日本語でわかる最新の海外医学論文|page:712

果物摂取と胃がんリスクが逆相関~日中韓での研究

 果物・野菜の摂取と胃がんリスクとの関連について疫学的な知見は一貫していない。北京大学のTianyi Wang氏らは、日本・中国・韓国において前向き試験のプール解析を行った結果、果物の摂取量が多いと非噴門部胃がんリスクが低下する可能性を報告した。International journal of cancer誌オンライン版2016年10月19日号に掲載。

小児のワクチン接種と死亡率、BCG vs.DTP vs.MCV/BMJ

 BCGおよび麻疹含有ワクチン(MCV)接種は、疾患予防効果を介して予想される以上に全死因死亡率を低下させ、ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(DTP)接種は逆に全死因死亡率を上昇させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のJulian P Higgins氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかとなった。これまでの研究で、麻疹やDTPなどのワクチン接種は、目的とする疾患の発症を顕著に減少させるにもかかわらず、目的の感染症以外に起因する死亡に影響を及ぼすことが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、WHOで推奨されているワクチン接種の変更を支持するものではないが、ワクチン接種スケジュールにおけるDTPの順番の影響について無作為化試験で比較検討する必要がある」と述べるとともに、「すべての子供たちがBCG、DTP、MCVの予防接種を予定どおり確実に受けられるよう取り組むべきである」とまとめている。BMJ誌2016年10月6日号掲載の報告。

大不況中は下層階級の死亡率が改善/Lancet

 スペインでは、全死因死亡率は大不況以前と比較して大不況中に低下し、その傾向がとくに下位の社会経済的集団で確認されたという。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学のEnrique Regidor氏らが、異なる社会経済的集団の死亡率に対するマクロ経済変動の影響を検討する目的で、“Great Recession(サブプライム・ローン問題に端を発した金融危機による大不況:2007年8月~2009年6月)”の前と最中とで死亡率の傾向を解析し、各社会経済的集団での変化を調査した結果を報告した。この死亡率低下について著者は、「おそらくリスク因子への曝露が減少したことによると考えられる」と述べている。Lancet誌オンライン版2016年10月13日号掲載の報告。

ADHD女児に併存する精神疾患は

 ADHD児は、併存する精神疾患リスクが高い。ADHDは、女児で最も一般的な小児疾患の1つであるにもかかわらず、男児と比較し、臨床的相関が少ないと考えられている。米国・カリフォルニア大学のIrene Tung氏らは、女児における、ADHDの有無と内在的(不安、抑うつ)、外在的(反抗挑戦性障害[ODD]、行為障害[CD])精神障害の併存率をメタ分析により要約した。Pediatrics誌2016年10月号の報告。

複雑なPCI症例ではDAPTを延長すべきか?

 薬剤溶出ステント(DES)留置を行った複雑な経皮的冠動脈形成術(PCI)後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の最適期間は定まっていない。Gennaro Giustino氏ら研究グループは、PCIの複雑性に応じ、短期間(3~6ヵ月)と長期間(12ヵ月以上)におけるDAPTの有効性および安全性を比較検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2016年10月25日号に掲載。

H.pylori除菌、第1選択は3剤療法よりビスマス4剤療法/Lancet

 Helicobacter pylori(ピロリ菌)の除菌療法は、ビスマス4剤療法(クエン酸ビスマス三カリウム+ランソプラゾール+テトラサイクリン+メトロニダゾール)のほうが、従来の3剤療法に比べ、除菌率が約7%有意に高く、第1選択として好ましいことが示された。背景には、クラリスロマイシン耐性のピロリ菌の増加があるという。台湾国立大学病院のJyh-Ming Liou氏らが、成人感染者1,620例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月18日号で発表した。

米国人のサプリ摂取、オメガ3が7倍に/JAMA

 米国成人の栄養補助食品「サプリメント」の摂取率の動向を調べた結果、1999~2012年にかけて摂取している人の割合は50%前後と安定的に推移していたが、種別にみると、複合ビタミン剤・複合ミネラル剤(MVMM)の摂取率は有意な減少を示した一方、さまざまなサプリメントを服用している傾向が増えており、なかでもオメガ3の摂取率が約7倍に増大していることが明らかになった。また年齢、性別、人種/民族、教育歴などの違いによる使用率の差が広がっていることも示されたという。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのElizabeth D. Kantor氏らが、全国健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)を基に行った横断研究の結果で、JAMA誌2016年10月11日号で発表した。

緑内障の視野障害の重症度、網膜血管密度の減少と関連

 近年、光干渉断層計血管造影(OCT-A)により網膜の微小血管の評価が可能となっている。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAdeleh Yarmohammadi氏らは、OCT-Aを用いて測定した血管密度の減少が、原発開放隅角緑内障における視野障害の重症度と、構造異常にかかわらず有意に関連していることを明らかにした。著者は、「OCT-Aは緑内障の管理において有用な技術であり、疾患の病態生理における血管系の役割について理解を深めることができる」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年10月7日号掲載の報告。

腎細胞がんの術後補助療法、スニチニブで予後改善/NEJM

 腎摘除術後の再発リスクが高い腎細胞がん患者の術後補助療法において、スニチニブは良好な予後をもたらすことが、フランス・Saint Andre病院のAlain Ravaud氏らが実施したS-TRAC試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年10月9日号に掲載された。転移性腎細胞がんの予後は過去10年改善されておらず、この間にサイトカイン療法、放射線療法、ホルモン療法などによる術後補助療法が試みられたが、再発率の抑制には成功していない。血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬であるスニチニブは、転移性腎細胞がんに対する有効性が確認されている。

接触皮膚炎治療に有望視される開発中のJAK阻害薬

 サイトカインのシグナルを伝達するヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害が、接触皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の治療手段となりうる可能性が報告された。京都大学の天野 渉氏らがマウスを用いた実験において、JAK阻害薬JTE-052は抗原特異的T細胞活性化とその後の接触過敏症のような皮膚の獲得免疫に対して抑制作用を示すことを明らかにした。Journal of Dermatological Science誌オンライン版2016年9月13日号掲載の報告。

StageIII悪性黒色腫の術後補助療法にイピリムマブは有用/NEJM

 切除後の高リスクStage III悪性黒色腫の術後補助療法として、イピリムマブは一定の有害事象の負担はあるものの無再発生存(RFS)期間を10ヵ月以上延長し、全生存(OS)の改善をもたらすことが、フランス・Gustave Roussy Cancer Campus Grand ParisのAlexander MM Eggermont氏らが進めるEORTC 18071試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年10月8日号に掲載された。イピリムマブは、T細胞上のCTLA-4に選択的なIgG-1の完全ヒト型モノクローナル抗体で、進行悪性黒色腫の治療薬(3mg/kg)として、2011年、欧米で承認を得ている。その後の第II相試験では、用量0.3および3mg/kgに比べ10mg/kgの効果が優れることが報告されている。

脳梗塞血栓除去療法:治療までの時間と転帰―メタ解析(解説:中川原 譲二 氏)-604

第2世代デバイスを用いた血栓除去療法は、頭蓋内の大血管閉塞による虚血性脳卒中患者に対して有益である。治療までの時間と転帰との関係図式は、治療実施をガイドするために役立つ。本研究は、血栓除去療法が有益である期間、および治療遅延が機能的転帰、死亡、症候性頭蓋内出血と関係する範囲を特定することにある。研究結果は、JAMA誌2016年9月27日号に掲載された。

双極性障害女性、ライフサイクルで注意すべきポイント

 双極性障害女性において、生殖サイクルイベントは、気分エピソードと関連していることがエビデンスで明確に示されている。しかしながら、臨床的特徴との関連を調査した研究は少ない。オーストラリア・ウェスタンシドニー大学のTania A Perich氏らは、生殖サイクルイベントにおける気分症状と、生涯を通じて重大だと思われる障害の特徴との関係を検討した。The Australian and New Zealand journal of psychiatry誌オンライン版2016年9月28日号の報告。

冠動脈de novo病変に対する「ステントレスPCI」

 薬剤溶出ステント(以下、DES:Drug Eluting Stent)の再狭窄率は低い。しかし、ステント血栓症、ステントフラクチャー、neo-atherosclerosisなどいくつかの問題が残る。一方、バルーン単独の経皮的冠動脈インターベンション「ステントレスPCI」はいまだに根強く、薬物溶出バルーン(DCB:Drug Coated Balloon)の臨床応用により注目されており、その有効性を支持する臨床試験もある。獨協医科大学 循環器内科の西山直希氏らは、de novo冠状動脈狭窄病変の治療におけるDCBの有効性を評価することを目的とした研究を行っている。International Journal of Cardiology誌2016年11月1日号の報告。