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CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。  被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について平均3.5年の追跡を受けた。 動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVSは、腎機能障害増悪を予防し、透析導入回避、血圧コントロール改善、さらに心血管疾患発症予防に有用である可能性が報告されてきた1)。たしかに、RRVSにて腎機能改善、血圧コントロール改善、心不全改善の症例を経験する。しかし、われわれがRRVSの効果を認める症例は一部であり、多くの症例はRRVSの効果を明確に確認できないことを経験的に知っている。しかし、RRVSの恩恵を受ける症例を選別する方法がなく、一方、RRVS実施がデメリットである十分な根拠もない。ゆえに、血圧・腎機能が安定した動脈硬化性腎動脈狭窄症例について、その診療方針は十分確立されていなかった1)。 ASTRAL研究は、2009年に報告された動脈硬化性腎動脈狭窄症例における腎機能・血圧に対するRRVSの効果を検討する前向き研究であり、RRVSの効果に否定的な研究結果であった2)。しかし、ASTRAL研究では、“腎動脈狭窄の程度評価が厳密でなく”、“重症狭窄例は各施設試験担当者がRRVSを実施していた”などの問題が指摘されていた。 CORAL研究は、こうした先行研究の限界に解答を提示した。CORAL研究は、腎動脈狭窄の程度はCore laboで確認され、薬物治療群、薬物+RRVS群の割り振りもランダム化して実施された。そして血圧コントロールが不良でなく、かつ、腎機能障害がないか軽度で増悪を認めない動脈硬化性腎動脈症例では、RRVSを実施する大きなメリット(腎機能障害改善、心血管疾患発症予防、顕著な降圧効果)がないことを示した。 一方、高齢者では潜在性の動脈硬化性腎臓脈狭窄の症例は多数存在するとする報告がある(65歳以上では6%に腎動脈狭窄を合併する)3)。しかし、そういった症例を積極的に検出する臨床的意義は明確にされていなかった。CORAL研究の結果は、高齢者で腎機能・血圧が安定している症例では、積極的に腎動脈狭窄を検出する必要性が少ないことも示唆している。 これまでRRVS実施が推奨される症例として、1.血圧コントロールが不良になった。2.腎機能障害が進展増悪している。3.原因不明の肺水腫、心不全を繰り返す。などが挙げられていた1)。 しかし、CORAL研究では難治性高血圧、3ヵ月以内の心不全発症、血清クレアチニン 3.0mg/dL以上の症例は除外している。ゆえに、CORAL研究はこのようなRRVS実施推奨例へのRRVS実施の妥当性を検証する研究ではない。 CORAL研究の結果を踏まえてわれわれができることは、1.降圧薬で血圧がコントロールされ、血清クレアチニン 3.0mg/dL以下で腎機能障害の増悪のない症例にはRRVS実施の必要はなく、慎重な経過観察を行う。そして、血圧コントロール不良・腎機能の増悪を認めた場合にRRVS実施の可否を検討する。ただし、今後こういった症例に対する新たな治療法が開発される可能性もある4)。2.難治性高血圧、腎機能障害増悪、原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全の症例については基本、これまでと同様の診療方針となる。ただし、CORAL研究では、RRVS施行は薬物治療単独実施群にくらべて有意に血圧を低下させるが、顕著な降圧は得られなかった。ゆえに、難治性高血圧症例にはRRVSと腎交感神経焼灼術の併用も将来的に検討する必要がある1)。また、CORAL研究では3ヵ月以上前に発症した心不全の既往はRRVSの効果への有意な影響因子でないことが確認されている。ゆえに、単に心不全の既往のみでRRVS実施の有用性を判断するのは否定的と考えられる。原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全をRRVS実施の根拠とする場合は慎重に適応を検討する必要がある。さらに、腎機能増悪については血清クレアチニン 3.0mg/dL以上への増加が一つの目安となるかも知れない。 いずれにしても、CORAL研究にて、動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVS実施の可否をIntervention実施医師のみで決定することは終焉を迎えた。今後、動脈硬化性腎動脈狭窄症例の診療には、高血圧専門医、腎臓専門医、循環器専門医が、密接なコミュニケーションをもってあたることが適切である。

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腎動脈ステントは薬物療法を超えるか?/NEJM

 アテローム硬化性腎動脈狭窄で、高血圧あるいは慢性腎臓病を有する患者への腎動脈ステントは、薬物療法単独と比べて臨床イベントの予防に関して有意なベネフィットをもたらさないことが明らかになった。米国・トレド大学のChristopher J. Cooper氏らによる多施設共同オープンラベル無作為化対照試験「CORAL」の結果、報告された。高齢者に一般的にみられるアテローム硬化性腎動脈狭窄について、先行研究2件において、腎動脈ステントは腎機能改善にベネフィットがないことが示されていた。しかし、重大有害腎・心血管イベント予防に関しては不明であったことから本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。947例を薬物療法+ステント群と薬物療法単独群に無作為化して追跡 CORAL試験は、2005年5月16日~2010年1月30日の間に、5,322例がスクリーニングを受け、適格であった947例を無作為化して行われた。対象は、重症腎動脈狭窄で(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する患者であった。 被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について2012年9月28日まで追跡を受けた。 評価は、試験開始後に同意を得ていた1施設16例を除外した931例(ステント群459例、薬物療法単独群472例)をintention-to-treat解析して行われた主要複合エンドポイント、全死因死亡の発生に有意差みられない 追跡期間中央値は、43ヵ月(範囲:31~55ヵ月)だった。 ステント群は、狭窄が68±11%から16±8%に有意に改善した(p<0.001)。透析導入は、両群共に無作為化後30日以内ではいなかったが、ステント群で30~90日に1例で開始となった。また薬物療法単独群で、無作為化当日に致死的脳卒中が1例発生した。 主要複合エンドポイントの発生は、両群間で有意差はみられなかった(ステント群35.1%vs. 薬物療法単独群35.8%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.17、p=0.58)。 また、主要エンドポイントの各項目についても有意差はなかった。全死因死亡についても有意差はなかった(同:13.7%vs. 16.1%、0.80、0.58~1.12、p=0.20)。 ベースライン時の被験者の降圧薬服用数は、2.1±1.6剤だった。試験終了時の同服用数は、ステント群3.3±1.5剤、薬物療法単独群3.5±1.4剤で両群間に有意差はなかった(p=0.24)。 SBPの降圧は、ステント群16.6±21.2mmHg、薬物療法単独群15.6±25.8mmHgで、縦断的解析の結果、わずかだがステント群のほうが降圧効果は大きかった(-2.3mmHg、95%CI:-4.4~-0.2mmHg、p=0.03)。両群の差は追跡期間中、一貫してみられた。

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バルドキソロンメチルが心血管イベントリスク増大で試験中止/NEJM

 2型糖尿病でステージ4の慢性腎臓病(CKD)の患者に対する、新規開発中の転写因子Nrf2活性化剤バルドキソロンメチル(bardoxolone methyl)は、末期腎不全(ESRD)または心血管疾患死の抑制に効果が認められず、また心血管イベントリスクがバルドキソロンメチル群で有意に増大したため、開発試験を中止したことが発表された。オランダ・フローニンゲン大学のDick de Zeeuw氏らが、2,000例超を対象に行った第3相臨床試験「BEACON」の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2013年11月9日号掲載の報告より。バルドキソロンメチルをステージ4のCKD患者に20mg/日投与 糖尿病性腎障害は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬により進行を遅らせることが可能となっているが、リスクはなお高いまま残る。一方で、転写因子Nrf2活性の阻害と酸化ストレスと炎症が関与していることが明らかとなり、バルドキソロンメチルについてヒトを対象とした52週間の試験で、クレアチニン値を抑制することが示されていた。 それらの知見を受けてBEACON試験は、バルドキソロンメチルがESRDリスクや心血管疾患による死亡を減少すると仮定して行われたもので、2011年6月~2012年9月に、欧米、オーストラリア、カナダ、イスラエル、メキシコにおいて、2型糖尿病でステージ4のCKD患者2,185例を対象に行われた。 被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはバルドキソロンメチルを20mg/日、もう一方にはプラセボが投与され、ESRDまたは心血管疾患死を主要エンドポイントに追跡された。ステージ4のCKDの定義は、推定糸球体濾過量(eGFR)15~30mL/分/1.73m2だった。バルドキソロンメチル群で心不全による入院・死亡リスクが1.83倍 その結果、試験は追跡期間中央値9ヵ月の時点で、プラセボ群よりもバルドキソロンメチル群での心血管イベントの発生が高率に認められ、試験の中止が勧告された。 同時点の主要エンドポイントの発生率は、バルドキソロンメチル群69/1,088例(6%)、プラセボ群69/1,097例(6%)と、両群で同等だった(ハザード比:0.98、95%信頼区間:0.70~1.37、p=0.92)。バルドキソロンメチル群におけるESRDの発生は43例、心血管疾患死は27例だった。プラセボ群では、それぞれ51例、19例だった。 副次アウトカムでは心不全による入院または死亡が、プラセボ群55例の発生に対し、バルドキソロンメチル群では96例で、リスクは1.8倍に上った(ハザード比:1.83、同:1.32~2.55、p<0.001)。 また、バルドキソロンメチル群でプラセボ群よりも、eGFR、血圧、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が有意に増大し、体重については有意な減少がみられた。

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有酸素運動が喘息における白血球を不活性化

 アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて、有酸素運動が気管支周辺の白血球を不活性化し、気道炎症やTh2反応を抑制することが、ブラジル・サンパウロのNove de Julho大学のRicardo P. Vieira氏らにより報告された。International Journal of Sports Medicine誌オンライン版2013年11月20日の掲載報告。 白血球は喘息の生理病態学において中心的な役割を果たしており、有酸素運動が喘息により気道に集まる白血球を減少させることが知られている。しかしながら、喘息における白血球活性に対する有酸素運動の効果については、明らかになっていない部分もある。 そこで、気道炎症、肺や全身のTh2サイトカインレベル、炎症促進性・抗炎症性の白血球発現、線維化促進性のメディエーター、酸化体や抗酸化メディエーターに対する有酸素運動の効果を4週にわたり、喘息のマウスによる実験で調査した。 主な結果は以下のとおり。有酸素運動は・気管支肺胞洗浄液中のIL-4、IL-5、IL-13と血清中のIL-5を有意に減少させた(それぞれ、p<0.001)。・気管支肺胞洗浄液中と血清中のIL-10を有意に増加させた(p<0.001)。・白血球の活性化を抑制し、下記項目を有意に減少させた。  Th2サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13; p<0.001)  ケモカイン(CCL5, CCL10; p<0.001)  接着分子(VCAM-1, ICAM-1; p<0.05)  活性酸素種、活性窒素種(GP91phox and 3-nitrotyrosine; p<0.001)  誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS; p<0.001)  核内因子kB (NF-kB; p<0.001) ・抗炎症サイトカインであるIL-10の発現を有意に増加させた(p<0.001)。・増殖因子の発現を減少させた(TGF-beta, IGF-1, VEGF and EGFr; p<0.001)。

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慢性腎臓病における2つのエンドポイントを予防するために

 わが国の慢性腎臓病(CKD)患者数は2005年に1,330万人に達し、成人の8人に1人がCKDといわれている。CKDは、腎機能が悪化すると透析が必要な末期腎不全に進行するだけではなく、心血管疾患の発症リスクが高まる。そのリスク因子であるリンの管理について、2013年11月19日に都内にてプレスセミナーが開催された(主催・バイエル薬品株式会社)。そのなかで、東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座 特任准教授の花房 規男氏は、CKDという概念が提唱された経緯やCKD治療の目的、リンコントロールを介したCKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)対策について講演した。CKDの概念とは CKDには糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などさまざまな疾患があるが、どの疾患においても、腎機能の低下は最終的に共通の経路をとる。そのため、CKDとして共通の対策がとられることになる。また、CKDは末期腎不全や心血管合併症という予後に関連する疾患である。CKDの治療目的はこれら2つのエンドポイントの予防であり、早期の対策が望まれる。 CKDは「わかりやすく」をモットーに提唱された概念であり、大きく分けて3つの条件(尿所見をはじめとする腎疾患に関連する異常、eGFR 60mL/min/1.73m2未満、3ヵ月以上継続)を満たす場合に診断される。従来明らかになっていなかった数多くのCKD患者が存在するため、花房氏は「診療は腎臓専門医だけでは難しく、かかりつけ医による診療が重要」と訴えた。CKD対策には生活習慣関連が多い CKDに対する治療介入のなかには、「生活習慣の改善」「食事指導」「高血圧治療」「糖尿病の治療」「脂質異常症の治療」「骨・ミネラル代謝異常に対する治療」「高尿酸血症に対する治療」といった生活習慣に関連する項目が多い。 近年、生活習慣に起因する腎疾患が増加しており、透析患者の原疾患も糖尿病性腎症が増加している。また、BMIが高い患者は末期腎不全に移行しやすいなど、生活習慣とCKDは深く関わっている。そのため、「生活習慣を最初の段階で改善することがポイントである」と花房氏は指摘した。CKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新たな概念が提唱される 骨・ミネラルについても腎臓と深く関連している。CKDで生じるミネラル代謝異常は、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管の石灰化を介して、生命予後に大きな影響を与えることが認識され、CKD-Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD:CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新しい概念が提唱されている。リンの高値が血管の石灰化をもたらし心血管合併症の原因となるため、CKD-MBD対策として、リンをコントロールし、生命予後の改善および末期腎不全への進行を予防することが重要である。リンをコントロールするには CKD患者のリンをコントロールするには、食事中のリンを減らしたり、リン吸着薬で腸からの吸収を減らすことにより、体の中に入ってくるリンを減らすことが重要である。リンはタンパク質を多く含む食物に多いため、タンパク質を制限すればリンも制限されるはずである。しかし、実際には食事制限だけでは十分ではなく、また食事量低下による低栄養のリスクもあるため、必要に応じてリン吸着薬を使用することが有効である。リン吸着薬には、カルシウム含有リン吸着薬(炭酸カルシウム)とカルシウム非含有吸着薬(炭酸ランタン、セベラマー、ビキサロマー)がある。このうち、炭酸カルシウムが以前より使用されているが、花房氏は「持続的なカルシウム負荷は異所性石灰化を生じ、心血管合併症が発症する可能性がある」と指摘し、「保存期の長い過程においては、カルシウム非含有吸着薬が有効なのかもしれない」と述べた。

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またしてもACE阻害薬+ARBの併用、有効性示せず-糖尿病性腎症-/NEJM

 ACE阻害薬(ACEI)+ARB併用療法は、蛋白尿がみられる糖尿病性腎症患者の末期腎不全(ESRD)への病態進行のリスクを低減しないことが、米国・ピッツバーグ大学のLinda F. Fried氏らが行ったVA NEPHRON-D試験で確認された。糖尿病性腎症はESRDの主要原因であり、蛋白尿がみられる糖尿病患者はESRDのリスクが高い。観察試験では、レニン-アンジオテンシン系(RAS)の抑制により腎不全に起因する蛋白尿が低減し、腎機能が改善することが示されている。ACEIとARBの併用療法により蛋白尿が低下することが知られているが、腎不全の進行に及ぼす効果や安全性は確かめられていなかった。NEJM誌2013年11月14日号掲載の報告。併用によるRAS抑制の効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 VA NEPHRON-D試験は、蛋白尿を改善することで糖尿病性腎症の進行が抑制されるとの仮説の検証を目的に、ロサルタン(商品名:ニューロタンほか)+リシノプリル(同:ゼストリルほか)併用療法と、標準的なロサルタン単独療法を比較する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、推算糸球体濾過量(eGFR)が30.0~89.9mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比が≧300の2型糖尿病患者であった。 ロサルタン100mg/日を30日以上投与されている患者を、リシノプリルまたはプラセボを追加投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。リシノプリルは、10mg/日を開始用量とし、有害事象やカリウム、クレアチニンの評価を行いながら2週ごとに20mg/日、40mg/日へと増量した。 主要評価項目はeGFRの低下(登録時≧60mL/分/1.73m2の患者は≧30mL/分/1.73m2の低下、<60mL/分/1.73m2の患者は≧50%の低下)、ESRDの発症、死亡であり、副次評価項目はeGFRの低下またはESRDの発症とした。ONTARGET試験やALTITUDE試験の知見と一致 併用群で重篤な有害事象、高カリウム血症、急性腎障害(AKI)が増加したため、2012年10月、データ・安全性監視委員会の勧告により、本試験は早期中止となった。 本試験には、2008年7月~2012年9月までに、米国の32の退役軍人省医療センターから1,448例が登録され両群に724例ずつが割り付けられた。試験期間中に182例が死亡またはESRDを発症し(死亡は併用群63例、単独群60例)、143例が脱落した(治療中止66例、追跡不能39例、参加を取り止めた施設の患者26例、その他の理由12例)。追跡期間中央値は2.2年。 患者背景は、併用群が平均年齢64.5±7.9歳、男性98.8%、BMI 34.9±6.7、血圧136.9±16.5/72.5±10.6mmHg、T-C/LDL-C/HDL-C 157.9±43.6/81.6±32.4/37.7±11.0mg/dL、eGFR 53.6±15.5mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値842であり、単独群はそれぞれ64.7±7.7歳、99.6%、34.3±6.9、137.0±16.0/72.8±9.9mmHg、159.0±40.5/84.3±35.0/38.7±11.3mg/dL、53.7±16.2mL/分/1.73m2、862であった。尿中アルブミン/クレアチニン比≧1,000の患者は併用群326例、単独群336例であった。 主要評価項目の発生率は、併用群が18.2%(132例)、単独群は21.0%(152例)であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.12、p=0.30)。 副次評価項の発生率は、併用群が10.6%(77例)、単独群は14.0%(101例)であり、併用群で良好な傾向を認めた(HR:0.78、95%CI: 0.58~1.05、p=0.10)が、このベネフィットは経時的に減少した(非比例性検定:p=0.02)。 ESRDの発症(3.7 vs 5.9%、HR:0.66、95%CI:0.41~1.07、p=0.07)、死亡(8.7 vs 8.3%、1.04、0.73~1.49、p=0.75)および心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院)(18.5 vs 18.8%、0.97、0.76~1.23、p=0.79)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 高カリウム血症の発症率は、併用群が100人年当たり6.3件であり、単独群の2.6件に比べ有意に多かった(p<0.001)。AKIも、併用群が12.2件/100人年と、単独群の6.7件/100人年に比し有意に増加した(p<0.001)。 著者は、「蛋白尿を伴う糖尿病性腎症に対するACEI+ARB併用療法は、臨床的なベネフィットをもたらさず、有害事象を増加させた」とまとめ、「本試験の結果は、併用療法によるRAS抑制が心血管や腎のアウトカムに便益をもたらさず、有害事象を増加させたONTARGET試験やALTITUDE試験の知見と一致する」と指摘している。

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治療抵抗性高血圧患者への腎アブレーション:施行3年後の成績/Lancet

 治療抵抗性高血圧患者に対するラジオ波アブレーション腎除神経術(RDN)は、3年時点でも十分な降圧効果が認められたことが報告された。オーストラリア・モナシュ大学のHenry Krum氏らが同施術患者を長期に追跡したSymplicity HTN-1試験の最終報告として発表した。すでに同試験における術後1ヵ月、12ヵ月時点の評価において、同施術は治療抵抗性高血圧患者の血圧を大幅に下げることが示されていた。Lancet誌オンライン版2013年11月6日号掲載の報告より。有効性と安全性を6ヵ月ごとに評価し1年ごとに報告 Symplicity HTN-1試験は、長期3年にわたる有効性と安全性について評価することを目的としたオープンラベル試験で、オーストラリア、ヨーロッパ、米国の19施設で登録され153例のうち、同意を得た111例がフォローアップを受けた。 被験者は、適量投与の利尿薬を含む、少なくとも3剤併用降圧治療を受けている収縮期血圧160mmHg以上の患者を適格とした。 フォローアップでは、6ヵ月ごとに診察室血圧と安全性の評価が行われ、12ヵ月ごとに評価の報告が行われた。36ヵ月時点の血圧の低下-32.0/-14.4mmHg、10mmHg超降圧達成93% 36ヵ月時点で、患者88例から完全なデータを入手できた。それら患者のベースライン時の平均年齢は57歳(SD 11)、女性患者が37例(42%)、2型糖尿病を有する患者は25例(28%)、平均eGFR値85(SD 19)mL/分/1.73m2、平均血圧値175/98(SD 16/14)mmHgであった。 結果、36ヵ月時点でも有意な変化が、収縮期血圧(-32.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-35.7~-28.2)、拡張期血圧(-14.4 mmHg、同:-16.9~-11.9)にみられた。 収縮期血圧の10mmHg超降圧を達成した患者は、1ヵ月時点で69%、6ヵ月時点81%、12ヵ月時点85%、24ヵ月時点83%、36ヵ月時点では93%だった。また36ヵ月時点の20mmHg超降圧達成患者は77%だった。 降圧効果は、年齢、腎機能、2型糖尿病有無の別でみた場合も有意な格差はみられなかった。 服用降圧薬の平均剤数は、ベースライン時5.0剤(SD 1.7)(全被験者)、36ヵ月時点5.2剤(SD 1.7)(同時点評価者)だった。 安全性については、追跡期間中、腎動脈狭窄1例、死亡3例が発生したがRDNとは無関係だった。

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CKD患者、血圧5mmHg下げれば、心血管イベント17%減る/BMJ

 降圧治療の心血管系への効果について、慢性腎臓病(CKD)の有無別で検証したメタ解析の結果が報告された。オーストラリア・シドニー大学のV Perkovic氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaborationによる解析報告で、腎機能レベルを問わず、収縮期血圧(SBP)5mmHg低下につき主要心血管イベントが6分の1抑制されることが示された。これまでガイドラインでは、CKD患者への降圧も推奨はされていたが、エビデンスは限定的であった。今回の解析の結果を踏まえて著者は「わずかでも推定糸球体濾過量(eGFR)が低下した人への降圧治療は心血管イベントを予防する有効な戦略である」と結論している。また、降圧薬のクラスエフェクトの解析も行われたが、エビデンスが示されず、「CKD患者の心血管イベント予防について、特定クラスの薬を優先的に選択することを支持するエビデンスは少しもない」とも結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月3日号掲載の報告より。CKD 3万295例のデータを含む26試験のデータをメタ解析 研究グループは、CKD有無別でみた降圧と主要心血管イベントとの関連について無作為化試験を対象としたメタ解析を行った。解析は、プラセボまたはその他の降圧薬とで降圧について比較した試験、あるいは異なる降圧目標を比較した試験で、割り付け群それぞれが1,000人年以上であった試験を適格とした。 主要評価項目は、複合および個別の主要心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞・心不全または心血管死)と全死因死亡とした。 解析には26本の試験が組み込まれた。被験者総数は15万2,290例であり、そのうち3万295例が腎機能低下例(eGFR値<60mL/分/1.73m2で定義)であった。 メタ解析は、ベースライン時の腎機能に即して行われ、ランダム効果モデルを用いて、5mmHg降圧当たりのハザード比を算出して検討した。腎機能を問わず5mmHg降圧につき約6分の1イベントを抑制 その結果、プラセボと比較して、降圧治療は、CKDの有無に関係なく主要心血管イベントを抑制した。すなわち、非CKD群(eGFR値≧60mL/分/1.73m2)のハザード比(HR)は0.83(95%信頼区間[CI]:0.76~0.90)であり、SBPの5mmHg降圧につきイベントを約6分の1抑制する効果が認められ、CKD群でも同程度であった(HR:0.83、95%CI:0.79~0.88)。効果の差についてのエビデンスは得られなかった(均一性のp=1.00)。 またこの結果は、降圧が、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、もしくは利尿薬、βブロッカーのいずれのレジメンによって図られたかを問わず同程度であった。eGFR値が異なる患者の主要心血管イベントは、クラスエフェクトが異なる降圧薬によって変化するというエビデンスは得られなかった(均一性についてすべてのp>0.60)。

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新規抗VEGFR-2抗体薬、進行・再発胃がんの全生存期間を延長/Lancet

 初回化学療法後に増悪が認められた進行・再発の胃・胃食道接合部腺がん患者に対して、抗VEGFR-2抗体薬ラムシルマブ(Ramucirumab)単剤投与に生存ベネフィットがあることが報告された。米国・ハーバードメディカルスクールのCharles S Fuchs氏らが行ったプラセボ対照の無作為化二重盲検第3相国際共同試験「REGARD」の結果で、全生存期間(OS)の改善および無増悪生存期間(PFS)の延長がいずれも有意に認められたという。Lancet誌オンライン版2013年10月1日号掲載の報告より。初回化学療法後の進行例に単剤投与 胃がんの発症および進行には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と、VEGF受容体-2(VEGFR-2)を介したシグナル伝達および血管新生が関与している可能性がある。研究グループは、モノクローナル抗体VGEFR-2拮抗薬であるラムシルマブが、進行性胃がん患者の生存を延長するかを評価することを目的とした。 REGARD試験は、2009年10月6日~2012年1月26日に、29ヵ国119医療施設で行われ、24~87歳の胃がんまたは胃食道接合部腺がんで、初回化学療法(プラチナ製剤もしくはフッ化ピリミジン系薬剤)後に疾患進行が認められた患者を対象とした。 患者は、至適支持ケア+ラムシルマブ8mg/kgまたはプラセボを2週に1回静注で受けるよう、2対1の割合で無作為に割り付けられた。なお治療割り付けについて、試験スポンサー、参加者および研究者はマスキングされた。 主要エンドポイントは、全生存期間(OS)であった。また副次エンドポイントには無増悪生存期間(PFS)などが含まれた。ラムシルマブ群の全生存期間5.2ヵ月で、プラセボ群に対し有意に延長 355例の患者が無作為化を受けた(ラムシルマブ群238例、プラセボ群117例)。 OS中央値は、ラムシルマブ群5.2ヵ月(IQR:2.3~9.9)、プラセボ群3.8ヵ月(同:1.7~7.1)で、ラムシルマブ群の有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.776、95%信頼区間[CI]:0.603~0.998、p=0.047)。ラムシルマブによる生存ベネフィットは、その他の予後因子(原発部位の違い、腹膜転移有無など)による多変量補正後も変化しなかった(多変量HR:0.774、95%CI:0.605~0.991、p=0.042)。 PFSも、ラムシルマブ群2.1ヵ月、プラセボ群1.3ヵ月と、ラムシルマブ群で有意な延長が認められた(HR:0.483、95%CI:0.376~0.620、p<0.0001)。 有害事象については、ラムシルマブ群で高血圧症の割合が高かったが(16%対8%)、その他の有害事象については、ほとんど同程度であった(94%対88%)。 死亡例のうち試験薬に関連があるとみなされたのはラムシルマブ群5例(2%)、プラセボ群2例(2%)であった。 以上の結果を踏まえて著者は、「ラムシルマブは、初回化学療法後に進行した胃がん・胃食道接合部腺がん患者において単剤投与でも生存ベネフィットがある、初の分子標的薬である。今回の結果は、進行した胃がんにおいて、VEGFR-2は重要な治療ターゲットであることが確認された」と結論している。

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日常診療におけるGFR(糸球体濾過量)の評価には何を用いるべきか(コメンテーター:木村 健二郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(135)より-

CKD(慢性腎臓病)は末期腎不全と心血管疾患のリスクが高いことで注目されている。しかも、GFRが低下するほど、あるいは尿蛋白(アルブミン)量が増加するほど、それらのリスクが上昇する。したがって、日常診療でGFRを手軽に推測することは極めて重要である。 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド」では、血清クレアチニン、年齢および性別からGFRを推測する式(推算式、この式で計算したGFRをeGFRcreatとする)を公表し、また、早見表も提供してきた。しかし、血清クレアチニンは筋肉で作られるため、筋肉量が多いと血清濃度は上昇し、eGFRcreatは低下する。逆に、筋肉量が少ないと血清クレアチニン濃度は低下し、eGFRcreatは上昇する。したがって、筋肉量が極端に多かったり少なかったりする場合には、筋肉量に左右されないシスタチンCを用いたGFR(これをeGFRcysとする)が有用である。eGFRcysは「CKD診療ガイド2012」で公表され、早見表も提供された。eGFRcreat とeGFRcys の平均値を用いると、推算GFRの正確度はよくなる(GFRのゴールドスタンダードのイヌリン・クリアランスに近い値になる)ことが示されている。 本論文は、血清クレアチニンと血清シスタチンを測定した11の一般住民を対象とした研究(9万750例)と5つのCKD患者を対象としたコホート(2,960例)をメタ解析し、予後を推測するのにeGFRcreatとeGFRcys、あるいはその組み合わせのどれが優れているかをみたものである。結果はeGFRcysあるいはeGFRcreatとの組み合わせが、死亡や末期腎不全のリスクをより正確に表すというものであった。 日本人では、GFRのゴールドスタンダードであるイヌリン・クリアランスとの比較でしか検討されていないが、今後、予後との関連を検討する必要があることを本論文は示している。

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2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用

2型糖尿病における心血管疾患(CVD)予測因子として、NT-ProBNPを含む6つのバイオマーカーが有用であることが示唆された。関連のあったバイオマーカーは、NT-ProBNP、アポCIII(ApoCIII)、可溶性-RAGE(sRAGE)、高感度トロポニンT、IL-6およびIL-15の6つであった。演者のHelen C. Looker氏は、今回の結果についてIL-15が予測因子となることは新たな発見であり、ApoCIIIとsRAGEにおけるCVD発症との逆相関の関連についても、さらなる研究が必要であると語った。これまでに、2型糖尿病におけるCVD予測因子に有用とされるバイオマーカーは複数報告されている。そこで、CVD予測因子として有用なバイオマーカーを検索するため、5つのコホート研究の調査が実施された。本調査は、SUMMIT(SUrrogate markers for Micro- and Macrovascular hard endpoints for Innovative diabetes Tools)研究の一環である。対象となったコホート研究は、Go-DARTS(n=1,204)、スカニア糖尿病レジストリ(n=666)、MONICA/KORA(n=308)、IMPROVE(n=94)およびストックホルム研究(n=46)である。候補バイオマーカーとしては、糖尿病患者、非糖尿病患者を問わず、これまでの研究でCVDとの関連が報告された42のマーカーが選択された。年齢、性別、糖尿病罹患期間、BMI、血圧、HbA1c、トリグリセリド、LDL-C、HDL-C、eGFR、喫煙、薬物治療(降圧剤、アスピリン、脂質異常症治療薬およびインスリン使用を含む)を共変量として解析が行われた。主な結果は以下のとおり。2型糖尿病におけるCVD予測因子として、6つのバイオマーカー(NT-ProBNP、ApoCIII、sRAGE、高感度トロポニンT、IL-6、IL-15)が強い関連を認めた。●NT-ProBNP(OR = 1.74、95%CI:1.51~2.02)●ApoCIII(OR = 0.81、95%CI:0.73~0.91)●sRAGE(OR = 0.86、95%CI:0.78~0.96)●高感度トロポニンT(OR = 1.28、95%CI:1.12~1.47)●IL-6(OR = 1.19、95%CI:1.07~1.33)●IL-15(OR = 1.16、95%CI:1.05~1.28)NT-proBNPおよび高感度トロポニンTが2型糖尿病におけるCVD発症に関連していることが明らかになった。IL-6は一般的なCVD予測因子としても知られているが、2型糖尿病患者においても同じくCVD予測因子となることが本調査で確認された。IL-15と2型糖尿病におけるCVD発症の関連性が、今回新たに報告された。ApoCIIIとsRAGEにおいてCVD発症と逆相関の関連が示唆された。Looker氏は「2型糖尿病患者におけるCVD予測因子となるマーカーが、今後の研究によって、さらに明確化されることを願っている」と講演を終えた。

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パニツムマブの負の効果予測因子、KRAS以外にもある可能性/NEJM

 上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体であるパニツムマブ(Pmab、商品名:ベクティビックス)は、KRAS遺伝子エクソン2の変異を有する転移性大腸がん(mCRC)患者では効果が低いことが報告されている。フランス・Institut de Cancerologie de l’ Ouest(ICO)Rene GauducheauのJean-Yves Douillard氏らは、PRIME試験についてバイオマーカー解析を行い、KRAS遺伝子エクソン2変異以外の遺伝子変異も、Pmabの負の効果予測因子となる可能性を示した。NEJM誌2013年9月12日号掲載の報告。変異有無別の有用性を、前向き、後ろ向きに解析 PRIME試験は、mCRCの1次治療においてPmab+FOLFOX4(オキサリプラチン/フルオロウラシル/ロイコボリン)併用療法とFOLFOX4単独療法の有用性を比較する国際的な多施設共同無作為化第3相試験。 今回、研究グループは、前向きおよび後ろ向きのバイオマーカー解析を行い、RAS遺伝子(KRASとNRAS)またはBRAF遺伝子の変異の有無別に、Pmab+FOLFOX4併用の有効性と安全性をFOLFOX4単独と比較した。 KRAS遺伝子エクソン2の変異のないmCRC患者639例には、KRAS遺伝子エクソン3、4、NRAS遺伝子エクソン2、3、4、BRAF遺伝子エクソン15のうち1つ以上の変異が認められた。遺伝子変異の検査結果は、RAS遺伝子が90%(1,060/1,183例)から、BRAF遺伝子は52%(619/1,183例)から得られた。RAS遺伝子変異のない患者には有効 RAS遺伝子変異のない512例における無増悪生存期間(PFS)中央値は、Pmab+FOLFOX4併用群の10.1ヵ月に対し、FOLFOX4単独群は7.9ヵ月であり、有意な差が認められた(併用療法による病態進行または死亡のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.58~0.90、p=0.004)。全生存率(OS)中央値も、併用群が26.0ヵ月と、FOLFOX4単独の20.2ヵ月に比べ有意に延長した(同:0.78、0.62~0.99、p=0.04)。 RAS遺伝子変異のある548例では、PFS中央値は併用群が7.3ヵ月、FOLFOX4単独群は8.7ヵ月(HR:1.31、95%CI:1.07~1.60、p=0.008)、OS中央値はそれぞれ15.6ヵ月、19.2ヵ月(同:1.25、1.02~1.55、p=0.03)であり、併用群が有意に不良であった。 KRAS遺伝子エクソン2に変異がなく、他のRAS遺伝子変異を有する108例のPFS中央値は、併用群が7.3ヵ月、FOLFOX4単独は8.0ヵ月(HR:1.28、95%CI:0.79~2.07、p=0.33)、OS中央値はそれぞれ17.1ヵ月、18.3ヵ月(同:1.29、0.79~2.10、p=0.31)であり、いずれも両群間に差を認めなかった。 KRAS遺伝子エクソン2の変異を有する440例のPFS中央値は、併用群が7.3ヵ月、FOLFOX4単独群は8.8ヵ月(HR:1.29、95%CI:1.04~1.62、p=0.02)、OS中央値はそれぞれ15.5ヵ月、19.3ヵ月(同:1.24、0.98~1.57、p=0.07)であり、KRAS遺伝子エクソン2に変異がなく他のRAS遺伝子変異のある患者とほぼ一致していた。 BRAF遺伝子変異は不良な予後の予測因子である可能性が示唆された。また、新たな有害事象の発現はなく、RAS遺伝子変異のない患者および変異のある患者の安全性プロフィールは、KRAS遺伝子エクソン2変異のない患者と同じであった。 著者は、「KRAS遺伝子エクソン2変異に加え他のRAS遺伝子変異を有する転移性大腸がん患者では、Pmab+FOLFOX4併用療法は有効ではないことが予測される。RAS遺伝子変異のない患者では本併用療法が有効であった」とまとめ、「これらの知見を確定するには抗EGFR療法に関する統合解析またはメタ解析を要する」と指摘している。

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予後予測能が高まるeGFR算出法/NEJM

 シスタチンC値の単独またはクレアチニン値との併用による推定糸球体濾過量(eGFR)算出は、多様な集団において、死亡および末期腎不全(ESRD)リスクなどの転帰予測を改善することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMichael G. Shlipak氏らがメタ解析の結果、報告した。これまで、シスタチンC値にクレアチニン値を加味することが、eGFR算出精度を改善することは知られていた。しかし、多様な集団における慢性腎臓病(CKD)患者の検出や病期分類およびリスク層別化にもたらす効果については明らかではなかった。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告より。クレアチニン値またはシスタチンC値の単独、または両者の組み合わせを評価 研究グループは解析に組み込む試験について、ベースラインの血清クレアチニン値またはアルブミン尿のデータが入手可能であった被験者を1,000例以上含むもの、また何らかの重大なアウトカムのイベント件数が50件以上あるものを適格とした。検索の結果、11件の一般集団対象試験(被験者総計9万750例)、5件のCKDコホート試験(被験者計2,960例)を解析に組み込んだ。 クレアチニン値単独またはシスタチンC値単独、あるいは両者を組み合わせて算出したeGFRについて、死亡率(15コホート、1万3,202例)、心血管系の原因による死亡率(12コホート、3,471例)、ESRD発生率(7コホート、1,654例)との関連を比較し、シスタチンC値を用いた場合の再分類の改善の程度を評価した。シスタチンC値を用いたネット再分類改善度は、死亡0.23、ESRDは0.10 結果、一般集団コホートにおいて、eGFR 60mL/分/1.73m2未満であった人の割合は、シスタチンCベース算出のほうがクレアチニン・ベース算出よりも高かった(13.7%対9.7%)。 クレアチニン値ベースのeGFR分類カテゴリ(0~14、15~29、30~44、45~59、60~89、90以上[mL/分/1.73m2])と比較した、シスタチンC値を用いた再分類(高値または低値への再分類、または変動なし)によるアウトカムリスクへの影響についてみた結果、すべてのeGFR分類カテゴリにおいて、高値へのeGFR再分類は、本検討の3つのアウトカム(全死因死亡、心血管系死亡、ESRD)のリスク減少と関連していた。一方で、低値へのeGFR再分類は同リスク増大と関連していた。 クレアチニン値ベースと比較したシスタチンC値を用いた場合のネット再分類改善度は、死亡について0.23(95%信頼区間[CI]、0.18~0.28)、ESRDについては0.10(同:0.00~0.21)であった。 結果は、5つのCKDコホートにおいても、またクレアチニン値とシスタチンC値の両者を用いた場合においてもほぼ変わらなかった。

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DPP-4阻害薬、糖尿病の虚血性イベント増減せず/NEJM

 DPP-4阻害薬サキサグリプチン(商品名:オングリザ)は、心血管イベント既往またはリスクを有する2型糖尿病患者の治療において、心不全入院率は上昇するが虚血性イベントは増大も減少もしなかったことが、米国・ハーバードメディカルスクールのBenjamin M. Scirica氏らによるSAVOR-TIMI 53試験の結果、示された。著者は「サキサグリプチンは糖尿病患者において、血糖コントロールを改善するが、心血管リスクを低下させるにはその他のアプローチが必要である」と結論している。本研究は、2013年9月2日、オランダ・アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。1万6,492例を対象にサキサグリプチンの有効性と安全性を評価 SAVOR-TIMI 53試験は、心血管イベントリスクを有する患者の心血管アウトカムについてサキサグリプチンの有効性と安全性を評価する第4相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、HbA1c 6.5~12.0%で心血管イベントの既往またはリスクを有する2型糖尿病患者であった。 26ヵ国788施設において1万6,492例の被験者が1対1の割合で、サキサグリプチン(5mg/日、eGFR≦50mL/分の患者は2.5g/日)を投与される群(8,280例、平均年齢65.1歳、女性33.4%、2型糖尿病罹病期間中央値10.3年、HbA1c 8.0%、BMI平均値31.1)またはプラセボを投与される群(8,212例、65.0歳、32.7%、10.3年、8.0%、31.2)に割り付けられ、中央値2.1年間(最長2.9年間)追跡を受けた。なお担当医は、血糖降下薬を含むその他の薬物を調整することが許されていた。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の複合であった。心不全による入院は増大するが、その他の虚血性イベントは増減せず 主要エンドポイントの発生は、サキサグリプチン群613例、プラセボ群609例であった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で7.3%対7.2%、サキサグリプチンのハザード比は1.00(95%信頼区間[CI]:0.89~1.12)だった(優越性p=0.99、非劣性p<0.001)。この結果は、治療継続(投与を中止しなかった)患者における解析でも同様であった(ハザード比:1.03、95%CI:0.91~1.17、p=0.60)。 主要副次複合エンドポイント(心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症入院・冠動脈再建術・心不全)の発生は、サキサグリプチン群1,059例、プラセボ群1,034例だった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で12.8%、12.4%で、サキサグリプチンのハザード比は1.02(95%CI:0.94~1.11)だった(p=0.66)。 個別にみた副次エンドポイントでは、心不全による入院について有意差がみられ、プラセボ群よりもサキサグリプチン群のほうがより発生が多かった(3.5%対2.8%、ハザード比:1.27、95%CI:1.07~1.51、p=0.007)。 急性膵炎(サキサグリプチン群0.3%、プラセボ群0.2%)および慢性膵炎(両群とも0.1%)と診断された割合は、両群で同程度であった。 以上の結果から著者は、「DDP-4阻害薬サキサグリプチンは、心不全による入院を増大したが、虚血性イベントは増大も減少もしなかった。サキサグリプチンは血糖コントロールを改善するが、2型糖尿病の患者において心血管リスクを低下させるには、その他のアプローチが必要である」と結論している。

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ACSに対する早期侵襲的治療vs.保存的治療/BMJ

 急性冠症候群(ACS)患者に対し、早期侵襲的治療は保存的治療と比較して、わずかだが急性腎損傷(AKI)リスクを増加することが示された。透析および末期腎疾患(ESRD)進行リスクについては差はなかった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らによる傾向マッチコホート研究の結果、報告された。先行研究において、侵襲的治療後のAKIがESRDや死亡を含む有害転帰と関連していることが示されており、そのため高リスクの腎臓病を有するACS患者に対しては、早期侵襲的治療が行われない一因となっていた。しかし、腎臓の有害転帰との関連について早期侵襲的治療と保存的治療とを比較した検討は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年7月5日号掲載の報告より。非ST上昇型ACSの成人患者1万516例を対象に傾向スコア適合コホート研究 研究グループは、ACSの早期侵襲的治療が腎臓の有害転帰や生存と関連しているのか、また慢性腎臓病リスクがある患者では早期侵襲的治療がリスクとなるのか有用となるのかを調べることを目的とした。 2004~2009年にカナダのアルバータ州の急性期病院で被験者を募り、傾向スコア適合コホート研究を行った。 被験者は、非ST上昇型ACSの成人患者1万516例であった。ベースラインのeGFRで階層化し、傾向スコアで1対1の適合を行い、早期侵襲的治療(入院2日以内での冠動脈カテーテルを行う)の介入を行った。 主要評価項目は、早期侵襲的治療を受けた患者と保存的治療を受けた患者で比較した、AKI、透析を必要とする腎損傷、ESRDの進行、および全死因死亡のリスクとした。わずかにAKIリスクを増大 1万516例のうち、早期侵襲的治療を受けたのは4,276例(40.7%)だった。 患者特性を同等に適合させたコホート群(6,768例)でアウトカムを比較した結果、早期侵襲的治療群(3,384例)は保存的治療群と比較して、AKIリスク増大との関連が認められた(10.3%対8.7%、リスク比:1.18、95%信頼区間[CI]:1.03~1.36、p=0.019)。 しかし、透析を必要とした腎損傷のリスクについては差が認められなかった(0.4%対0.3%、同:1.20、0.52~2.78、p=0.670)。 また、追跡期間中央値2.5年間のESRD進行リスクも、両群間で差はみられなかった(100人年当たりのイベント件数0.3対0.4、ハザード比:0.91、95%CI:0.55~1.49、p=0.712)。 一方で、早期侵襲的治療群のほうが、長期的な死亡は有意に低下した(100人年当たり2.4対3.4、同:0.69、0.58~0.82、p<0.001)。 上記の関連性は、ベースラインでeGFR値が異なる患者間で一貫しており、腎臓病既往患者と非既往患者における早期侵襲的治療のリスクとベネフィットは同程度であることが示唆された。 著者は、「ACSへの早期侵襲的治療は保存的治療と比較して、わずかにAKIリスクを増大するが、透析やESRDの長期的進行リスクとは関連していなかった」と結論している。

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分子標的薬による皮膚障害対策~皮膚科とがん治療専門科との連携

がん治療における分子標的薬は、高い治療効果が得られる一方、皮膚障害への対応が必要となる薬剤が少なくない。分子標的薬による皮膚障害は治療効果に相関することから、皮膚障害をコントロールしながら治療を継続することが重要である。そのため、皮膚科とがん治療専門科との連携が求められるが、その取り組みはまだ手探り状態といえる。第112回日本皮膚科学会総会(2013年6月14~16日、横浜)では、「皮膚科と腫瘍内科、最良の連携体制を模索する」と題した皮膚科と腫瘍内科のジョイントセミナーが開催された(共催:第112回日本皮膚科学会総会/特定非営利活動法人JASMIN、後援:日本臨床腫瘍学会)。座長は東京女子医科大学皮膚科学教授 川島 眞氏と和歌山県立医科大学第三内科学教授 山本信之氏で、皮膚科医、腫瘍内科医、看護師によるパネルディスカッション形式で行われた。その内容をレポートする。分子標的薬の登場により皮膚障害のマネージメントとチーム医療が重要に座長の川島氏は、ケアネット会員の皮膚科医を対象に行ったインターネットによるアンケート調査の結果から、「第一線の皮膚科医は限られた情報のなかで分子標的薬による皮膚障害の診療に日常的に取り組んでおり、分子標的薬の皮膚障害に対し主体的に取り組もうとする意識の高さもうかがえる」と考察した。さらに、「今後、診療科間あるいは病診連携などの課題を解決しながら、分子標的薬を用いたがん治療を支えるために皮膚科医の果たすべき役割は大きい」と述べ、その役割の提示やこれらの治療に携わる皮膚科医が必要と指摘した。同じく座長の山本氏は、腫瘍内科医として、まず、皮膚科医に向けてがんのチーム医療へのより積極的な参画を呼びかけた。山本氏が専門とする肺がん治療においては、EGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)はいまや欠かせないキードラッグとなっているが、その一般的な有害事象に皮疹がある。従来は薬剤による皮疹は中毒疹であり、その時点で治療を中断することになるが、EGFR-TKIは皮疹が強いほどがんに対する治療効果が高いため、皮疹を上手にマネージメントしながら治療を継続することが、治療効果を高める一番の方策である。さらに、わが国でも承認申請が予定されている第2世代EGFR-TKIのアファチニブでは、グレード3以上の皮疹の発現率が第1世代EGFR-TKIより高く、さらに、日中韓で実施した臨床試験において日本における重症の皮疹の発現率がとりわけ高かったことから、今まで以上に皮疹のマネージメントが重要になってくる。そのためにも、がんのチーム医療、とくに分子標的薬による治療に関しては皮膚科医の積極的な参画が必要であると、山本氏は強調した。がん治療専門施設での皮膚障害に対する取り組みパネリストからは、まず、国立病院機構四国がんセンター消化器内科医長 仁科智裕氏から、大腸がん治療においても分子標的薬をうまく使いこなすことが予後の改善につながること、抗EGFR抗体による皮膚障害は治療効果と相関するため、治療継続には皮膚障害のコントロールが重要であることが提示された。仁科氏らが実施している小規模なチームカンファレンスは、消化器内科医、形成外科医、皮膚科医、薬剤師、看護師、病理科、医療ソーシャルワーカーで構成している。しかしながら、四国がんセンターには皮膚科がないため、愛媛大学の皮膚科医師に週1回(現在は2週に1回)参加してもらい、皮膚障害の悪化時に対処を依頼しているという。愛媛県は、通院のための交通の利便性が悪く、患者さんが皮膚障害でつらい場合でも受診が難しい。仁科氏は、患者さんのために皮膚科とがん治療専門施設が連携し、よりよいがん治療を患者さんに提供できる環境が必要と指摘した。副作用メモを作成し、症状をマネージメント副作用のマネージメントには、両科の医師間のみならず看護師など医療スタッフとの連携も重要となる。静岡県立静岡がんセンター通院治療センターの看護師である小又美重子氏は、自施設で行っている副作用に対する取り組みについて紹介した。小又氏らは、消化器内科医、皮膚科医、薬剤師、看護師でチームを組み、大腸がんにおける抗EGFR抗体による副作用に対して、それぞれの重症度を具体的な症状で表現した副作用メモを作成している。患者さんの症状に合わせた薬剤を選択して症状をコントロールしているが、症状が治まったあとも再燃の可能性があるため、毎回、症状を丁寧に見ることを意識しているという。また、皮膚障害が悪化し、腫瘍内科医だけでは対応できない場合には皮膚科医に協力を依頼しているが、看護師に症状がつらいとの訴えがあったときには、直接、看護師から皮膚科医に連絡をとり症状マネージメントができる体制をとっていることも紹介した。皮膚科医間、腫瘍内科医、看護師らとの情報交換・役割分担が重要当初は皮疹の原因となっている薬剤名すらわからず、治療に苦慮した経験を持つ岡山大学大学院医歯薬学研究科皮膚科学助教 白藤宜紀氏は、自身の皮膚障害に対する取り組みや自院における経験から、役割分担の重要性を指摘した。分子標的薬が上市された当初、抗がん剤メーカーから皮膚科医に対して十分な説明がなく治療開始時に知識が不足していたため、白藤氏は積極的に文献を収集し、できるだけ多くの患者さんを診察して経験を積んだという。その結果、白藤氏自身は治療選択に迷うことが少なくなったが、他の皮膚科医の診療経験の機会を減少させることになり、皮膚科医の間で治療にバラツキが出てしまった。そのため、皮膚科医間で積極的に情報を共有するようにしたとのこと。また、腫瘍内科(外科)医、看護師、皮膚科医における情報交換や、院内の治療マニュアルやスキンケアマニュアルの作成により、軽症の皮膚障害の対処は看護師や腫瘍内科医で行えるようになり、現在は、比較的重症な場合のみ皮膚科で対処するようになったとのことである。これらの経験から、白藤氏は、皮膚科医が分子標的薬治療に積極的に関わるためには、多数の患者さんの治療に積極的に関わることも重要だが、皮膚科医間、腫瘍内科医、看護師らと情報交換を行い役割分担することが重要と述べた。さらに、「抗がん剤メーカーに対して、がん治療専門医だけでなく皮膚科医にも院内導入前に情報を十分提供するように訴えていくことが必要」とコメントした。皮膚科は腫瘍内科から何を期待されているか?旭川医科大学皮膚科学教授 飯塚 一氏は、同大で分子標的薬による治療が開始された当初、腫瘍内科と連携し皮膚障害のほとんどの症例においてコンサルテーションを行っていた。飯塚氏は、皮膚科が腫瘍内科から期待されていることとして、治療中に出現した皮疹の評価と対処、さらに、特異疹の診断、抗腫瘍薬の血管外漏出への対処があるという。皮膚科では、分子標的薬による皮膚障害以外に、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹、特徴的薬疹、特徴的皮疹、悪性黒色腫などの皮膚の悪性腫瘍、膠原病、乾癬治療(生物学的製剤投与)による副作用など、診るべき皮膚疾患や症状は数多いという現状を説明しつつ、分子標的薬による皮膚障害への対応も当然のこととした。腫瘍内科医と皮膚科医から同じ説明を受けることで患者は納得ディスカッションにおいて、飯塚氏は、患者さんへの説明に関して、「皮膚障害について腫瘍内科医と皮膚科医から同じ説明をされると患者さんの納得度が違う。同じ内容を両者から説明することは大事ではないか」と指摘した。川島氏も「皮膚科医が腫瘍内科医と異なる説明を行うことは不信感につながる」と述べ、さらに「分子標的薬による皮膚障害の診療経験がない皮膚科医は、分子標的薬を中止させていることもあるのではないか。実地医家の皮膚科医に広く対処方法などの情報が届けられていないことが問題だが、どうすれば情報伝達できるか」と課題を提起し、「皮膚科学会としても対策を検討する必要がある。今後、日本臨床腫瘍学会と連携してこの課題に対応していきたい」と結んだ。

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エキスパートに聞く!「内科医がおさえるべき皮膚診療ポイント」Q&A part2

CareNet.comでは『内科で診る皮膚疾患特集』を配信するにあたり、事前に会員の先生より質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、三橋善比古先生にご回答いただきましたので、全2回でお届けします。患者さんから黒色の色素斑が良性か悪性か聞かれ、判断が難しいことがあります。すべてを皮膚科専門医に紹介するわけにもいかず困ります。どのように対処したらよいでしょうか?黒色の悪性皮膚疾患の代表は悪性黒色腫と考えます。臨床診断の目安としてABCDE基準を紹介します。Aはasymmetry、非対称性かどうかです。鑑別対象になる良性の色素細胞性母斑は、同じ速度でゆっくりと拡大するので円型が基本です。悪性黒色腫は拡大する速度が方向によって異なるので非対称性になることが多いのです。Bはborder、境界が明瞭でないことです。一方、母斑は明瞭であることが多いのです。Cはcolor、色調です。母斑は均一ですが、悪性黒色腫は黒色調にムラがあるほか、脱色素を生じて白い部分や、炎症のため赤いところなど、多彩な色調になるのです。Dはdiameter、直径です。母斑は先天性のものを除けば小さいものが多く、手掌と足底では4mm以下、それ以外では6mm以下がほとんどです。この大きさを超えたものは悪性黒色腫の可能性があります。最後のEはElevation、隆起に注意します。ただ、母斑も真皮内の母斑細胞が増加するとドーム状に隆起しています。平坦だった色素性病変が隆起してきたら、急速に細胞増殖が生じていると考えられます。悪性黒色腫の徴候です。基底細胞癌も黒色の悪性腫瘍です。中高年者の顔面や体の正中部に好発します。角化がみられず、表面がつるっとしています。良性で、中高齢者に好発する脂漏性角化症(老人性疣贅)と区別する必要があります。脂漏性角化症は角化していて、表面がくすんだ感じがあります。悪性黒色腫と色素細胞性母斑、基底細胞癌と脂漏性角化症は、ダーモスコピー検査で区別できることが多いです。慣れてくれば、基底細胞癌は直径1~2mm程度でも疑うことができるようになります。2種の塗り薬の重ね塗りはどんな場合に意味があるのでしょうか?外用薬の重ね塗りは、外用薬の相乗効果を期待して行われます。保湿薬とステロイド薬、ステロイド薬と亜鉛化軟膏などの組み合わせがあります。前者は乾燥皮膚で湿疹もみられるときに、乾燥した面に保湿薬を塗り、その後、湿疹性変化が見られる部分にステロイド薬を塗ってもらいます。相乗効果のほか、ステロイド薬の塗り過ぎを防ぐ効果も期待できます。後者は湿潤した湿疹性病変に、まずステロイド薬を塗り、その上に亜鉛化軟膏をかぶせて滲出液を軽減する効果を期待します。一方、2回塗ることは、患者には時間や労力の負担になり、コンプライアンスを下げる欠点があります。そのため、初めから2種類の外用薬を混合して処方することがあります。こちらの欠点は、組み合わせによってはpHや組成に変化を来して、期待した効果が得られなくなる可能性があることです。食物アレルギーと皮膚疾患にはどのような関連があるのでしょうか?食物アレルギーはI型アレルギーです。I型アレルギーの皮膚症状は蕁麻疹です。したがって、食物アレルギーでは蕁麻疹を生じ、重篤な場合はショックを引き起こします。一方、アトピー性皮膚炎でも食物の関連が指摘されています。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚病変は湿疹です。湿疹はIV型アレルギーで生じます。したがって、アトピー性皮膚炎における食物の関与は、単純なI型アレルギーとしてではないと考えられます。ただし、アトピー性皮膚炎患者が純粋な食物アレルギーを合併していることがあります。そのような、合併ではないアトピー性皮膚炎に対する食物の関与は、I型アレルギーの特殊型である遅延相反応や、IV型アレルギーの特殊型であるTh2型反応などで生じている可能性があります。これらの反応では、純粋なI型アレルギーのように蕁麻疹やショックを生じることはありません。分子標的薬の副作用対策とその予防法について教えてください薬剤がいったん体内に入った後で全身に生じる副作用は、従来は薬疹と呼ばれ、その対応は当該薬剤を中止することでした。中止する理由は、皮膚に生じた症状はアレルギーや中毒によるもので、そのまま薬剤摂取を続けると、いずれ障害は体内の全臓器に波及する可能性があると考えられるためでした。ところが、分子標的薬登場後、この考えを修正する必要が出てきました。分子標的薬は特定の分子を標的にしているため、アレルギーや中毒ではなく、作用の一つとして皮膚に症状が現れることが多いのです。ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ塩酸塩(同:タルセバ)などのEGFR阻害薬の場合は、EGFRが毛嚢細胞に大量に発現しているため、薬の作用として毛嚢を破壊し、その結果、毛嚢炎、ざ瘡、ざ瘡様発疹などと表現される皮膚病変を生じます。この場合、皮膚病変は薬の効果の一つと考えることもできます。そのため、中止する必要はないことになります。薬疹ではなく、皮膚障害と呼んで区別しているのはこのためです。皮膚病変を対症的に治療して、我慢できる程度であれば原疾患の治療を続けることになります。ところが、ここで大きな問題があります。このような分子標的薬も、従来通りのアレルギー性の薬疹を起こすことがあることです。中毒性表皮壊死症(TEN)やStevens-Johnson症候群などの重篤な病型も報告されています。発疹出現時、各分子標的薬に特有の皮膚障害か従来の薬疹かを区別することが大事です。これは、時に皮膚科専門医にも難しいことがあります。生検してはいけない皮膚病変にはどのようなものがあるのでしょうか?生検してはいけない皮膚病変はないと思います。生検のデメリットと生検で得る可能性がある情報のどちらが大きいかで決定するべきです。たとえば悪性黒色腫は生検すべきではない、とする考えがあります。しかし、生検しなければ診断できないことがあります。また、治療を決定するための深さを知るためには生検が必要です。悪性黒色腫が考えられるときの生検は、できる限り、病変内を切開するincisional biopsyではなく、病変全体を切除するexcisional biopsyを行います。また、生検の結果、悪性黒色腫の診断が確定することを考えて、1ヵ月以内に拡大切除ができることを確認しておきます。血管肉腫も必要最小限の生検にとどめるべき疾患です。生検によって転移を促進する可能性があります。しかし、診断確定のための生検は必要です。治療する環境を整えてから生検するのがよいでしょう。爪の生検は悪性疾患が考えられるときや、炎症性疾患でも、診断確定することで大きな利益がある場合にとどめるべきです。爪に不可逆的な変形を残す可能性があることをよく説明して、患者の同意を得て行うことが必須です。前胸部の生検は大きな瘢痕を残したり、ケロイド発生の危険性があります。組織検査のメリットがあるかどうか考え、患者に説明してから行うべきでしょう。

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心不全への標準治療に加えたアリスキレン投与、長期アウトカム改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対し、利尿薬やβ遮断薬などの標準的治療に加え、直接的レニン阻害薬の降圧薬アリスキレン(商品名:ラジレス)の投与を行っても、6ヵ月、12ヵ月後のアウトカム改善は認められなかったことが、米国・ノースウェスタン大学のMihai Gheorghiade氏らによるプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告された。研究グループは、先行研究における、心不全患者に対するアリスキレン投与は脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を有意に低下し良好な血行動態をもたらすといった報告を踏まえて、アリスキレンの長期アウトカム改善の可能性に関する本検討を行った。JAMA誌2013年3月20日号掲載の報告より。世界316ヵ所で、心不全入院患者1,639例を無作為化 研究グループは2009年5月~2011年12月にかけて、南・北米、ヨーロッパ、アジアの316ヵ所の医療機関を通じ、心不全で入院した患者1,639例を対象に無作為化試験を行った。アリスキレンを、標準的な治療に加え投与した場合のアウトカムについて比較した。 被験者は18歳以上で、左室駆出率(LVEF)40%以下、BNP値400pg/mL以上、またはN末端プロBNP(NT-proBNP)値1,600pg/mL以上であった。また、水分過負荷の徴候や症状も認められた。 主要アウトカムは、6ヵ月後および12ヵ月後の心血管死または心不全による再入院とした。心血管死または心不全のイベント発生率、両群で同程度 被験者のうち最終的に分析対象に組み込まれたのは1,615例だった。平均年齢は65歳、平均LVEFは28%、平均推定糸球体濾過量(eGFR)は67mL/分/1.73m2だった。また被験者のうち41%が糖尿病を有していた。無作為化時点で利尿薬を服用していたのは95.9%、β遮断薬は82.5%、ACE阻害薬またはARBは84.2%、アルドステロン受容体拮抗薬は57.0%だった。 6ヵ月後の主要エンドポイント発生率は、アリスキレン群24.9%(心血管死:77例、心不全による再入院:153例)に対し、プラセボ群は26.5%(同:85例、同:166例)であり、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.76~1.12、p=0.41)。 12ヵ月後の同イベント発生率についても、アリスキレン群35.0%に対しプラセボ群37.3%と、両群で有意差はなかった(同:0.93、0.79~1.09、p=0.36)。 なお、高カリウム血症、低血圧症、腎機能障害や腎不全の発症率は、いずれもアリスキレン群で高率だった。

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Triple negative disease: Germ-line mutations, molecular heterogeneity and emerging target (William D. Foulkes, Canada)

トリプルネガティブ病:胚細胞変異、分子学的異質性、期待される標的このプレゼンテーションの目的は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における胚細胞遺伝子変異の頻度、TNBCをさらにいくつかの異なったタイプに分類すること、これらの結果をTNBCの治療に適用することである。BRCA1は1994年に同定され、数千の異なった変異が認められており、膨大な創始者変異が存在する。BRCA1の変異があると、乳がんおよび卵巣がんの生涯リスクが高くなり、他の部位でのがんのリスクも増大する。また、TNBCの頻度が高いことが特徴であり、DNA修復に重要な役割を果たし、BRCA2やPALB2と相互作用する。TNBCにおけるBRCA1変異保有の頻度は、過去の報告から約10~20%である。またBRCA2変異保有者においてもTNBCはまれではない。PALB2の変異はBRCA1/2よりも少ない。PALB2変異保因者におけるTNBCの頻度は40%程度と見込まれる。これらBRCA1/2、PALB2の変異を同定する意義は、TNBCを持った女性への治療および新たながんへの対策、家族に対する予防と早期発見である。それらの変異が認められなくても家族歴がある場合には、TNBCに関連しているようにみえるさまざまなSNPsが全ゲノム関連解析(GWAS:Genome-wide association study)の研究から同定された。臨床上の利益は非常に少ないが、BRCA1/2のような重要なアレルにおけるリスクを修飾している可能性がある。また新しい経路への手がかりとなり、いくつかのSNPsは体細胞変異と連携しているかもしれない。画像を拡大するTNBCはER/PgR/HER2陰性の均一な1つのタイプとして同定されているが、しかし組織学的にはかなり不均質であり、Lehmannら(2011年)は、21のデータセットからの587例のTNBCを、マイクロアレイの発現より、7つのサブグループ、すなわちBL1,BL2,IM,M,MSL,LAR(もう1つのグループは不安定であり、省略された)に分類した。そのうち50%未満がbasal-likeであり、注目すべきことに14%がluminal Aであった。免疫療法への可能性としては、ER陰性では特に腫瘍へのリンパ球浸潤が予後と関連していて、それは年齢によって逆転しているようである。画像を拡大するTNBCにおける次世代シーケンサーの研究として、ブリティッシュコロンビアのグループが、104例の原発性TNBCを調べたところ、クローンの頻度が広く変化しており、BLBCが最もクローンの多様性があり、p53、PI3K、PTENの変異が優位であった。basal のTNBCではnon basalと比べp53変異の頻度が高く(62%対43%)、クローンの集団と転位の数が多かった。Perouら(2013年)は、86例のTNBCを調べ、変異の頻度はTP53が79.1%と高かったが、それ以外はPIK3CAが10.4%、RB1が4%、MLL3とNF1がそれぞれ3%と低かった。basal-likeにおける治療の標的として考えられるものは、遺伝子の増幅(PI3CA,KRAS,BRAF,EGFR,FGFR1,FGFR2,IGFR1,KIT,MET,PDGFRA)であるが、HIFα/ARNT経路の活性化も高頻度に観察されている。TNBCはしばしば予後不良とされているが、多くの女性は治癒しており、TNBCの多くが進行性であるものの、TNBCのあるサブセットでは従来の治療によく反応し、pCRとともに予後が改善する。その一方でpCRに至らなかったものは非常に予後が悪い。アントラサイクリンにタキサン系薬剤を加えることでER陽性乳がんよりもベネフィットが期待できる。プラチナ製剤はBRCA変異をもった腫瘍以外ではまだ結論は出ていない。BRCA変異はPARP阻害剤の効果と関係しており、プラチナ製剤への反応性も高い。またBRCA1関連乳がんでは、PI3K阻害剤(BKM120)のPARP阻害剤(olaparib)への相乗効果が期待されている。Banerjeeら(2012年)は、TNBC72例中5例に遺伝子の融合を見出しており、これも治療標的の1つとなるかもしれない。レポート一覧

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収縮期心不全患者に対するESA製剤、臨床アウトカムを改善しない:RED-HF試験/NEJM

 軽症~中等度の貧血を有する慢性収縮期心不全患者について、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)による治療は臨床アウトカムの改善には結びつかなかったことが、スウェーデン・イェーテボリ大学のKarl Swedberg氏らによる無作為化二重盲検試験「RED-HF」で示された。収縮期心不全患者において貧血はよくみられる症状で、腎機能やRAS阻害薬服用との関連が示されている。同患者では症状や運動耐容能の悪化や、入院、死亡などの転帰が貧血のない患者と比べて高率であり、先行研究においてESA製剤の腎性貧血治療薬ダルベポエチンアルファによる造血効果が運動耐容能の改善や貧血による入院を低下する可能性が示唆されていた。一方でESA製剤は、慢性腎臓病患者の心血管アウトカムは改善しないこと、ヘモグロビン高値を目標とする治療においてアテローム血栓性イベントのリスクを増大したといった試験報告もあった。NEJM誌オンライン版2013年3月10日号掲載報告より。2,278例をダルベポエチンアルファ群とプラセボ群に無作為化 RED-HF試験は、軽症~中等度の貧血(ヘモグロビン値:9.0~12.0g/dL)の慢性収縮期心不全患者2,278例を対象とした。被験者は2006年6月13日~2012年5月4日の間、33ヵ国453施設で、ダルベポエチンアルファによる治療を受ける群(ヘモグロビン達成目標値13g/dL;1,136例)とプラセボを受ける群(1,142例)に割り付けられ追跡された。ベースラインでの両群の患者特性は同等であり、平均年齢72.0歳、女性が41%、65%がNYHA心機能分類IIIまたはIV、左室駆出率中央値31%、eGFR値45.7mL/分/1.73m2であった。 主要アウトカムは、全死因死亡・心不全悪化による入院の複合であった。主要アウトカムに有意差なし、副次アウトカムも 本試験は、追跡期間中央値28ヵ月時点で終了となった。 主要アウトカムの発生は、ダルベポエチンアルファ群576/1,136例(50.7%)、プラセボ群565/1,142例(49.5%)であった[ハザード比(HR):1.01、95%信頼区間(CI):0.90~1.13、p=0.87]。 副次アウトカム(心血管系による死亡と心不全悪化による初回入院の複合:p=0.92、心血管系による死亡:p=0.56)や、その他アウトカムもすべて有意差はみられなかった。 致死的・非致死的脳卒中の発生は、ダルベポエチンアルファ群42例(3.7%)、プラセボ群は31例(2.7%)であった(p=0.23)。血栓塞栓性有害イベントの発生は、それぞれ153例(13.5%)、114例(10.0%)であった(p=0.01)。がん関連の有害事象発生についても、両群で同程度であった。 以上の結果を踏まえて著者は、「軽症~中等度の貧血を有する慢性収縮期心不全患者について、ダルベポエチンアルファによる治療を支持しない」と結論している。

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