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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。1日に尿に排泄される糖は、約60g程度と聞いています。この量は血糖コントロールの改善に差が出てくるのでしょうか、ご教示ください。健常人では糸球体から180g/日(血糖値100mg/dLの場合)の糖が濾過されますが、血糖値が尿糖排泄閾値160~180mg/dLを超えない限り、近位尿細管に発現するSGLT2(再吸収の約90%を担う)とSGLT1(再吸収の約10%を担う)の働きによりほぼ100%再吸収されるため、尿糖排泄はみられません。一方、健常人にSGLT2阻害薬を投与すれば、SGLT1による糖再吸収能が高まり、尿糖排泄量は糸球体濾過量の1/3程度にとどまると考えられています。尿糖排泄量は、血糖管理状況と腎機能の影響を受けるため、2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した場合、尿糖排泄量のバラツキは大きくなり、各薬剤の添付文書によれば、70~140g/日まで増加します。すなわち血糖値が高いほど、尿糖排泄量が多くなり、HbA1c低下量は大きくなります。このようにSGLT2阻害薬による血糖改善効果の程度は、腎機能が正常である限り、使用時のHbA1c値によって変わってきます。具体的な投与対象患者像について、また、投与を避けたほうがよい患者像について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄促進により血糖を改善するため、腎機能低下がない限り血糖を低下させます。また、体重減少、血圧低下、中性脂肪低下、HDL-コレステロール上昇、尿酸低下、糖毒性改善に伴うインスリン分泌能およびインスリン抵抗性の改善といった多面的効果も期待できます。その一方で、(1) 浸透圧利尿による多尿、頻尿、脱水、血圧低下、(2) 尿糖排泄増加に伴う尿路/性器感染症、(3) 糖新生促進によるケトン体増加、筋組織の萎縮など今後の臨床応用において留意すべき多くの点があります。各々の留意点として、(1) 口渇を感じにくい高齢者、腎機能低下例、利尿剤使用例、脳梗塞既往例、自律神経障害例、乳酸アシドーシス危険因子の保有例、(2) 尿路/性器感染症の既往例、とくに女性、(3) インスリン分泌能低下例(ケトアシドーシスリスク)、やせ、筋肉量が少ない例が挙げられます。つまり、最も適切な投与患者像は、非高齢の、罹病期間が比較的短い、肥満2型糖尿病例と考えられます。これらの患者においてもSU薬やインスリンとの併用時には低血糖発現に留意すべきで、あらかじめSU薬、インスリンを減量することを勧めます。コントロール不良例で使用する場合の注意点についてご教示ください。血糖管理不良例では尿糖排泄量が増加するため、SGLT2阻害薬の有効性は高くなります。しかし、血糖管理不良時には内因性インスリン分泌能を見極める必要があり、さらに頻尿、脱水などの副作用の頻度や重症度が高くなる可能性があるため注意が必要です。新規2型糖尿病患者の場合、肥満でインスリン非依存状態にあればよい適応です。しかし、非肥満例では糖新生に伴う骨格筋萎縮の懸念が強く、不適と考えます。すでに他剤が投与されているインスリン非依存例では、前投薬がインスリン製剤もしくはSU薬の場合は低血糖に、ビグアナイド薬の場合は乳酸アシドーシスに注意する必要があります。他剤の使用の有無にかかわらず、インスリン依存状態(体重減少例、ケトーシス例)ではケトアシドーシスに注意する必要があり、インスリン製剤を先行投与すべきです。SGLT2阻害薬のHbA1cの低下効果はどの程度でしょうか、ご教示ください。2014年6月18日現在、わが国ではイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)、ルセオグリフロジン(同:ルセフィ)、トホグリフロジン(同:アプルウェイ/デベルザ)が発売、カナグリフロジンが発売準備中、エンパグリフロジンが承認申請中の状態です。一般にHbA1cの低下効果は、ベースラインHbA1c値に依存します。すなわちHbA1cが高い患者ほどよく下がります。わが国での臨床試験結果から、HbA1c8%程度に使用した場合、0.7~1.0%の低下が期待できると思われます。この効果は薬剤間で有効性に差はないものと思われます。単独療法での各SGLT2阻害薬のHbA1c改善効果は、52週時点で-0.6~0.67%と大きな差はありません。IC50で評価した各SGLT2阻害薬のSGLT2阻害活性が1.3~6.7nmol/Lと大きな違いがないことからも有効性に大差はないと考えられます。(高齢者の)浸透圧利尿による脱水の程度、およびその対処法や泌尿器科領域の感染症の頻度とその重症度について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿により尿量を増加させ、継続投与による尿量増加は200~600mL/日程度とされています。そのため、通常より約500mL/日多く飲水を行えば脱水を回避できると予想されます。継続投与による体液量関連指標の変化は、ヘマトクリット:+1%、尿素窒素:+1.5mg/dL、血清クレアチニン値:腎機能正常例-0.05mg/dL、中等度腎機能低下例+0.1mg/dL程度です。また、多尿、頻尿、口渇の発現率は、各々0~1%、2~5%、0~2%です。しかし、前述した値はあくまでも平均値であり、各々の値の標準偏差は大きいため、実地臨床で使用する場合には注意が必要であり、とくに口渇感を感じにくい高齢者、利尿剤使用例、血糖管理不良例では注意を要します。SGLT2阻害薬では、尿糖排泄増加による尿路や性器感染症が懸念されています。発現頻度は各々1~5%、1~7%で、重症度は軽症から中等症にとどまり、重症例は現時点で報告されていません。これらの多くは既往を有する例であり、とくに女性では注意が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part2はこちら

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SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月間の副作用報告を受けたことを踏まえ、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。 発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。 同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。Recommendation 1. SU 薬等インスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2. 高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5. 本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合には速やかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7. 原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。  さらに同委員会は、SGLT2阻害薬の使用にあたっては「適応を十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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「適正使用を」-SGLT2阻害薬への想い-

 2014年4月17日、2型糖尿病治療薬のイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg、同50mg)が発売された。イプラグリフロジンは日本初の選択的SGLT2阻害薬であり、糖尿病診療医からの注目も高い。そこで今回、アステラス製薬株式会社 本社担当者に話を聞いた。【SGLT2阻害薬への期待-低血糖リスク軽減と体重管理-】 2型糖尿病の治療は血糖管理を取り巻く諸問題に悩まされてきた。具体的には低血糖、体重増加などである。2014年、新たに登場した選択的SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは、原尿からのグルコース再吸収に関わるSGLT2を選択的に阻害することで、余分なグルコースを尿から排泄させ血糖値を下げる。この作用はインスリン非依存的で、作用機序から低血糖が発現しにくいと考えられている。また、体重低下も期待されている。つまり「低血糖リスクの軽減」「体重コントロール」につながる薬といえる。【高齢者、女性、痩せ型、罹病期間の長い症例は注意】 しかし、新規作用機序の薬ゆえに安全性については慎重な判断が求められる。選択的SGLT2阻害薬全般にいえることだが、特に、浸透圧利尿による脱水、尿路・性器感染症、尿中ケトン体上昇には注意が必要である。この場を借りて、あらためて各項目について注意喚起をしたい。 「脱水」:高齢者、脳卒中リスク症例は避けるべきであり、とくに高齢者は脱水症状に気づきにくいことが考えられる。脱水を予防する為には、適度な水分摂取が必要となる。 「尿路・性器感染症」:日本国内での報告は海外よりも少ないものの、性器感染症はとくに女性で報告が多い。症状としてはかゆみやおりものがあるが、患者さん自ら訴え出るには抵抗感があるだろう。製薬会社提供の指導箋などをご活用いただくことで、患者さんの話しやすい環境作りの手助けになればと考えている。 「尿中ケトン体上昇」:インスリン分泌能が低下している場合、尿中ケトン体が上昇しやすい。インスリン分泌能が少ないと考えられる症例、たとえば、罹病期間が長い人や高用量のSU薬をすでに服用している人は注意が必要となる。 まとめると、高齢者、脳卒中リスク例、女性、痩せている方、罹病期間が長いなどインスリン分泌能が低下している方では注意が必要となる。【SGLT2阻害薬の投与を考慮すべき患者像は若く、太った患者】 以上のことを踏まえると、イプラグリフロジンの投与を考慮すべき患者像は若く、太っていて、罹病期間の短い方が望ましいといえる。太っている目安としては、いわゆるBMI 25以上の肥満傾向の患者が挙げられる。また、ベースラインの血糖値が高い方が効果を発揮しやすいとのデータから、投与前のHbA1c値が高い症例、具体的数値としては7.0%以上の場合、効果を発揮しやすいのではないかと考えている。【イプラグリフロジンは日本国内データと症例数が豊富】 イプラグリフロジンの血糖降下作用についても補足する。国内第III相試験の結果で、HbA1c変化量がイプラグリフロジン50mg投与でプラセボとの差が-1.24%と報告されており、優れた血糖降下作用が期待される。新薬ではあるが日本の治験データが多く、症例数が多いことが本剤の特徴である。ほかの経口血糖降下薬との併用試験についても二重盲検比較試験で実施した試験が多い。SU薬、BG薬、チアゾリジン薬の併用に関する3試験はいずれも二重盲検比較試験で実施されており、データのクオリティが高い。【SGLT2阻害薬は長期的に評価していただきたい】 現在、種々の選択的SGLT2阻害薬が登場し、各社が選択性、生物学的半減期、服薬コンプライアンスなどさまざまなメッセージを打ち出している。しかし、イプラグリフロジンも含め、いずれも臨床での使用はこれからであり、まずは適正使用を推進していきたいと考えている。乱暴な話だが、たとえば、80歳の痩せた女性や脳卒中のリスク症例への投与による予期せぬ副作用などが出てしまうことは新薬として望ましくない。だからこそ、SGLT2阻害薬のメリットが享受できる症例を選んでいただき、適正に判断をしていただけたらと願っている。また、使い方はさまざまだが、新患、既存薬への追加が望ましいと個人的には考えている。切り替えの場合、前薬のメリットがなくなる可能性がある。まずは、前述したような症例像へ、新規や追加といった形での処方を通じて、先生方の眼で「SGLT2阻害薬」という薬を評価いただきたいと考えている。【取材後記】 今回、印象深かったのは、アステラス製薬本社担当者の「SGLT2阻害薬の適正使用」を望む真摯な姿勢であった。新薬取材では得てして自社品のPRポイントを中心に語られることが多い。むろん、薬剤情報は重要だ。しかし、それ以上に適正な情報提供こそが製薬会社の責務であろう。安全性の部分へのコメントが多かった点に、命に関わる医薬品を販売する側としての正しい姿勢を感じた。今後、SGLT2 阻害薬の適正使用が進むことを期待している。

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32)糖尿病経口薬の作用部位の上手な説明法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者今、私が飲んでいる薬は、どこに効いているんですか?医師じつは糖尿病の飲み薬は大きく分けると、7種類もあるんですよ。患者へぇ~、7種類もあるんですか?医師そうなんです。ここでクイズです。脳、肝臓、膵臓、腸、脂肪、筋肉の中で、Aさんの糖尿病の薬はどこに効いていると思いますか?患者私のは膵臓ですか?医師正解です。他の薬は腸、肝臓、脂肪などに効いて血糖を下げます。ただし、・・・患者ただし、何ですか?医師ただし、・・・脳と筋肉に効く薬はありません。患者なるほど。食事と運動療法は自分でしないとだめだということですね。(納得した顔)●ポイント経口薬は7種類と数字で意識させ、脳と筋肉に効く経口薬はないことを理解してもらいましょう●資料SU薬、グリニド → 膵臓α-グルコシダーゼ阻害薬 → 腸ビグアナイド薬 → 肝臓チアゾリジン薬 → 脂肪DPP-4阻害薬 → 膵臓(腸ホルモンを介して)SGLT2阻害薬 → 腎臓(近位尿管を介して)

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日本人へのトホグリフロジン投与、単剤・併用での長期試験成績が発表

高選択的SGLT2阻害薬※トホグリフロジン(承認申請中)について、日本人における長期安全性と有効性を検討した成績が、山口大学の谷澤 幸生氏らにより報告され、トホグリフロジンの単独および併用における忍容性と有効性が確認された。演題では、食事療法・運動療法のみで血糖管理不十分な2型糖尿病患者に本剤を単独投与したMONO試験(安全性解析対象191例)、および既存の経口糖尿病治療薬(OAD)6種類のうちいずれかと併用したCOMBO試験(同593例)の結果が発表された。いずれもトホグリフロジン20mg群または40mg群にランダム化され、投与52週時の安全性と有効性が検討されている。主要評価項目は安全性、副次評価項目は52週時における、ベースラインからのHbA1c変化量、体重変化量を含むさまざまな代謝関連指標の変化量である。トホグリフロジンは、最も高選択的にSGLT2を阻害するとされる新しい経口血糖降下薬であり、現在国内で2型糖尿病を適応症として承認申請段階にある。結果は以下のとおり。総有害事象の頻度は単独・併用の両試験の合計で664例(84.7%)観察されたものの、重篤な有害事象は54例(6.9%)、投薬中止に至った有害事象は35例(4.5%)であった。5.0%以上の有害事象として、口渇、頻尿、低血糖、血中ケトン体増加などがあったが、臨床症状を伴うケトン体増加やケトアシドーシスはみられなかった。SU薬との併用時に他の経口薬との併用時と比べて低血糖頻度がわずかに高くなっていること、およびSU薬併用時のみで中等度の事象が3例起きていることに留意する必要があるものの、単剤・併用で重度の低血糖の報告はなかった。膀胱炎・尿路感染症の頻度は0.5%~4.7%、性器感染症の頻度は0.0%~3.4%であり、ほとんどが軽度かつ一過性なものであった。52週時のHbA1c変化量は、MONO試験で-0.67%、-0.66%(20mg、40mg)、COMBO試験で-0.77%、-0.87%(同)であり、COMBO試験ではいずれの経口薬と併用した場合においても同等の低下作用が確認された。体重変化量は、MONO試験で-3.06g、-3.44kg(同)、COMBO試験で-2.51kg、-2.98kg(同)で、体重低下は併用薬ごとに違いがあり、とくに40mg群ではαGIやメトホルミンとの併用時にわずかに強かった。その他、ウエスト周囲径の減少やアディポネクチンの増加、収縮期血圧の低下、HDL-C上昇などのメタボリックシンドローム関連因子やインスリン抵抗性指標であるHOMA‐IRが有意に改善していた。以上の結果より、トホグリフロジンの忍容性が確認され、トホグリフロジンは単独および既存の経口血糖降下薬との併用において2型糖尿病の新たな治療オプションとなることが示唆された。※高選択的SGLT2阻害薬は、腎尿細管において糖の再吸収に関与するトランスポーターのナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害し、血糖値依存的に尿糖排泄を促すことで血糖低下作用を発揮する。低血糖のリスクは低く、体重減少作用を有すると注目されている。

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SGLT2阻害薬追加、血糖管理不良な2型糖尿病に有用/Lancet

 ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬カナグリフロジン(canagliflozin)は、メトホルミン単独では血糖管理が十分でない2型糖尿病患者に対する追加治療として良好な血糖改善効果を発揮し、忍容性も良好なことが、米国・ペニントン生物医学研究所のWilliam T Cefalu氏らが行ったCANTATA-SU試験で示された。メトホルミンへの上乗せが可能な既存薬の多くは体重増加や低血糖の懸念があるが、SGLT2の阻害という作用機序はこれらの問題を回避し、また尿糖排泄の促進作用により総カロリーの消費が進むため体重が減少する可能性もあるという。一方、本薬剤には軽度の浸透圧利尿がみられるため、頻尿や多尿の懸念があるという。Lancet誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。標準治療に対する非劣性を無作為化試験で検証 CANTATA-SU試験は、メトホルミン単独では血糖値の管理が十分でない2型糖尿病患者において、カナグリフロジンの上乗せ効果の、グリメピリド(商品名:アマリールほか)に対する非劣性を検証する二重盲検無作為化第III相試験。対象は、年齢18~80歳、HbA1c 7.0~9.5%、10週以上のメトホルミン投与を受けている2型糖尿病患者であった。 これらの患者が、カナグリフロジン 100mgまたは300mg、あるいはグリメピリド(6から8mgへ漸増)を1日1回経口投与する群に無作為化に割り付けられた。主要評価項目はベースラインから治療52週までのHbA1cの変化で、非劣性マージンは0.3%とした。100mg群の非劣性、300mg群の優位性を確認 2009年8月28日~2011年12月21日までに19ヵ国157施設から1,450例が登録され、グリメピリド群に482例、カナグリフロジン 100mg群に483例、300mg群には485例が割り付けられた。 全体の平均年齢は56.2歳(9.2 SD)、男性52%、白人67%、アジア人20%、平均HbA1c 7.8%、平均空腹時血糖9.2mmol/L(≒165.6mg/dL)、平均体重86.6kg、平均BMI 31.0、平均罹病期間6.6年(中央値5.0年)であった。 治療52週時のHbA1cは3群ともにベースラインよりも低下し、最小二乗平均値の変化率はグリメピリド群が-0.81、カナグリフロジン 100mg群は-0.82%、300mg群は-0.93%であった。 カナグリフロジン 100mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.01%(95%信頼区間[CI]:-0.11~0.09)であり、カナグリフロジン 100 mg群はグリメピリド群に対し非劣性であった。また、300mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.12%(-0.22~-0.02)であり、300mg群のグリメピリド群に対する優位性が示された。 体重は、グリメピリド群がわずかに増加したのに対し、2つのカナグリフロジン群は有意に低下した[最小二乗平均値の変化率:0.7%、-3.7%、-4.0%、100mg群、300mg群とグリメピリド群の差:-4.4(-4.8~-3.9)、-4.7(-5.2~-4.3)]。良好な安全性プロフィール、浸透圧利尿関連イベントは多い傾向 重篤な有害事象は、カナグリフロジン 100 mg群が24例(5%)、300mg群が26例(5%)、グリメピリド群は39例(8%)に認められた。 カナグリフロジン群で多い有害事象として性器真菌感染症が挙げられ、女性では100mg群が26例(11%)、300mg群が34例(14%)で、グリメピリド群は5例(2%)であり、男性では100mg群が17例(7%)、300mg群が20例(8%)で、グリメピリド群は3例(1%)だった。 尿路感染症も100mg群が31例(6%)、300mg群が31例(6%)で、グリメピリド群の22例(5%)より多い傾向がみられた。浸透圧利尿関連イベントもカナグリフロジン群で多い傾向にあり、頻尿が100mg群、300mg群ともに12例(3%)ずつ、グリメピリド群は1例(<1%)にみられ、多尿はカナグリフロジン群が4例(<1%)ずつ、グリメピリド群は2例(<1%)に認められた。 著者は、「これらの結果は、メトホルミンで血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、カナグリフロジンは実行可能な治療選択肢であることを示すもの」と指摘している。■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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新しい血糖コントロール目標値を発表! 第56回日本糖尿病学会年次集会を開催

5月16日より3日間、熊本市で開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:荒木栄一氏/熊本大学大学院 生命科学研究部代謝内科学分野 教授)において、新しい血糖コントロールの目標値(以下「新目標値」と略す)が発表された。新目標値は、HbA1cに集約され、次の3段階とされる。HbA1c 8%未満→治療強化が困難な際の目標HbA1c 7%未満→合併症予防のための目標HbA1c 6%未満→血糖正常化を目指す際の目標図1 「血糖コントロール目標値」改訂図画像を拡大する図2 2型糖尿病治療の目標と指針画像を拡大する新しい評価分類の策定にあたっては、従来の5段階分類が複雑な目標設定であること、EBMの理念にそぐわない「不可」などの否定的な言葉が使われていること、「優」という呼称にはリスクを考慮せずにHbA1cを下げるべきとの誤解を生む恐れがあることなどを鑑み、学会内で検討が行われた。さらに、近年発表されたACCORD、ADVANCEなどの大規模臨床試験に基づき「低血糖を起こさない血糖管理」を考慮した内容も加味され、策定されたものである。その中には、新目標値を患者と医療者が共に目指す糖尿病治療の目標とすること、HbA1cの国際標準化との整合性、非専門医にも理解・活用しやすいようにできる限り簡素化することというコンセプトが込められている。新目標値は6月1日より運用開始となる。会長の荒木氏は「早期から治療を開始し、HbA1c値7%未満を目指してほしい」と期待を語った。DPP-4阻害薬投与時は、体重増加に注意「低血糖を起こさない血糖管理」といえば、DPP-4阻害薬がすでに欠かせない存在だ。本学会でも多くの使用経験が発表され、効果的な併用薬や症例像が明らかになった。「相性の良い併用薬」への関心も高い。シンポジウム14「インクレチン関連薬の長期展望」では、BG、α-GIとの併用がSU薬と比較して血糖改善効果が高いことなどが報告された。「レスポンダー/ノンレスポンダー」という観点では、シタグリプチンの2年間の追跡調査から血糖コントロール不良群で体重が増加していたことが明らかになった。DPP-4阻害薬の治療効果を得るには、体重増加を来さないことが重要であり、体重増加が認められた際には、速やかな食事指導が有効といえそうだ。DPP-4阻害薬+インスリンで、一定の治療効果同様に、DPP-4阻害薬とインスリンの併用に関する検討結果も発表され、一定の治療効果が報告された。強化インスリン療法、混合製剤2回注射、BOT(Basal Oral Therapy)のいずれのインスリンレジメンにおいても、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンの上乗せによりHbA1c値低下効果やCPI改善効果が高まるとの報告も挙がった。ただし、DPP-4 阻害薬がどのインスリンレジメンと相性が良いかに関してはさらなる検討が必要とされた。インスリンからの切り替えカットオフ値は?また、インスリンからGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)への切り替え試験の結果から、効果不十分な場合の主な原因として内因性インスリン分泌能低下が推測されることが明らかになった。同試験においてデルタC-ペプチド値 1.34ng/mLがカットオフ値として算出されており、今後も継続した検討が期待される。なお、会期中にGLP-1受容体作動薬のエキセナチド(同:バイエッタ)の週1回製剤「ビデュリオン」が発売となった。代表的な副作用である「嘔気・嘔吐」の発現率はバイエッタと比べて少ないとの報告も挙がっており、週1回投与によるアドヒアランス改善とともに臨床での活用が期待される。新薬も期待!SGLT2阻害薬、GPR40作動薬、GK活性化薬このほか、新規作用機序をもった薬剤も次々と登場予定だ。シンポジウム2「今後期待される新規糖尿病治療薬」においても複数の新薬が取り上げられた。原尿からのブドウ糖再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、「SGLT2選択的阻害薬」は、国内申請中のイプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)を筆頭に6品目が後期開発段階にある。その後に続く薬剤としてGPR40作動薬にも注目が集まる。G蛋白質共役型受容体(GPCR)の一つであるGPR40に作用し、グルコース濃度に依存してインスリン分泌を促す特性をもつ薬剤である。GPR40作動薬は低血糖の誘発リスクが低いインスリン分泌促進薬として期待されており、現在開発中の薬剤にTAK-875(武田)がある。そのほか、膵β細胞でのインスリン分泌能増強作用と肝での糖利用亢進作用を有するGK(グルコキナーゼ)活性化薬も研究が進んでいる。編集後記インクレチン関連薬の発売、ACCORDの結果などを経て、「低血糖を来さない糖尿病治療」の重要性は臨床現場でも一般化した。今回発表されたHbA1cの新目標値も、この考えに基づいている。すでに、血糖値はひたすら下げるものではなくなった。今後は、患者さん一人ひとりに合った治療目標を設定し、薬剤を効果的に使いながら血糖をコントロールしていく必要がある。会長の荒木氏は、「あなたとあなたの大切な人のために~Keep your A1c below 7%~」を合言葉に糖尿病の予防と治療の向上に取り組む、とする「熊本宣言2013」を発表した。われわれも、医療情報メディアの一端を担う者として、最新かつ適切な情報伝達を通じ、糖尿病治療の発展に貢献していくことをあらためて宣言したい。(ケアネット 佐藤 寿美/稲川 進)

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SGLT2阻害薬「イプラグリフロジン」の、BG薬併用下での安全性は?

 2型糖尿病患者に対する、SGLT2選択的阻害薬「イプラグリフロジン」のメトホルミン(商品名:メトグルコなど)併用下での安全性データが発表された。Veltkamp SA氏らによるClin Ther誌オンライン版2012年7月13日付での報告。 この結果、イプラグリフロジンとメトホルミンの14日間併用投与は、低血糖の発現なく、良好な忍容性を示し、イプラグリフロジンの併用は、メトホルミンの薬物動態(PK)特性には、臨床的変化はもたらさないことが明らかになった。 イプラグリフロジン(ASP1941)は、2012年7月現在、国内において臨床開発段階にある。 本試験の主要評価項目は、メトホルミン併用下におけるイプラグリフロジンの安全性プロファイルおよび忍容性。副次評価項目は、メトホルミンのPK特性に対するイプラグリフロジンの影響であった。 対象は、メトホルミン投与中(850mg、1,000mg、または1,500 mgを1日2回服用)の2型糖尿病患者36例。対象者は、イプラグリフロジン投与群(n=18、300mg/日)、またはプラセボ投与群[メトホルミン単独群](n=18)に二重盲検法で無作為化割り付けされ、それぞれ14日間投与された。 試験期間を通じて、低血糖イベント、試験治療下における有害事象(TEAEs)、実験室測定、バイタルサインを含めた安全性プロファイルが評価された。 また、最大血中濃度およびAUC(0-10)の幾何平均比と90%CIは、メトホルミン+ イプラグリフロジン群(14日目) vs メトホルミン単独群(1日目)で算出された。 薬力学的特性は、24時間尿糖排泄(UGE(0-24))測定によって評価された。 主な結果は以下のとおり。 ・すべてのTEAEsは、1例を除き軽度であった。・TEAEsは、イプラグリフロジン併用群で15回(7例/18例 [38.9%])、プラセボ群で19回(8例/18例 [44.4%])観察された。・治療関連のTEAEsは、イプラグリフロジン併用群で18例中3例(16.7%)、プラセボ群では18例中5例(27.8%)で報告された。・低血糖イベント(血糖値

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SGLT1/2阻害薬LX4211の有効性

新しい作用機序を持つ経口の2型糖尿病治療薬であるSGLT1/2阻害薬LX4211の試験結果が、B Zambrowicz氏らによりClinical Pharmacology & Therapeutics誌Early Online Publication 2012年6月27日付で報告された。この結果、LX4211はプラセボと比べて、消化器症状などの有害事象を増加させることなく、空腹時血糖値やHbA1c値を有意に改善させることが明らかになった。SGLT2は腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である。SGLT2阻害による血糖コントロール改善が示されており、現在、複数のSGLT2選択的阻害薬が開発段階にある。SGLT1を介さず、SGLT2に選択性の高い阻害薬が多く開発されているのは、主に腸管のグルコース輸送体として存在するSGLT1の腎臓のグルコース再吸収への貢献がわずか10%であることや、SGLT1欠損患者ではグルコースとガラクトースの吸収不良に起因する重篤な消化器症状が示唆される等が理由とされていた。しかしRoux-en-Y法による肥満外科手術や難消化性でん粉摂取後は、遠位小腸および大腸へのグルコース輸送が増加しても、消化器症状を発現することなく耐糖能を改善できている。これは、GLP-1分泌によるものと考えられている。このことから、SGLT1/2阻害薬も、選択的SGLT2阻害薬同様に、消化器症状に影響を与えずに、腸管からのグルコース吸収を遅延させ血糖コントロールを改善できるのではないかと、今回検討が行われた。試験対象は、38歳~64歳の2型糖尿病患者36例。プラセボ群、LX4211の150mg投与群、同300 mg投与群、の3群に無作為に割り付け、1日1回経口投与を28日間継続した。主な結果は以下のとおり。 ・LX4211群はプラセボ群と比較して、28日後の空腹時血糖値、耐糖能、およびHbA1c値を含む血糖コントロール指標を有意に改善した。・24時間UGE値は1日後、14日後、28日後においてプラセボ群と比較し、LX4211群で有意に増加した。・LX4211群は、プラセボと比較して、血清トリグリセリド値を有意に低下させた。また、有意差は認められなかったが、体重と血圧は減少傾向、GLP-1濃度は増加傾向を認めた。・有害事象発現は3群間で同等であり、緊急性尿路感染症、性器感染症、低血糖などはみられず、重篤な有害事象の報告はなかった。心血管イベント発現、心電図所見の有意な変化も認められなかった。(ケアネット 佐藤 寿美)〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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新規SGLT2阻害薬dapagliflozin、血糖コントロールが不良な2型糖尿病に有効

メトホルミンだけでは十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対し、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)の選択的阻害薬であるdapagliflozinを追加投与すると、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が有意に改善することが、英国Aston大学のClifford J Bailey氏らが行った無作為化試験で示された。高血糖の是正や糖毒性の発現予防は2型糖尿病の管理における重要な目標とされる。dapagliflozinは、SGLT2を選択的に阻害することで、インスリン非依存性に腎臓でのグルコースの再吸収を抑制するという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。dapagliflozinの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照第III相試験研究グループは、メトホルミンだけでは血糖コントロールが不十分な患者においてdapagliflozinの有効性と安全性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。メトホルミン≧1,500mg/日で十分な血糖コントロールが達成されない2型糖尿病患者546例が、3つの用量のdapagliflozin(2.5mg群:137例、5mg群:137例、10mg群:135例)あるいはプラセボ群(137例)に無作為に割り付けられた(いずれも1日1回経口投与)。メトホルミンは、試験開始前と同一の用量を継続投与した。主要評価項目は、24週におけるHbA1cのベースラインからの変化とした。二重盲検下で1回以上の投薬を受け、ベースラインとその後に少なくとも1回の検査を受けた全症例が解析の対象となった。用量依存性にHbA1cが有意に低下、ウエスト周囲長の短縮を伴う体重減少効果も主要評価項目の解析は、534例(dapagliflozin 2.5mg群:135例、5mg群:133例、10mg群:132例、プラセボ群:134例)で行われた。24週の時点で、プラセボ群の平均HbA1cが0.30%低下したのに対し、dapagliflozin 2.5mg群は0.67%(p=0.0002)、5mg群は0.70%(p<0.0001)、10mg群は0.84%(p<0.0001)と用量依存性に低下しており、いずれも有意差を認めた。dapagliflozin群では治療早期から体重減少を認め、この効果は治療期間を通じて持続した。24週には、プラセボ群の体重が平均0.9kg低下したのに対し、2.5mg群が2.2kg、5mg群が3.0kg、10mg群は2.9kg減少した(いずれも、p<0.0001)。ウエスト周囲長も、プラセボ群が平均1.3cm短縮したのに対し、2.5mg群が1.7cm、5mg群が2.7cm、10mg群は2.5cm減少していた。低血糖症状の発現率は、dapagliflozin群が2~4%、プラセボ群は3%と同等であった。性器感染を示唆する徴候、症状などの報告は、プラセボ群の5%(7例)に比べ、dapagliflozin 2.5mg群が8%(11例)、5mg群が13%(18例)、10mg群は9%(12例)と頻度が高い傾向がみられた。重篤な有害事象は17例(dapagliflozinの各用量群が4例ずつ、プラセボ群が5例)に認められた。著者は、「メトホルミン単剤では血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の治療において、メトホルミンへのdapagliflozin追加療法は新たな選択肢となる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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