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1.

1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

2.

糖尿病患者の心血管リスク軽減のための先手必勝手段:PCSK9阻害薬による早期介入?(解説:島田俊夫氏)

1. セールスポイント:2次予防から「高リスク1次予防」へのパラダイムシフト 本研究の最大のセールスポイントは、これまで主に「心筋梗塞や脳卒中の既往がある患者(2次予防)」に限定されていたPCSK9阻害薬の有効性を、「イベント未発症でリスクが高い糖尿病患者(1次予防)」において初めて証明した点にある。・劇的な脂質改善:エボロクマブ投与により、LDLコレステロール(LDL-C)値をプラセボ群の111mg/dLに対し、エボロクマブ投与群では52mg/dLまで大幅に低下させた。・確かなイベント抑制効果:主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)のリスクを31%減少(ハザード比:0.69)させた。・早期および持続の効果:治療開始1年後から効果が顕著になり、その後もリスク低下が持続することが確認された。2. 臨床的価値:糖尿病治療における「未充足のニーズ」への応答 臨床現場において、周知のごとく糖尿病患者は動脈硬化のリスクは高く、イベントを起こすまではスタチン単剤などの標準治療にとどまることが多かった。本論文は、以下の価値を示している。・「先手必勝」の正当化:有意な動脈硬化が確認される以前の段階から強力に脂質を低下させることで、将来の重篤なイベントを未然に防げる可能性を示した1)。・ベネフィット:性別、年齢(65歳以上・未満)、ベースラインのLDL-C値によらず、一貫した有効性が確認された2)。・安全性:重篤な有害事象や副作用による投与中止率はプラセボ群と同等であり、長期投与における安全性が再確認された。3. 論文の弱点と限界 非常に強力なデータを示す一方で、以下の点には留意が必要である。・「超高リスク」への限定:対象は糖尿病罹病期間10年以上、インスリン使用など、リスクの高い糖尿病患者に限定されており、すべての糖尿病患者に一律に一般化できるわけではない。・死因分析の解釈:全死因死亡率の減少(ハザード比:0.76)も示唆されたが、統計学的な検定順序の規約により、この結果はあくまで「探索的」な結果として扱うことが妥当である。本研究はサブ解析に基づく結果であり、探索的結果と受け止めることが望ましい。・コスト対効果の課題:PCSK9阻害薬は高価な薬剤であるため、1次予防として広く普及させるには、さらなる経済性評価が求められる(※本論文内では直接的なコストの言及はないが、臨床応用上の一般的課題と理解する)3)。コメント 本論文は、糖尿病患者における心血管疾患予防の新たなスタンダードを示している。「悪くなってからたたく」のではなく、**「悪くなる前に強力に抑え込む」**ことの重要性を科学的に裏付けた、きわめて意義深い研究と言っても過言ではない。しかし、費用対効果については依然として問題が残っていることも事実である。サイレントキラーとしての糖尿病に関しては、大きな成果として素直に受け入れたい結果だと考える。

3.

エボロクマブ追加、動脈硬化のない糖尿病患者の1次予防に有効/JAMA

 既知の重度動脈硬化がなく糖尿病を有する患者において、エボロクマブによる早期の強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は有益であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNicholas A. Marston氏らVESALIUS-CV Investigatorsによる「VESALIUS-CV試験」の事前に規定されたサブグループ解析で示された。同試験は、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく心血管イベントのリスクは高いという、比較的リスクが低い集団の1次予防において、PCSK9阻害薬の追加投与が主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減することを実証した初めての臨床試験であるが、患者の多くが既知の重度の動脈硬化を有していた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年3月28日号で報告された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月に参加者の登録を開始し、2025年7月に最後の患者の追跡を終了した。 対象は、重度の動脈硬化を認めず(以下のいずれにも該当しない:動脈血行再建術の既往、動脈の50%以上の狭窄、冠動脈石灰化スコア≧100Agatston単位)、高リスク糖尿病(以下の少なくとも1つに該当:罹患期間10年以上、インスリンの連日使用、細小血管疾患)を有し、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポ蛋白B値≧80mg/dLがみられ、至適な脂質低下療法により病態が2週間以上安定している患者であった。 被験者を、忍容可能な至適な用量のスタチン療法に加え、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは次の2つとした。(1)3つの主要心血管イベント(冠動脈性心疾患死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)の複合(3-P MACE)、(2)4つのMACE(3-P MACEと虚血による動脈の血行再建術)の複合(4-P MACE)。48週でLDL-C値が52mg/dLに低下 試験全体の参加者1万2,257例のうち適格基準を満たしたサブグループ3,655例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:60~70]、女性57%)を解析の対象とした。エボロクマブ群に1,849例、プラセボ群に1,806例を割り付けた。 サブグループのベースラインBMI中央値は31.4(IQR:28.0~35.6)、9割弱が高血圧、ほぼ全例が糖尿病で、LDL-C中央値は132mg/dL(IQR:108~156)、89%が脂質低下療法を、64%は高強度スタチン療法を受けていた。 48週の時点で、LDL-C値中央値はエボロクマブ群が52mg/dL、プラセボ群は111mg/dLであった(p<0.001)。96週時にはそれぞれ44mg/dLおよび105mg/dLまで低下した。3-P・4-P MACEイベントとも有意に優れる 3-P MACEイベントは、プラセボ群で117例(5年Kaplan-Meier推定値7.1%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では83例(5.0%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.52~0.91]、p=0.009、群間差:2.1%[95%CI:0.4~3.8])。 また、4-P MACEイベントは、プラセボ群で178例(5年Kaplan-Meier推定値10.5%)に認めたのに対し、エボロクマブ群では127例(7.6%)と有意に少なかった(HR:0.69[95%CI:0.55~0.86]、p=0.001、群間差:2.9%[95%CI:0.9~4.9])。 さらに、心血管死(エボロクマブ群2.38%vs.プラセボ群3.49%、HR:0.68[95%CI:0.46~0.99])および全死因死亡(7.36%vs.9.52%、HR:0.76[95%CI:0.61~0.95])の発生率も、エボロクマブ群で良好だった。重篤・試験薬中止有害事象は同等 重篤な有害事象(エボロクマブ群24.5%vs.プラセボ群25.7%、p=0.41)、試験薬の投与中止に至った有害事象(同4.1%vs.4.3%、p=0.75)の発生率は両群で同程度だった。死亡は、エボロクマブ群で136例(5年Kaplan-Meier推定値7.8%)、プラセボ群で172例(10.1%)に認めた(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)。 著者は、「既知の重度な動脈硬化がなく糖尿病を有する高リスク患者の1次予防において、至適なスタチン療法にエボロクマブを加えると、プラセボと比較して初回MACEリスクが低減した」とまとめ、「これらのデータは、アテローム動脈硬化性心血管疾患の進行の初期段階にある患者に対して、スタチン療法に上乗せした強化治療を行うこと、および通常はきわめて高リスクの2次予防患者にのみ適用されるLDL-Cの目標値を目指すことを支持するものである」としている。

4.

PCI後早期のLDL-C値55mg/dL未満達成でMACEリスク激減/日本循環器学会

 欧州心臓病学会(ESC)および欧州動脈硬化学会(EAS)のガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次予防において、非常に高リスクな患者にはLDLコレステロール(LDL-C)55mg/dL未満、きわめて高リスクな場合には40mg/dL未満という目標値を推奨している1)。しかし、日本人患者においてこれほど厳格な管理が実際に予後を改善するかは十分に検証されていなかった。現在、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、二次予防の目標値は、原則100mg/dL未満、ハイリスク者で70mg/dL未満と設定されている2)。 日本人冠動脈疾患(CAD)患者における超低LDL-C目標達成の臨床的意義を検証するため、国内3施設による多施設共同研究が実施された。その結果、PCI後にLDL-C値55mg/dL未満、さらには40mg/dL未満を早期に達成することで、主要心血管イベント(MACE)のリスクが有意に減少することが示された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏が発表した。なお、本結果はAtherosclerosis誌オンライン版2026年3月23日号に掲載された3)。 本試験では、2017年1月~2022年8月の期間にPCIを施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であったCAD患者2,560例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-C測定値を「達成値」と定義し、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心血管死、非致死性自然発症心筋梗塞、脳卒中、および臨床的に誘発された非標的病変への冠血行再建術)の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の2,560例のうち、2ヵ月時点で目標LDL-C値55mg/dL未満を達成していたのは780例(30.4%)、40mg/dL未満を達成していたのは251例(全体の9.8%)であった。・55mg/dL未満の群では、2型糖尿病の合併率や喫煙歴が他の群よりも有意に高かった。主治医がこれらのハイリスク症例に対して、より強力な脂質低下療法を積極的に行った結果、LDL-C値が低下したと考えられる。・LDL-C値55mg/dL未満の達成群では、強力な脂質低下療法が行われており、スタチンが98%、エゼチミブが62%、PCSK9阻害薬が5%で使用されていた。また、達成群の68%がこれら薬剤の併用療法を受けていた。・LDL-C値70mg/dL以上の群(794例、29%)と比較して、55mg/dL未満を達成した群ではMACE発生リスクが有意に減少した(ハザード比[HR]:0.38、95%信頼区間[CI]:0.28~0.51、p<0.001)。・55mg/dL未満達成群の中での比較において、40mg/dL未満に到達した群(251例)は、40~54mg/dL(529例)の群と比較して、MACEリスクがさらに58%減少した(HR:0.42、95%CI:0.19~0.90、p=0.027)。55mg/dL以上の群と比較した場合、40mg/dL未満達成群のHRは0.20(95%CI:0.10~0.41、p=0.001)であった。・サブグループ解析の結果、年齢、性別、糖尿病の有無、慢性冠症候群/急性冠症候群の別にかかわらず、LDL-C値40mg/dL未満の達成による一貫したリスク低減効果が認められた。 本研究の結果について片岡氏は、「日本人においても、PCI後2ヵ月というきわめて早い段階でLDL-C値40mg/dL未満まで強力に低下させる『Strike Early-Strike Strong Lipid-Lowering(早期強力脂質低下)』戦略を実践することが、その後の長期的な心血管予後を劇的に改善する鍵となるだろう」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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第52回 たった一度の注射で、コレステロールの悩みから一生解放される日が来るかもしれない

これまで「コレステロール治療」といえば、食事を切りつめて、薬を毎日飲んで、それでも健康診断のたびにドキドキして…そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。とくに遺伝的にコレステロールが高い方にとって、治療は文字どおり一生の付き合いです。しかしこのたび、そんな常識が根本から変わるかもしれない研究成果1)が報告されました。家族性高コレステロール血症という病気があります。遺伝的にLDL(悪玉)コレステロールが高くなる体質で、実は約300人に1人が該当するといわれています。決してまれではないのです。この病気の方は若いうちから動脈硬化が進みやすく、50歳前に心筋梗塞を起こすリスクが高いことも知られています。現在の治療には、スタチンやエゼチミブといった飲み薬に加え、PCSK9阻害薬という注射剤があります。このPCSK9というのは、肝臓でLDL受容体(悪玉の受け皿)を分解するタンパク質で、これを抑えると体が自力で悪玉コレステロールを処理する力を取り戻せます。しかし、これらはすべて生涯続けなければならないので大変です。実際、PCSK9阻害薬の処方を受けた患者さんの約4割が1年以内に治療を中断することが知られています。費用や注射への抵抗感など理由はさまざまですが、「一生続ける」ハードルは想像以上に高いのです。「修正液」で遺伝子を1文字だけ書き換えるそんな中、Nature Medicine誌に画期的な論文が掲載されました。「YOLT-101」という遺伝子編集治療の、初めてのヒト臨床試験の中間報告です。脂質ナノ粒子という微小カプセルに「塩基編集ツール」を詰めこんで、静脈注射で一度だけ投与して、肝臓の細胞内でPCSK9遺伝子をスイッチオフにするという代物です。この塩基編集というのは、DNAの特定の1文字だけをピンポイントで書き換える技術です。従来用いられてきた遺伝子治療の技術がDNAを「ハサミで切る」のに対し、塩基編集は「修正液で1文字だけ直す」ようなもの。切断しないぶん、意図しない変異が起きにくいとされています。この研究では、家族性高コレステロール血症の患者が6人参加し、「塩基編集ツール」の投与を1回だけ受けています。その後24週間でPCSK9の血中濃度が平均74%低下し、LDLコレステロールは最大52%減少しました。既存の注射薬と同等の効果を、たった一度の治療で得られたのです。「一度きり」だからこその慎重さただし、手放しでは喜べません。まず6人中5人に発熱や筋肉痛などの副反応が見られました。カプセル成分に対する免疫反応と推測されていますが、詳細はこれからです。また、PCSK9の抑制が74%にとどまった点も課題です。まだまだ改善の余地があります。編集が均一に行き届かない可能性や、編集されていない幹細胞から新たな肝臓の細胞が生まれてくる可能性が指摘されています。さらに重要なのが、24週間という追跡期間の短さです。肝臓の細胞は通常ゆっくり入れ替わりますが、長期的には効果が薄れる可能性も否定できません。そして塩基編集はRNA治療と違い、一度書き換えたDNAを元に戻せません。想定外の長期的副作用が生じた場合に「やり直し」がきかないという点は、患者さんへの説明においてきわめて重要です。それでも、この研究には大きな希望を感じます。毎日の服薬、定期的な注射。そうした負担から解放される未来が、少しずつ現実味を帯びてきました。もちろん塩基編集が既存の治療をすべて置き換えるわけではないでしょう。PCSK9を抑えるだけでは、重症の患者さんが目標値に到達できないケースも多いからです。しかし、コレステロール対策が「食事と薬を一生続ける」から「一度の治療で遺伝子から変える」へ。その転換点に、私たちは今、立ち会おうとしているのかもしれません。 1)Wan P, et al. In vivo base editing gene therapy for heterozygous familial hypercholesterolemia: a phase 1 trial. Nat Med. 2026 Mar 3. [Epub ahead of print]

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経口PCSK9阻害薬enlicitide、LDL-C値を有意に低下/NEJM

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの既往/初回リスクを有する患者において、経口PCSK9阻害薬enlicitideはプラセボと比較して、24週時点でLDL-C値を有意に低下させたことが示された。米国・University of Texas Southwestern Medical CenterのAnn Marie Navar氏らCORALreef Lipids Investigatorsが、日本を含む14ヵ国168施設で実施した国際共同第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「CORALreef Lipids試験」の結果を報告した。第II相試験において、enlicitide decanoateはLDL-C値を低下させることが示され、より長期のデータが求められていた。NEJM誌2026年2月5日号掲載の報告。24週時点におけるLDL-C値の平均変化率を対プラセボで評価 CORALreef Lipids試験の対象は、主要なASCVDイベント既往でLDL-C値55mg/dL以上、または初回ASCVDイベント発症リスクが中等度~高度でLDL-C値70mg/dL以上の18歳以上の成人。 被験者は、enlicitide 20mg 1日1回投与群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、52週間投与を受けた。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点におけるLDL-C値の平均変化率であった。重要な副次エンドポイントは、52週時点におけるLDL-C値の平均変化率、24週時点におけるnon-HDL-C値およびアポリポ蛋白B(APOB)値の平均変化率、リポ蛋白(a)[Lp(a)]値の変化率であった。平均変化率はenlicitide群-57.1%、プラセボ群3.0% 2023年8月~2025年7月に、2,909例が無作為化された(ITT集団:enlicitide群1,940例、プラセボ群969例)。このうち試験薬を投与されなかった5例を除く2,904例(enlicitide群1,935例、プラセボ群969例)が主要および副次の有効性エンドポイントと安全性の解析に包含された。 被験者の平均(±SD)年齢は62.8±10.7歳、39.3%が女性、53.9%が白人で、主要なASCVDイベント既往者は58.3%であった。ベースラインで96.6%がスタチンを服用しており、25.8%がエゼチミブまたはhybutimibeの投与を受けていた。ベースラインの平均(±SD)LDL-C値は96.1±38.9mg/dLであった。 24週時点における平均LDL-C値は、enlicitide群38.7±35.6mg/dL、プラセボ群98.6±42.5mg/dLで、主要エンドポイントのLDL-C値の平均変化率は、enlicitide群-57.1%(95%信頼区間[CI]:-61.8~-52.5)、プラセボ群3.0%(95%CI:0.9~5.1)であり、補正後群間差は-55.8%ポイント(95%CI:-60.9~-50.7)で有意な差が認められた(p<0.001)。 52週時点におけるLDL-C値の平均変化率、24週時点におけるnon-HDL-C値およびAPOB値の平均変化率、Lp(a)値の変化率は、いずれもenlicitide群がプラセボ群より有意に大きかった(すべての比較のp<0.001)。 有害事象の発現は、両群間で差はみられなかった。

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診療科別2025年下半期注目論文5選(循環器内科編)

Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Patients at 7 YearsLeon MB, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]<PARTNER 3試験>:TAVI vs.外科的弁置換、低手術リスクの大動脈弁狭窄症の7年追跡結果重症の大動脈弁狭窄症を持つ低手術リスク患者に対して、従来の外科手術とカテーテルを使ったTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を比較した研究。TAVIは手術と同等の安全性と有効性を示し、回復が早く入院期間も短いことが確認されました。長期的にも弁の機能や耐久性に差はなく、低リスク患者においてTAVIが有力な選択肢となることを示しました。TAVIの適応拡大が加速するものと思われます。Antithrombotic Therapy after Successful Catheter Ablation for Atrial FibrillationVerma A, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<OCEAN試験>:アブレーション後の抗血栓薬は減弱化するか心房細動カテーテルアブレーションの成功から1年以上経過し、再発なしの患者を対象に、DOACであるリバーロキサバンと低用量アスピリンを比較しています。3年間の追跡の結果、脳梗塞や無症候性の新規虚血性病変の発生率は両群で同等で、リバーロキサバン群は出血リスクが高い傾向でした。アブレーション成功例では術後に抗凝固薬から抗血小板薬へ切り替える選択肢の妥当性を示し、現行ガイドラインの見直しにつながる可能性があります。Aficamten or Metoprolol Monotherapy for Obstructive Hypertrophic CardiomyopathyGarcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2025;393:949-960.<MAPLE-HCM試験>:症候性の閉塞性肥大型心筋症に新薬aficamten登場有症候の閉塞性肥大型心筋症患者を対象に、aficamten(心筋ミオシン阻害薬)とβ遮断薬メトプロロールとを比較しています。aficamten群では、運動能力や息切れなど生活の質が改善し、心臓の負担も軽減されました。重篤な有害事象の発現に差はなく、安全性も良好でした。臨床的には1次治療として使用する新たな戦略の可能性を示し、今後ガイドラインへの影響も予想されます。Evolocumab in Patients without a Previous Myocardial Infarction or StrokeBohula EA, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<VESALIUS-CV試験>:PCSK9阻害薬エボロクマブによる1次予防の可能性心筋梗塞や脳卒中の既往がない動脈硬化や糖尿病のある患者を対象に、標準的な脂質治療に加えてPCSK9阻害薬であるエボロクマブとプラセボを比較。エボロクマブは重篤な心血管イベントの発生を統計学的有意に減少させました。一方、安全性に関しては懸念される問題はとくにありませんでした。これまで2次予防を対象としていたPCSK9阻害薬が、1次予防への選択拡大の可能性という臨床的意義を持ちます。Nationwide Trends in Coronary Revascularization in Japan, 2017 to 2023: From Decline to PlateauKohsaka S, et al. J Am Coll Cardiol. 2025;86:2391-2394.<J-PCIレジストリ・JCVSDデータ解析>:日本のPCI・CABG数の動向、エビデンスが必ずしも迅速に実臨床へ反映されず2017~23年の日本における安定冠動脈疾患に対する冠血行再建(PCI・CABG)の全国的動向をJ-PCIおよびJCVSDデータから解析。2017年以降減少傾向でしたが、2020年第3四半期から減少傾向が頭打ちに。この転換点は、エビデンスに基づく医療への移行よりも、臨床的慣性とCOVID-19後の診療回復が作用したと考えられます。エビデンス(ISCHEMIA試験)やガイドライン改訂が必ずしも迅速に実臨床へ反映されないことを示唆しています。

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エボロクマブは、高リスクでない患者にも有効か/NEJM

 PCSK9阻害薬によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法の研究は、心筋梗塞や脳卒中などの重大なアテローム性心血管イベントの既往歴のある、きわめてリスクの高い患者を中心に進められてきた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のErin A. Bohula氏らVESALIUS-CV Investigatorsは、国際的な臨床試験「VESALIUS-CV試験」において、心筋梗塞、脳卒中の既往歴のないアテローム性動脈硬化症または糖尿病患者でも、エボロクマブはプラセボとの比較において、初発の心血管イベントリスクを有意に低下させたことを報告した。本研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月8日号に掲載された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 VESALIUS-CV試験は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月~2021年11月に参加者の無作為化を行った。本試験は、エボロクマブ療法の長期的な有効性と安全性をより詳細に評価するために、中央値で少なくとも4.5年間の追跡調査を行うようデザインされた。 対象は、年齢が男性50~79歳、女性55~79歳で、冠動脈疾患、アテローム性脳血管疾患、末梢動脈疾患、高リスク糖尿病のうち1つ以上を有し、心筋梗塞または脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポタンパク質B値≧80mg/dLで、安定した至適な脂質低下療法を2週間以上受けている患者であった。 適格患者を、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、(1)3点主要心血管イベント(MACE):冠動脈性心疾患による死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合エンドポイント、(2)4点MACE:3点MACEまたは虚血動脈の血行再建の複合エンドポイントの2つとした。48週時のLDL-C中央値は45mg/dL 1万2,257例(年齢中央値66歳[四分位範囲[IQR]:60~71]、女性43%、白人93%)を登録し、6,129例をエボロクマブ群、6,128例をプラセボ群に割り付けた。ベースラインの全体のLDL-C中央値は122mg/dL(IQR:104~149)で、患者の92%が脂質低下療法を受け、72%が高強度脂質低下療法を、68%が高強度スタチン療法を、20%がエゼチミブの投与を受けていた。追跡期間中央値は4.6年(IQR:4.0~5.2)だった。 2,014例が中央検査室による脂質検査を受けた。プラセボ群との比較におけるエボロクマブ群のベースラインから48週までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は-55%(95%信頼区間[CI]:-59~-52)、最小二乗平均絶対群間差は-63mg/dL(95%CI:-67~-59)であった。48週時のLDL-C中央値は、エボロクマブ群が45mg/dL(IQR:26~73)、プラセボ群は109mg/dL(86~144)だった。 また、エボロクマブ群では、48週時の非HDL-C値(最小二乗平均変化率:-47%)、アポリポタンパク質B値(-44%)などの他のアテローム性脂質においてもプラセボ群に比べ大きな減少がもたらされた。3点MACE、4点MACEとも有意に改善 3点MACEのイベントは、プラセボ群で443例(5年Kaplan-Meier推定値:8.0%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では336例(6.2%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.65~0.86、p<0.001)。 また、4点MACEのイベントは、プラセボ群の907例(5年Kaplan-Meier推定値:16.2%)に比べ、エボロクマブ群は747例(13.4%)であり有意に良好だった(HR:0.81、95%CI:0.73~0.89、p<0.001)。心血管死、全死因死亡も良好な傾向 副次エンドポイントのうち、次の6項目のイベント発生率(5年Kaplan-Meier推定値)が、プラセボ群に比しエボロクマブ群で有意に優れた(すべてのp<0.001)。・心筋梗塞・虚血性脳卒中・虚血動脈の血行再建の複合(プラセボ群と比較したエボロクマブ群のリスク低下率21%)・冠動脈心疾患死・心筋梗塞・虚血動脈の血行再建の複合(同21%)・心血管死・心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合(同27%)・冠動脈心疾患死・心筋梗塞の複合(同27%)・心筋梗塞(同36%)・虚血動脈の血行再建(同21%) 試験薬の投与中止の原因となった有害事象および重篤な有害事象の発生率は、両群間に差を認めなかった。 著者は、「事前に規定された階層的検定計画のため正式な仮説検定は不可能で、結論は導けないものの、心血管死(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98)および全死因死亡(0.80、0.70~0.91)の発生率も、エボロクマブ群で低い傾向がみられた」「本試験の知見は、これまでの試験の対象よりもリスクが低い集団における、初回の重大な心血管イベントの予防を目的とするPCSK9阻害薬の使用を支持する」「従来の短期間の試験では、PCSK9阻害薬の長期的な臨床的有益性が過小評価されていた可能性が高く、PCSK9阻害薬によるLDL-Cの長期的な低下は、スタチンと同様に致死的なイベントの予防に寄与し得ると考えられる」としている。

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心血管イベント高リスクのASCVD/FHヘテロ接合体、obicetrapibが有効/NEJM

 最大耐用量の脂質低下療法を受け、心血管イベントのリスクが高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)または家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の患者において、プラセボと比較してCETP阻害薬obicetrapibはLDLコレステロール(LDL-C)値を有意に低下させ、安全性プロファイルは大きな差はないことが、オーストラリア・Monash大学のStephen J. Nicholls氏らBROADWAY Investigatorsが実施した「BROADWAY試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月7日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照比較試験、84日目までのLDL-C値の変化率を評価 BROADWAY試験は、心血管イベントのリスクが高い患者におけるobicetrapibの脂質値に及ぼす効果を評価し、安全性と副作用プロファイルを明らかにすることを目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年12月~2023年8月に、中国、欧州、日本、米国の188施設で患者の無作為化を行った(NewAmsterdam Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上、FHヘテロ接合体またはASCVDの既往歴を有し、最大耐用量の脂質低下療法を受けている患者を対象とした。LDL-C値≧100mg/dLまたは非HDLコレステロール(非HDL-C)値≧130mg/dLの患者、あるいはLDL-C値55~100mg/dLまたは非HDL-C値85~130mg/dLで少なくとも1つの心血管リスク因子を持つ患者を適格とした。エゼチミブ、bempedoic acid(ベムペド酸)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の使用の有無は問わなかった。 これらの患者を、obicetrapib(10mg、1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、365日間投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから84日目までのLDL-C値の変化率とした。365日目までの変化率も良好 2,530例(平均年齢65歳、女性34%)を無作為化の対象とし、obicetrapib群に1,686例、プラセボ群に844例を割り付けた。全体のベースラインの平均LDL-C値は98mg/dL、平均HDL-C値は49mg/dL、平均BMIは29であり、糖尿病が38%、ASCVDが89%、FHヘテロ接合体が17%であった。91%がスタチン(70%が高強度スタチン)、27%がエゼチミブ、4%がPCSK9阻害薬の投与を受けていた。 ベースラインから84日目までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は、プラセボ群が2.7%(95%信頼区間[CI]:-0.4~5.8)であったのに対し、obicetrapib群は-29.9%(95%CI:-32.1~-27.8)と有意な差を認めた(群間差:-32.6%ポイント[95%CI:-35.8~-29.5]、p<0.001)。84日目の平均(±SD)LDL-C値は、obicetrapib群が62.8(±37.3)mg/dL、プラセボ群は92.3(±35.1)mg/dLであった。 また、84日目にLDL-C値<40mg/dLを達成した患者の割合は、obicetrapib群27.9%、プラセボ群1.1%、<55mg/dL達成率はそれぞれ51.0%および8.0%、<70mg/dL達成率は68.4%および27.5%だった。 ベースラインから4つの評価時点までのLDL-C値の最小二乗平均変化率(副次エンドポイント)は、30日目(群間差:-36.6%ポイント[95%CI:-39.1~-34.2])、180日目(-32.7%ポイント[-36.0~-29.4])、270日目(-30.2%ポイント[-33.6~-26.8])、365日目(-24.0%ポイント[-27.9~-20.1])のいずれにおいてもobicetrapib群で良好であった(すべてp<0.001)。 また、ベースラインから84、180、365日目までのアポリポ蛋白B、非HDL-C値、HDL-C値の最小二乗平均変化率もobicetrapib群で優れた(すべてp<0.001)。有害事象は両群とも約6割、重症度などにも差はない 試験期間中の有害事象は、obicetrapib群で59.7%、プラセボ群で60.8%に発現した。有害事象の重症度、試験レジメンとの関連、投与中止の理由に関して両群間に明確な差を認めず、頻度の高い有害事象(COVID-19、高血圧症、上気道感染症、上咽頭炎、関節痛、尿路感染症など)の発現率も両群で同程度だった。 心血管イベント(冠動脈心疾患死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術)はobicetrapib群で4.2%、プラセボ群で5.2%に発生した。血圧には、両群ともベースラインからの明らかな変化はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、心血管イベントのリスクが高い患者において、obicetrapibが脂質低下療法の補助薬として有用である可能性を示唆する」「本薬が、ASCVDの予防に有用な治療薬となるかについては、さらなる臨床試験で検討する必要がある」としている。

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lepodisiran、400mg投与で半年後のLp(a)値を93.9%低下/NEJM

 開発中の長期持続型低分子干渉RNA(siRNA)薬lepodisiranについて、投与後60~180日に血清リポ蛋白(a)(Lp(a))値を低下したことが示された。米国・Cleveland Clinic Coordinating Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らALPACA Trial Investigatorsが、第II相試験である国際多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。Lp(a)値の上昇は、アテローム性心血管疾患と関連する。lepodisiranは、肝臓でのLp(a)の産生を標的とし、第I相試験では、最高試験用量608mgの単回投与が337日間にわたりLp(a)値を90%以上低下したことが示された。今回報告された第II相試験は、Lp(a)高値の集団でのlepodisiranのさらなる安全性を評価するとともに、Lp(a)値低下の大きさと期間を明らかにし、現在進行中の心血管アウトカムを評価する長期の第III相試験の用量と投与間隔の設定を目的として実施された。NEJM誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。5つの用量群で60~180日におけるLp(a)値の低下率を評価 第II相試験は2022年11月11日~2023年4月17日に、アルゼンチン、中国、デンマーク、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ルーマニア、スペインおよび米国の66施設で行われた。対象は、Lp(a)値175nmol/L以上で、スタチン、PCSK9阻害薬、その他のLp(a)値に影響を及ぼすことが知られる脂質異常症治療薬の投与を受けている場合は、スクリーニング前4週間以上にわたり投与量が安定していた40歳以上の成人であった。 研究グループは被験者を、次の5群に1対2対2対2対2の割合で割り付けた。すべてが皮下投与で、(1)ベースラインと180日時にlepodisiran 16mg(16mg群)、(2)同96mg(96mg群)、(3)同400mg(400mg・400mg群)、(4)ベースラインにlepodisiran 400mg、180日時にプラセボ(400mg・プラセボ群)、(5)ベースラインと180日時にプラセボ(プラセボ群)。主要解析では、ベースラインでlepodisiran 400mg投与を受けた(3)と(4)の2つの群のデータをまとめて(400mg統合群)分析した。 主要エンドポイントは、60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの時間平均低下率(lepodisiran群とプラセボ群の差[すなわちプラセボ補正後])であった。400mg投与で60~180日に93.9%ポイント低下、30~360日に88.5~94.8%ポイント低下 計320例が無作為化された。平均年齢は62.7歳、138例(43%)が女性、219例(68%)が心血管イベントの高リスク基準を満たしており、153例(48%)が冠動脈疾患既往、99例(31%)が心筋梗塞既往であった。血清Lp(a)中央値は253.9nmol/L、LDLコレステロール中央値は79.3mg/dL、アポリポ蛋白B値79.0mg/dL、また、併用薬はスタチンが236例(74%)、エゼチミブが105例(33%)、PCSK9阻害薬が19例(6%)であった。 60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの、血清Lp(a)値の時間平均低下率(プラセボ補正後)は、16mg群40.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:-55.8~-20.6)、96mg群75.2%ポイント(-80.4~-68.5)、400mg統合群93.9%ポイント(-95.1~-92.5)であった。 30~360日のベースラインからの同低下率は、16mg群41.2%ポイント(95%CI:-55.4~-22.4)、96mg群77.2%ポイント(-81.8~-71.5)、400mg・400mg群94.8%ポイント(-95.9~-93.4)、400mg・プラセボ群88.5%ポイント(-90.8~-85.6)であった。 重篤な有害事象は35例で報告されたが、試験担当医師がlepodisiranまたはプラセボに関連したと判定した事例はなかった。概して軽度の注射部位反応が用量依存性に報告され、lepodisiranの最高投与量群(400mg・400mg群)の発現率12%(8/69例)が最高であった。

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ホモ接合体家族性高コレステロール血症治療に新たな兆し/ウルトラジェニクス

 Ultragenyx Japan(ウルトラジェニクスジャパン)は「エヴキーザ点滴静注液 345mg(一般名:エビナクマブ[遺伝子組換え]、以下エヴキーザ)」の日本における製造販売承認を取得したことを機に、「治療の選択肢が広がるホモ接合体家族性高コレステロール血症―病態、現状の課題及び今後の治療について―」と題したメディアセミナーを2024年3月12日に開催した。 本セミナーでは、初めに大阪医科薬科大学 循環器センター特務教授 斯波 真理子氏より「病態と新薬への期待」について語られた。ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)治療の課題 HoFHは、LDL-C値が370mg/dL以上あるいは小児期より皮膚および腱黄色腫が認められる指定難病であり、若年齢より動脈硬化性心血管疾患を引き起こすことが知られている。LDL-C値を下げるためには、LDL受容体の活性を上昇させることが有効とされ、スタチンやエゼチミブ、PCSK9阻害薬などが用いられている。しかし、HoFHではLDL受容体活性がないあるいはほとんどないため、こうした薬剤を投与しても効果が得られにくい。そのため、HoFHにおいてLDL-C値を低下させる有用な手段として、長い間LDLアフェレシスが用いられてきた。LDLアフェレシスの登場により動脈硬化の進行をある程度抑制できるようになったものの、効果が一時的であることや、体外循環血流量を確保できる年齢になるまでは実施できないという課題が残されていた。HoFHの治療実態 わが国におけるHoFHの実態を調査したデータベース研究では、目標LDL-C値に到達できているのは、一次予防(LDL-C値≦100mg/dL)で21.7%、二次予防(LDL-C値≦70mg/dL)で30.5%であったとされている。また、HoFH患者のうち70%が冠動脈疾患を、24%が心臓弁膜症を合併しているとされ1)、現行の治療法では動脈硬化性心血管疾患の予防が困難であることが示唆された。LDL-C値を低下させることで予後改善にもつながる可能性があることから、斯波氏はLDL-C値の厳格なコントロールの重要性を強調した。 また、HoFHは認知度が低く、診断に至っていないケースが多い。中年になって心筋梗塞を発症し、スタチンやエゼチミブ、PCSK9阻害薬を使用してもLDL-C値が下がらない症例に対して、遺伝子検査をしたらHoFHであったというケースは少なくない。斯波氏は、「HoFHはいかに若年期に診断できるかが重要である」と強く訴えた。 次いで、Ultragenyx Japanのメディカル・クリニカルオペレーション部門長 飛田 公理氏より「エビナクマブ(遺伝子組換え)について」と題し、エヴキーザの作用機序や臨床試験について語られた。エヴキーザの推定作用機序 エヴキーザは、ANGPTL3に特異的に結合して阻害する遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体である。ANGPTL3は肝臓で合成される血中タンパク質で、本剤によって阻害されると、脂質の代謝をコントロールしているリポタンパクリパーゼ(LPL)および血管内皮リパーゼ(EL)の活性が制御される。その結果、超低比重リポタンパク(VLDL)からLDL-Cへの移行を阻害し、LDL-C値を低下させると考えられている。エヴキーザの臨床試験成績 エヴキーザは、国際共同第III相試験(R1500-CL-1629試験)、国際共同第III相長期継続試験(R1500-CL-1719試験)、海外第Ib/III相小児試験(R1500-CL-17100試験)の成績を基に製造販売承認申請が行われた。 国際共同第III相試験(R1500-CL-1629試験)は、日本人10例を含む多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験である。本試験は24週間の二重盲検投与期間と24週間の非盲検投与期間で構成されており、二重盲検投与期間には、患者をエヴキーザ15mg/kgまたはプラセボをそれぞれ4週に1回静脈内投与する群に2:1の割合で無作為化し、治験薬を24週間投与した。本試験の参加者が行っていた基礎治療としての脂質低下療法の内訳は、エヴキーザ群(43例)でスタチン41例(95.3%)、エゼチミブ33例(76.7%)、PCSK9阻害薬34例(79.1%)、ロミタピド11例(25.6%)、LDLアフェレシス14例(32.6%)、プラセボ群(22例)でスタチン20例(90.9%)、エゼチミブ16例(72.7%)、PCSK9阻害薬16例(72.7%)、ロミタピド3例(13.6%)、LDLアフェレシス8例(36.4%)であった。また、ベースラインの平均LDL-C値は、エヴキーザ群259.5±172.40mg/dL、プラセボ群246.5±153.71mg/dLであった。 主な結果は以下のとおり2)。・ベースラインから投与24週後のLDL-C値の変化率はエヴキーザ群で-47.1%であり、プラセボ群1.9%に対して優位であった。なお、LDL受容体の活性の程度によらず、LDL-C値の低下が認められた。・投与24週後にLDL-C値が50%以上低下した患者割合はエヴキーザ群で55.8%であり、プラセボ群4.5%に対する優越性が示された。・有害事象の発現率は、二重盲検投与期間にエヴキーザ群で29/44例(65.9%)、プラセボ群で17/21例(81.0%)、非盲検投与期間では、全体集団で47/64例(73.4%)であった。いずれの期間においても、有害事象により治験薬の投与中止に至った患者はおらず、死亡例は認められなかった。 なお、国際共同第III相長期継続試験(R1500-CL-1719試験)、海外第Ib/III相小児試験(R1500-CL-17100試験)は、現在も進行中である。

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新規機序のホモ接合体家族性高コレステロール血症薬「エヴキーザ点滴静注液345mg」【最新!DI情報】第12回

新規機序のホモ接合体家族性高コレステロール血症薬「エヴキーザ点滴静注液345mg」今回は、ヒト化抗ANGPTL3モノクローナル抗体「エビナクマブ(遺伝子組換え)注射液(商品名:エヴキーザ点滴静注液345mg、製造販売元:Ultragenyx Japan)」を紹介します。本剤は、LDL受容体非依存的にLDL-コレステロールを低下させるため、既存薬で効果不十分であったホモ接合体家族性高コレステロール血症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>ホモ接合体家族性高コレステロール血症の適応で、2024年1月18日に製造販売承認を取得しました。本剤投与の要否は、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分または忍容性が不良な場合に検討します。<用法・用量>通常、エビナクマブ(遺伝子組換え)として15mg/kgを4週に1回、60分以上かけて点滴静注します。なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬などによる治療が適さない場合を除き、ほかの脂質低下療法と併用します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシーや注入部位そう痒感を含むinfusion reaction(4.8%)が報告されています。主な副作用である上咽頭炎(1~10%未満)のほか、浮動性めまい、鼻漏、悪心、腹痛、便秘、背部痛、インフルエンザ様疾患が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ホモ接合体家族性高コレステロール血症の治療に用いる注射薬です。2.ほかの治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)で効果が不十分な場合または副作用のため治療ができない場合に使用されます。3.「ANGPTL3」というタンパク質を阻害することで脂質代謝を促進し、LDL-コレステロールを低下させます。4.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了から少なくとも5ヵ月間は、適切な避妊を行ってください。<ここがポイント!>家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolaemia:FH)は、早発性冠動脈疾患と腱・皮膚黄色腫を高率に合併する常染色体優性遺伝性の高LDL-コレステロール血症です。ホモ接合体FH(homozygous FH:HoFH)は重度の高LDL-コレステロール血症(LDL-コレステロール値>500mg/dL[13mmol/L])を呈するまれな疾患であり、早発性の心血管系疾患(CVD)や未治療患者の若年死亡などを引き起こす可能性があります。治療にはLDL-コレステロール低下作用を持つスタチンやPCSK9阻害薬が用いられますが、LDL受容体活性が低いHoFH患者では治療抵抗性があります。本剤は遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体で、脂質代謝の調節に関与しているアンジオポエチン様蛋白3(ANGPTL3)を特異的に阻害します。ANGPTL3の阻害により、LDL形成の上流に位置するVLDLのプロセシングおよびクリアランスを促し、LDL受容体非依存的にLDL-コレステロールを低下させると考えられています。成人および青年HoFH患者(12歳以上)を対象とした国際共同第III相試験(R1500-CL-1629試験)において、ベースラインから投与24週後のLDL-コレステロールの変化率(LS平均値)は、本剤群-47.1%、プラセボ群+1.9%で、LS平均値の群間差は-49.0%(95%信頼区間:-65.0~-33.1)であり、本剤群はプラセボ群に比べ有意なLDL-コレステロール低下を示しました。

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PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。PCSK9阻害薬群の処方中断率は44.6% 本研究は、国内3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度の2015年4月~2021年3月のレセプトデータを用いて調査を行った。2016年4月~2017年3月の期間にPCSK9阻害薬が未処方で、2017年4月~2020年3月に初めてPCSK9阻害薬が処方された患者群を「PCSK9阻害薬群」、同様の手法で抽出したエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者を「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした。PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが初めて処方された日を起算日とし、起算日より前12ヵ月間(pre-index期間)、起算日より後ろ12ヵ月間(post-index期間)に観察された生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、高血圧症)治療薬の処方、心血管イベント(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)などの実施状況について調査し、両群で比較した。また、post-index期間における3ヵ月以上の処方中断についても調査した。 PCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握するためのコホート研究の主な結果は以下のとおり。・対象者はPCSK9阻害薬群184例(平均年齢:74.0歳、男性:57.1%)、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307例(平均年齢:71.0歳、男性:60.5%)だった。・起算日前後(pre-/post-index期間)の虚血性心疾患の診療・治療状況の変化を両群で比較すると、pre-index期間では有意な差はなかったが、post-index期間では、PCSK9阻害薬群のほうが割合が高かった(85.3% vs.76.1%、p=0.005)。・PCIの実施割合は、起算日前後の両期間においてPCSK9阻害薬群のほうがエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より有意に高かった(pre-index期間:40.8% vs.24.0%、p<0.001、post-index期間:13.6% vs.8.1%、p=0.014)。・処方中断率はPCSK9阻害薬群では44.6%であったが、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではみられなかった。 研究者らは「因果関係までは言及できないものの、PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていること、医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆された」としている。

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インクリシランナトリウム投与でハイリスク患者のLDL-C目標達成に期待/ノバルティス

 2023年9月25日に製造販売承認を取得した国内初の持続型LDLコレステロール(LDL-C)低下siRNA製剤インクリシランナトリウム(商品名:レクビオ皮下注)が11月22日に薬価収載および発売された。それに先立ち開催されたメディアセミナーにおいて、山下 静也氏(りんくう総合医療センター 理事長)が薬剤メカニズムや処方対象者について解説した(主催:ノバルティスファーマ)。インクリシランナトリウムはPCSK9阻害薬と異なる作用機序 PCSK9は、LDLの肝臓への取り込みを促進するLDL受容体を分解して血中LDLの代謝を抑制する効果があり、PCSK9阻害薬として国内ではモノクローナル抗体のエボロクマブ(商品名:レパーサ皮下注)が2016年に上市している※。一方、インクリシランナトリウムはPCSK9蛋白をコードするmRNAを標的としたsiRNA(低分子干渉RNA)製剤で、「GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)という構造体を有することで標的組織である肝臓に選択的に取り込まれ、肝細胞内で肝臓のRNAi機構によりPCSK9蛋白の産生を抑制するというまったく異なる作用機序を持つ」と、山下氏はインクリシランナトリウムと既存のPCSK9阻害薬の主な違いについて説明した。※現在、アリロクマブは特許の関係で国内販売が中止されている。インクリシランナトリウムが低い目標達成率に切り込む インクリシランナトリウムの適応の主な対象患者は、2次予防・高リスク患者(1:急性冠症候群、2:家族性高コレステロール血症、3:糖尿病、4:冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併、のいずれかを有する)。しかし現状では、これらの患者に対するLDL-Cの管理目標値(70mg/dL未満)の達成率はわずか25%に留まっていることが直近の山下氏らによる研究1)から明らかになった。他方で、動脈硬化性疾患または糖尿病がある心血管疾患のリスクが高い患者の33%でスタチン/エゼチミブによる治療が処方後100日未満しか継続されていないことも日本医療データセンターのデータベースで判明した。 そして、LDL-C値の管理におけるもう1つの問題が、家族性高コレステロール血症に対する既存薬による治療効果の低さである。PCSK9阻害薬が上市される前に実施されたFAME Study2)からは、FH患者では1次予防の達成率は12%(528例中65例)、2次予防の達成率はわずか2%(165例中3例)という現状が浮き彫りになったが、これに対し同氏は「インクリシランナトリウムを投与することで、目標値を達成できる。安全性(心血管死、心停止からの蘇生、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の発現割合を含む)においてもプラセボ群と同等だった。なお、心血管イベント抑制効果を検証する臨床試験は現在実施中である」とコメントした。 このほか、インクリシランナトリウムは医療機関で投与する皮下注射薬で、年2回投与(投与間隔:初回、初回から3ヵ月後、以降6ヵ月に1回)であることから治療アドヒアランスの向上が期待できる点、スタチン不耐患者にも有用である点にも触れ、「2次予防において極めて高リスク患者が本薬剤の主な対象者であり、1次予防高リスク患者においては発症予防目的の使用が考えられる。自己注射を敬遠している患者にはインクリシランナトリウムを使うなど、患者のライフスタイルに応じてPCSK9阻害薬と本剤を使い分けられるのではないか」と締めくくった。<製品概要>商品名:レクビオ皮下注300mgシリンジ一般名:インクリシランナトリウム効能・効果又は性能:家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。・心血管イベントの発現リスクが高い・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない用法・用量:通常、成人にはインクリシランナトリウムとして1回300mgを初回、3ヵ月後に皮下投与し、以降6ヵ月に1回の間隔で皮下投与する。製造販売承認取得日:2023年9月25日薬価基準収載日:2023年11月22日発売日:2023年11月22日薬価:44万3,548円(300mg 1.5mL/筒)――― なお、日本動脈硬化学会は2018年にPCSK9阻害薬の適正使用に関する声明文3)を出し、それに続いて、2021年には継続使用に関する指針4)も出している。

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寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。動脈硬化関連の各種ガイドライン・指針に準拠 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』はそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』に準じたものになっている。<脂質異常症診療ガイド2023の主な改訂内容>1.随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG、中性脂肪)基準値(175mg/dL以上)を設定。2.脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアを採用。3.糖尿病がある場合のLDLコレステロールの管理目標値について、合併症がある場合の1次予防は100mg/dL未満、2次予防は70mg/dL未満に設定。4.2次予防の対象疾患として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓性脳梗塞も追加。5.薬物療法において、スタチン不耐と判断する際の注意点を記載。6.原発性脂質異常症の項を拡充。 上記の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容1について、塚本氏は「脂質異常症の診断基準は“動脈硬化発症リスクを判断するためのスクリーニング値であり、治療開始のための基準値ではない”ことは、ぜひ理解しておいていただきたい」と述べ、改訂内容5については「スタチンは費用対効果も高く不必要な中止を避けたい。また、スタチン不耐と判断される患者の半数以上がスタチン不耐ではないとの報告1)もある。それゆえ、ノセボ効果には注意し、患者の筋関連症状とスタチンとの関連性をしっかり確認してほしい」と強調した。脂質異常症診療ガイド改訂でQ&Aを拡充 今回の動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド改訂では本文の内容の充実はもちろんのこと、Q&Aを拡充し、項目数を47から61に増やしている。この中には、予防ガイドラインでは詳述されなかったポイントや比較的よく質問される疑問点、そして日本動脈硬化学会広報啓発委員会が会員ページに掲載している症例(日常臨床で診断・治療に難渋する症例)を参考に作成したケースを取り上げている。たとえば、上述の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容2に関連する質問が寄せられ、それに対する回答が記載されている。―――Q25久山町スコアでは40歳未満の方は対象にはなりませんが、多くの危険因子を持つ若年の脂質異常症患者さんにはどのように対応すればよいでしょうか?A久山町スコアのアプリでは、絶対リスクとともに相対リスクも表示される。久山町スコアは40歳以上を対象としたものなので正確とは言えないが、40歳未満の対象者であっても年齢以外の因子を入力後、年齢の項を40歳と入力すれば、同世代の危険因子のない方と比べての相対リスクがわかるので、患者指導に用いると良い。――― このほかにもよく質問される疑問点として「Q21 吹田スコアで高リスクだった患者さんが久山町スコアでは中リスクとなりました。どのように対応すればよいでしょうか?」「Q22 管理目標値設定のフローチャートに記載されている『その他の脳梗塞』はどのような脳梗塞でしょうか? 心原性脳梗塞やラクナ梗塞も含まれるのでしょうか?」などが寄せられている。また、広報啓発委員会作成の会員マイページに掲載されている症例を参考とした症例としては「Q55 LDL-C 260mg/dLでアキレス腱肥厚もあったので、FHと考えスタチンで治療を始めましたが、LDL-C値はほとんど下がりません。どのように対応すればよいでしょうか?」(シトステロール血症の鑑別が必要)のようなQ&Aが作成されている。ぜひ『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』のQ&Aをご一読いただきたい。遺伝子検査項目の増加、指定難病の診断に 2022年4月に原発性脂質異常症の遺伝子検査項目が5つに増えた(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体]、タンジール病)。これを受けて、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』では低HDLコレステロール低値の際のフローチャートを追加し、解説疾患を増やすなど、原発性脂質異常症の項を拡充。遺伝子検査項目が増えるメリットには「指定難病の確定診断がつけば、患者の登録が進み、患者のbenefitにつながる」と述べた。脂質異常症診療ガイド2023にICT導入 今回の発刊に際し情報通信技術(ICT)を積極的に導入しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』を購入した方はデジタルブックでも閲覧できる。また、掲載されているQRコードを読み込むことで代表的な臨床比較試験、診療指針、専門医リストなどが確認できるため、web検索する手間が省ける仕組みになっている。 最後に同氏は「以上の改訂点を踏まえ、医師や管理栄養士、臨床検査技師などをはじめとする多くの医療者に活用していただきたい」とコメントした。

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動脈硬化疾患の1次予防に積極的な脂質管理の幅が広がった(解説:平山篤志氏)

 脂質低下療法にスタチンが広く用いられるが、筋肉痛などの副作用を訴える場合があり、スタチン不耐性と呼ばれ使用できない患者がいて、脂質への介入がなされていない場合がある。心血管疾患の既往のある患者の2次予防では、エゼチミブあるいはPCSK9阻害薬を使用してでも脂質低下が行われる。しかし、1次予防の動脈硬化疾患発症リスクの高い対象、たとえば糖尿病患者では脂質低下療法が行われていないことが多く、さらにスタチン不耐性では放置されていることが多い。 本論文は副作用でスタチンを服用できないスタチン不耐性患者を対象に、ベムペド酸(bempedoic acid)を投与したアウトカム試験、CLEAR試験のサブ解析である。CLEAR試験は心血管疾患の既往のある2次予防患者と既往のないハイリスクの1次予防患者を対象としており、ベムペド酸投与によりプラセボと比較してLDL-コレステロールと高感度CRPを有意に低下させ、4ポイントMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、血行再建術)を有意に減少させることを示した。あらかじめ規定されていたサブ解析でも、2次予防だけでなく1次予防でもベムペド酸の有効性が示されていたが、今回は1次予防患者の詳細な結果が報告されている。 CLEAR試験にエントリーされたうちの心血管イベントの既往のない患者4,206例で、計算されたリスクスコアが高い、冠動脈の石灰化が著明、糖尿病がある、などの動脈硬化疾患のリスクが高い対象である。平均LDL-Cが142.2mg/dLで、糖尿病患者が3分の2近く含まれていた。LDL-Cと高感度CRPの低下とともに、心血管イベントの有意な抑制がベムペド酸投与により示された。また、その低下効果も本試験より大であった。この対象群ではNNTが42~44と十分な有効性があった。 実臨床で、どうしても1次予防になると患者教育も難しく、また、副作用の懸念があると脂質低下に逡巡するが、この結果はハイリスク症例、とくに糖尿病患者に積極的な介入が必要であることを痛感させる。ただ、残念ながら、わが国では動脈硬化疾患の発生リスクが低いこと、エビデンスがないことから、どうしても脂質低下療法に消極的になる傾向がある。健康寿命の重要性が叫ばれる今日、目の前にいる患者が10年、20年先に健康でいられるようにするには、今から積極的な介入が必要なのかもしれない。ベムペド酸はそのための1つの武器となりえるかもしれない。

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乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。 研究グループは、脂質低下薬と乾癬発症リスクとの因果関係を調べるため、2022年8月~10月に、2標本のメンデルランダム化解析を行った。検討には、2つのバイオバンク(UKバイオバンク[英国]およびFinnGen[フィンランド])を用いた乾癬に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)、およびGlobal Lipids Genetics ConsortiumからのLDL値が含まれた。 LDL値をバイオマーカーとして用い、HMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)、Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1、エゼチミブの標的)、PCSK9(アリロクマブなどの標的)の遺伝的阻害(HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の阻害を代替する遺伝子変異を抽出)を行い、乾癬発症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万2,116例の乾癬患者のデータと、LDL測定値が得られた約130万人のデータを基に解析した。・PCSK9の遺伝的阻害は、乾癬発症リスク低下と関連した(LDL値の1標準偏差減少ごとのオッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88、p=0.003)。・上記の関連は、FinnGenでも同様であった(OR:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)。・感度分析において、遺伝子変異の多面作用(pleiotropy)または遺伝的交絡によるバイアスは認められなかった。・HMG-CoA還元酵素、NPC1L1の遺伝的阻害は、乾癬発症リスクとの関連が認められなかった。

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いよいよRNAの薬の時代!(解説:後藤信哉氏)

 生命機能を担うタンパク質の構造と機能はDNA配列により規定される。細胞におけるタンパク質の産生はDNA配列に基づいたRNAの配列の影響を受ける。分子生物学の黎明期に医学教育を受けた筆者には、ゲノム編集などのDNAを標的とする治療の論理を理解できても、低分子干渉RNAを薬にするとは想像したこともなかった。本研究は生命体に関する分子生物学的研究の進展が新規技術による革新的治療法を生み出す可能性を示唆した画期的研究である。 心筋梗塞の発症とLDLコレステロールの関係が深いことは広く知られている。スタチン、PCSK9阻害薬などLDLコレステロールを十分に低下させる治療は広く普及した。それでも冠動脈疾患の再発を完全に予防できているわけではない。本研究では冠動脈疾患のリスク因子としてLDLコレステロールよりも複雑なリポ蛋白(a)を治療標的とした。 水に溶けない脂質の研究はタンパク質よりも難しい。遠心分離した血液サンプルを用いて比重からタンパク質と結合した脂質を分類してきた。リポ蛋白(a)はLDLによく似ているがアポ蛋白としてapo(a)が結合している。本研究では低分子干渉RNAにてapo(a)の産生を制御し、結果としてリポ蛋白(a)を低下させようとの発想である。高度な生命科学技術の複合として開発された治療法といえる。 革新的技術により開発された薬剤であっても古典的なランダム化比較試験による臨床評価が必要というのが現在の薬剤開発のルールである。本研究は用量設定試験として281例が登録された。小規模試験であるがサロゲートエンドポイントであるリポ蛋白(a)はいずれの用量でも劇的に低下した。この低分子干渉RNA製剤によるリポ蛋白(a)低下作用は証明されたとせざるを得ない。少数例のランダム化比較試験であっても、NEJM誌に採択されるほど本研究は革新的である。薬剤として臨床使用されるためにはリポ蛋白(a)低下により冠動脈イベントなどの臨床イベントを低下させることを示さなければならない。しかし、汎用性のある方法なので今後、他の疾病に応用される可能性が高いと思う。

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開発中のsiRNA治療薬、リポ蛋白(a)高値ASCVDに有効/NEJM

 リポ蛋白(a)値150nmol/L超のアテローム性心血管疾患(ASCVD)患者に対する、開発中の低分子干渉(si)RNA薬olpasiranの投与はプラセボと比較して、36週後のリポ蛋白(a)値を有意に低下したことが示された。米国・ハーバード大学医学大学院のMichelle L. O' Donoghue氏ら「OCEAN(a)-DOSE試験」研究チームが、281例を対象に行った第II相プラセボ対照無作為化用量設定試験の結果を報告した。36週後のリポ蛋白(a)値は用量に依存して70.5~101.1%低下したという。結果を踏まえて著者は、「今回の短期中規模試験では、olpasiranは安全であると思われた。また基礎的所見は、より大規模な評価を行い、ASCVDにおけるリポ蛋白(a)との因果関係を確認する必要があることを示すものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月6日号掲載の報告。4種の用量とプラセボを投与し比較 研究グループは、ASCVDでリポ蛋白(a)値150nmol/L超の18~80歳、281例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に5群に割り付け、olpasiranを12週ごと10mg(10mg/12週群)、同75mg(75mg/12週群)、同225mg(225mg/12週群)、24週ごと225mg(225mg/24週群)、またはプラセボ(マッチングプラセボ群)をそれぞれ皮下投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから36週の、リポ蛋白(a)値のパーセント変化で、プラセボ補正後の平均%変化で報告した。安全性も評価した。36週時のリポ蛋白(a)値、10mg/12週群で-70.5%、225mg/12週群で-101.1% 被験者281例のベースラインでのリポ蛋白(a)中央値は260.3nmol/L、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)中央値は67.5mg/dLだった。ベースライン時に、88%がスタチン療法を受けており、52%がエゼチミブを服用、23%がPCSK9阻害薬を服用していた。 36週時点で、リポ蛋白(a)値はプラセボ群で平均3.6%上昇したのに対し、olpasiran群では用量に依存して有意に大幅に低下した。10mg/12週群で-70.5%、75mg/12週群で-97.4%、225mg/12週群で-101.1%、225mg/24週群で-100.5%だった(ベースラインとの比較でいずれもp<0.001)。 有害イベントの全発生率は、すべての群で同程度であり、最も多く報告されたolpasiran関連有害イベントは、疼痛を主とする注射部位反応だった。

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PCSK9阻害薬、エゼチミブは心血管リスクを低減/BMJ

 エゼチミブまたはPCSK9阻害薬は、忍容最大用量のスタチン投与中あるいはスタチン不忍容の、心血管リスクがきわめて高い/高い成人において、非致死的な心筋梗塞(MI)および脳卒中を抑制可能なことが示された。同リスクが中程度および低い患者では認められないという。米国・Houston Methodist DeBakey Heart & Vascular CenterのSafi U. Khan氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。BMJ誌2022年5月4日号掲載の報告。スタチンの有無を含めて心血管リスクへの影響をネットワークメタ解析 研究グループは、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を、忍容可能な最大用量のスタチン治療を受けている成人またはスタチン不忍容の成人において比較する検討を行った。 Medline、EMBASE、Cochrane Libraryを2020年12月31日時点で検索し、被験者500例以上、追跡期間6ヵ月以上のエゼチミブとPCSK9阻害薬の無作為化対照試験を特定。頻度論的な固定効果ネットワークメタ解析とGRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)によるエビデンスの確実性の評価を行った。 結果には、5年間治療を受けた患者1,000人当たりの非致死的MI、非致死的脳卒中、あらゆる原因の死亡、および心血管死の相対リスク(RR)と絶対リスクが含まれた。ベースラインで受けていた治療および心血管リスクの閾値別に、一定のRR(ネットワークメタ解析から推定)を想定の下で絶対リスク差を推算。1次および2次予防における心血管リスクはPREDICTリスク計算法で算出した。 患者を、心血管リスクが「低い」~「きわめて高い」に分類。ガイドラインパネルとシステマティックレビューの著者により、最小重大差(MID)はMIが1,000例当たり12例、脳卒中が1,000例当たり10例と定められた。心筋梗塞、脳卒中の発生を抑制 検索により、スタチン治療を受けている成人8万3,660例が参加する、エゼチミブとPCSK9阻害薬を評価した14試験が特定された。 スタチンへのエゼチミブ追加は、MI(RR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.80~0.94])および脳卒中(0.82[0.71~0.96])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.99[0.92~1.06])、心血管死(0.97[0.87~1.09])は抑制しなかった。 同様に、スタチンへのPCSK9阻害薬追加は、MI(RR:0.81[95%CI:0.76~0.87])および脳卒中(0.74[0.64~0.85])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.95[0.87〜1.03])または心血管死(0.95[0.87~1.03])は抑制しなかった。 また、被験者のリスク分類別に見ると、きわめて高い心血管リスク成人において、PCSK9阻害薬の追加投与がMI(16/1,000例)、脳卒中(21/1,000例)を抑制すると思われた(中程度~高い確実性)。これに対してエゼチミブの追加投与は、脳卒中(14/1,000例)は抑制するようであったが、MI(11/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンへのエゼチミブ追加は、脳卒中(11/1,000例)を抑制するようであったが、MI(9/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(低い確実性)。スタチンとエゼチミブへのPCSK9阻害薬の追加は、MI(14/1,000例)、脳卒中(17/1,000例)ともに減じるようであった(低い確実性)。 心血管リスクが高い成人においては、PCSK9阻害薬の追加投与は、おそらくMI(12/1,000例)、脳卒中(16/1,000例)は抑制しうることが示唆された(中程度の確実性)。エゼチミブの追加投与は、おそらく脳卒中(11/1,000例)は抑制しうるようであったが、MI(8/1,000例)はMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンにエゼチミブを追加しても、MIDを達成するアウトカムの減少は得られなかったが、エゼチミブとスタチンにPCSK9阻害薬を追加すると、脳卒中(13/1,000例)は抑制しうることが示唆された。 これらの結果は、スタチン不忍容の患者でも一致していた。中程度および低い心血管リスクの集団では、スタチンにPCSK9阻害薬またはエゼチミブを追加しても、MIおよび脳卒中へのベネフィットは、ほとんど/まったく得られなかった。

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