脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:16

アルツハイマー病のリスク因子

 アルツハイマー病は最も一般的な認知症であるが、その原因はいまだ不明である。その理由として、多因子疾患であるアルツハイマー病に関する研究が十分に行われていない可能性が挙げられる。オーストラリア・シドニー大学のMichael Allwright氏らは、UK Biobankのデータセットを用いて、アルツハイマー病に関連する既知のリスク因子をランク付けし、新たな変数を模索するため本研究を実施した。その結果、アルツハイマー病の最も重大なリスク因子は、APOE4対立遺伝子の保有であることが再確認された。APOE4キャリアにおける新たなリスク因子として肝疾患が抽出された一方で、「不眠/不眠症」は、APOE4のステータスとは無関係にアルツハイマー病の予防効果が確認された。著者らは、肝疾患を含む併存疾患の将来的な治療により、アルツハイマー病のリスクが同時に低下する可能性があるとしている。Aging Brain誌2023年6月17日号の報告。

機能性ディスペプシア、食物を見るだけで脳の負担に/川崎医大

 全人口の約10%が、機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)の症状に悩まされているとされ、不登校や休職など日常生活に支障を来すケースも多い。また、血液検査や内視鏡検査、CT検査などで異常が見つからず、病気であることが客観的に示されないために、周囲の人に苦しみが理解されにくいといった問題がある。精神的ストレスや脂肪分の多い食事が原因とされるものの、メカニズムの解明は進んでおらず、客観的診断法は確立されていない。そこで、川崎医科大学健康管理学教室の勝又 諒氏らは、FD患者、IBS患者に40枚の食物の画像を見せ、食物の嗜好性や脳血流の変化を調べた。その結果、FD患者は健康成人やIBS患者と比較して、脂肪分の多い食物を好まなかった。また、FD患者は、食物を見たときに左背側前頭前野の活動が亢進していた。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2023年8月12日号で報告された。

アルツハイマー病、早発型と遅発型の臨床的特徴の違い~メタ解析

 認知症で最も一般的な病態であるアルツハイマー病は、発症年齢による比較検討が多くの研究で行われているが、その違いは明らかになっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPaige Seath氏らは、アルツハイマー病の早発型(65歳未満、early-onset:EO-AD)と遅発型(65歳以上、late-onset:LO-AD)の臨床的特徴を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、EO-AD患者はベースライン時の認知機能、認知機能低下速度、生存期間においてLO-AD患者と異なる特徴を有しているが、それ以外の臨床的特徴は同様であることが示唆された。International Psychogeriatrics誌オンライン版2023年7月11日号の報告。

睡眠中のアロマセラピー、高齢者の記憶を200%超改善

 高齢者が睡眠中にエッセンシャルオイルの香りに曝露することで、記憶力が大幅に改善したという研究結果が報告された。高齢者の認知機能低下は重要な社会問題であり、安価かつ簡便に家庭内で実施可能な対処法が求められていることから、本研究の手法は非常に有用と考えられた。本研究結果は、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のCynthia C. Woo氏らによって、Frontiers in Neuroscience誌2023年7月24日号で報告された。  認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。

慢性片頭痛の診断率~6ヵ国の比較

 米国・アッヴィのAubrey Manack Adams氏らは、世界6ヵ国における慢性片頭痛患者の評価に基づいた詳細調査を実施した。その結果、6ヵ国ともに、片頭痛の過小診断の割合が高いことが示唆された。Cephalalgia誌2023年6月号の報告。  カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国において、Webベースの横断的観察コホート研究を実施した。最初のスクリーニング調査では、代表的なサンプルより一般的な健康管理情報を収集し、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)基準に基づき片頭痛の有病率を特定した。検証済みの片頭痛特有の評価に基づき詳細調査を行った。

「minor nondisabling acute ischemic stroke」?(解説:後藤信哉氏)

本記事の解説を依頼されたが、循環器内科医なので「minor nondisabling acute ischemic stroke」を感覚的にイメージできない。自分も高齢になっているので、「ふらつき」「しびれ」などを自覚することがある。もし、受診してMRIを受け、急性期の脳梗塞の小さな所見があれば「minor nondisabling acute ischemic stroke」なのだろうか?t-PAなどの線溶薬と抗血小板薬の出血リスクの差異については臨床的感覚がある。片側の片麻痺などの明確な症候性脳梗塞であればt-PA治療を受けたい。しかし、minor nondisabling acute ischemic strokeならば感覚的にt-PAを受けたくない。ヒトの身体は複雑な調節系なのでt-PAにより線溶を亢進させれば、逆に血栓性が亢進するリスクもある。出血も心配である。しかし、臨床的感覚には科学性がないので、自分と異なる感覚を有している臨床医もいるかもしれない。

日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。

脳卒中予防のアスピリン、健康な高齢者ではむしろリスク増

 低用量アスピリンは脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学のGeoffrey C. Cloud氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年7月26日号に掲載された。  この報告は、高齢者における低用量アスピリンのリスクとベネフィットのバランスを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)の2次解析の結果である。参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者で、募集は2010~14年に行われた。追跡期間中央値は4.7(四分位範囲[IQR]:3.6~5.7)年で、本解析は2021年8月~2023年3月に行われた。

血栓吸引療法前のワルファリン服用は気になる?(解説:後藤信哉氏)

血栓溶解療法、冠動脈インターベンション(PCI)などの急性期再灌流療法の普及により、急性心筋梗塞の生命予後、心不全リスクともに劇的に改善した。重要臓器の虚血性障害との意味では脳梗塞と心筋梗塞は類似性が高い。実際に脳を灌流する太い血管の閉塞による血栓を急性期に吸引・除去すれば、脳梗塞の予後も改善できる。血管が血栓性に閉塞することにより心筋梗塞、脳梗塞は発症する。閉塞を解除すれば臓器への血流が再開する。臓器の虚血性障害は改善される。しかし、再灌流は利点だけではない。虚血臓器に血液が再灌流されると臓器の再灌流障害も起こる。脳組織は脆弱なので再灌流障害が脳出血の原因になるリスクはある。さらに、抗凝固療法を施行すると出血巣が大きくなるリスクがある。

日本人アルツハイマー病患者の日常生活に影響を及ぼすリスク因子

 日常生活動作(ADL)を維持することは、アルツハイマー病(AD)患者およびその介護者にとって非常に重要な問題である。エーザイの赤田 圭史氏らは、日本人AD患者の診断時のADLレベルおよび長期(3年以内)治療中のADL低下と関連するリスク因子を明らかにするため、本検討を行った。その結果、低い体格指数(BMI)、脳卒中、骨折を伴う日本人AD患者では、ADL低下リスクが高いことから、これらリスク因子を有する患者では、ADLを維持するためのリハビリテーションなどの適切な介入が求められることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年6月30日号の報告。