顔面移植後の転帰が大幅に向上、米研究

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HealthDay News

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 つい最近まで、顔面移植手術は時代に先駆けた医療と考えられてきた。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のグループは、顔面移植手術を受けた6人の患者を5年間にわたり追跡した結果を報告。全ての患者で手術から5年後までに顔面の動作や感覚機能が大幅に向上したほか、5人では生活の質(QOL)も大きく改善したことを明らかにした。研究の詳細は「New England Journal of Medicine」5月29日オンライン版に掲載された。

 この研究は、同病院外科主任のBo Pomahac氏らが実施したもの。同氏らは、重度の顔面損傷を負い、顔全体または部分的な顔面移植手術を受けた患者6人を対象に、術後5年間の追跡を行った。

 その結果、患者の顔面の動きは、術後1年以内あるいは1年後以降には大幅に改善し、5年後には最大機能の平均60%程度にまで回復したことが分かった。また、患者の皮膚は熱い刺激と冷たい刺激を区別することができ、術後1年の時点で圧力テストへの反応も向上したことが明らかになった。

 さらに、6人中5人はQOLの向上を報告したが、抑うつ症状の評価スコアには変化はみられなかった。この点について、Pomahac氏は、移植手術後に服用する免疫抑制剤やそれに関連する合併症が、患者の精神的な負担になっている可能性を指摘している。なお、今回対象としたそれぞれの患者で、治療を要する急性拒絶反応が2~7回認められた。ただ、免疫抑制剤は代謝に影響する可能性が指摘されているが、今回は糖尿病や脂質異常症を新たに発症した患者はみられず、一人だけ術後2年の時点で高血圧と診断されていた。

 これらの結果から、Pomahac氏は「今回得られたデータから、顔面移植手術を受けた患者が治療によるベネフィットを享受していることは明らかだ。このデータを解釈するには、損なわれた顔面の機能を人工的に補うには顔面移植のほかに選択の余地はないことを理解しておくことが重要だ」と指摘。その上で、同氏は「これまで顔面に損傷を受けると社会復帰が難しい場合が多かったが、顔面移植手術によってその道が開けるものと考えられる」と付け加えている。

 論文共著者の一人で同病院血管化複合組織移植プログラム(Vascularized Composite Tissue Transplant Program)のメディカル・ディレクターを務めるLeonardo Riella氏は「部分的な顔面移植が初めて行われたのは2005年で、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院で行われた最初の腎臓移植から約50年後のことだ」と話す。

 「このことからも、顔面移植の分野がいかに新しいものであるかを理解することが大切だ。われわれは他の臓器移植の経験から得た知識を活用できるが、免疫学的にもコントロールが極めて難しい組織を含む顔面の移植手術はより複雑なものだ」とRiella氏は説明し、「顔面移植ではこれまで成功を収めてきたが、今後も免疫毒性を最小限に抑え、拒絶反応を減らすための取り組みを続けていかなければならない」としている。

[2019年5月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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