日本語でわかる最新の海外医学論文|page:795

医療機器では市販後臨床試験が重要になりつつある(解説:折笠 秀樹 氏)-404

薬剤溶出性ステントなどのハイリスクな医療機器で、米国FDAが2010年と2011年に承認した28品目について、機器の一生(Total product life cycle)を調査した。クラス分類で言うとクラスIIIあるいはIVに相当すると思われる。米国ではPMA(Premarket approval)により機器は承認され、その後PAS(Post approval studies)が実施される。機器の一生とは、このPMAとPASで実施される臨床試験として定義する。

不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する

 慢性的な不眠症への治療は重要であり、一般に睡眠薬の処方が行われている。しかし、常用や長期使用は、耐性や依存性のリスクや有害事象のリスクを増大するため避けるべきとされ、2012年にアップデートされたBeers criteria(高齢者で不適切な薬物治療)では、高齢者の不眠症治療ではすべてのベンゾジアゼピン系薬を回避するよう示されている。イタリア・CRS4のSilvana Anna Maria Urru氏らは、地域薬局のサーベイデータを用いることで、不眠症に対するベンゾジアゼピン系薬の不適切な処方に関する情報を入手できることを報告した。International Journal of Clinical Pharmacy誌オンライン版2015年7月22日号の掲載報告。

超早産児の低酸素血症の予後に影響する因子/JAMA

 超早産児は生後数週間にわたり間欠性の低酸素血症や徐脈を経験する可能性がある。これまでその予後については不明であったが、ドイツ・テュービンゲン大学病院のChristian F. Poets氏らによるCanadian Oxygen Trialの事後解析から、月経後年齢(postmenstrual age)36週まで生存した超早産児において、生後2~3ヵ月に発生した1分以上の低酸素エピソードのみが、生後18ヵ月間の有害転帰と有意に関連していることが明らかにされた。この結果について著者は、「今後の研究でも同様の所見が認められれば、そのようなエピソードを予防するための検討が必要になる」とまとめている。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

トランス脂肪酸だけが健康に悪いのか/BMJ

 飽和脂肪酸の摂取と、全死因死亡、心血管疾患(CVD)、冠動脈疾患(CHD)、虚血性脳卒中、2型糖尿病との関連は認められなかったが、そのエビデンスは限定的であることが示された。一方、トランス脂肪酸の摂取は、全死因死亡、総CHD発生、CHD死と関連していたが、それは工業型トランス脂肪酸の摂取が反すう動物由来トランス脂肪酸の摂取よりも多いためであることが示唆された。カナダ・マックマスター大学のRussell J de Souza氏らが、観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2015年8月11日号掲載の報告より。

認知機能改善効果が期待される新規抗うつ薬

 大うつ病性障害(MDD)では、しばしば認知機能障害の併発がみられる。いくつかの臨床試験で、MDDに対する抗うつ薬の認知機能促進作用が示されてきた。カナダ・トロント大学のJoshua D. Rosenblat氏らは、MDD患者の認知ドメインに及ぼす抗うつ薬の影響についてシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、抗うつ薬は精神運動速度と遅延再生にプラスの影響を及ぼし、なかでもvortioxetineが大きく寄与している可能性を示唆した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月25日号の掲載報告。

特発性肺線維症の死亡率は悪性腫瘍よりも高い

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、特定疾患治療研究事業の対象疾患である「特発性肺線維症」(以下IPFと略す)の治療薬ニンテダニブ(商品名:オフェブ)の製品記者発表会を、8月20日都内において行った。  ニンテダニブは、本年7月に製造販売を取得、今秋にも発売が予定されている治療薬で、IPFでは初めての分子標的薬となる。

ネットによる手洗い行動介入は気道感染症の抑制に有効/Lancet

 インターネットを利用して手洗い行動を促す介入法は、気道感染症の拡大の抑制に有効であることが、英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏が実施したPRIMIT試験で示された。手洗いは、気道感染症の拡大予防に広く支持され、とくに新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのパンデミック(pandemic)の際には世界保健機関(WHO)が推奨した。一方、主な感染経路は飛沫とする見解があるなど、手洗いの役割については議論があり、また非貧困地域の成人に関する質の高い無作為化試験のエビデンスはこれまでなかったという。さらに、パンデミックのリスクの増大に伴い、迅速に利用できる低コストの介入法が求められている。Lancet誌オンライン版2015年8月6日号掲載の報告。

テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMA

 テストステロンの長期投与がアテローム性動脈硬化に及ぼす影響は確立されていない。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShehzad Basaria氏らは、今回、TEAAM試験において、加齢に伴いテストステロン値が低下した高齢男性に対するテストステロンの3年投与は、アテローム性動脈硬化を進展させず、性機能や健康関連QOLを低下させないことを示した。近年、米国ではテストステロンを使用する高齢男性が増加しているが、長期投与のベネフィットやリスクは明らかではなく、心血管イベントとの関連については相反する結果が報告され、前臨床研究でも矛盾するデータが示されているという。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法

 高プロラクチン血症は、いくつかの抗精神病薬に関連した好ましくない有害事象である。ドパミンパーシャルアゴニストであるアリピプラゾールの併用は、効果的に抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症を減弱させる可能性があるが、理想的な投与レジメンは不明である。中国・北京Hui-Long-Guan病院のJing-Xu Chen氏らは、統合失調症患者のプロラクチンレベルや高プロラクチン血症に対する、アリピプラゾール補助療法の用量を評価することを目的に、検討を行った。Psychoneuroendocrinology誌2015年8月号の報告。

トロポニンT値、2型糖尿病患者の心血管リスク予測に有用/NEJM

 心筋トロポニンT値は、2型糖尿病と安定虚血性心疾患の合併患者において、心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中の独立した予測因子であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らによる検討の結果、明らかにされた。また、迅速血行再建術でメリットが得られる患者はトロポニンT値14ng/L未満であることも示された。心筋トロポニン値は、急性冠症候群患者において、緊急血行再建が有効の可能性がある患者を同定するために用いられている。研究グループは、安定虚血性心疾患患者においても、心筋トロポニン値を用いて心血管イベントリスクの高い患者を同定し、迅速な冠血行再建によるベネフィットを得られることが可能であるとの仮説を立て、その検証試験を行った。NEJM誌2015年8月13日号掲載の報告より。

統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常

 先行研究において、統合失調症における構造的な脳結合性の異常が観察されている。それら異常の長期的なマッピングと、同胞研究による遺伝的リスクの理解は、統合失調症に関連する漸進的な発達的変化について重要な見識を与えてくれる。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Zalesky氏らは、小児期発症統合失調症(COS)の青年において発達過程の変化を示す皮質間結合を確認し、類似の変化が非罹患同胞にみられるかどうかを検討する前向き研究を行った。その結果、非罹患同胞の統合失調症発症に対するレジリエンスと関連する中間表現型を伴う後頭側頭部の結合性の成熟遅延が、COS患者の特徴的なマーカーであることが示唆されたことを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月15日号掲の載報告。

繊維摂取と大腸がんの関連~性別や部位で異なる

 これまでの研究において、繊維摂取量と大腸がん発症の間に負の相関が認められているが、がんのステージによる違いは検討されていない。スウェーデン・ルンド大学のAlexandra Vulcan氏らは、The Malmo Diet and Cancer Studyで、繊維摂取量とその供給源、および大腸がん発症との関連を、性別、腫瘍部位、TNM分類ごとに検討した。その結果、繊維摂取量と大腸がんの間に、性別、腫瘍部位、繊維供給源により異なる関連が認められた。とくに果物やベリー類からの高い繊維摂取は、女性において大腸がん発症を防ぐ可能性があるという。The British journal of nutrition誌オンライン版2015年8月18日号に掲載。

失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認

 これまで治療法がなかった網膜色素変性症に対する、人工網膜システムArgus II(Second Sight社)が開発された。網膜色素変性症は光受容体の消失により失明に至る遺伝性のまれな疾患である。開発されたシステムは、メガネに搭載された小型カメラと映像プロセッサにより、イメージを電気信号に変換し網膜に移植した電気デバイスに送信して視覚を提供するというもの。今回、米国・ウィルズ・アイ・ホスピタルのAllen C. Ho氏らは、Argus II移植後1年および3年の臨床試験成績を報告。網膜色素変性症による失明に対し、視覚を回復するArgus IIの長期的な安全性と有用性が認められたことを明らかにした。なお、本研究の中間解析結果により承認申請がなされ、Argus IIシステムは世界初かつ唯一の網膜移植システムとして米国および欧州で承認された。Ophthalmology誌2015年8月号(オンライン版2015年7月8日)の掲載報告。