日本語でわかる最新の海外医学論文|page:66

うつ病に対する認知行動療法、クレアチン補助療法が有用

 前臨床および臨床研究によると、手頃な価格で入手可能な栄養補助食品クレアチン一水和物は、従来の抗うつ薬治療において有用な補助療法となりうる可能性がある。英国・グラスゴー・カレドニアン大学のNima Norbu Sherpa氏らは、うつ病に対する認知行動療法(CBT)に加え、クレアチンまたはプラセボを8週間投与した場合の有効性を比較するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照パイロット試験を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2025年1月号の報告。

便失禁を起こしやすい患者とは?便失禁診療ガイドライン改訂

 日本大腸肛門病学会が編集を手掛けた『便失禁診療ガイドライン2024年版改訂第2版』が2024年10月31日に発刊された。2017年に発刊された初版から7年ぶりの改訂となる。今回、便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療に至るまでの基本的知識がアップデートされ、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載が拡充された。また、治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはClinical Question(CQ)で推奨を示し、すべての医療職にとっての指針となるように作成されている。

運動習慣のある人でも座りすぎは心臓に良くない

 座っている時間が長いと、たとえ推奨される最低限の運動を行っていたとしても、心臓に悪い影響が生じることを示唆するデータが報告された。ただし、より高強度の運動を加えることで、そのリスクをある程度抑制できる可能性があるという。米コロラド大学ボルダー校のChandra Reynolds氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に9月11日掲載された。同氏は、「仕事の後に少し歩く程度では、心臓の健康にとって十分ではないかもしれない」と述べている。  この研究は、米国コロラド州で行われている二つの疫学研究の参加者1,327人(平均年齢33.2±4.9歳〔範囲28~49〕、女性53%)を対象に行われた。研究参加者の年齢が比較的若いことに関連して、論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学リバーサイド校のRyan Bruellman氏は、「若者は自分には加齢の影響が生じ始めていると全く考えていないことが多い。しかし後々の健康にとっては、人生のこの時期に何をするかが重要だ」と語っている。

味覚異常の2割は口腔疾患が主因で半数強に亜鉛以外の治療が必要―歯科外来調査

 歯科における味覚障害患者の特徴を詳細に検討した結果が報告された。患者の約2割は口腔疾患が主因であり、半数強は亜鉛製剤処方以外の治療が必要だったという。北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座の坂田健一郎氏、板垣竜樹氏らの研究によるもので、「Biomedicines」に論文が9月23日掲載された。  近年、味覚異常の患者数が増加傾向にあり、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで顕著に増加した。味覚異常の原因として古くから亜鉛欠乏が知られており、治療として通常まず亜鉛製剤の投与が行われる。しかし、亜鉛製剤が無効な症例も少なくない。また味覚障害の原因に関する研究は、耳鼻咽喉科で行われたものや既に何らかの基礎疾患を有する患者群での報告が多くを占めている。これらを背景として坂田氏らは、北海道大学病院口腔科の患者データを用いた後ろ向き研究を行った。

2050年までの早期死亡改善に必要なことは?/Lancet

 2050年までに世界の年間の早期死亡(70歳未満の死亡)の割合を半減させ、全年齢層で生活の質(QOL)を向上させることは可能と考えられるが、高パフォーマンス国と中パフォーマンス国が早期死亡の改善率を維持または加速度的に上昇させるためには、子供と成人の健康に対する多額の投資を要することが、ノルウェー・ベルゲン大学のOle F. Norheim氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年11月20日号に掲載された。  研究グループは、2050年までの早期死亡率の半減は可能かの検証を目的に、70歳に至る前の死亡率の大きなばらつきと、過去50年間(1970~2019年)のその傾向を、世界の10の地域と最も人口の多い30ヵ国で比較するクロスカントリー分析を行った(ノルウェー開発協力局[NORAD]などの助成を受けた)。

70歳未満の長生きの向上―過去と未来(解説:名郷 直樹氏)

高齢者でなく70歳未満を対象にして、世界の10の地域、人口の多い30ヵ国を対象に、10年間の早期死亡確率とそのばらつき、今後50年の予想を検討した論文である。  長寿化による避けられない死より、それ以前の若年での死亡を検討するという視点は、「人生100年時代」と超高齢者まで生きることばかりを喧伝し、若年者の健康に対しての提言がはっきりしない日本の現状に対しても大きな意味を持つ研究である。

HER2+乳がん術前補助療法のde-escalation、トラスツズマブ+ペルツズマブ+nab-パクリタキセルが有望(HELEN-006)/Lancet Oncol

 HER2+早期乳がんに対する術前補助療法において、トラスツズマブ+ペルツズマブにドセタキセル+カルボプラチンを併用した標準レジメンより、トラスツズマブ+ペルツズマブにnab-パクリタキセルを併用したde-escalation治療のほうが有用な可能性が示唆された。中国・The Affiliated Cancer Hospital of Zhengzhou University and Henan Cancer HospitalのXiu-Chun Chen氏らが、多施設共同無作為化第III相HELEN-006試験において主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の最終解析結果を報告した。The Lancet Oncology誌オンライン版2024年11月26日号に掲載。

日本人双極症と関連する遺伝子をゲノム解析で同定

 双極症は、躁/軽躁状態と抑うつ状態の間での気分変動を特徴とする精神疾患である。双極症には、シナプス遺伝子のエクソン領域と重複するまれな病原性遺伝子コピー数変異(CNV)と関連している。しかし、双極症に関連するシナプス遺伝子のCNVを包括的に調査した研究は、これまでになかった。名古屋大学の中杤 昌弘氏らは、エクソン領域に限定せず、日本人集団におけるシナプス遺伝子と重複するまれなCNVと双極症との関連を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年10月15日号の報告。

CKDステージ3への尿酸降下薬、尿酸値6未満達成でCKD進展抑制か

 高尿酸血症は慢性腎臓病(CKD)患者で高頻度にみられる。高尿酸血症を有するCKD患者に対する尿酸低下療法については、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』では、腎機能を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることが条件付きで推奨されている。また、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、保存期CKD患者に対する尿酸低下療法について、「腎機能悪化を抑制する可能性があり、行うことを考慮してもよい」とされている。しかし、CKD患者における血清尿酸値の管理目標に関する無作為化比較試験は存在しない。

喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。  「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。

猛暑は植え込み型除細動器装着者の心房細動リスクを高める

 心臓に問題を抱える数多くの米国人が、心拍を正常化して心イベントを予防する小型の植え込み型除細動器(ICD)を使用している。しかし、極端に暑い日には、より気温が低い日と比べて、ICD装着者が不整脈の一種である心房細動(AF)を起こすリスクが約3倍に上昇することが新たな研究で示された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院環境保健学のBarrak Alahmad氏らによるこの研究は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16~18日、米シカゴ)で発表された。  専門家らは、気候変動によって気温が摂氏38度に達する日が増えるにつれて、この脅威は高まる可能性があると指摘している。AHAに協力する専門家の一人で、今回の研究には関与していない米ケース・ウェスタン・リザーブ大学教授のSanjay Rajagopalan氏は、「著しい気温上昇のリスクがある地域に住んでいて、影響を受けやすい人は、この研究結果に留意し、必ず適切な予防策を取って涼しさを保ち、水分補給を行うよう心がけてほしい」と話している。

ビタミンDサプリで肥満高齢者の血圧低下

 高齢の肥満者がビタミンDサプリメントを摂取すると、血圧を下げられる可能性のあることが報告された。ただし、推奨される量よりも多く摂取したからといって、上乗せ効果は期待できないようだ。ベイルート・アメリカン大学医療センター(レバノン)のGhada El-Hajj Fuleihan氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of the Endocrine Society」に11月12日掲載された。  ビタミンDレベルが低いことが高血圧のリスクと関連のあることを示唆する研究報告があるが、その関連を否定する報告もあり、結論は得られていない。これを背景としてFuleihan氏らは、ビタミンDレベルが低下していて、血圧が高いことの多い肥満高齢者を対象とするランダム化比較試験を行った。

心不全のない心筋梗塞後の患者にβ遮断薬の処方は不要?

 β遮断薬は、心筋梗塞を経験した多くの人にとって頼りになる薬である。しかし、スウェーデンの新たな研究により、心筋梗塞から回復し、心機能が正常に保たれている患者には、この薬による治療は必要ない可能性のあることが明らかになった。この研究では、心筋梗塞後に左室駆出率が保たれている患者に対するβ遮断薬による治療は、患者の抑うつ症状の軽度な増加と関連することが示された。詳細は、「European Heart Journal」に10月3日掲載された。論文の筆頭著者であるウプサラ大学(スウェーデン)心臓心理学分野のPhilip Leissner氏は、「それだけでなく、この患者群にβ遮断薬を投与しても、生命維持には役立たない」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

虚血性心筋症の心室頻拍、カテーテルアブレーションは有効か/NEJM

 虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、抗不整脈薬治療と比較してカテーテルアブレーションによる初期治療は、複合エンドポイント(全死因死亡、心室頻拍発作、適切な植込み型除細動器[ICD]ショック、内科的治療を受けた持続性心室頻拍)のイベントリスクを有意に低下したことが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らVANISH2 Study Teamが実施した「VANISH2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号で報告された。

“Fantastic Four”の一角に陰り:心筋梗塞例にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は無効(解説:桑島巌氏)

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬の4つは心不全の治療薬におけるFantastic Fourとして広く宣伝されてきた。しかし本論文は、その一角を成すMRAの1つスピロノラクトンが心筋梗塞後の心血管死や心不全悪化に対しての効果はプラセボ群と差がなく、有用性を認めなかったという結果を示した。

飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

 食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。  UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。

自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日に「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。  「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。

ワクチン同時接種、RSV+インフルエンザ/新型コロナの有効性は?

 高齢者における呼吸器疾患、とくにRSウイルス(RSV)、インフルエンザ、新型コロナ感染症は重症化リスクが高く、予防の重要性が増している。mRNA技術を用いたRSVワクチンとインフルエンザワクチン(4価)または新型コロナワクチンの同時接種の安全性と免疫原性を評価した研究結果が、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年11月25日号に掲載された。  本研究は、50歳以上の健康な成人を対象とし、2部構成でそれぞれ下記の3群に分けて接種した。主要評価項目は同時接種群の単独接種群に対するRSVの免疫反応(Geometric Mean Ratio:GMRの95%信頼区間[CI]>0.667、血清反応率の差の95%CI>-10%)と安全性の非劣性だった。

トリプルネガティブ乳がんの治療にDNAワクチンが有望か

 悪性度が高く、治療も困難なトリプルネガティブ乳がんの女性に新たな希望をもたらす可能性のある、DNAワクチンに関する第1相臨床試験の結果が報告された。ワクチンを接種した18人の患者のうち16人が、接種から3年後もがんを再発していないことが確認されたという。米ワシントン大学医学部外科分野教授のWilliam Gillanders氏らによるこの研究の詳細は、「Genome Medicine」に11月14日掲載された。  トリプルネガティブ乳がんは、他のタイプの乳がんの典型的な原因である、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)がいずれも陰性であるため、これらの受容体を標的にした治療法が効かない。そのため、手術、化学療法、放射線療法などで対処するより他ないのが現状である。全米乳がん財団によると、米国で発生する乳がんの約10〜15%はトリプルネガティブ乳がんであるという。

喘息は子どもの記憶能力に悪影響を及ぼす

 子どもの喘息は記憶能力の低下と関連し、特に、喘息を早期発症した子どもではその影響が顕著であることが、米カリフォルニア大学デービス校心と脳センターのSimona Ghetti氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。Ghetti氏らは、「この研究は、子どもの喘息と記憶能力の問題との関連を示した初めてのものだ」と述べている。  米国では、子どもの喘息患者数は460万人程度と見積もられている。論文の筆頭著者である同大学デービス校心理学分野のNicholas J. Christopher-Hayes氏は、「幼少期は記憶能力、より一般的には認知能力が急速に向上する時期だ。子どもに喘息があると、その向上が遅れることが考えられる」と大学のニュースリリースで述べている。