日本語でわかる最新の海外医学論文|page:568

加齢黄斑変性、死亡リスクとの関連は?

 加齢黄斑変性(AMD)は、網膜下の血管新生を未治療のまま放置すると、不可逆的な視覚障害や失明に至る。中国・中山大学のZhuoting Zhu氏らは、AMDと生存との関連を知ることは、AMDの発現機序の理解に役立つとして解析を行った。その結果、後期AMDは全死因死亡、ならびに心血管疾患とがん以外の原因による死亡の独立した関連因子であることが示されたという。著者は、「この関連は、後期AMDの未測定または評価不十分な交絡因子による可能性もあるが、後期AMDが生物学的老化のマーカーになる可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年12月20日号掲載の報告。

アキレス腱断裂、手術・非手術とも再断裂リスクは低い/BMJ

 アキレス腱断裂の手術療法は、非手術療法に比べ、再断裂のリスクが有意に低いもののその差は小さく(リスク差:1.6%)、他の合併症のリスクが高い(リスク差:3.3%)ことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのYassine Ochen氏らの検討で示された。アキレス腱断裂は遭遇する頻度が高く、最近の研究では発生率の増加が報告されている。観察研究を含まない無作為化対照比較試験のみのメタ解析では、手術療法は非手術療法に比べ、再断裂リスクが有意に低い(リスク差:5~7%)が、他の合併症のリスクは16~21%高いとされる。BMJ誌2019年1月7日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。

最新のがん統計:男性では前立腺がんが上位に

 厚生労働省は、2016年に開始した「全国がん登録」による初めての結果を公表した。それによると、2016年において、新たにがん(上皮内がんを除く)と診断された患者は99万5,132例で、男性が56万6,575例(56.9%)、女性が42万8,499例(43.1%)だった。  部位別のがん罹患数は、男性では胃(16.4%)、前立腺(15.8%)、大腸(15.8%)、肺(14.8%)、肝(5.0%)の順で多く、女性では乳房(22.1%)、大腸(16.0%)、胃(9.8%)、肺(9.7%)、子宮(6.6%)の順で多かった。

統合失調症患者のメタボリックシンドロームに対するオメガ3脂肪酸の影響

 統合失調症患者は、ライフスタイルや抗精神病薬の影響によりメタボリックシンドローム(MetS)を発症するリスクが高いと言われている。中国・上海交通大学のFeikang Xu氏らによるこれまでの研究では、MetSを合併した統合失調症患者では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現や産生が増加することが示唆されていた。今回著者らは、TNF-αの抑制には、ω3脂肪酸が関連していると言われていることから、MetSを合併した統合失調症患者において、ω3脂肪酸が炎症を緩和し、代謝異常を改善することに役立つかどうかについて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年12月5日号の報告。

高尿酸血症の治療失敗に肥満が関連か~日本人男性

 高尿酸血症または痛風の日本人男性の治療目標達成率と治療成功に影響する因子について、順天堂大学の片山 暁子氏らが検討した結果、肥満と治療失敗との関連が示唆された。また、血清尿酸(SUA)管理の一部として脂質プロファイルを維持する重要性が強調された。著者らは「肥満と脂質異常症の両方をうまく管理し、健康的なSUA値を得ることで、心血管疾患を予防できるかもしれない」としている。Internal Medicine(Japan)誌オンライン版2019年1月10日号に掲載。

ノンシュガー甘味料の健康への影響~メタ解析/BMJ

 ドイツ・フライブルク大学のIngrid Toews氏らによる無作為化/非無作為化比較試験および観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、ノンシュガー甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)の摂取群と非摂取群とでほとんどの健康上のアウトカムに差はみられないことが示された。ただし、著者は「NSSの摂取が有益であるという有力な証拠はなく、NSS摂取の潜在的な有害性が排除されたわけではない」とまとめている。これまでの研究では、NSS摂取による健康への影響(体重、糖尿病、がん、口腔衛生など)が示唆されていたが、一貫したエビデンスは得られていなかった。BMJ誌2019年1月2日号掲載の報告。

心筋梗塞患者、薬剤費負担なしの継続支援策は有効か/JAMA

 心筋梗塞(MI)患者において、P2Y12阻害薬の薬剤費の一部自己負担を補う商品券(バウチャー)を提供した場合、商品券を提供しなかった場合と比較して、患者報告によるP2Y12阻害薬服薬継続率の増加は3.3%であり、1年時における主要有害心血管イベント(MACE)について有意な低下は認められなかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのTracy Y. Wang氏らが、18歳以上の急性MI患者を対象に、薬剤費自己負担の障壁を取り除くことによるP2Y12阻害薬服薬継続率とMACEリスクを検討した無作為化試験「ARTEMIS(Affordability and Real-World Antiplatelet Treatment Effectiveness After Myocardial Infarction Study)」の結果を報告した。ガイドラインではMI後1年間のP2Y12阻害薬治療が推奨されているが、推奨よりも早く中断する患者が多く、その理由として費用の問題が大きいことが推察されていた。JAMA誌2019年1月1・8日号掲載の報告。

膵がん死を減らせるか? 膵がん切除後の補助療法:mFOLFIRINOXかゲムシタビンか(解説:上村直実氏)-998

消化器領域のがんでは感染症である肝がんと胃がんによる死亡者が激減し、著明な増加を示していた大腸がん死亡者数も肺がんと同様にプラトーに達し減少に転じている。その中で早期発見が困難でかつ発見時には手術不能例が多い膵がんによる死亡者数のみが年間3万人を超えて増加の一途をたどっている。膵がん死を防ぐ方法としては、完治できる外科的手術が理想的であるが、早期に発見された切除可能膵がんでも手術単独の5年生存率はわずか10%とされており、生存率の向上を目的として、術前・術後の補助療法が模索されているが、とくに局所病変が切除可能で転移に乏しい患者に対する術後の補助療法は必須となっている。

認知症による死亡、中年期からの体重減少と関連

 肥満が認知症に対して防御的であるという仮説を検証するために、英国London School of Hygiene and Tropical MedicineのAlexander N. Allen氏らは、中年および高年者の両方で、認知症による死亡と体重およびBMIとの関連を比較した。その結果、認知症による死亡が中年期より高年期のBMIと強い逆相関を示し、また中年期から高年期までのBMIや体重の減少と強い相関を示した。Age and Ageing誌オンライン版2019年1月9日号に掲載。

ベンゾジアゼピンの使用と濫用~米国調査

 ベンゾジアゼピンの使用率、不適正使用の特徴および年齢による変化について、米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らが、調査を行った。Psychiatric Services誌オンライン版2018年12月7日号の報告。  2015、16年のNSDUH(National Survey on Drug Use and Health)のデータより、18歳以上の成人8万6,186例およびベンゾジアゼピン使用が報告された1万290例を対象に、横断的分析を行った。過去1年間のベンゾジアゼピン使用と不適正使用(医師が指示しなかった方法)、物質使用障害、精神疾患、人口統計学的特徴を測定した。不適正使用は、若年(18~49歳)と高齢(50歳以上)において比較を行った。

血中hsCRP高値の現・元喫煙者、肺がんリスク高い/BMJ

 血中高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高値の元喫煙者および現喫煙者は、肺がんリスクが高いことが示された。一方で、hsCRP値と肺腺がんリスクの関連は認められず、hsCRP値は、原因となるリスク因子ではなく肺がんの診断前マーカーとなりうる可能性が示されたという。国際がん研究機関(IARC、本部:フランス)のDavid C. Muller氏らが、20のコホート試験を基に行った、コホート内ケースコントロール試験の結果で、BMJ誌2019年1月3日号で発表した。先行研究では、CRPは全身性炎症のマーカーで、肺がんリスクと関連することが示されていた。しかし、喫煙状態別(喫煙歴なし、元喫煙、現喫煙)の関連について正確な推定値を示すことが可能な規模の試験はなかった。

急性STEMI、PCI中の早期にアルテプラーゼ投与は有効か/JAMA

 発症後6時間以内の急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中の補助的な低用量アルテプラーゼ冠動脈内投与は、微小血管閉塞量を低下しないことが示された。英国・グラスゴー大学のPeter J. McCartney氏らが440例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年1月1・8日号で発表された。微小血管閉塞は概して、急性STEMI患者に影響を及ぼし、有害転帰と関連することが知られる。著者は「試験の結果は、このような治療法を支持しないものだった」とまとめている。

メトトレキサート少量投与が心臓血管イベントを抑制しうるか?(解説:今井靖氏)-997

IL-1βを標的とした抗体医薬であるカナキヌマブ投与により心血管イベントおよび一部の悪性腫瘍発生を抑制したというCANTOS研究の成果が記憶に新しいが、より簡便な内服薬としてメトトレキサート(MTX)投与により炎症性サイトカインが抑制されることで心血管イベントが抑制されるか否かを検討したのがこの報告である(CIRT研究)。この論文によれば心筋梗塞既往があるか多枝冠動脈病変を有し2型糖尿病またはメタボリック症候群を有する4,786症例を(1)週当たり15~20mgを目標用量とする低用量メトトレキサート療法および(2)プラセボ投与の2群に1:1に割り付ける二重盲検比較試験を行っている。なお導入期において非盲検でMTXを5、10、15mgと漸増させ葉酸欠乏を回避するために毎日葉酸を1mg補充しており、その後、盲検化し2群に割付し追跡している。主要エンドポイントは非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中あるいは心臓血管死のいずれかの複合を当初予定していたが、盲検化する前に、入院を要する不安定狭心症も上記エンドポイントの1つとして加えられている。

日本人認知症高齢者における抗精神病薬使用および関連因子

 抗精神病薬は、死亡率や脳血管イベントに対するリスク増加と関連が認められているが、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)のマネジメントに用いられている。日本におけるこれまでの研究では、抗認知症薬を処方中の高齢者における抗精神病薬の使用率の推定が行われてきた。筑波大学の黒田 直明氏らは、介護保険データを用いて、認知症高齢者における抗精神病薬使用率のより正確な推定値を算出し、抗精神病薬使用に関連する因子を特定するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2018年11月27日号の報告。

変形性膝関節症の痛み、薬物療法の長期効果は/JAMA

 変形性膝関節症患者における薬物療法による長期的な疼痛緩和効果には、プラセボと比較して考慮すべき不確実性が存在することが、イタリア・パドバ大学のDario Gregori氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。変形性関節症は、慢性で進行性の疾患だが、薬物療法は主に短期の検討が行われており、そのため長期の疾患管理における推奨治療が不明確になっているという。  研究グループは、変形性膝関節症患者を12ヵ月以上追跡した薬物療法の無作為化臨床試験を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(パドバ大学などの助成による)。

リンゴ型の脂肪分布、腹部と臀部で異なる遺伝的機序が関与か/JAMA

 ウエスト/ヒップ比(WHR)の算出の基礎となる腹部(ウエスト)および殿大腿部(ヒップ)の脂肪分布には、それぞれ異なる遺伝メカニズムが関連している可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。一般にWHRで評価される体脂肪分布は、BMIとは独立の重要な心血管代謝疾患の寄与因子とされるが、腹部の高脂肪分布または殿大腿部の低脂肪分布によるWHR増加が心血管代謝疾患リスクに影響を及ぼすかは不明だという。

術前化学療法を施行したHER2陽性乳がんにおける術後T-DM1の有効性(解説:矢形寛氏)-996

ドイツのKATHERINE試験結果が2018年サン・アントニオ乳癌シンポジウムで報告された後、すぐに論文化されたものであり、まだ最終結果ではないものの、われわれの臨床を変える情報であった。全体として3年無浸潤病変生存率の差が10%以上と大きな改善をみている。全生存率は境界域ではあるものの、より長期に追跡することにより十分な有意差が出てくることを期待させる内容である。現時点でも十分臨床応用するに値する結果であり、HER2陽性進行乳がんで、術前化学療法により十分な効果があったものの、浸潤がん残存が認められるもの、HR陰性例などで、とくに有用性が高いものと思われる。

残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案

 医師の時間外労働の上限について、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会(第16回)」が1月11日開かれ、事務局案として2つの上限水準が示された。この水準は罰則付きの時間外労働規制として2024年4月から適用予定のもので、今後は事務局案を基に議論を進め、今年度中に結論を出す見通しとなっている。  一般労働者においては、2019年4月から適用される時間外労働の上限時間は年360時間・月45時間とされており、年6ヵ月に限定した例外措置が設定されている。医師における時間外労働の上限として、検討会では下記3つの枠組みを設けることを検討している。(C)については水準を別途設けるべきかを含め今後議論される予定で、今回は(A)(B)について具体的な数値案が示された。なお、(B)は地域医療提供体制確保の観点から、やむを得ず(A)の水準を超えざるを得ないとして特定の医療機関(2024年4月までに検討・決定予定)に適用される形が想定されており、2035年度末を目途に解消を目指すとされている

慢性蕁麻疹は、骨粗鬆症のリスク因子

 慢性蕁麻疹(CU)は骨粗鬆症に対して多くのリスク因子となるが、CUと骨粗鬆症における関連についてはデータが不足している。イスラエル・Clalit Health ServicesのGuy Shalom氏らは大規模な観察研究を行い、CUが骨粗鬆症のリスクとなる可能性があることを明らかにした。著者は、「ターゲットを適切にするためのスクリーニングを検討する必要がある」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年12月18日号掲載の報告。