。一方、90日後に良好な神経学的機能〔脳機能カテゴリー(CPC)のスコアが1~2点と定義〕が保たれた患者の割合は、標準治療群では6%未満だったのに対し、低体温療法群では10%を上回っていた。

 なお、Lascarrou氏によると、CPCスコア「1点」は、脳機能は正常で、仕事も普通にできる場合が多い。また、同スコア「2点」は、日常生活を送る機能があり、適切な環境では働くこともできる状態であることを意味するという。

 この結果について、専門家の一人で、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンを務めるJohn Osborne氏は「シンプルかつ明快なアプローチによる低体温療法は、心停止から蘇生した患者に大きなプラス効果をもたらした。生存例の半数で良好な神経学的予後が示されたことは、大きな進歩だ」と評価。「今後、心肺蘇生や救急治療のガイドラインで、ショック非適応の心停止患者への低体温療法が推奨されるようになる可能性がある」と予想している。

 一方、Lascarrou氏は今後の課題について、「冷却期間や復温時間の調整を含め、最も高いベネフィットが得られる低体温療法の方法を見出す必要がある」と付け加えている。

[2019年10月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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