切除不能の局所進行膵臓がん治療に光

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HealthDay News

切除不能の局所進行膵臓がん治療に光のイメージ

 局所進行膵臓がん患者に対し、従来の化学療法レジメンに降圧薬のロサルタンを併用した新しい術前補助化学療法を実施したところ、従来であれば切除不能とされる腫瘍を手術で摘出し、生存率の向上につなげられたことが、米マサチューセッツ総合病院の研究グループが実施した第2相の臨床試験で報告された。この結果は「JAMA Oncology」5月30日オンライン版に発表された。

 局所進行膵臓がんとは、腫瘍が膵臓の周辺に限局するものの、腹部の主要な血管に浸潤しているため、手術で切除するのが難しい状態を指す。早期発見が難しい膵臓がんは致死率が高いことで知られているが、局所進行膵臓がんはその中でも最も治療が困難なタイプであるとされる。しかし、今回の臨床試験の結果は、局所進行膵臓がん患者に希望を与えることになりそうだ。

 この臨床試験は、未治療の局所進行膵臓がん患者49人(平均年齢63歳、女性が26人)を対象に、2013年8月から2018年5月にかけて実施された。対象患者には、FOLFIRINOX(5-フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+イリノテカン)療法とロサルタン、化学放射線療法を組み合わせた術前補助化学療法を行い、中央値で17.1カ月追跡した。

 その結果、この術前補助化学療法を実施したところ、対象患者のうち34人(69%)では腫瘍を切除することができたほか、30人(61%)では全ての切除断端で腫瘍細胞がない状態を達成し、周囲の組織に浸潤した腫瘍も含めて完全に切除することができた。また、このような患者では、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)がいずれも延長したことも分かった。

 論文の共同筆頭著者の一人で同病院血液内科・腫瘍内科のJanet Murphy氏は「膵臓がん患者の約40%は、局所進行型やボーダーライン(遠隔転移はないが、がんが膵臓周囲の主要な血管に近接して完全切除が難しい状態を指す)の膵臓がんが占めている。以前から、これらのタイプの膵臓がんは手術の成功率が低いことが知られている」と説明する。その上で「今回、全対象患者の61%で原発腫瘍の切除に成功し、新たな記録を打ち立てた。この結果はかなり有望だといえる」と同氏は試験の意義を強調している。

 Murphy氏によれば、CT画像で確認された腫瘍の広がりと、化学療法と放射線療法を受けた患者の腫瘍を外科医が切除できるか否かには関連はないことが、これまでの研究で示唆されていた。そのため、同氏は「もしこれらに関連がないのなら、外科医は手術に挑んでもよいことになる」との見方を示す。

 もう一人の共同筆頭著者で、同病院放射線腫瘍科のJennifer Wo氏は「局所進行膵臓がんは一般的に不治の病だと考えられてきた。しかし、今回の試験では、腫瘍を切除可能な状態に抑え込むコンバージョン率や長期的な予後には劇的な改善がみられた」と話す。なお、この結果に基づき、研究グループは新たに多施設共同の臨床試験を実施するという。また、今回、ロサルタンの投与により一部の免疫系の情報伝達経路が活性化されたことを踏まえ、免疫療法薬であるニボルマブの使用が予定されていることを、同氏は明らかにしている。

 今回の試験には関与していない専門家の一人で、米ノースウェル・ヘルスがん研究所のWasif Saif氏も、試験で検証された治療アプローチが局所進行膵臓がん患者に対する新たな治療選択肢になり得るとの見方を示し、「特に重要なのは、患者の61%で原発腫瘍の切除に成功したという結果が得られたことだ。これは確実に記録的な数値だ」と話している。

[2019年5月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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