日本語でわかる最新の海外医学論文|page:103

内臓脂肪や皮下脂肪で慢性疼痛リスク上昇か

 内臓脂肪や皮下脂肪の過剰な蓄積が筋骨格系の痛みと関連しているようだ―。オーストラリア・タスマニア大学のZemene Demelash Kifle氏らは、腹部の過剰かつ異所性の脂肪沈着が多部位で広範囲にわたる慢性筋骨格系の痛みの発症に関与している可能性を示唆した。また、男性よりも女性でより強い影響が確認され、これは脂肪分布とホルモンの性差が影響している可能性があるという。Regional Anesthesia&Pain Medicine誌オンライン版2024年9月10日号掲載の報告。

StageIのTN乳がんにおける術前化療後のpCR率とOSの関係/ESMO2024

 Stage Iのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、術前化学療法後のpCR率は良好な長期転帰と関連することが示され、同患者における術前化学療法の実施が裏付けられた。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのManon De Graaf氏が、1,000例以上のTNBC患者を対象としたレジストリ研究の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。  本研究では、2012~22年に術前化学療法後に手術が施行されたcT1N0のTNBC患者をオランダがん登録のデータから特定し、pCR率と全生存期間(OS)との関連を評価した。

zongertinibが既治療のHER2変異陽性NSCLCの約7割に奏効(Beamion LUNG-1)/WCLC2024

 HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するzongertinibの有望な結果が報告された。HER2遺伝子変異はNSCLC患者の約2~4%に認められ、脳転移が生じることが多く、予後は不良であるとされている。zongertinibはHER2チロシンキナーゼドメイン選択的に共有結合するHER2チロシンキナーゼ阻害薬である。zongertinibの用量探索および安全性・有効性を検討する国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」が実施され、第Ib相の既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性コホートにおける結果が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で報告された。

僧帽弁閉鎖不全症を伴う心不全、経カテーテル修復術の追加は有効か/NEJM

 中等症~重症の機能性僧帽弁閉鎖不全症を有する心不全で薬物療法を受けている患者では、MitraClipデバイスを用いた経カテーテル僧帽弁修復術を追加することにより、薬物療法単独と比較して24ヵ月後の心不全による初回または再入院と心血管死の複合の発生率が改善し、12ヵ月後の健康状態が良好であることが、ドイツ・シャリテ大学のStefan D. Anker氏らRESHAPE-HF2 Investigatorsが実施した「RESHAPE-HF2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年8月31日号に掲載された。

高齢NSTEMI患者に、侵襲的治療は有益か/NEJM

 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の高齢患者では、保存的治療と比較して侵襲的治療は、心血管死または非致死的心筋梗塞の複合のリスクを改善しないことが、英国・ニューカッスル大学のVijay Kunadian氏らBritish Heart Foundation SENIOR-RITA Trial Team and Investigatorsが実施した「SENIOR-RITA試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年9月1日号で報告された。  SENIOR-RITA試験は、高齢NSTEMI患者における侵襲的治療の有用性の評価を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年11月~2023年3月にイングランドとスコットランドの48施設で参加者のスクリーニングを行った(英国心臓財団[BHF]の助成を受けた)。

炭水化物カロリー比が高いとうつ病リスク上昇

 うつ病は、世界的に重大なメンタルヘルスの課題の1つである。中国・四川大学のYifei Tan氏らは、うつ病と炭水化物摂取カロリー比(CRC)との関連を明らかにするため、大規模な横断的研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年12月号の報告。  2005〜20年のNHANESデータベースのデータを用いて、Rプログラミング言語によりデータ分析を行った。うつ病の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。CRCは、総炭水化物摂取量の4倍を総カロリー摂取量で割ることにより算出した。CRCとうつ病との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルおよび回帰スプラインモデルを用いた。

切除不能肝細胞がん、TACE+レンバチニブ+ペムブロリズマブが有用(LEAP-012)/ESMO2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)では、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が標準療法の1つだが、これにレンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法の上乗せが、TACE単独療法と比較して、無増悪生存期間を有意に改善したという。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)Presidential Symposiumにおいてスペイン・バルセロナ病院のJosep Llovet氏がLEAP-012試験の初回解析結果を発表した。

HR+/HER2+の閉経前乳がん、卵巣機能抑制で予後改善/ESMO2024

 術前または術後補助化学療法を受けた閉経前のHR+/HER2+の早期乳がん患者において、内分泌療法に卵巣機能抑制を追加することで予後が有意に改善したことを、韓国・延世大学校医科大のSung Gwe Ahn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。  これまでの研究により、卵巣機能抑制と内分泌療法の併用により、閉経前のHR+の早期乳がん患者の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)が改善することが示されている。しかし、HER2+の乳がん患者におけるデータは限られている。

完全切除NSCLCへのデュルバルマブ、第III相試験結果(BR.31)/ESMO2024

 抗PD-L1抗体デュルバルマブは、切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法後の地固め療法、切除可能なStageII~IIIB期NSCLCの周術期治療において有効性が示されている。そこで、完全切除NSCLC患者の術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性を検討することを目的として、国際共同第III相無作為化比較試験「BR.31試験」が実施された。本試験の結果、完全切除NSCLCの術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性は示されなかった。本結果は、カナダ・オタワ大学のGlenwood Goss氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。

腎ドナーの死亡リスク、過去最低に

 腎臓提供者(ドナー)が死亡するリスクは、これまでになく低下していることが新たな研究で明らかになった。腎ドナーの死亡率はすでに10年前から低かったが、現在では、さらにその半分以下になっていることが示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部Center for Surgical and Transplant Applied Research Quantitative CoreのAllan Massie氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月28日掲載された。  臓器調達・移植ネットワークによれば、毎年およそ6,000人の米国人が腎臓の提供を志願している。Massie氏らは今回、1993年から2022年までの生体腎ドナーに関するデータを用いて、腎臓提供後90日以内のドナー死亡率を算出した。データは1993~2002年、2003~2012年、2013~2022年の3つの期間に分類して解析した。

CRP・LDL・リポ蛋白(a)測定、30年後のCVDを予測/NEJM

 健康な米国人女性の高感度C反応性蛋白(CRP)値、LDLコレステロール値、リポ蛋白(a)値の単回組み合わせ測定が、その後30年間の心血管イベントの発症を予測したことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らによる検討で示された。高感度CRP値、LDLコレステロール値、リポ蛋白(a)値は、5年・10年の心血管リスクの予測に寄与し、薬理学的介入法を明確にすることが知られている。より若い時期での介入はリスク軽減にとって重要となるため、女性の長期にわたる心血管リスクを予測するこれらのバイオマーカーの有用性について、さらなる情報が必要とされていた。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。

安定CAD併存の重症AS、TAVIとPCIの同時施行は有益か/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を施行する冠動脈疾患(CAD)患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行は保存的治療と比較し、追跡期間中央値2年の時点で全死因死亡、心筋梗塞、緊急血行再建の複合リスクが低いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJacob Lonborg氏らNOTION-3 Study Groupによる国際非盲検無作為化優越性試験「NOTION-3試験」で示された。安定CADで重症大動脈弁狭窄症(AS)を有する患者において、TAVIに加えてPCIを施行するベネフィットは、依然として明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。

転移を有する去勢抵抗性前立腺がんへのカボザンチニブ+アテゾリズマブ、OS最終結果(CONTACT-02)/ESMO2024

 新規ホルモン療法による1回の治療歴があり、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、カボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法は、2剤目の新規ホルモン療法と比較して全生存期間(OS)について良好な傾向がみられたものの(ハザード比[HR]:0.89)、統計学的有意差は確認されなかった。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏が、日本を含む国際共同第III相CONTACT-02試験のOS最終解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。  本試験については、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)について、2剤目の新規ホルモン療法群と比較してカボザンチニブ+アテゾリズマブ群で有意に延長したことがすでに報告されている(HR:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.84、p=0.0007)。

小児のPTSDに対する心理療法でトラウマの影響が軽減

 小児および青年における心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するトラウマ関連のネガティブな影響の評価の重要性が、これまでの研究で示唆されている。PTSDの認知モデルでは、治療メカニズムがこれらの評価の軽減に有用であるといわれている。英国・イースト・アングリア大学のCharlotte Smith氏らは、PTSDに対する心理療法が、小児および青年のトラウマ関連のネガティブな評価をどの程度軽減するかを調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Behaviour Research and Therapy誌2024年11月号の報告。  2022年12月11〜12日に、4つのデータベース(PsycINFO、Medline Complete、CINAHL Complete、PTSDpubs)より検索を行った。バイアスリスクを評価するため、ROB-2評価ツールを用いた。

T-DXdによる遅発期・延長期の悪心・嘔吐抑制にオランザピン6日間併用が有効(ERICA)/ESMO2024

 HER2陽性/低発現の転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)治療による遅発期および延長期の悪心・嘔吐を、オランザピン6日間投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの併用が抑制する可能性が、日本で実施された多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第II相比較試験(ERICA)で示唆された。昭和大学の酒井 瞳氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Annals of Oncology誌オンライン版に同時掲載された。

EGFR陽性NSCLCへのamivantamab+lazertinib、耐性変異の内訳は?(MARIPOSA)/ESMO2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のlazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」で報告されている。EGFR-TKIに対する耐性変異の主なものは、EGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅であるが、amivantamab+lazertinibの耐性変異に関する詳細は明らかになっていなかった。そこで、MARIPOSA試験におけるamivantamab+lazertinibの耐性変異に関する解析が実施された。フランス・パリ・サクレー大学のBenjamin Besse氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で本結果を発表した。

週末の寝だめは心臓病リスクを低下させるか?

 ウィークデーの睡眠不足を週末に補う「キャッチアップ睡眠」は、心臓病のリスクを最大20%低下させる可能性のあることが、UKバイオバンク参加者9万人以上を対象にした研究で明らかになった。阜外病院(中国)の循環器専門家であるYanjun Song氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。  睡眠不足に悩まされている人は、休みの日の朝、普段より遅くまで寝て睡眠負債の影響を取り除こうとするものだ。しかし、このようなキャッチアップ睡眠が心臓の健康に役立つのかどうかについては明らかになっていない。

フレイル女性では台所で過ごす時間が長いほど食生活が健康的

 高齢の日本人女性を対象に行われた研究から、台所で過ごす時間が長いほど健康的な食生活を送っていて、この関連はフレイルの場合により顕著であることが分かった。高崎健康福祉大学、および、お茶の水女子大学に所属する佐藤清香氏らが行った横断研究の結果であり、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」に7月20日掲載された。  フレイルは、「加齢により心身が老い衰えた状態」であり、健康な状態と要介護状態の中間のこと。フレイルを早期に発見して栄養不良や運動不足に気を付けることで、フレイルが改善される可能性がある。フレイルの初期には、台所で行われる調理作業の支障の発生という変化が生じやすいことが報告されており、調理に手を掛けられなくなることは栄養の偏りにつながる可能性がある。また、台所での作業は身体活動の良い機会でもある。そのため、台所で過ごす時間の減少を見いだすことは、フレイルの進行抑止につながる可能性がある。これらを背景として佐藤氏らは、高齢女性が台所で過ごす時間と健康的な食事を取る頻度との関係を調査し、その関係にフレイルが及ぼす影響を検討した。

脳を使ってしゃべることができる未来が来る(解説:岡村毅氏)

ブレイン・コンピュータ・インターフェースが注目を集めている。映画「マトリックス」などでも扱われており、ご存じの方も多いだろう。イーロン・マスク氏も「ニューラリンク」という会社を立ち上げている。 この論文は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の脳の表面に電極を設置し、口を動かして発語しようとする電気活動を検出し、それを音声化することに成功したというものである。米国・カリフォルニア大学のYoutube https://www.youtube.com/watch?v=thPhBDVSxz0 Accessed September 15, 2024 で動画を見ることができるが、衝撃的そして感動的である。