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腎不全リスク別にみたSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性

 2型糖尿病患者において、腎不全リスクの高低によるSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の腎不全や心血管アウトカムを調査した結果、GLP-1受容体作動薬は腎不全の中等度リスクの患者に、SGLT2阻害薬は高度リスクの患者にそれぞれより有益である可能性が、米国・ユタ大学のSydney E. Hartsell氏らによって報告された。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。 研究グループは、2018年1月1日~2021年12月31日にSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(非エキセンジン系)またはインスリン グラルギンのいずれかを新たに開始した2型糖尿病を有する米国退役軍人コホートを用いて観察研究を行った。対象は16万428例で、治療確率逆重み付けを用いてベースライン特性のバランスを調整し、2023年3月31日までの追跡データを用いて各薬剤の新規使用者間でアウトカムを比較した。評価項目には、腎不全(慢性腎臓病のステージ5または腎代替療法)、主要心血管イベント(MACE[心不全、心筋梗塞、脳卒中])、心血管・腎・代謝(CKM)複合エンドポイント(腎不全またはMACE)、全死因死亡、死亡を含む複合アウトカムが含まれた。また、将来の腎不全発症リスクを推定する腎不全リスク方程式(Kidney Failure Risk Equation:KFRE)スコアを用いて、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性の差が腎不全リスクの高低によって異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・新規に使用開始した薬剤は、SGLT2阻害薬が53%、GLP-1受容体作動薬が14%、インスリン グラルギンが34%であった。・SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の死亡リスクは同程度であったが、SGLT2阻害薬群で腎不全リスクが低下する傾向にあった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06)。・SGLT2阻害薬群では、GLP-1受容体作動薬群と比較してMACE(HR:1.14、95%CI:1.09~1.20)およびCKM複合エンドポイント(HR:1.13、95%CI:1.08~1.19)の発生リスクが有意に高かった。・中等度の腎不全リスク(KFRE 2~6%未満)の患者ではGLP-1受容体作動薬が腎不全、MACEおよびCKM複合エンドポイントに対してより保護的であることが示唆された一方で、高度の腎不全リスク(KFRE 6%以上)の患者ではSGLT2阻害薬がより保護的であることが示唆された。

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心不全の新たな治療戦略:次の10年を見据えて【心不全診療Up to Date 2】第6回

心不全の新たな治療戦略:次の10年を見据えてKey PointsHFpEF治療は「SGLT2阻害薬+MRAを基盤」とする新パラダイムが確立され、治療戦略は“症候改善のみ”から“イベント抑制”の時代へ心臓指向性AAVベクター(AB-1002)を用いた遺伝子治療が安全性と有効性のシグナルを示し、心不全治療に新しい地平を拓きつつあるIL-6を標的とした抗炎症療法や、CCMなどのデバイス治療が、GDMT抵抗性の心不全患者に対する新たな選択肢として開発が進むはじめに本連載では1年間にわたり、心不全診療の最新トピックスを取り上げてきた。最終回となる本稿では、現在臨床試験段階にある新規治療や将来有望な治療戦略について考えていきたい。HFrEF治療ではβ遮断薬、RAS阻害薬/ARNI、MRA、SGLT2阻害薬の「4本柱」が確立し、HFrEF患者の予後は著しく改善した。一方、高齢化の進展とともに増加する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)、そしてGDMT(guideline-directed medical therapy)に抵抗性を示す患者に対しては、さらなる治療選択肢が求められている。本稿では、(1)HFpEF治療の新展開、(2)遺伝子治療、(3)抗炎症療法、(4)デバイス治療の4領域について、最新のエビデンスと今後の展望を述べる。HFpEF治療の新展開:フィネレノンの登場第4回で述べたように、HFpEF治療においてSGLT2阻害薬が不動の地位を確立した。これに加え、2025年7月、米国・FDAは非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)であるフィネレノン(商品名:ケレンディア)を、左室駆出率(LVEF)≧40%の心不全患者に対する適応で承認した。本邦でも、2025年12月22日、慢性心不全への適応追加が承認された。この承認の根拠となったFINEARTS-HF試験では、HFpEF/HFmrEF患者6,001例(左室駆出率(LVEF)≧40%、NYHA II~IV度)を対象に、標準治療へのフィネレノン上乗せ効果が検証された1)。中央値2.7年の追跡期間において、主要評価項目である心血管死および心不全イベント総数(初発および再発の心不全入院、緊急心不全受診)の複合は、フィネレノン群でプラセボ群と比較して16%有意に減少した。また、フィネレノンは従来のステロイド性MRA(商品名:スピロノラクトン、エプレレノン)と比較してMRへの選択性が高く、性ホルモン関連の副作用(女性化乳房など)が少ないことが特徴である2)。なお、本試験ではプラセボと比較して高カリウム血症の頻度は増加したが、従来のステロイド性MRAと比較して高カリウム血症リスクが低い可能性が示唆されてきた点や、忍容性の観点から実臨床での使いやすさが期待される薬剤と位置付けられる。フィネレノンの登場により、HFpEF/HFmrEFにおいても「SGLT2阻害薬+MRAを基盤とした治療」が現実的な標準治療戦略となりつつある。とくにCKDや糖尿病を併存する症例では、心不全イベント抑制とともに心腎双方のアウトカム改善を期待できる点で臨床的意義は大きい。第4回で述べた「SGLT2阻害薬を基盤とし、表現型に応じた治療を追加する」というHFpEF治療の新パラダイムにおいて、フィネレノンが加わることで、「SGLT2阻害薬+MRAを基盤とした治療」へと進化したといえる。なお、ステロイド性MRAのHFpEF患者に対する有効性は、TOPCAT試験の結果を受け※、SPIRRIT試験(NCT02901184)、SPIRIT-HF試験(NCT04727073)にて改めて検証中である。今後、nsMRAとステロイド性MRAの位置付けや使い分けが、HFpEF/HFmrEF領域における重要な論点となるだろう。※TOPCAT試験にて、HFpEFに対するMRAの有効性が検証されたが、結果は、心血管死、蘇生できた心停止、心不全入院の主要複合エンドポイントの有意な低下は認めなかったが…続きはこちら副次エンドポイントの1つである心不全入院については有意な低下を認めた(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~0.99、p=0.043)。心不全入院は、本試験の主要複合エンドポイントの中で最も高頻度に発生したイベントでもあり、心不全入院率低下、それによるQOL改善効果については有用性が期待できる結果であったといえる。また、本試験は事後解析でHFpEFに対するMRAの有効性に関する興味深いデータが多く報告されていることでも有名な試験である。その1つとして、本試験は、12ヵ月以内の心不全(各施設の診断)の入院歴(第1層)、またはこれを満たさない場合、60日以内のナトリウム利尿ペプチド上昇(BNP≧100pg/mLあるいはNT-proBNP≧360pg/mL)(第2層)をエントリー条件とした試験であるが、その第2層でエントリーされたサブグループにおいては、主要エンドポイントの低下が認められた4)。また、本試験は米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジルというグループと、ロシア、グルジアというグループの間に心不全の重症度や試験開始後の収縮期血圧4)、イベント発生に大きな差があっただけでなく、前者のグループでは1次エンドポイントに有意差が認められた5)。さらには、スピロノラクトンを内服していれば血中に認めるはずの代謝産物が、ロシアの症例では認めない症例の割合が30%とかなり多かったという報告があり(米国やカナダの症例では3%のみ)、ロシアの症例ではアドヒアランスがかなり悪かった(スピロノラクトン群であるにもかかわらずスピロノラクトンがしっかり内服されていなかった)可能性も指摘されている6)。心不全に対する遺伝子治療の進歩心不全に対する遺伝子治療は、これまでSERCA2a(筋小胞体Ca2+-ATPase)を標的としたCUPID試験シリーズが先駆的に行われてきた。CUPID第I/II相試験では、AAV1ベクターを用いたSERCA2a遺伝子の冠動脈内投与が安全に実施され、予備的な有効性シグナルが観察された7-9)。しかし、続く第IIb相試験(CUPID2)では主要評価項目を達成できなかった。その原因として、AAV1ベクターの心臓向性(cardiotropism)の限界、投与量の不足、既存の中和抗体の影響などが指摘されている。2025年、Nature Medicine誌に新たな遺伝子治療AB-1002のfirst-in-human第I相試験結果が報告され、心不全遺伝子治療に再び期待が高まっている10)。AB-1002は、心臓向性を強化したキメラAAVベクター(AAV2i8)を用いて、恒常活性型プロテインホスファターゼ1阻害因子(I-1c)を心筋細胞に導入する治療法である。心不全患者では、プロテインホスファターゼ1(PP1)の活性が亢進し、ホスホランバン(phospholamban:PLN)の脱リン酸化が進行してSERCA2a活性が低下する。I-1cはPLNの脱リン酸化を抑制することでSERCA2a活性を回復させ、カルシウムサイクリングを正常化する。すなわち、CUPID試験がSERCA2aの「発現量増加」を目指したのに対し、AB-1002は「活性回復」という異なるアプローチを採用している。本試験では、非虚血性心筋症によるNYHA III度心不全患者11例(LVEF 15~35%)を対象に、冠動脈内投与によるAB-1002の単回投与が実施された10)。低用量群と高用量群の2コホートで検討され、12ヵ月の追跡が行われた。主要評価項目である安全性について、治療に起因する重篤な有害事象は認められず、1例の死亡(治療との関連なしと判定)を除き、有害事象は軽度から中等度であった。高用量群で一過性の肝酵素上昇が観察されたが、自然軽快している。有効性評価では、両群でNYHAクラスの改善、LVEFの改善、peak VO2や6分間歩行距離の改善傾向が観察された。もちろん、長期有効性、安全性、費用対効果といった課題は残されている。しかしAB-1002は、「心不全を遺伝子レベルで修飾する時代」が現実味を帯びてきたことを示す重要な一歩であり、現在進行中の第II相GenePHIT試験(NCT05598333)を含め、今後の大規模試験の結果が強く待たれる。(表1)AAVベクターを用いた心不全遺伝子治療の臨床開発の歩み画像を拡大する炎症を標的とした新規治療心不全の病態生理において炎症が重要な役割を果たすことは古くから知られていたが、初期の抗炎症療法は期待された結果を示せなかった。TNF-α阻害薬を用いたATTACH試験およびRENEWAL試験は、いずれも有効性を示すことができず、むしろ高用量群では有害事象の増加が観察された11-13)。これらの失敗は、心不全における炎症制御の複雑さを示すとともに、より選択的な標的の必要性を浮き彫りにした。近年、インターロイキン(IL)シグナルを標的とした治療戦略に注目が集まっている。IL-1βに対するモノクローナル抗体カナキヌマブ(商品名:イラリス)を用いたCANTOS試験では、心筋梗塞の既往歴がある高感度C反応性蛋白(hsCRP)値2mg/L以上の患者において主要心血管イベントの有意な減少が示され、さらに心不全入院リスクの低下も観察された14)。この結果を受けて、心不全患者を対象としたIL-1阻害薬anakinra(国内未承認)の複数の第II相試験が実施され、運動耐容能や炎症マーカーの改善が報告されている15)。TNF-α阻害薬が失敗に終わった一方で、IL-1βやIL-6が注目されている背景には、これらのサイトカインが動脈硬化・心不全リモデリングにおける慢性炎症ネットワークの”ハブ”として機能しているという病態理解の進展がある。すなわち、全体の炎症反応を無差別に抑え込むのではなく、病態の中核となるシグナルを選択的に制御する方向に戦略がシフトしているといえる。さらに、IL-6を直接標的とした大規模臨床試験が複数進行中である。IL-6リガンド阻害薬ziltivekimabは、動脈硬化性心血管疾患の既往を有するCKD患者(hsCRP≧2mg/L)を対象としたZEUS試験(NCT05021835)、HFpEF/HFmrEF患者(hsCRP≧2mg/L)を対象としたHERMES試験(NCT05636176)、急性心筋梗塞入院患者を対象としたARTEMIS試験(NCT06118281)などで検証中である。2025年に発表されたACC Scientific Statementは、心血管疾患における炎症の役割を包括的にまとめ、今後の抗炎症療法の方向性を示している16)。IL-6阻害薬の心不全に対する大規模試験結果は2026年後半から2027年にかけて報告される見込みであり、心不全治療における炎症制御の意義が明らかになることが期待される。デバイス治療の新たな展開:心臓収縮力調節療法心臓収縮力調節(Cardiac Contractility Modulation:CCM)療法は、心臓の絶対不応期に非興奮性電気刺激を与えることで心筋収縮力を増強する植込み型デバイス治療である。心臓再同期療法(CRT)の適応とならないQRS幅正常(<130ms)の症候性心不全患者に対する新たな治療選択肢として注目されている17)。CCM療法の作用機序は、非興奮性電気刺激により細胞内カルシウムハンドリングが改善され、心筋収縮力が増強されることに加え、心不全で異常発現している複数の遺伝子発現を正常化することにあるとされる18)。興味深いことに、このカルシウムハンドリングの改善という点で、前述の遺伝子治療AB-1002と共通する機序を有している。FIX-HF-5C試験およびFIX-HF-5C2試験の結果から、CCM療法はLVEF 25~45%の症候性心不全患者において、運動耐容能(peak VO2)とQOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaire)を有意に改善することが示されている19)。また現在、HFpEF/HFmrEF患者(LVEF 40~70%)を対象としたAIM HIGHer試験(NCT05064709)が進行中であり、GDMT抵抗性のHFpEF/HFmrEF患者に対するCCM療法の有効性が検証されている。第4回で述べたように、HFpEF/HFmrEFにおいても収縮障害が潜在している可能性があり、CCM療法による収縮力増強が有効であるかどうか結果が楽しみである20,21)。また、HFrEF患者を対象としたCCM療法とICDを組み合わせたCCM-Dシステムの第III相INTEGRA-D試験(NCT05855135)も2025年に組み入れを完了しており、心不全症状の軽減と突然死予防の両立を目指した新たなデバイス戦略として期待されている。おわりに:次の10年に向けて1年間の連載を通じて、心不全診療が近年急速に進歩していることをお伝えしてきた。HFrEFに対する「4本柱」の確立、HFpEFに対するSGLT2阻害薬とフィネレノンの登場、インクレチン製剤による肥満合併HFpEFへの新たなアプローチ、そして特定の心筋症に対する分子標的治療(例:マバカムテン、ブトリシラン、アコラミディス)など、治療選択肢は着実に広がっている。今後の10年を展望すると、本稿で紹介した遺伝子治療や抗炎症療法といった病態修飾治療の実用化、精密医療(Precision Medicine)の進展、そしてデバイス治療のさらなる進化が期待される。とくに、心不全の表現型(phenotype)に基づいた個別化治療戦略の確立は、治療反応性を最大化し、非反応者を最小化するために不可欠である。画像を拡大する心不全治療は今も進化の途上にあり、その最前線はこれからも更新され続けるだろう。本連載が、その変化を少しでも臨床現場につなぐ一助となっていたなら望外の喜びである。最後に、本連載を1年間ご愛読いただいた先生方に心より感謝申し上げる。心不全診療は依然として多くの課題を抱えているが、エビデンスに基づいた最適な治療を患者一人ひとりに提供することで、予後改善とQOL向上を実現できると確信している。読者の先生方とともに、今後も心不全診療のさらなる発展に貢献していきたい。 1) Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2024;391:1475-1485. 2) Agarwal R, et al. Eur Heart J. 2021;42:152-161. 3) Pitt B, et al. N Engl J Med. 2014;370:1383-1392. 4) Shah AM, et al. Circulation. 2015;132:402-414. 5) Rossignol P, et al. Circulation. 2015;131:7-10. 6) de Denus S, et al. N Engl J Med. 2017;376:1690-1692. 7) Hajjar RJ, et al. J Card Fail. 2008.;14:355-367. 8) Jessup M, et al. Circulation. 2011;124:304-313. 9) Zsebo K, et al. Circ Res. 2014;114:101-108. 10) Henry TD, et al. Nat Med. 2025;31:3845-3852. 11) Chung ES, et al. Circulation. 2003;107:3133-3140. 12) Mann DL, et al. Circulation. 2004;109:1594-1602. 13) Lincoff AM, et al. JAMA. 2003;289:853-863. 14) Ridker PM, et al. N Engl J Med. 2017;377:1119-1131. 15) Hartrampf N, et al. Science. 2020;368:980-987. 16) Mensah GA, et al. J Am Coll Cardiol. 2025;S0735-1097:07555-2. 17) Pipilas DC, et al. J Soc Cardiovasc Angiogr Interv. 2023;2(6Part B):101176. 18) Butter C, et al. J Am Coll Cardiol. 2008;51:1784-1789. 19) Abraham WT, et al. JACC Heart Fail. 2018;6:874-883. 20) Talha KM, et al. J Card Fail. 2022 Dec;28:1717-1726. 21) Tschope C, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:3531-3535.

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診療科別2025年下半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Antidiabetic agents and dementia risk in type 2 diabetes: A systematic review and network meta-analysisKato S et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28:256-264.<400万例以上対象のメタ解析>:糖尿病治療薬の種類と認知症リスク対象文献数67件(全408万8,683例)のネットワークメタアナリシスにて、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスク低下(オッズ比:0.69~0.86)、インスリンはリスク増加(オッズ比:1.26)と統計学的に有意に関連していました。ただし、観察研究が主体の解析なので因果関係を確定することはできません。Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of ObesityAronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36.<SURMOUNT-5試験>:糖尿病のない肥満者への減量効果、チルゼパチドがセマグルチドに優れる糖尿病のない肥満者751例において、セマグルチド注(1.7mg/週または2.4mg/週)とチルゼパチド(10mg/週または15mg/週)による72週後の体重変化はそれぞれ-13.7%、-20.2%であり、チルゼパチドのほうが統計学的に有意に強度の減量効果がありました。Oral Semaglutide in an East Asian Population With Overweight or Obesity, With or Without Type 2 Diabetes: The OASIS 2 Randomized Clinical TrialKadowaki T, et al. JAMA Internal Medicine. 2025;185:1206-1217.<OASIS 2試験>:過体重または肥満の東アジア人で経口セマグルチドの体重減少効果を確認肥満関連合併症を有するBMI≧27.0の日本人・韓国人201例を対象とした68週間のRCTで、セマグルチド経口薬(50mg/日)はプラセボと比較し、統計学的に有意な体重減少効果(2群間差-13.1%ポイント)がありました。Cardiovascular Outcomes with Tirzepatide versus Dulaglutide in Type 2 DiabetesNicholls SJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:2409-2420.<SURPASS-CVOT試験>:心血管疾患を有する肥満2型DM、MACEリスクはチルゼパチドがデュラグルチドに非劣性心血管疾患を有する肥満2型糖尿病患者1万3,165例を対象とした4年間(中央値)のRCTでチルゼパチド(最大15mg/週)とデュラグルチド(1.5mg/週)によるMACE(主要心血管イベント)リスクへの影響が検証されました。その結果、チルゼパチドはデュラグルチドと比較して非劣性でした。Parathyroidectomy and Cardiometabolic Risks in Patients With Primary HyperparathyroidismTsur N, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2544623.<原発性副甲状腺機能亢進症と心代謝リスク>:副甲状腺摘出後は2型糖尿病のみリスク低下原発性副甲状腺機能亢進症は高血圧症、2型糖尿病、心血管疾患、脳血管障害のリスク上昇(調整ハザード比:1.07~1.28)と統計学的に有意に関連していました。副甲状腺摘出後は2型糖尿病のみリスクが有意に低下する(調整ハザード比:0.56)可能性が示されました。ただし、観察研究なので効果を確定することはできません。

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2型糖尿病/肥満者の体重減少、GLP-1RA vs.SGLT2i vs.頭蓋磁気刺激

 2型糖尿病患者および肥満者の体重減少に寄与する薬剤以外の有効な治療方法にはどのようなものがあるであろう。イタリア・ミラノのIRCCSマルチメディカ内分泌・栄養・代謝疾患科のAnna Ferrulli氏らの研究グループは、肥満および2型糖尿病患者を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチド(0.5mg/週)、SGLT2阻害薬、および肥満に対する新たな治療法として登場した反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性を比較した。その結果、rTMS治療は、セマグルチドと同等の体重減少効果を示すことがわかった。この結果はObesity誌オンライン版2025年12月26日号に公開された。反復経頭蓋磁気刺激とセマグルチドの効果は同等 研究グループは、SGLT2阻害薬治療を受けた40例、セマグルチド治療を受けた37例、rTMS治療を受けた30例を後ろ向きに解析した。rTMSは週3回、5週間実施したほか、全患者は中程度のカロリー制限(-300kcal/日)に関する食事指導を受けた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月後の体重減少量では、rTMS群(-8.2±1.0kg)とセマグルチド群(-5.7±0.9kg)に有意差は認められなかった。・SGLT2阻害薬群の減少量(-2.0±0.7kg)は、セマグルチド群およびrTMS群と比較して有意に少なかった(それぞれp=0.01、p<0.0001)。・SGLT2阻害薬群では6ヵ月目から12ヵ月目にかけて体重が再増加した一方で、セマグルチド群およびrTMS群では体重が漸減した。 以上の結果から研究グループは、「rTMS治療は、セマグルチド(0.5mg/週投与)と同等の体重減少効果を示し、肥満および2型糖尿病治療における有望な介入法となる」と結論付けている。

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新しい糖尿病治療薬、高コストも合併症リスクは従来薬と変わらず

 2型糖尿病の治療では、血糖コントロールと合併症予防のために経口薬が用いられる。比較的新しく登場したSGLT2阻害薬は近年広く使われるようになったが、最新の日本の大規模データを用いた研究で、初期治療においてSGLT2阻害薬は従来のビグアナイド系薬剤(メトホルミン塩酸塩やブホルミン塩酸塩)と比べて、心血管イベントや糖尿病合併症の抑制効果に明確な差がないことが示された。一方で、薬剤費は約50%高く、臨床現場での薬剤選択や医療費の観点から重要な知見となる。研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は11月6日付で「PLOS One」に掲載された。 世界では2型糖尿病が急増しており、合併症である心血管・脳血管イベントが死亡と医療費の大部分を占める。このため、初期治療でどの薬を選ぶかは臨床的にも経済的にも重要となる。従来は安価で安全性が高いメトホルミンが第一選択とされてきたが、近年はSGLT2阻害薬が心血管死や心不全、腎機能悪化を減らすことが示され、早期使用が推奨されつつある。ただ、実臨床研究では両者の効果差は一貫せず、日本からのデータは特に乏しい。過去の国内研究では高価な薬剤を初期に用いても合併症は減らず医療費のみ増える可能性が示唆されたが、ビグアナイド系薬剤とSGLT2阻害薬の直接比較は行われていない。そこで本研究は、日本人2型糖尿病患者を対象に、主要心血管イベントを含む長期アウトカムと薬剤の費用差を後ろ向きに検証した。 本研究では、登録者数250万人以上を有する静岡国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用いて解析を行った。解析対象は、ビグアナイド系薬剤またはSGLT2阻害薬のいずれかを初期治療として開始した患者とした。開始後12か月間はもう一方の薬を使用せず、他の血糖降下薬の併用は許容した。追跡は治療開始時点から開始し、12か月以内に比較薬を使用した患者は除外された。人口統計、臨床、検査、生活習慣の変数に基づき1対1の傾向スコアマッチングを行った後、Cause-specific Coxモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。また、1日あたりの薬剤費も比較した。主要アウトカムは、開始日から脳血管イベント、心血管イベント、または全死亡を含む複合エンドポイントの初発までの期間とした。副次アウトカムは、開始日から糖尿病関連合併症(糖尿病性腎症、腎不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢神経障害)の初発までの期間と設定した。 傾向スコアマッチング後のコホートは、ビグアナイド単剤群623名とSGLT2阻害薬群623名で構成され、追跡期間の中央値は2.9年(最長7.2年)であった。追跡期間中に主要アウトカムのイベントを起こしたのは、ビグアナイド単剤群44名(7.1%)、SGLT2阻害薬群35名(5.6%)であり、治療群間で統計的な有意差は認められなかった(log-rank検定、P=0.314)。さらに、Cox比例ハザードモデルによる解析では、ビグアナイド単剤群とSGLT2阻害薬群のHRは0.80(95%信頼区間〔CI〕 0.51~1.24)であり、リスクはほぼ同等であることが示された。 糖尿病合併症は、ビグアナイド単剤群で86名(13.8%)、SGLT2阻害薬群で78名(12.5%)に発症し、こちらも治療群間で有意な差は認められなかった(Gray検定、P=0.343)。HRは0.88(95%CI 0.70~1.13)であり、ほぼ同等のリスクを示した。 1日あたりの薬剤費の中央値を比較したところ、ビグアナイド治療は124.7円、SGLT2阻害薬治療では184.0円であり、ウィルコクソン順位和検定の結果、この差は統計的に有意であることが示された(P<0.001)。 著者らは、「今回得られた知見は、SGLT2阻害薬を初回の血糖降下薬としてルーチンに使用することの臨床的および経済的意義に疑問を投げかける。今回の費用差は個々の患者レベルでは小さく見えるかもしれないが、長期にわたり多くの患者が服用する場合には、総医療費として財政に大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

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生活保護受給者、糖尿病の受診動向と転帰は?/筑波大学ら

 日本において生活保護受給者は医療費が免除されているが、医療費無償化の健康アウトカムに対する効果はどの程度なのか。糖尿病患者を対象に、生活保護受給者と国民健康保険加入者の治療と転帰の違いを調査した研究が行われた。筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野の山岡 巧弥氏らによる本研究は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2025年12月4日号に掲載された。 本研究は後ろ向き観察研究で、2017年4月〜2022年3月につくば市で収集された基本住民台帳・生活保護調査・医療保険請求データを用いた。対象は20〜68歳で2型糖尿病と診断され、糖尿病薬を使用している患者だった。主な評価項目は「年次の眼科検診受診」「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の使用率」「医療費(総額・外来・入院)」「健康アウトカム(低血糖および入院発生率)」であり、多変量回帰モデルにより治療プロセスの差と転帰のリスク比や発生率比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となったコホートは、2018〜20年の横断データで1万1,385〜1万1,566例、縦断データで計1万8,655例だった。・全期間を対象とした解析では、生活保護群は年1回の眼科検診を受ける割合が高かった(調整リスク比:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。・生活保護群では、SGLT2阻害薬の使用割合が高く(1.22、1.13~1.31)、GLP-1受容体作動薬の使用割合はさらに高かった(1.63、1.41~1.90)。・生活保護群では総医療費(1.16、1.09~1.23)と外来医療費(1.31、1.24~1.38)が高かった反面、入院医療費(0.85、0.77~0.94)は低かった。・一方で、生活保護群のほうが低血糖の発生率が高かった(2.21、1.38~3.54)。 研究者らは「本研究では、医療費免除や所得補償がある生活保護受給者は適切な治療を受けやすいことが示された。しかし、低血糖リスクの上昇や健康アウトカムの改善が限定的であることは、単なる医療アクセス改善だけでは健康格差の解消に至らないことを示唆している。これは、病態の複雑さ、生活習慣、教育・自己管理支援の不足、社会的ストレスなど多因子の影響が考えられる。医療費免除のみでは健康アウトカムの改善が十分でないため、低血糖予防や継続的な患者教育・自己管理支援、社会的環境改善の施策など、包括的支援の必要性が高いと考えられる」としている。

7.

SGLT2阻害薬のCKD進行抑制:糖尿病およびアルブミン尿の有無にかかわらず得られる絶対的ベネフィット/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SMART-C(SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium)は、SGLT2阻害薬のランダム化比較試験(RCT)における心・腎アウトカムをメタ解析する国際共同研究組織である。SMART-C研究の成果は、2024~25年にLancet誌などに4編の論文として主要誌に報告された。そのうち2編は主として腎保護効果に焦点を当てた解析であり、JAMA誌オンライン版(2025年11月7日号)に同時掲載された。 その第1報はNeuenらによる論文で、これは「腎アウトカム」のクラスエフェクトを解析した研究である。ここでは、SGLT2阻害薬の腎保護作用が、糖尿病の有無にかかわらず、eGFRが低下したステージ4の患者や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が低い群においても相対的効果が認められることが示された(CLEAR!ジャーナル四天王「SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA」)。 第2報は、Staplinらによる今回紹介するJAMA誌掲載論文である。本論文では、腎疾患イベントに加え、「死亡および入院」に関する絶対リスクの評価を中心としたメタ解析が行われた。その結果、糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能、入院、死亡といったアウトカムにおいて、SGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットが確認された。これらの新知見は、SGLT2阻害薬の適応や治療選択肢の拡大の可能性を支持するものである。本SMART-C研究の主な成績 腎疾患を適応とするSGLT2阻害薬を使用したRCT8件を対象に解析を行った。解析対象は5万8,816例で、平均年齢は64±10歳、女性は35%であった。内訳は、糖尿病患者4万8,946例、非糖尿病患者9,870例である。主要評価項目は、腎・安全・全般アウトカムとして、腎疾患進行、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)、全入院および全死亡とした。統計解析は逆分散重み付け法によるハザード比(hazard ratio:HR)の統合を行い、糖尿病の有無およびUACR<200mg/gと≧200mg/gで層別化して異質性を評価した。絶対効果は、各サブグループにおけるプラセボ群のイベント率に統合相対リスクを適用して推計した。 その結果、腎疾患進行に対するHRは、糖尿病ありで0.65(95%信頼区間[CI]:0.60~0.70)、糖尿病なしで0.74(95%CI:0.63~0.85)であった。推計イベント率は、糖尿病ありで33対48/1,000人年、糖尿病なしで32対46/1,000人年(いずれもSGLT2阻害薬群vs.プラセボ群)であった。AKIについては、糖尿病ありでHR:0.77(95%CI:0.69~0.87)、糖尿病なしでHR:0.72(95%CI:0.56~0.92)であり、糖尿病の有無にかかわらずAKIリスクの有意な低下が認められた。全入院は、糖尿病ありでHR:0.90(95%CI:0.87~0.92)、糖尿病なしでHR:0.89(95%CI:0.83~0.95)であった。全死亡は、糖尿病ありでHR:0.86(95%CI:0.80~0.91)、糖尿病なしでHR:0.91(95%CI:0.78~1.05)であり、非糖尿病群では統計学的に境界的であった。さらに、UACRによる層別サブグループ解析では、相対効果はUACR≧200mg/g群と<200mg/g群でおおむね同程度であったが、ベースラインの高いUACR≧200mg/g群では、腎疾患進行に対する絶対的ベネフィットがより大きかった。一方、全入院に対する絶対的ベネフィットは、UACR<200mg/g群においても明瞭に認められた。2つのSMART-C研究のインパクト KDIGOガイドライン(Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. Kidney Int. 2024;105:S117-S314.)では、糖尿病の有無やUACRの程度により推奨の強さが異なるため、臨床現場において「SGLT2阻害薬はどのような患者に、どれだけの絶対的利益が期待できるのか」という点には不確実性が残されていた。本論文で報告されたSMART-C研究第2報は、糖尿病の有無およびUACR200mg/gを閾値として層別化したサブグループごとに治療効果を統合し、入院や死亡といったアウトカムに対する「絶対評価」を行うことで、この不確実性を明らかにしようとした試みである。 SMART-C研究第1報が、SGLT2阻害薬の「腎アウトカム」におけるクラスエフェクトに焦点を当てたのに対し、第2報では、「入院・死亡」を含む臨床的に重要なアウトカムに対するSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットに焦点を当てたわけである。言い換えれば、第1報の解析が「どの程度まで進行した腎疾患に有効か」という相対的観点から検討したのに対し、第2報の解析は、「誰がどれだけ利益を得るのか」を糖尿病の有無やUACRによって具体的に層別化して検討した点に特徴がある。その結果、本研究により、SGLT2阻害薬がもたらす絶対的ベネフィットが明確に示された。本論文のインパクトは、現行ガイドラインにおける適応基準の再検討や、より多様な患者集団に対する個別化治療の拡大につながる可能性を示唆する。実臨床の視点からSMART-C研究を紐解く SMART-C研究の解析結果は、統計学的に妥当性はあるとしても、SGLT2阻害薬は決して「腎保護の万能薬」となるわけではない。実臨床において本結果をどのように活用するかの各論は、3大腎疾患である糖尿病性腎臓病(DKD)、慢性糸球体腎炎(CGN)、腎硬化症(NS)によりおのずと異なる。DKDおよびCGNにおいては、UACRの多寡にかかわらずSGLT2阻害薬を選択することに大きな異論はないが(ただし、大規模RCTの多くはRAS阻害薬併用が前提となっている点には留意が必要)、高齢者ではUACRが比較的少ないNSでは注意が必要である。DKDやCGNの病態の主体は糸球体過剰濾過である(Kanbay M, et al. Nephrol Dial Transplant. 2024;39:1228-1238.)。一方、NSの病態の基本は、これとは異なり糸球体虚血である。 SGLT2阻害薬は、DKDでは糖尿病により拡張した輸入細動脈を収縮させ、CGNではRAS活性化により収縮した輸出細動脈を拡張させることで、糸球体過剰濾過を改善し、腎保護作用を発揮する。一方、輸入細動脈の狭小化を特徴とするNSでは、糸球体はむしろ虚血腎の状態にあり、病態生理学的には、過剰濾過改善機序による腎保護効果は期待しにくい。また、SGLT2阻害薬導入時の安全面への配慮として、脱水や低血圧の確認、DKDにおけるシックデイ時の対応やケトアシドーシス予防、AKIリスクの管理、尿路感染症への注意なども決して軽視できない。確かにSMART-Cの本論文の結果は、UACRの多寡を問わずSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットを示した点で朗報である。しかしながら、高齢者に多い高血圧性腎硬化症においても同様のベネフィットが再現され、末期腎不全や透析導入の減少に結びつくのか、さらに長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるのかについては、今後の実臨床の積み重ねとリアルワールドデータによる検証が不可欠である。

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SGLT2阻害薬の投与により自己免疫性リウマチ性疾患の発症が抑制される?(解説:住谷哲氏)

 糖尿病合併症に慢性炎症が深く関与していることはよく知られている。そこで、慢性炎症を抑制する作用のある血糖降下薬があれば、それを選択するのが合併症予防のためには有用と考えられる。SGLT2阻害薬が糖尿病合併症である腎症や心不全の予後を改善することは現在ではほぼ確立しているが、その想定されているメカニズムの1つにSGLT2阻害薬の抗炎症作用がある1)。慢性炎症の持続が自己免疫性リウマチ性疾患の発症につながるのかは不明であるが、著者らはSGLT2阻害薬の抗炎症作用に着目して、SGLT2阻害薬の投与が自己免疫性リウマチ性疾患の発症抑制と関連するか否かをSU薬を対照として検討した。 韓国の医療データベースを用いた後方視的コホート研究であり、ICD-10のコーディングで自己免疫性リウマチ性疾患に含まれたのは、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)、脊椎関節炎(spondyloarthritis)、SLE、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)、混合性結合組織病(mixed connective tissue disease)、皮膚筋炎/多発筋炎(dermatomyositis/polymyositis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)である。結果は、SGLT2阻害薬の投与はSU薬の投与と比較して自己免疫性リウマチ性疾患発症の減少と関連しており、そのハザード比は0.89(95%信頼区間:0.81~0.98)であった。有意な減少ではあるが、絶対数でみると100,000人・年当たりの発症がSU薬58.41人からSGLT2阻害薬51.90人と6.50人の減少である。 自己免疫性リウマチ性疾患の発症率そのものが低いので、結果は有意な減少であるが臨床的に意味のある数字とは思われない。したがって、血糖降下薬を選択する際に自己免疫性リウマチ性疾患の発症を抑制する目的で、SU薬ではなくSGLT2阻害薬を選択する正当性はないだろう。むしろ著者らがDiscussionで述べているように、自己免疫性リウマチ性疾患を合併する2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の免疫調節作用の有用性を検討する方向の研究が進むことを期待したい。

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IgA腎症へのsibeprenlimabの治療は完全寛解が期待できるか?(解説:浦信行氏)

 IgA腎症ではガラクトース欠損IgA1が産生され、これに対する自己抗体との複合体ができる。これが糸球体のメサンギウムに沈着し、炎症や補体の活性化、増殖反応の逸脱を引き起こし、腎障害を増悪させる。増殖誘導リガンド(a proliferation-inducing ligand:APRIL)はTNF-αのスーパーファミリーであり、これがIgA産生を含むB細胞由来の免疫反応を引き起こす。sibeprenlimabはAPRILの中和抗体であり、その活性を抑制する。sibeprenlimabを使用したIgA腎症の治療効果はすでに第II相のENVISION試験として報告されており、sibeprenlimab 8mg/kg 4週ごと静脈内投与12ヵ月で24時間尿蛋白/クレアチニン比は有効率62%と、プラセボ群の20%に比して有意に減少した。また、尿蛋白の臨床的寛解である300mg未満の割合も26.3%と良好な結果であった。しかし、ベースラインから12ヵ月後のeGFRの変化は良好な結果であったが、プラセボ群との有意差はなかった。 このたびのVISIONARY試験は第III相多施設共同二重盲検無作為化試験であり、対象が510例とIgA腎症の臨床試験としては最大級の規模である。その結果はNEJM誌のオンライン版2025年11月8日号に掲載され、12月11日配信のジャーナル四天王に詳しく解説されている。このたびも1次エンドポイントは24時間尿蛋白/クレアチニン比であり、2年間の試験だが9ヵ月時点での中間報告で320例の解析である。結果は、ENVISION試験と同様にプラセボ群に比較して52%の有意な低下を認めた。また、層別解析では性差や、アジア人が59%を占める参加者間の人種差は認めず、年代の差もなかった。さらに臨床像に関しても、尿蛋白の多寡、eGFRの程度、SGLT2阻害薬の使用の有無などでも効果に差異はなかった。2次エンドポイントはやはりベースラインから24ヵ月後のeGFRの変化であり、2026年初頭まで待たなければならないが、このハードエンドポイントの結果に完全寛解の期待が高まる。

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インクレチン製剤がもたらす 肥満合併HFpEFの新たなパラダイム【心不全診療Up to Date 2】第5回

インクレチン製剤がもたらす肥満合併HFpEFの新たなパラダイムKey Points肥満の評価は、BMIでいいのか?HFpEF患者の多くに中心性肥満を認め、これがHFpEF発症の重要な病態因子と考えられるセマグルチドは肥満合併HFpEF患者の症状と運動耐容能を有意に改善し、チルゼパチドは心不全イベントを38%減少させたBMI 25~30程度の軽度肥満患者における有効性の検証が今後の課題であるはじめに左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は、高齢化を背景に本邦の心不全患者の半数以上を占める主要な表現型となっており、高齢、高血圧、心房細動、糖尿病、肥満など多彩な併存症を背景とする全身性の症候群として捉えるべき病態である1)。HFpEFがこのように心臓に限局しない全身的症候群であることが、心臓の血行動態のみを標的とした過去の治療薬が有効性を示せなかった一因と考えられる。そして近年、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬といった、代謝など全身へ多面的に作用する薬剤が成功を収めたことは、この病態の理解を裏付けるものである。本稿では、肥満合併HFpEFに対するインクレチン製剤の臨床エビデンス、作用機序、進行中の臨床試験、そして今後の展望について解説する。HFpEFにおける肥満の重要性HFpEF患者において肥満は極めて高頻度に認められる。従来、BMI≧30kg/m2で定義される肥満はHFpEF患者の60~70%に存在するとされてきた2)。しかし、BMIは骨格筋量や骨量の影響を受けるため、とくに民族差のある集団では脂肪量の正確な評価指標とはならない。より重要なのは内臓脂肪の蓄積である。ウエスト・身長比(≧0.5)で評価した中心性肥満は、HFpEF患者の95%以上に認められることが報告されており、画像診断による脂肪量の定量化でもこの高い有病率が確認されている3)。さらに、複数の前向きコホート研究において、内臓脂肪の蓄積がHFpEF(HFrEFではない)の発症を特異的に予測することが一貫して示されている4,5)。なお、アジア人集団では、欧米に比べてBMIは低いものの内臓脂肪が蓄積しやすい「内臓脂肪型肥満」の表現型が知られている6)。肥満合併HFpEFの病態生理肥満合併HFpEFの病態は多因子的であり、複数の機序が複雑に絡み合っている。内臓脂肪の蓄積が、炎症、循環血漿量の増加、心外膜および胸壁脂肪の増加を促進し、心室の相互依存性を増幅させることで、最終的にHFpEFの発症と進行を促進することを示すエビデンスが蓄積している7)。そのなかでも、最近Packer博士らにより提唱された「アディポカイン仮説」は、肥満合併HFpEFの病態を統一的に説明しようとする試みである(図1)8)。(図1)画像を拡大するこの仮説では、内臓脂肪組織の拡大と機能不全により、脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポカイン)のバランスが崩れることが、HFpEF発症の中心的機序であるとされる。このアディポカイン不均衡が、神経体液性因子の活性化、全身性炎症、心筋肥大・線維化、血漿量増加を引き起こし、HFpEFを発症させるという概念である。アディポカイン仮説は現時点ではあくまで仮説の段階であり、今後のさらなる検証が必要であるが、後述するインクレチン製剤の作用機序を理解する上で、有用な枠組みの一つを提供している。インクレチン製剤の作用機序と期待される効果GLP-1受容体作動薬GLP-1受容体作動薬(GLP-1RAs)は、膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進する消化管ホルモン(インクレチン)の一つであるglucagon-like peptide-1(GLP-1)の作用に基づく2型糖尿病治療薬である。体重減少効果もあることから、2023年に肥満症治療薬としても承認されている。GLP-1RAsは、心血管代謝リスク因子に良好な影響を及ぼすとされ9)、肥満症患者と糖尿病患者のいずれにおいても動脈硬化性疾患や心不全新規発症イベントのリスクを減少させるという報告があり、肥満合併心不全患者への効果も期待されてきた10)。心血管系への作用機序として、次の3つのことが考えられている。第1に、体重減少を介した効果として、循環血漿量の減少、左室充満圧の低下、心臓への機械的負荷軽減が挙げられる。第2に、直接的な心血管保護作用として、心筋細胞のアポトーシス抑制、抗炎症作用、酸化ストレスの軽減、内皮機能改善が報告されている。第3に、代謝改善として、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝改善、血糖コントロール改善(糖尿病合併例)がある。さらに、脂肪組織への直接作用として、内臓脂肪の選択的減少(体重減少を上回る)、心外膜脂肪組織の縮小、脂肪組織の炎症抑制、アディポカインプロファイルの改善(抗炎症性アディポカインの増加、炎症性アディポカインの減少)が示されている11)。GIP/GLP-1受容体作動薬もう一つの主要なインクレチンであるglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)の受容体にも作用するGIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)は、単独のGLP-1作動薬を上回る体重減少効果を示す。GIP受容体を介した追加作用として、脂肪細胞での脂肪分解促進、白色脂肪組織での無駄なカルシウムサイクリング誘導(エネルギー消費増加)、インスリン感受性改善が報告されている11)。持続的なGIP受容体刺激が、大幅な体重減少に大きく寄与すると考えられている。インクレチン製剤の臨床エビデンス肥満合併HFpEF患者に対するGLP-1RA(セマグルチド)の有効性を検証したSTEP-HFpEF試験では、2.4mgのセマグルチド週1回皮下投与が、肥満合併HFpEF(LVEF≧45%かつBMI≧30kg/m2)患者のKCCQ-CSS(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire clinical summary score)により評価される健康関連QOLをプラセボと比較して有意に改善させ、体重も有意に減少させた(図2)12)。(図2)STEP-HFpEF試験:主要エンドポイント画像を拡大するさらに、2型糖尿病を有する肥満合併HFpEFを対象としたSTEP-HFpEF DM試験でも同様の結果が得られている13)。なお、STEP-HFpEF DM試験ではSGLT2阻害薬を併用した症例が33%含まれていたが、SGLT2阻害薬併用の有無にかかわらず、セマグルチドの心不全関連転帰に対する効果は一貫していた。GIP/GLP-1受容体作動薬も、肥満合併HFpEF(LVEF≧50%かつBMI≧30kg/m2)患者を対象にその有効性を検証したSUMMIT試験において、複合心不全イベント(心血管死または心不全増悪イベント)リスクを38%低下させ、KCCQ-CSSで評価された健康関連QOLを有意に改善させたと報告されている(図3)14)。(図3)SUMMIT試験:主要エンドポイント画像を拡大するただし、悪心・嘔吐などの消化器症状や食欲減退といった副作用には注意が必要であり15)、患者ごとの病態や既存の治療との併用状況を考慮した上で投与方針を検討することが求められる。このように、肥満合併HFpEF患者に対するインクレチン製剤の有効性は確立しつつある一方、わが国に多いBMI 25~30程度の内臓脂肪型肥満を呈する症例において、同薬が有効かどうかは不明であり、今後の試験が期待される16)。次世代インクレチン製剤の開発現在、複数の次世代インクレチン関連薬が開発されている(図4)17)。(図4)現在臨床試験が進行しているインクレチン関連薬画像を拡大するGLP-1/グルカゴン(GCG)受容体二重作動薬(cotadutide、survodutideなど)は、グルカゴン受容体刺激により、肝臓での細胞外分泌因子FGF21産生が増加する。FGF21は脂肪組織の炎症抑制、褐色脂肪活性化、内臓脂肪減少をもたらすため、さらなる代謝改善と体重減少が期待される。代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を対象とした第II相試験ではMASH組織改善効果を認め18)、肥満患者を対象とした第III相試験は現在進行中であり19)、HFpEFへの応用が期待される。GLP-1/GIP/GCG受容体三重作動薬(retatrutideなど)は、3つの受容体を同時に刺激し、最大限の代謝改善を目指す薬剤である。肥満患者での第II相試験で顕著な体重減少を示しており20)、HFpEFへの応用が期待される。おわりに肥満合併HFpEF患者に対するインクレチン製剤は、STEP-HFpEF試験とSUMMIT試験により、症状改善、運動耐容能向上、そして心不全イベント減少という明確なエビデンスが示された。今後、次世代インクレチン製剤(GLP-1/GCG受容体二重作動薬、GLP-1/GIP/GCG受容体三重作動薬)の臨床開発や、治療反応性を予測するバイオマーカーの確立により、より個別化された効果的な治療が可能になることが期待される。肥満合併HFpEFの病態理解は急速に進展しており、これらの知見を臨床に活かし、エビデンスに基づいた最適な治療を提供することが、今後の日本のHFpEF診療における重要な課題である。 1) Hamo CE, et al. Nat Rev Dis Primers. 2024;10:55. 2) Obokata M, et al. Circulation. 2017;136:6-19. 3) Peikert A, et al. Eur Heart J. 2025;46:2372-2390. 4) Oguntade AS, et al. Open Heart. 2024;11:e002711. 5) Sorimachi H, et al. Eur Heart J. 2021;42:1595-1605. 6) WHO Expert Consultation. Lancet. 2004;363:157-163. 7) Borlaug BA, et al. Cardiovasc Res. 2023;118:3434-3450. 8) Packer M. J Am Coll Cardiol. 2025;86:1269-1373. 9) Kosiborod MN, et al. Diabetes Obes Metab. 2023;25:468-478. 10) Ferreira JP, et al. Diabetes Obes Metab. 2023;25:1495-1502. 11) Nogueriras R, et al. Nat Metab. 2023;5:933-944. 12) Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084. 13) Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2024;390:1394-1407. 14) Packer M, et al. N Engl J Med. 2025;392:427-437. 15) Kushner R, et al. JAMA. 2025;334:822-823. 16) 吉池信男ほか. 肥満研究. 2000;6:4-17. 17) Melson E, et al. Int J Obes(Lond). 2025;49:433-451. 18) Sanyal AJ, et al. N Engl J Med. 2024;391:311-319. 19) Kosiborod MN, et al. JACC Heart Fail. 2024;12:2101-2109. 20) Jastreboff AM, et al. N Engl J Med. 2023;389:514-526.

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SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、糖尿病関連腎臓病(DKD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全患者などにおいて心・腎アウトカムを改善する明確なエビデンスがある。しかし、腎保護作用に関し、従来、ステージ4 CKD(G4)や尿アルブミン排泄量の少ない患者での有効性は不明瞭であり、推奨度は低かった。この点に注目し、SGLT2阻害薬が腎アウトカムに与える「クラス効果(class effect)」を高精度に評価することを目的とし、オーストラリアのBrendon L. Neuen氏らは、SGLT2阻害薬の大規模臨床研究(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:RCT)を、SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C:国際共同研究)として統合的にメタ解析した(JAMA誌オンライン版2025年11月7日号、ケアネット11月28日掲載)。本解析の結果、SGLT2阻害薬の腎保護作用は、ステージ4のeGFR低下群や低UACR群でも認められ、糖尿病の有無にかかわらず一貫した効果が確認された。この新たな知見は、腎機能の中等度以上低下群や低尿アルブミン群への適応拡大を示唆する。SMART-C研究の主な成績 解析対象は、SGLT2阻害薬のRCT10件、計7万361例(平均年齢64.8±8.7歳)。主要アウトカムはCKD進行(腎不全、eGFRの50%以上低下、腎死)とし、年間eGFR低下率、腎不全単独なども評価。治療効果は、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。その主な結果は、CKD進行リスクを低下させた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。この効果は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)に関係なく一貫して認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合HR:0.61、45~<60の場合HR:0.57、30~<45の場合HR:0.64、<30の場合HR:0.71、傾向p値=0.16)。また、尿中アルブミン排泄(尿アルブミン・クレアチニン比[UACR])別でも効果は一貫しており(UACR<30mg/gでHR:0.58、30~300でHR:0.74、>300でHR:0.57、傾向p値=0.49)、低UACR群でも有効性が確認された。さらに、糖尿病の有無にかかわらず、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。なお、RAS阻害薬の使用率は、各サブグループ間で81~93%であった。また、論文記載のイベント率(SGLT2群25.4 vs.プラセボ群40.3/1,000人年)を基に筆者が算出した治療必要数(NNT)は、中央値3年で約22、高リスク群では16程度と推定された。SMART-C研究のインパクト 従来、SGLT2阻害薬は2型糖尿病やDKDを中心に使用されてきた。本研究の大きな意義は、糖尿病の有無、eGFR、UACRにかかわらず腎保護作用が一貫して認められた点である。現在、日本腎臓学会の「SGLT2阻害薬適正使用の推奨案」では、DKDで第1選択薬としてSGLT2阻害薬が明記されている。開始基準として、DKDではeGFR≧20mL/分/1.73m2での開始を推奨するものの、G5(eGFR<15)での新規開始は不可としている。さらに、DKDでは蛋白尿の有無にかかわらずSGLT2阻害薬は推奨されるが、非糖尿病CKDで蛋白尿陰性の場合は、G2(eGFR≧60)以下では慎重投与となっている(日本腎臓学会誌. 2023;65:1-10.)。一方、SMART-CではG4 CKD(eGFR15~29)でも、低UACR群でも腎保護効果が確認された。この結果は、本邦のガイドラインでは積極的に推奨されないCKD進行例や尿蛋白陰性例でも、SGLT2阻害薬の適応が拡大する可能性を示唆しており、将来的にガイドライン改訂に影響を与えると考えられる。いずれにしても、SMART-Cの成果は、SGLT2阻害薬を「血糖降下薬」から、「心・腎保護の基盤治療薬(foundation therapy)」と位置付ける根拠を提供した。とくに、糖尿病・心不全・CKDなどが複数併存する高リスク患者にとっても有益性が高いことが示され、実臨床/ガイドラインでの採用を裏付けるデータとなった。医療経済の面から、CKD進行イベント率から算出したNNTは約22、高リスク群では16程度と推定され、絶対的ベネフィットは大きい。また、発売10年が経過し、ジェネリック医薬品の登場によりコスト面でのハードルも低下する見込みである。 SMART-C研究には課題もある。この解析研究では、対象の約85%でRAS阻害薬が併用されている。つまり、ここで観察された腎保護効果はRAS阻害薬存在下で得られたものであり、SGLT2阻害薬の単独効果は未検証である。このことから、現時点においてSGLT2阻害薬による腎保護の介入は、RAS阻害薬の併用を前提とすることが望ましい。今後の検討事項としては、初期治療でのSGLT2阻害薬単独の腎保護効果を検証する必要がある。なお、SGLT2阻害薬の腎保護機序は、DKDでは主に糸球体過剰濾過の改善とされるが、それ以外にも諸説が提唱されている(Vallon V. Am J Hypertens. 2024;37:841-852)。かかりつけ医と腎臓専門医の役割 本邦の実臨床においてSMART-Cの結果をどのように導入するか。病態早期(G1~G2、eGFR≧60)やステージG3b(eGFR30~44)の中等症までのDKD/CKD患者でのSGLT2阻害薬導入は、かかりつけ医で可能と考えられる。初期投与後、2~4週でeGFRが一過性に10~20%低下する「initial dip」が観察されるが、これは糸球体過剰濾過腎では病態生理学的に許容範囲と考えられており、中長期的には緩徐なeGFRスロープ低下に移行する。一方、ステージG4(eGFR15~29)のDKD/CKDや複雑な腎病態を呈する症例でのSGLT2阻害薬開始は、腎臓専門医との病診連携が好ましい。この際、かかりつけ医は定期的モニタリングを担うことが望ましい。SGLT2阻害薬導入時の具体的な安全管理として、脱水・低血圧・利尿状況の確認、糖尿病合併例でのシックデイ時の休薬指導・ケトアシドーシス予防、急性腎障害のリスク管理、尿路感染症などへの対応が重要である。高齢者に多い高血圧性腎硬化症では、UACRは低値でeGFRは中等度に低下した虚血腎が病態のベースにある。こうした症例でもSMART-Cのベネフィットが再現できるか、また長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるかは、今後のリアルワールドデータの構築と検証が課題である。

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認知症リスク低減効果が高い糖尿病治療薬は?~メタ解析

 糖尿病治療薬の中には、血糖値を下げるだけでなく認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている薬剤がある一方、認知症の発症・進展は抑制しないという報告もある。今回、国立病院機構京都医療センターの加藤 さやか氏らは、システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスにより、9種類の糖尿病治療薬について2型糖尿病患者の認知症リスクの低減効果があるのかどうか、あるのであればどの薬剤がより効果が高いのかを解析した。その結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスクの低減効果を示し、その効果はこの順に高い可能性が示唆された。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2025年10月22日号に掲載(2026年1月号に掲載予定)。 本研究では、PubMed、Cochrane Library、医中誌Webを開始時から2023年12月31日まで検索し、糖尿病治療薬の認知症への効果を評価した英語または日本語で報告された試験を選定した。 主な結果は以下のとおり。・67試験(408万8,683例)が対象となり、単剤療法と対照群(糖尿病治療薬の使用なし、プラセボ)の比較が3試験、単剤療法と追加療法の比較が1試験、リアルワールドデータベース研究が63試験であった。・解析の結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が、対照群(プラセボ、糖尿病治療薬の使用なし、他の糖尿病治療薬)と比較して認知症リスクが低減し、その効果はこの順で高い可能性が示唆された。・インスリンは認知症リスクの上昇と関連していた。・メトホルミン、SU薬、グリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬は、認知症リスクとの有意な関連は認められなかった。

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IgA腎症、sibeprenlimabは蛋白尿を有意に減少/NEJM

 IgA腎症患者において、sibeprenlimabはプラセボと比較して蛋白尿を有意に減少させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らVISIONARY Trial Investigators Groupが行った、第III相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「VISIONARY試験」の中間解析の結果で示された。IgA腎症の病態形成には、a proliferation-inducing ligand(APRIL)というサイトカインが深く関わると考えられている。sibeprenlimabはヒト化IgG2モノクローナル抗体で、APRILに選択的に結合して阻害する。第II相のENVISION試験では、sibeprenlimabの4週ごと12ヵ月間の静脈内投与により、蛋白尿の減少と推算糸球体濾過量(eGFR)の安定がみられ血清APRIL値の抑制に伴いガラクトース欠損IgA1値が低下した。安全性プロファイルは許容範囲内であった。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。sibeprenlimab 400mg vs.プラセボ、4週ごと100週間皮下投与を評価 VISIONARY試験は31ヵ国240施設で行われ、IgA腎症患者における腎機能温存能の評価を目的に、支持療法との併用によるsibeprenlimab 400mgの4週ごと皮下投与の有効性と安全性を評価した。 生検でIgA腎症と確認された成人患者を、sibeprenlimab 400mgまたはプラセボを4週ごと100週間にわたり皮下投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 今回の中間解析における主要有効性エンドポイントは、ベースラインと比較した9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比であった。 重要な副次エンドポイント(試験完了時に評価)は、24ヵ月にわたるeGFRスロープ(年率換算)であった。その他の副次エンドポイントは、血清免疫グロブリン値の変化、安全性などだった。また、探索的エンドポイントとして、ガラクトース欠損IgA1値および血清APRIL値の変化、随時尿の尿蛋白/クレアチニン比、血尿、および蛋白尿の寛解などが含まれた。24時間尿蛋白/クレアチニン比、sibeprenlimab群がプラセボ群より51.2%低下 計510例が無作為化された(sibeprenlimab群259例、プラセボ群251例)。事前に規定された中間解析(データカットオフ日:2024年9月4日)には、9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比の評価を完了した試験登録当初の320例(sibeprenlimab群152例、プラセボ群168例)が包含された。 両群のベースライン特性は類似していた。320例のうち男性が62.5%、アジア人が59.1%を占め、97.5%がRA系阻害薬を、40.0%がSGLT2阻害薬をそれぞれ試験前に服用していた。年齢中央値は42歳、平均eGFRは63.4mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比中央値は1.25であった。初回腎生検から無作為化までの期間中央値は1.5年で、おおむねIgA腎症と診断された患者を代表する試験集団であった。 9ヵ月時点で、24時間尿蛋白/クレアチニン比は、sibeprenlimab群では顕著な低下(-50.2%)が認められた一方、プラセボ群では上昇(2.1%)が認められた。24時間尿蛋白/クレアチニン比の補正後幾何最小二乗平均値は、sibeprenlimab群がプラセボ群と比較して51.2%(96.5%信頼区間:42.9~58.2)有意に低かった(p<0.001)。 またsibeprenlimab群では、血清APRIL値が95.8%、病原性ガラクトース欠損IgA1値が67.1%、それぞれベースラインから低下していた。 安全性プロファイルは両群で類似していた。死亡例の報告はなく、治療期間中に報告された重篤な有害事象の発現頻度は、sibeprenlimab群3.5%、プラセボ群4.4%であった。

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CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。8件の無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、糖尿病の有無およびUACR(200mg/g以上、200mg/g未満)で層別化した臨床試験の参加者において、SGLT2阻害薬の使用が有効性や安全性のアウトカムに及ぼす相対的および絶対的な影響の評価を目的にメタ解析を行った。 対象は、腎疾患での使用の適応を有するSGLT2阻害薬について検討し、腎アウトカムの経過やベースラインのアルブミン尿のデータを記録した8件の無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムとして、SGLT2阻害薬の使用が臨床的な有効性と安全性に及ぼす影響を評価した。糖尿病の有無にかかわらず、有効性のアウトカムが改善 SGLT2阻害薬とプラセボを比較した試験の参加者5万8,816例(平均年齢64[SD 10]歳、女性35%、糖尿病4万8,946例、非糖尿病9,870例)を解析の対象とした。 プラセボ群と比較してSGLT2阻害薬群では、次の4つの有効性のアウトカムが糖尿病の有無を問わず改善した(非糖尿病患者の総死亡を除く)。(1)腎疾患進行率が低下(糖尿病患者:SGLT2阻害薬群33件/1,000人年vs.プラセボ群48件/1,000人年、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.60~0.70]、非糖尿病患者:32件vs.46件、0.74[0.63~0.85])(2)急性腎障害(AKI)の発生率が低下(糖尿病患者:14件vs.18件、0.77[0.69~0.87]、非糖尿病患者:13件vs.18件、0.72[0.56~0.92])(3)総入院の発生率が低下(糖尿病患者:202件vs.231件、0.90[0.87~0.92]、非糖尿病患者:203件vs.237件、0.89[0.83~0.95])(4)総死亡の発生率が低下(糖尿病患者:42件vs.47件、0.86[0.80~0.91]、非糖尿病患者:42件vs.48件、0.91[0.78~1.05])アルブミン尿による層別化は不要 このようなSGLT2阻害薬の糖尿病の有無別のHRは、さらにUACR 200mg/g以上とUACR 200mg/g未満に分けて検討した場合も同様に良好であった。 たとえば、UACR 200mg/g以上で絶対リスクが高い場合でも、このサブグループでは腎疾患進行(糖尿病患者のHR:0.65[95%CI:0.59~0.71]、非糖尿病患者のHR:0.71[95%CI:0.60~0.84])に対するSGLT2阻害薬の絶対的便益が明らかに大きいと推定された。また、UACR 200mg/g未満の患者では、他の有効性のアウトカム、とくに入院(0.91[0.88~0.94]、0.89[0.82~0.98])に関して明らかな絶対的便益を認めた。 さらに、非心不全の患者集団や、推定糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2未満の患者の解析でも、このSGLT2阻害薬の絶対的便益が保持されていた。 著者は、「これらのデータは、CKD患者におけるSGLT2阻害薬の使用に関するガイドラインの推奨から、アルブミン尿の値による患者の層別化を削除することを支持し、より広範な使用の根拠となるものである」としている。

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鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とSGLT2阻害薬の併用が慢性腎臓病(CKD)治療の基本となるか(解説:浦信行氏)

 CKDに対する腎保護効果に関して、従来はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用が基本であった。また、一層の腎保護効果を期待してこの両者の併用も分析されたことがあったが、作用機序が近いこともあって相加効果は期待し難かった。 最近はMRAやSGLT2阻害薬の腎保護効果が次々と報告されるようになり、それぞれ複数の薬剤で有意な効果が報告されている。この両者の併用効果に関しては、2型糖尿病に伴うCKDを対象としたフィネレノンとエンパグリフロジン併用のCONFIDENCE試験が先行して行われ、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)で相加効果が確認されている。フィネレノンは従来のMRAとはMRへの結合の際の立体構造の変化が異なると報告され、その結果、高K血症の発症が少ないとされたが11.4%に認めた。エンパグリフロジンとの併用で9.3%に減少すると報告されたが、期待されたほど少なくはなかった。 このたびは、MRAのbalcinrenoneとSGLT2阻害薬のダパグリフロジン併用の腎保護効果を、2型糖尿病の有無にかかわらずUACR陽性のCKDで検討した(MIRO-CKD試験)。その結果は2025年11月27日配信のジャーナル四天王に概説されているが、ダパグリフロジン単独群より22.8~32.8%のUACRの有意な減少効果を示した。また、サブ解析では2型糖尿病の有無にかかわらず同等の効果を示し、腎機能障害の程度にかかわらず同等の効果を示している。問題は高K血症であるが6~7%にとどまり、ダパグリフロジン単独群の5%と大差がなく、対象324例で重症例はなかった。その機序は不明だが、尿中Na/K比に有意な変化はなかったことからbalcinrenoneによるK排泄の変動が大きくなかったと考えられるが、MRに対する他MRAとの相違の有無などの可能性は考察されていない。今後は、より多数例でより長期の試験が望まれ、ハードエンドポイントでの評価が望まれる。

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IgA腎症に対するフィネレノン+SGLT2阻害薬が蛋白尿を減少

 IgA腎症患者を対象に、フィネレノン(非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)+SGLT2阻害薬の併用療法とそれぞれの単剤療法による腎保護効果を比較検討した結果、併用療法はそれぞれの単剤療法よりも蛋白尿をより迅速かつ有意に減少させたことを、中国・鄭州大学第一附属病院のYanhong Guo氏らが明らかにした。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。 研究グループは、鄭州大学第一附属病院において、2023~24年に生検でIgA腎症と診断された患者76例を後ろ向きに評価した。フィネレノン+SGLT2阻害薬併用群は26例、フィネレノン単剤群は32例、SGLT2阻害薬単剤群は18例であった。 主要評価項目は、3ヵ月および6ヵ月時点における尿蛋白/クレアチニン比および推算糸球体濾過量(eGFR)の変化であった。安全性については、高カリウム血症および治療関連有害事象の発現を評価した。 主な結果は以下のとおり。・フィネレノン+SGLT2阻害薬併用療法は、それぞれの単剤療法と比較して蛋白尿の改善効果が有意に大きかった(いずれもp<0.05)。尿蛋白/クレアチニン比減少率の中央値は下記のとおり。 -併用療法 3ヵ月後:40.89%、6ヵ月後:54.62% -フィネレノン単剤療法 3ヵ月後:23.72%、6ヵ月後:30.88% -SGLT2阻害薬単剤療法 3ヵ月後:24.69%、6ヵ月後:24.69%・フィネレノン+SGLT2阻害薬併用療法では、6ヵ月後に尿蛋白/クレアチニン比が50%以上減少した患者が有意に多かった(p=0.033)。 -併用療法 53.8% -フィネレノン単剤療法 25.0% -SGLT2阻害薬単剤療法 22.2%・ロジスティック回帰分析では、併用療法による50%以上の蛋白尿減少達成の調整オッズ比は3.87~18.90であった。・eGFRを含む腎機能指標は3群間で有意差を認めず、全体として腎機能は維持されていた(いずれもp>0.05)。・高カリウム血症の発現率は3群で同程度であり(p=0.332)、高カリウム血症による重篤な有害事象や治療中止は認められなかった。

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SGLT2阻害薬、eGFRやアルブミン尿を問わずCKD進行を抑制/JAMA

 SGLT2阻害薬は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)やアルブミン尿の程度によらず、ステージ4の慢性腎臓病(CKD)患者や微量アルブミン尿患者を含むCKD進行のリスクを低下させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)が行ったメタ解析の結果で報告された。著者は、「2型糖尿病、CKD、または心不全患者において、腎機能のすべての段階で腎アウトカム改善のためにSGLT2阻害薬を日常的に使用することを支持する結果である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。無作為化二重盲検プラセボ対照試験10件についてメタ解析 SMART-Cは、各治療群に少なくとも500例の患者が含まれ、少なくとも6ヵ月の追跡調査が行われて完了している無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象とし、各試験の代表者で構成される学術運営委員会が主導している。 研究グループは、SMART-Cのうち、CKD進行に対する適応を有するSGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)を評価した試験に限定し、メタ解析を行った。解析対象は10試験(EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、EMPEROR-Reduced、EMPEROR-Preserved、DAPA-HF、DELIVER、CREDENCE、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)。 主要アウトカムはCKD進行とし、腎不全、eGFRが50%以上低下、または腎不全による死亡と定義した。その他のアウトカムには、eGFRの年間低下率および腎不全などが含まれた。個々の試験における治療効果を、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。腎不全単独を含む研究対象となったすべての腎アウトカムのリスクを軽減 解析対象は計7万361例(平均[SD]年齢64.8[8.7]歳、女性2万4,595例[35.0%])で、このうちCKD進行が2,314例(3.3%)、腎不全が988例(1.4%)に認められた。 SGLT2阻害薬は、CKD進行リスクを低下させた(1,000患者年当たりのイベント件数:SGLT2阻害薬群25.4 vs.プラセボ群40.3、ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。 この効果は、ベースラインのeGFRに関係なく認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2のHR:0.61[95%CI:0.52~0.71]、eGFR45~<60mL/分/1.73m2のHR:0.57[0.47~0.70]、eGFR30~<45mL/分/1.73m2のHR:0.64[0.54~0.75]、eGFR<30mL/分/1.73m2のHR:0.71[0.60~0.83]、傾向のp=0.16)。 また、ベースラインのアルブミン尿の程度にかかわらず効果が認められた(UACR≦30mg/gのHR:0.58、>30~300mg/gのHR:0.74、>300mg/gのHR:0.57、傾向のp=0.49)。 SGLT2阻害薬は、保護効果の程度にはばらつきがあるものの、糖尿病の有無別に解析した場合も含め、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。

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balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬、CKD患者のアルブミン尿を減少/Lancet

 疾患進行リスクの高い慢性腎臓病(CKD)患者において、balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬はアルブミン尿の減少においてダパグリフロジン単独投与に対する優越性が示され、忍容性は良好で、カリウムへの影響も軽微であり、予期せぬ安全性の懸念は認められなかった。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らMIRO-CKD study investigatorsが、北米・南米、アジア、欧州の15ヵ国106施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検実薬対照用量設定試験「MIRO-CKD試験」の結果を報告した。新規ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるbalcinrenoneは、小規模な臨床試験においてSGLT2阻害薬ダパグリフロジンとの併用によりアルブミン尿を減少させる傾向が示されていた。Lancet誌2025年11月22日号掲載の報告。12週時の尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の相対変化量を評価 研究グループは、推定糸球体濾過量(eGFR)が25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が100mg/g超5,000mg/g以下、および血清カリウム値が3.5mmol/L以上5.0mmol/L以下の成人患者を、balcinrenone 15mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 15mg併用)群、balcinrenone 40mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 40mg併用)群またはプラセボ/ダパグリフロジン10mg(ダパグリフロジン単独)群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 いずれも12週間投与した後、8週間休薬し投与中止後の効果も評価した。 ACE阻害薬またはARBの投与を受けている場合、スクリーニング前の少なくとも4週間、安定用量を投与されている患者は参加可能であった。 有効性の主要エンドポイントは、無作為化され少なくとも1回以上試験薬の投与を受けた患者における、ベースラインから投与12週時までのUACRの相対変化量とした。15mg併用および40mg併用ともダパグリフロジン単独に対して優越性を示す 2024年5月1日~12月18日に、613例がスクリーニングされ、適格基準を満たした324例が無作為化された(balcinrenone 15mg併用群108例、balcinrenone 40mg併用群110例、ダパグリフロジン単独群106例)。患者背景は、平均年齢64.6歳(SD 12.4)、女性110例(34%)、男性214例(66%)、アジア系103例(32%)、黒人またはアフリカ系アメリカ人23例(7%)、白人183例(56%)、平均eGFRは42.2mL/分/1.73m2(SD 10.5)、UACR中央値365mg/g(四分位範囲:157~825)で、56%がSGLT2阻害薬を服用していた。 主要エンドポイントにおいて、balcinrenone 15mg併用およびbalcinrenone 40mg併用のダパグリフロジン単独に対する優越性が認められた。ダパグリフロジン単独群に対する12週時におけるベースラインからのUACRの相対変化量は、balcinrenone 15mg併用群で-22.8%(90%信頼区間[CI]:-33.3~-10.7、p=0.0038)、balcinrenone 40mg併用群で-32.8%(90%CI:-42.0~-22.1、p<0.0001)であった。 高カリウム血症の有害事象は、balcinrenone 15mg併用群で6%(7/108例)、balcinrenone 40mg併用群で7%(8/110例)、ダパグリフロジン単独群で5%(5/106例)に発現した。低血圧および腎イベントの有害事象は少なく、治療群間で類似しており、重篤な事象は認められなかった。死亡が2例報告されたが、いずれも最終投与から28日以上経過後であった。

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糖尿病治療薬がアルツハイマー病初期の進行を抑制する可能性

 糖尿病治療薬がアルツハイマー病の初期段階の進行を抑制する可能性のあることが報告された。米ウェイクフォレスト大学アルツハイマー病研究センターのSuzanne Craft氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer’s & Dementia」に10月7日掲載された。この研究では、既に広く使われているSGLT2阻害薬(SGLT2-i)のエンパグリフロジンと、開発が続けられているインスリン点鼻スプレー(経鼻インスリン)という2種類の薬剤が、記憶力や脳への血流、および脳機能の検査値などの点で、有望な結果を示したという。 論文の上席著者であるCraft氏は、「糖尿病や心臓病の治療薬としての役割が確立されているエンパグリフロジンが、脳の重要な領域の血流を回復させ、かつ、脳のダメージを意味する検査指標の値を低下させることを初めて見いだした。われわれのこの研究の成果は、代謝に対する治療によって、アルツハイマー病の進行速度を変えることができることを示唆している」と解説。また経鼻インスリンについては、「新開発の機器を用いてインスリンを鼻から投与することで、インスリンが脳に直接的に送り届けられ、認知機能、神経血管の健康状態、そして免疫機能が向上することも確認された」と述べ、「これらの知見を合わせて考えると、代謝への働きかけという視点が、アルツハイマー病治療における、有力な新しい展開につながり得るのではないか」と期待を表している。 この研究で示された結果が、今後の研究でも確認されたとしたら、アルツハイマー病の進行抑制に効果的な治療法がないという現状の打開につながる可能性がある。最近、アルツハイマー病の原因と目されている、脳内に蓄積するタンパク質(アミロイドβ)を除去する薬が登場したものの、研究者らによると、その効果は限定的だという。また、副作用のためにその薬を服用できない人も少なくなく、さらに、アミロイドβの蓄積以外のアルツハイマー病進行のメカニズムとされている、代謝異常や血流低下の問題は残されたままだとしている。 報告された研究では、軽度認知障害または初期のアルツハイマー病の高齢者47人(平均年齢70歳)を無作為に、インスリン点鼻スプレー、エンパグリフロジン、それらの併用、およびプラセボのいずれかの群に割り付けた。なお、エンパグリフロジンはSGLT2-iの一種で、腎臓での血糖の吸収を阻害して尿の中に排泄することで血糖値を下げる薬。 研究参加者の97%が、4週間の試験期間を通じて、割り付けられた通りに薬を使用した。解析の結果、インスリン点鼻スプレーを使用した群では、記憶や思考の検査指標の改善が見られ、画像検査からは、脳の白質という部分の構造を保ったり、認知機能にとって重要な領域への血流低下を防いだりする効果が示唆された。またエンパグリフロジンを服用した群でも、アルツハイマー病に関連するアミロイドβとは別のタンパク質(タウ)が減少し、病気の進行を反映する神経・血管関連の指標も低下して、さらに脳の主要な領域の血流が変化し、善玉コレステロールが上昇した。 全体として、両薬剤によって生じる変化は炎症の軽減と免疫反応の活性化につながることを示唆しており、どちらも脳の健康をサポートする可能性が考えられた。Craft氏は、「これらの有望な結果に基づき、より大規模で長期にわたる臨床試験を実施していきたい」と述べている。

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2型糖尿病の低血糖入院が減少傾向、その背景を紐解く

 近年、2型糖尿病患者の低血糖入院が漸減傾向であることが明らかになった―。2017年に日本糖尿病学会の糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会が調査報告1)を行ってから8年、この間に低血糖による入院が減少したのには、いったいどんな対策や社会変化が功を奏したのだろうか。今回、この研究結果を報告し、日本糖尿病学会第9回医療スタッフ優秀演題賞を受賞した社会人大学院生の影山 美穂氏(東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科)と指導教官の堀井 剛史氏(武蔵野大学薬学部臨床薬学センター)から研究に至った経緯や考察などを聞いた。重症低血糖の現状、患者指導の影響は? 本研究のきっかけについて、影山氏は「薬剤師として糖尿病患者への低血糖予防指導はごく当たり前のこと。だがその一方で、低血糖発症リスクの現状や日頃の患者指導の効果が不明瞭であったため、薬剤師をはじめ医療者が頑張っている患者指導の可視化を目指した」と説明した。 実際、この20年における2型糖尿病治療薬や血糖コントロール目標値の変化は著しい。たとえば、治療薬に関しては、2009年よりDPP-4阻害薬が、2014年よりSGLT2阻害薬が発売され、2021年以降はGLP-1受容体作動薬の経口薬発売や肥満症治療薬としての適応拡大などが糖尿病治療薬市場の地殻変動を起こしている。それ故、低血糖リスクが高いとされるスルホニル尿素(SU)などの処方率は減少傾向にある。血糖目標値においては、2013年の糖尿病合併症予防のための血糖コントロール目標値に関する「熊本宣言」(HbA1c 7%未満)や2017年の高齢者糖尿病ガイドライン発刊(高齢者糖尿病の目標値が患者の特徴や健康状態を考慮した目標値「7.0~8.5%未満」)、「重症低血糖への提言」が周知されてきたことで、非専門医にも血糖値を下げ過ぎるリスクへの理解が進んできている。これについて堀井氏は「高齢者糖尿病ガイドライン2)において、HbA1cの具体的数値のみならず下限値も示されたことで糖尿病専門医ではなくても、患者へリスクをわかりやすく伝えることができるようになったのではないか。さらに、2024年の診療報酬改定では糖尿病治療薬の適正使用推進の観点から“調剤後薬剤管理指導加算”が新設されたことで、薬剤師の立場からもインスリンやSU薬服用中のフォローアップが手厚くなり、重症低血糖の減少につながっている可能性がある」と推測した。 ここで補足するが、「重症低血糖」とは、“回復に他者の援助を必要とする低血糖”と定義され、70歳以上、慢性腎臓病(CKD)ステージ3~5、SU薬内服中などの特徴を有する患者で発症しやすいとされる。その発症は主要心血管イベントや認知症の発症リスク増加にも関連することから、以前より日本糖尿病学会は警鐘を鳴らし、前述の調査委員会報告でも重症低血糖で救急搬送されるのは2型糖尿病が60%を占め、1型糖尿病患者よりも多く、処方薬剤別では、インスリン使用が約60%、SU薬使用が約30%であった3)。重症低血糖の患者推移、影響度が高い因子とは そこで、治療薬や血糖目標値の変遷、薬剤師指導の教育変化による“低血糖入院患者数推移や患者像”を捉えるために、同氏らはメディカル・データ・ビジョンの2009年1月1日~2022年12月31日までの診療データベースを活用し、2型糖尿病かつ初発低血糖患者を対象とした入院加療が必要な低血糖の発症リスクや使用薬剤について調査。主要評価項目は入院を必要とする低血糖発症に関連する要因の探索で、副次評価項目は夜間・早朝低血糖入院に関する要因、救急搬送による低血糖入院に関連する要因であった。 その結果、入院加療を必要とする低血糖発症率は、2型糖尿病患者全体では0.4→0.2%、75歳以上では0.85→0.3%、75歳未満では約0.2%微減、で推移していることが明らかになった。とはいえ、とくに高齢者では長期にDo処方が継続され、SU剤を使用している患者も一定数みられる。HBA1cが悪化すると他剤併用よりSU薬の増量が検討されるケースもあるため、「薬剤師も患者の低血糖リスクを意識して対応することで、重症低血糖の回避につながるのではないか」と影山氏はコメントした。 そして、低血糖入院の約6割が75歳以上であったことや低BMI患者(18.5kg/m2未満)での発症率の高さも示唆された。これについて、同氏は「低BMI患者にはインスリン分泌能低下者が多い、糖尿病歴が長い、グルカゴンの働きが悪くなっていることなどが推測される」と述べ、「高齢により低血糖の対応を自身ができない」「糖尿病歴が長くなることで痩せが生じ、インスリン分泌能が低下する。加えてフレイルにより低血糖を来しやすい」ことなどを挙げ、低BMI・低体重の関連性を考察した。 なお、本研究にはDPCデータを活用していることから、患者を夜間入院や救急入院などで層別化をすることができたものの、研究限界として「継続性が長くない、施設が代わると患者を追えなくなる」などを示し、「入院前データがない患者は除外」などの注意を払ったと堀井氏は説明した。 最後に両氏は「将来的に低血糖入院の因果関係を統計学的に示していきたい。そして、在宅ケアを受けている患者、低血糖を訴えられないような患者まで研究対象を掘り下げて解析していきたい」と今後の展望を語った。

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