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JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善/Lancet

 疾患活動性が中等度~重度の関節リウマチ再発例の治療において、選択的JAK1阻害薬upadacitinibの12週、1日1回経口投与により、症状が著明に改善することが、米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らが行った「SELECT-BEYOND試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年6月13日号に掲載された。upadacitinibは、他のJAKファミリーのメンバーに比べJAK1に高い選択性を持つように遺伝子改変されたJAK阻害薬であり、第II相試験でメトトレキサートやTNF阻害薬の効果が不十分な患者の関節リウマチ徴候や症状を改善することが報告されている。26ヵ国153施設に499例を登録 SELECT-BEYONDは、26ヵ国153施設が参加した国際的な二重盲検無作為化対照比較試験である(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性の関節リウマチを発症し、生物学的製剤(bDMARD)の効果が不十分または不耐となり、同時に従来型抗リウマチ薬(csDMARD)の投与も受けている患者であった。 被験者は、upadacitinib徐放薬15mgまたは30mgまたはそれぞれのプラセボを12週間、1日1回経口投与した後、同薬15mgまたは30mgをさらに12週間投与する群に2対2対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、以下の2つとした。1)12週時に、米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善を達成した患者の割合(ACR20)、2)12週時に、C反応性蛋白(CRP)で評価した28関節の疾患活動性スコア(DAS28[CRP])≦3.2点を達成した患者の割合。有効性と安全性の解析は、修正intention-to-treat集団(試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行った。 2016年3月15日~2017年1月10日の期間に、499例(upadacitinib 15mg群:165例、同30mg群:165例、プラセボ→同15mg群:85例、プラセボ→同30mg群:84例)が登録され、15mg群の1例が治療開始前に脱落した。12週時ACR20達成率は約2倍、DAS28(CRP)≦3.2点達成率は約3倍に 全体の平均罹患期間は13.2(SD 9.5)年で、bDMARDの投与歴は1剤が47%(235/498例)、2剤が28%(137例)、3剤以上が25%(125例)であり、12週の治療を完遂したのが91%(451例)、24週の治療の完遂例は84%(419例)であった。平均年齢はupadacitinib 15mg群(164例)が56.3(SD 11.3)歳、同30mg群(165例)が57.3(SD 11.6)歳、プラセボ群(169例)は57.6(SD 11.4)歳であり、女性がそれぞれ84%、84%、85%だった。 12週時のACR20達成率は、15mg群が65%(106/164例)、30mg群は56%(93/165例)であり、プラセボ群の28%(48/169例)に比し、いずれの用量群も有意に高かった(いずれもp<0.0001)。DAS28(CRP)≦3.2点の達成率は、15mg群が43%(71/164例)、30mg群は42%(70/165例)と、プラセボ群の14%(24/169例)に比べ、いずれの用量群も有意に優れた(いずれもp<0.0001)。 12週時の有害事象の発生率は、15mg群が55%(91/164例)、プラセボ群は56%(95/169例)と類似したが、これに比べ30mg群は67%(111/165例)と頻度が高かった。最も高頻度の有害事象は、上気道感染症(15mg群:8%[13例]、30mg群:6%[10例]、プラセボ群:8%[13例])、鼻咽頭炎(4%[7例]、5%[9例]、7%[11例])、尿路感染症(9%[15例]、5%[9例]、6%[10例])、関節リウマチの増悪(2%[4例]、4%[6例]、6%[10例])であった。 重篤な有害事象は、15mg群の5%(8例)に比べ30mgは7%(12例)と、多い傾向がみられ、プラセボ群では発現を認めなかった。重篤な感染症、帯状疱疹、治療中止の原因となった有害事象も、15mg群やプラセボ群よりも30mg群で多かった。プラセボ対照期間中に、upadacitinib投与例で肺塞栓症が1例、悪性腫瘍が3例、主要有害心血管イベントが1例、死亡が1例にみられた。 著者は、「これらのデータは、再発例におけるJAK阻害薬治療のエビデンスを拡張し、upadacitinibによる治療は臨床的、機能的なアウトカムや患者報告アウトカムを大幅に、かつ迅速に改善する可能性を示すもの」としている。

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JAK1阻害薬upadacitinibが難治性リウマチに有効/Lancet

 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)で効果不十分の中等度~重度活動性関節リウマチ患者において、JAK1阻害薬upadacitinibの15mgまたは30mgの併用投与により、12週時の臨床的改善が認められた。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のGerd R. Burmester氏らが、35ヵ国150施設で実施された無作為化二重盲検第III相臨床試験「SELECT-NEXT試験」の結果を報告した。upadacitinibは、中等度~重度関節リウマチ患者を対象とした第II相臨床試験において、即放性製剤1日2回投与の有効性が確認され、第III相試験のために1日1回投与の徐放性製剤が開発された。Lancet誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。upadacitinib 15mgおよび30mgの有効性および安全性をプラセボと比較 SELECT-NEXT試験の対象は、csDMARDを3ヵ月以上投与され(試験登録前4週間以上は継続投与)、1種類以上のcsDMARD(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)で十分な効果が得られなかった18歳以上の活動性関節リウマチ患者。双方向自動応答技術(interactive response technology:IRT)を用い、upadacitinib 15mg群、30mg群または各プラセボ群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けし、csDMARDと併用して1日1回12週間投与した。患者、研究者、資金提供者は割り付けに関して盲検化された。プラセボ群には、12週以降は事前に定義された割り付けに従いupadacitinib 15mgまたは30mgを投与した。 主要評価項目は、12週時における米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を達成した患者の割合、ならびに、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が3.2以下の患者の割合である。有効性解析対象は、無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全患者(full analysis set)とし、主要評価項目についてはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。upadacitinibは両用量群で主要評価項目を達成 2015年12月17日~2016年12月22日に、1,083例が適格性を評価され、そのうち661例が、upadacitinib 15mg群(221例)、upadacitinib 30mg群(219例)、プラセボ群(221例)に無作為に割り付けられた。全例が1回以上治験薬の投与を受け、618例(93%)が12週間の治療を完遂した。 12週時にACR20を達成した患者は、upadacitinib 15mg群(141例、64%、95%信頼区間[CI]:58~70%)および30mg群(145例、66%、95%CI:60~73%)が、プラセボ群(79例、36%、95%CI:29~42%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。DAS28-CRP 3.2以下の患者も同様に、upadacitinib 15mg群(107例、48%、95%CI:42~55%)および30mg群(105例、48%、95%CI:41~55%)が、プラセボ群(38例、17%、95%CI:12~22%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。 有害事象の発現率は、15mg群57%、30mg群54%、プラセボ群49%で、主な有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は、悪心(15mg群7%、30mg群1%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(それぞれ5%、6%、4%)、上気道感染(5%、5%、4%)、頭痛(4%、3%、5%)であった。 感染症の発現率は、upadacitinib群がプラセボ群より高かった(15mg群29%、30mg群32%、プラセボ群21%)。帯状疱疹が3例(各群1例)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染による肺炎1例(30mg群)、悪性腫瘍2例(ともに30mg群)、主要心血管イベント1例(30mg群)、重症感染症5例(15mg群1例、30mg群3例、プラセボ群1例)が報告された。試験期間中に死亡例の報告はなかった。

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直腸に泡で留まる潰瘍性大腸炎治療薬

 2018年2月8日、EAファーマ株式会社とキッセイ薬品工業株式会社は、2017年12月に潰瘍性大腸炎治療薬 ブデソニド(商品名:レクタブル 2mg注腸フォーム)が発売されたことを機に潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)に関するメディアフォーラムを開催した。 フォーラムでは、「進歩し続ける潰瘍性大腸炎(UC)治療~病態に応じた適切な治療法の確立に向けて~」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)を講師に迎え、同症の治療の最前線が講演された。増加し続ける炎症性腸疾患の患者 原因不明かつ根本的な治療法がない炎症性腸疾患(IBD)は、わが国では年々患者数が増加傾向にあり、2014年度で22万人超の患者がいるとされる(医療受給者証・登録者証交付件数より算出)。そのうち約18万人がUCの患者であり、アメリカに次いで多い患者数だという。また、UCは、患者に幅広い年齢分布を持つ疾患であり、近年では高齢の患者が増加している。 UCは、粘血便、下痢、腹痛を主症状とし、大腸をスポットにした疾患であり、寛解と再燃を繰り返すのが特徴である。そのため治療では、速やかに炎症を抑える寛解導入と長期間安全に再燃・炎症抑制を行う寛解維持が行われる。潰瘍性大腸炎の治療のポイント UCの治療薬は、1995年まで炎症抑制のために副腎皮質ステロイドと5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)のサラゾスルファピリジン、メサラジンが使われ、寛解の維持には5-ASA製剤と免疫調節薬のメルカプトプリン(6MP)/アザチオプリン(AZA)が使われてきた。その後、治療薬の進歩もあり、現在では抗TNFα抗体、CsA/FK506、白血球除去療法、ブデソニド、抗α4β7抗体、JAK阻害薬が寛解導入に、抗TNFα抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害薬が寛解維持に使用されるようになっている。これらは、患者の重症度に応じて選択されるが、「UCの基本的治療薬は現在も5-ASA製剤であり、錠剤や坐剤などに進化した同剤をいかに的確に使用するかが重要だ」と同氏は指摘する。 また、「UCでは、ステロイドの有効性を高め、副作用をいかに軽減するかがポイントになる」と語る。とくに直腸の炎症の有無が、便回数や血便などの症状に大きく関与することから、「ブデソニドのような局所へのステロイド投与は、治療効果を高めることができる」と同氏は説明する。同剤は、有効成分が泡状となり腸内に長時間滞留することで効果を発揮し、肝臓ですぐに代謝されることで全身の副作用の低減が期待されている。また、立位でも投与可能で、持ち運びも便利なことから、症状悪化時の患者のADL改善に寄与すると期待が持たれている。 次に、長期間の寛解維持のためチオプリン剤の有効性、安全性の向上について説明。アジア人では、骨髄抑制や脱毛などが欧米人と比較し、多いことが報告されているが、NUDT15遺伝子の異常チェックにより、ある程度の副作用予測はできると語った。ステロイド抵抗例、依存例への治療では 治療患者全体の30%に起こるステロイド抵抗例、依存例への治療については、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNFα抗体、タクロリムス、白血球除去療法の3つの対策が示され、治療時のポイントが説明された。とくに抗TNFα抗体では、中止後の再燃と再燃時の再投与の問題について、中止後の再燃は1年で40%以下であること、再開後も70~90%で有効であることが示された。タクロリムスとの薬剤選択では、有効性も安全性もほぼ同等だが、抗TNFα抗体では保険適用や高い薬価が、タクロリムスでは副作用の問題もあることなども付言された。また、白血球除去療法では、有効性と安全性の報告が出てきつつあるが、治療法の煩雑さや効果で薬剤よりも弱い点があるなど課題も指摘された。 最後に日比氏は、「2017年に登場した抗TNFα抗体であるゴリムマブ、1日1回服用の5-ASA製剤メサラジン、そして、今回のブデソニド注腸フォームと日々治療薬は進歩し、来年には免疫細胞の接着・浸潤を抑制する新しい形の治療薬の市販も予定されている」と新薬を紹介した後で、「こうした治療薬の進歩で、寛解導入も維持も以前と比べて容易となり、患者は通常の生活を送れるようになりつつある。今後は、根本治療も視野に入れていきたい」と希望を語り、レクチャーを終えた。

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経口JAK阻害薬、乾癬性関節炎の症状を改善/NEJM

 経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブは、コントロール不良の乾癬性関節炎患者の症状をプラセボに比べ有意に改善するが、有害事象の頻度は高いことが、米国・ワシントン大学のPhilip Mease氏らが行ったOPAL Broaden試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年10月19日号に掲載された。トファシチニブは、共通γ鎖含有サイトカイン、インターフェロン-γ、インターロイキン(IL)-12などの乾癬性関節炎の発症に関与する多くのサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼす。JAKの阻害により、関節や関節外部位の炎症細胞の活性化や増殖、および乾癬性関節炎患者の関節破壊や乾癬性の皮膚の変化に関連する細胞の活性化や増殖に関与する、複数のシグナル伝達経路の調節が可能とされる。実薬対照、プラセボと比較する無作為化試験 OPAL Broaden試験は、従来の合成疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の効果が不十分であるコントロール不良の乾癬性関節炎患者の治療における、トファシチニブの有用性を評価する二重盲検実薬対照プラセボ対照無作為化第III相試験である(Pfizer社の助成による)。 患者登録は、2014年1月~2015年12月に欧米を中心とする126施設で行われ、422例が登録された(373例が試験を完遂)。被験者は、2対2対2対1対1の割合で、トファシチニブ5mg(1日2回)を経口投与する群(107例)、トファシチニブ10mg(1日2回)を経口投与する群(104例)、アダリムマブ40mg(2週ごと)を皮下投与する群(106例)、プラセボを投与し3ヵ月時に盲検下でトファシチニブ5mgに切り替える群(52例)、プラセボを投与し3ヵ月時に盲検下でトファシチニブ10mgに切り替える群(53例)にランダムに割り付けられ、12ヵ月間の追跡が行われた。3ヵ月時の評価では、2つのプラセボ投与群(合計105例)を統合して解析を行った。 主要エンドポイントは、3ヵ月時に米国リウマチ学会(ACR)基準による20%以上の改善(ACR20)が得られた患者の割合、および3ヵ月時の健康評価質問票の機能障害指数(HAQ-DI)のスコア(0~3点、点数が高いほど障害が重度)のベースラインからの変化であった。 ACR20は、68関節中の圧痛関節と66関節中の腫脹関節の数、および5つのドメイン(患者による関節炎の活動性の総合評価、担当医による関節炎の活動性の総合評価、患者による関節炎痛の総合評価[3項目とも視覚アナログ尺度の0~100mmで評価]、HAQ-DIによる障害度、急性期反応物質の値[高感度C反応性蛋白])のうち3つ以上のベースラインから20%以上の改善と定義した。HAQ-DIスコアは、ベースラインからの0.35点の低下を、乾癬性関節の臨床的に重要な改善の最小値とした。2つの用量とも、2つの主要エンドポイントを達成 ベースラインの4群の平均年齢は46.9±12.4~49.4±12.6歳、女性が47~60%含まれた。乾癬性関節炎の平均罹病期間は5.3±5.3~7.3±8.2年、HAQ-DIスコアは1.1±0.6~1.2±0.6点であった。付着部炎(Leeds Enthesitis Indexスコア)、腫脹関節数、メトトレキサート使用率(いずれもアダリムマブ群で低い)、グルココルチコイド使用率(トファシチニブ10mg群で低い)を除き、治療群間の背景因子はバランスが取れていた。 3ヵ月時のACR20達成率は、トファシチニブ5mg群が50%、トファシチニブ10mg群が61%と、プラセボ群の33%と比較して有意に改善し(5mgとプラセボの比較:p=0.01、10mgとプラセボの比較:p<0.001)、アダリムマブ群は52%であった。3ヵ月時にプラセボをトファシチニブに切り替えたため、12ヵ月時の評価では有意差を認めなかった。 HAQ-DIスコアの平均変化は、トファシチニブ5mg群が-0.35点、トファシチニブ10mg群が-0.40点と、プラセボ群の-0.18点に比べ有意に改善し(5mgとプラセボの比較:p=0.006、10mgとプラセボの比較:p<0.001)、アダリムマブ群は-0.38点であった。12ヵ月時の評価では有意な差はなかった。 3ヵ月時までの有害事象の発現率は、トファシチニブ5mg群が39%、トファシチニブ10mg群が45%、アダリムマブ群が46%、プラセボ群は35%で、12ヵ月時までの発現率は、5mg群が66%、10mg群が71%、アダリムマブ群が72%、プラセボからトファシチニブ5mgに切り替えた群は69%、プラセボからトファシチニブ10mgに切り替えた群は64%であり、プラセボ群のほうが低い傾向がみられた。試験期間中に、トファシチニブ投与例でがんが4件、重篤な感染症が3件、帯状疱疹が4件認められた。 著者は、「長期的な有効性や安全性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持におけるトファシチニブの有用性と安全性(解説:上村 直実 氏)-683

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が行われているが、今回、非受容体型チロシンキナーゼでサイトカイン受容体と関連するJanus kinase(JAK)の選択的阻害薬であるトファシチニブに関する検討結果が報告された。 抗TNFなどの抗体製剤の開発が進むなか、経口低分子JAK阻害薬が潰瘍性大腸炎の寛解導入にも寛解維持にもプラセボに比べて有意に有効であったが、安全性には今後の検討が必要との成績であった。1年前のNEJM誌に報告された、スフィンゴシン-1-リン酸受容体のサブタイプ1と5の経口作動薬であるozanimodの8週時点での臨床的寛解率と単純に比較すると、活動性UCの寛解導入における有用性が期待されるが、長期使用を要する寛解維持に用いることはまだ躊躇される研究結果である。 わが国におけるトファシチニブは2013年に慢性関節リウマチ(RA)に対して保険承認されている薬剤で、低分子医薬品であるため生物学的製剤とは異なり経口投与が可能である点が特徴的である。一方、副作用として結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が報告されており、日本リウマチ学会のガイドラインにも「MTXを投与できない患者は原則として対象としないことが望ましい」と明記されている。今回の研究でもプラセボに比べて感染症や帯状疱疹が明らかに多く出現していることから、UCの寛解維持療法に使用するには長期の安全性確認が必須と思われる。 トファシチニブはUCに対する有用性の高い治療薬として期待されるものの、本研究期間の短さおよび有効率の低さなどから、トファシチニブの臨床的有用性を確認するためには長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする臨床試験が必要であると考えられた。

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FITZROY試験:活動性クローン病におけるJAK1選択的阻害薬filgotinibの有用性と安全性(解説:上村 直実 氏)-634

 クローン病は原因不明の炎症性腸疾患であり、わが国の特定疾患に指定されているが、最近、抗TNF-α阻害薬の出現とともに本疾患に対する薬物治療の方針が大きく変わってきている。症状や炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF-α阻害薬および栄養療法などを段階的にステップアップする治療法から、代謝拮抗薬と抗TNF-α阻害薬を早期から使用する方法が推奨されつつある。今回、新たに、非受容体型チロシンキナーゼであるJAK1の選択的阻害薬filgotinibの有効性を検証した研究成績が報告された。 欧州9ヵ国52施設が参加して施行された第II相無作為化プラセボ対照二重盲検試験(FITZROY試験)は、18歳以上の活動性クローン病患者(クローン病活動指数[CDAI]が220~450)174例を対象として、filgotinib 200mg/日群(130例)とプラセボ群(44例)2群で検討した結果、10週間投与における活動指数150未満で示される臨床的寛解率はプラセボ群の23%に対し、filgotinib群で47%と有意に高かった(95%信頼区間:9~39、p=0.0077)。その後、filgotinibが奏効した被験者を、filgotinib 100mg/日、200mg/日、プラセボの群に分けて、さらに10週間投与して安全性を検証した結果、観察期間を含めた20週間での重篤な有害事象発現の報告は、filgotinib群9%、プラセボ群4%だった。 わが国では、日本消化器病学会によるクローン病診療ガイドラインが2011年に刊行されて、さらに2015年に潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針が厚労省の鈴木班から報告されているが、本邦での大規模な介入試験の成績は乏しい。今後、わが国のクローン病患者を対象として最適とされる治療方針を導く臨床研究を遂行する体制が必要と思われる。

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JAK1阻害薬filgotinibで活動期クローン病の約半数が緩解/Lancet

 活動期クローン病の患者に対し、JAK1選択的阻害薬filgotinibはプラセボと比較し、臨床的緩解の達成が有意に増大したことが示された。10週後の同達成率は24ポイント増大した。安全性プロファイルも容認できるものだった。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のSeverine Vermeire氏らが、174例の患者を対象に行った第II相無作為化プラセボ対照二重盲検試験「FITZROY」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年12月14日号で発表した。 filgotinibを200mg/日10日間投与、プラセボと臨床的緩解を比較 研究グループは2014年2月~2015年7月に欧州52ヵ所の医療機関を通じて、回腸、結腸、または回腸結腸のクローン病の診断を受けてから3ヵ月以上が経過しており、大腸内視鏡検査や組織学的検査で診断が確定していた、クローン病活動指数(CDAI)220~450の18~75歳の患者174例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3対1の割合で2群に分け、一方の群にはfilgotinib 200mg/日(130例)を、もう一方の群にはプラセボ(44例)を、それぞれ10週間投与した。 主要評価項目は、10週時点のCDAIスコアが150未満で定義された臨床的緩解だった。 10週経過後、filgotinibが奏効した被験者を、filgotinib 100mg/日、200mg/日、プラセボの群に分け、さらに10週間それぞれ投与し観察期間とした。固定効果のベースライン値と無作為化層別因子などを含むANCOVAモデルとロジスティック回帰モデルを用いて、filgotinib群とプラセボ群を比較した。filgotinib群の47%で臨床的緩解達成 ITT解析の結果、10週後に臨床的緩解が認められたのは、プラセボ群23%(44例中10例)だったのに対し、filgotinib群では47%(128例中60例)に上った(群間差:24%、95%信頼区間:9~39、p=0.0077)。 観察期間を含めた20週間対象のプール解析では、試験治療下での重篤な治療関連の有害事象発現の報告は、filgotinib群9%、プラセボ群4%だった。

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JAK阻害薬のトファシチニブ軟膏、乾癬への効果は?

 乾癬患者の多くは軽度から中等度の症状を有しており、一般的に局所療法が行われることが多い。しかしながらステロイドやビタミンDなどの局所治療薬の有効性は限局的であり、長期使用に伴い副作用も発現する。そこで局所療法のために、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であるトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、慢性尋常性乾癬に対しては未承認)軟膏の効果が検討された。 今回、BMC Dermatology誌 2016年10月号に掲載されたトファシチニブ軟膏(2%および1%)の12週間、無作為化二重盲検平行群間対照第IIb相試験の結果を紹介する。<試験方法> 無作為に割り付けられた軽度から中等度の成人尋常性乾癬患者435例のうち、除外基準に該当しなかった430例にトファシチニブ軟膏(2%および1%)を1日1回または1日2回塗布し、有効性を検討した。主要評価項目、副次評価項目は以下のとおり。主要評価項目: 8週時または12週時における医師総合評価(PGAスコア)が0(寛解)または1(ほぼ寛解)の達成率とベースラインから2段階以上の改善率。副次評価項目: PGAスコア0または1の達成率、乾癬重症度スコア75(PASI75)を達成した患者の割合、PASIおよび体表面積のベースラインからの変化率、かゆみの重症度項目(ISI)のベースラインからの変化。 有害事象を観察し、臨床検査パラメーターを測定した。<主な試験結果>・8週時において、PGAスコア0または1を達成し、ベースラインから2段階以上の改善が認められた患者の割合は、2%1日1回群18.6%(80%信頼区間:3.8~18.2%)、2%1日2回群22.5%(80%信頼区間:3.1~18.5%)であった。対照群においては、1日1回群8.1%、1日2回群11.3%であった。 1日1回群、2回群ともに対照群と比較して達成率、改善率は有意に高かった。・12週時では、2%および1%軟膏において、どちらのレジメンでも対照群と比較して有意差は認められなかった。・PGAスコア0または1の達成率は、8週時点で2%1日1回群35.9%、2%1日2回群41.8%、1%1日1回群23.4%で、対照群(1日1回群13.9%、1日2回群25.2%)と比較して有意に高かった。 また、12週時点では2%1日2回群39.7%と1日2回対照群27.3%と比較して有意に高かった。・かゆみは、2%および1%1日2回群では塗布2日目から、2%1日2回群においては塗布3日目から、対照群と比較して有意な低下が認められた。・対象者の44.2%に有害事象が発現した。そのうちの8.1%が塗布部位への発現で、重篤な有害事象の発現は2.3%であった。 また、副作用が高頻度にみられたのは、1日1回対照群であった。 以上の結果より、8週時の2%1日1回群または2%1日2回群は、対照群と比較して、高い有効性を示したことがわかった。 また両レジメンにおいて、治療12週までの安全性および局所許容性プロファイルが確認された。

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接触皮膚炎治療に有望視される開発中のJAK阻害薬

 サイトカインのシグナルを伝達するヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害が、接触皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の治療手段となりうる可能性が報告された。京都大学の天野 渉氏らがマウスを用いた実験において、JAK阻害薬JTE-052は抗原特異的T細胞活性化とその後の接触過敏症のような皮膚の獲得免疫に対して抑制作用を示すことを明らかにした。Journal of Dermatological Science誌オンライン版2016年9月13日号掲載の報告。 研究グループは、炎症性皮膚疾患に対するJAK阻害薬の作用部位を明らかにする目的で、マウス皮膚炎モデル(接触過敏症、刺激性接触皮膚炎を含む)を用い、JAK阻害薬JTE-052の作用メカニズムを分析した。 耳組織またはリンパ節から分離した細胞をフローサイトメトリーで分析するとともに、培地のサイトカイン量をELISAまたはビーズアレイシステムで測定した。また、3Hチミジン取り込みの測定により、リンパ細胞の増加を評価した。 主な結果は以下のとおり。・JTE-052の経口投与は、感作相および惹起相のいずれにおいても接触過敏症を減弱したが、クロトンオイルで誘発された刺激性接触皮膚炎には影響を及ぼさなかった。・JTE-052は、in vitroで、抗原提示によるT細胞の増殖と活性化を強く阻害し、T細胞移動を抑制することなく、感作リンパ球の移入モデルにおいて皮膚炎を軽減した。・JTE-052は、ハプテンで誘発された流入領域リンパ節への樹状細胞の遊走、あるいはそれらの共刺激分子の発現には影響を及ぼさなかった。

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関節リウマチ、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用の効果/BMJ

 関節リウマチ(RA)に対し、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用(メトトレキサート[MTX]+サラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン)は、現在最もよく処方されている生物学的DMARDs+MTXと同程度、疾患活動性コントロールに対する効果があり、MTX未治療および既治療の患者を問わず概して忍容性も良好である。カナダ・カルガリー大学のGlen S Hazlewood氏らが、Cochraneシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、明らかにした。これまでに生物学的DMARDs+MTX併用療法は、MTX単独療法よりも疾患活動性のコントロールに優れていることがメタ解析の結果、報告されていたが、MTXと従来型合成DMARDsの有用性については検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2016年4月21日号掲載の報告。生物学的製剤、JAK阻害薬などと比較した効果をメタ解析 研究グループは、MTX未治療または効果不十分のRA成人患者に対するMTX単独と、MTX+従来型合成DMARDsの併用、または生物学的製剤、もしくはJAK阻害薬トファシチニブとの併用を評価する、システマティックレビューとベイズ統計のランダム効果ネットワークメタ解析を行った。2016年1月19日時点でMedline、Embase、Cochrane Centralのデータベース、2009~15年の欧米2大RA学会の要約、2大臨床登録試験サイト(Clinical Trials.govほか)を検索し、さらにCochrane reviewsの手動検索を実施。MTXと他のあらゆるDMARDs、またはDMARDs併用と比較した無作為化もしくは準無作為化試験で、治療間比較のネットワークエビデンス構築に寄与していたものを選択した。 主要評価項目は、ACR50反応率(主要臨床的改善)、X線画像所見での疾患進行、有害事象による投与中断とした。 比較療法間に統計的有意差があるか否かは、効果なしを除外して算出した95%信頼区間(CI)を評価し、97.5%超確率で優越性が認められる場合とした。MTX未治療患者でのACR50、56~67%で類似 検索により得られたのは患者3万7,000例超が参加した158試験のデータで、各アウトカムについて、10~53試験からデータを分析に包含した。 MTX未治療患者集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、生物学的製剤(アバタセプト、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ)、トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率はMTX単独41%に対し、これらの治療は56~67%の範囲で類似していた。 MTXとアダリムマブまたはエタネルセプト、セルトリズマブペゴルもしくはインフリキシマブとの併用は、X線所見上の疾患進行についてMTX単独よりも有意に優れていた。しかし、年間の推定平均変化値は、臨床的意義がある最小差(Sharpスコア5)よりも小さかった。 3剤併用療法は、MTX+インフリキシマブよりも有害事象による投与中断が有意に少なかった。 一方、MTX効果不十分の集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、MTX+ヒドロキシクロロキン、MTX+レフルノミド、MTX+金療法、MTX+大半の生物学的製剤、MTX+トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率は、3剤併用療法は61%、その他は27~70%と広範囲にわたっていた。 X線所見上の疾患進行についてMTX単独と比較して統計的に優れている療法はなかった。 MTX+アバタセプトは、有害事象による投与中断率が複数の治療と比べて統計的に有意に低かった。 著者は、「検討の結果は、3剤併用療法が、MTX未治療または効果不十分の患者両者で効果があることを示すものであった。また、疾患活動性コントロールについてMTX+生物学的製剤と統計的に有意差はないことも示された」と述べ、「3剤併用療法のコストは生物学的製剤の10~20分の1と低いことを考慮し、初回あるいはMTX効果不十分後のいずれにおいても、有効な治療選択肢とすべきである」とまとめている。

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難治性リウマチに新規JAK阻害薬は有効か/NEJM

 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に効果不十分の難治性関節リウマチ(RA)患者に対し、新規経口薬の選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1および2阻害薬baricitinibの1日1回4mg投与で、12週時点の臨床的改善が認められたことが報告された。米国・スタンフォード大学医療センターのMark C. Genovese氏らが、24週間の第III相臨床試験の結果、報告した。baricitinibは第II相試験で、生物学的DMARDs投与歴のないRA患者の疾患活動性を低下したことが確認されていた。NEJM誌2016年3月31日号掲載の報告。527例を対象に、baricitinib1日1回2mg vs.同4mg vs.プラセボ 試験は2013年1月~14年9月に、24ヵ国178施設で527例を対象に行われた。被験者は、1種類以上のTNF阻害薬、他の生物学的DMARDsの治療歴があり、十分な効果が得られなかったか、忍容できない副作用のために治療中断となった、18歳以上の中等度~重度の活動性RA患者であった。 研究グループは被験者を、baricitinib1日1回2mg投与、同4mg投与、プラセボ投与の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付け24週間投与した。 主要エンドポイントは、米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を認めた患者の割合であった。キー副次エンドポイントとして、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)、簡易疾患活動性指標(SDAI)スコア3.3以下(尺度0.1~86.0で、スコア3.3以下が寛解を示す)を評価。分析は、12週時点の主要およびキー副次エンドポイントのタイプIエラーを調整するため、ステップワイズ階層的仮定検定法を用いて行い、最初にACR20を評価、次いでHAQ-DIスコアとDAS28-CRPのベースラインからの変化を、最後にSDAIスコア3.3以下を評価した。また、すべての評価は、最初にbaricitinib 4mg群 vs.プラセボ群を、次に、baricitinib 2mg群 vs.プラセボ群の順で行った。12週時のACR20、4mg群 vs.プラセボ群で有意差 既治療について、生物学的DMARDsの投与が1種類であった患者は221例(42%)、2種類が160例(30%)、3種類以上が142例(27%)であった。また、それら生物学的DMARDs既治療患者のうち、TNF阻害薬による治療歴のない患者は約38%であった。 結果、主要エンドポイントの12週時点のACR20を達成した患者は、baricitinib 4mg群がプラセボ群よりも有意に多かった(55% vs.27%、p<0.001)。HAQ-DIスコア、DAS28-CRPについても、baricitinib 4mgとプラセボ群で有意差が認められたが(いずれもp<0.001)、SDAIスコア3.3以下に関しては有意差はみられなかった(p=0.14)。 24週間の有害事象の発現率は、プラセボ群(64%)よりもbaricitinib 2mg群(71%)および同4mg群(77%)で高率であった。感染症(31% vs.44%および40%)などが報告されている。 重篤有害事象の発現率は、プラセボ群7% vs. baricitinib 2mg群4%および4mg群10%であった。いずれも4mg群で、非メラノーマ皮膚がんが2例、主要有害心血管イベント(MACE)2例(うち1例は致死的脳卒中)が報告されている。 また、安全性評価の臨床検査データから、baricitinibは、好中球のわずかな減少、血清クレアチニンの増加、LDLコレステロールの増加と関連することが示唆された。 これらの結果を踏まえて著者は「さらなる試験を行い、長期の安全性と効果の持続性を評価する必要がある」とまとめている。

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

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「メトトレキサートをいかに安全に使いこなせるか」が関節リウマチ治療の鍵

 関節リウマチ治療においては、アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)をいかに安全に使いこなせるかが重要となる。第57回日本リウマチ学会総会・学術集会(4月18~20日、京都)における教育研修講演「DMARDsの適応と使い方」のなかで、京都府立医科大学大学院免疫内科学の川人 豊氏が非生物学的抗リウマチ薬(DMARDs)の問題点や使い方などを紹介した。メトトレキサートの最大目標投与量 現在、関節リウマチ診療では、早期診断、およびメトトレキサート(商品名:リウマトレックスなど)を始めとしたDMARDsによる早期治療開始が推奨されている。川人氏は、DMARDsの問題点として、副作用発現率が20~50%と高いことを挙げ、効果が出ている症例でも要注意であると注意を促した。そのため、副作用のモニタリングが重要であるとし、投与2週後の血液検査では血球減少や肝・腎機能のチェックが必須であること、その後も2~3週ごとに検査を行い、副作用出現がない用量まで増量すること、安定期に入れば4~6週ごとの経過観察も可能となることを説明した。 次に、川人氏はメトトレキサートがリウマチ治療のアンカードラッグであることから、この薬剤をいかに安全に使いこなせるかがポイントであると述べ、自身が行っているメトトレキサートの投与方法を紹介した。川人氏は、メトトレキサートの最大目標投与量を、体重(kg)×0.2~0.25mg/週とし、2週ごとに2mgずつ増量し、6~8週程度でこの用量になるようにしている。また、70歳以上の症例には8割程度の用量を考慮し、腎機能障害例に対してはGFR 60mL/分以下で減量、45mL/分以下で半量以下(もしくは中止も考慮)としていることを紹介した。 さらに、メトトレキサート投与患者における死亡症例511例の検討から、禁忌症例へは投与しないように注意すべきと忠告した。川人氏は、メトトレキサート以外のDMARDsについて紹介し、それらの使い分けとして、慢性気道感染症例にはサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)、金チオリンゴ酸ナトリウム(同:シオゾール)、ミノサイクリン(同:ミノマイシンほか)、腎機能障害例にはミゾリビン(同:ブレディニン)(投与量は減量)、サラゾスルファピリジン、イグラチモド(同:ケアラム、コルベット)、高齢者にはアクタリット(同:オークル、モーバー)、ミゾリビン、少量のタクロリムス(同:プログラフ)が適しているのではないかと述べた。 3月に承認されたJAK阻害薬であるトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)については、生物学的製剤並みの効果があり期待できる薬剤であるが、副作用を考慮し慎重に投与していくべきというのが世界における共通認識であると紹介した。しかしながら、メトトレキサートと生物学的製剤に加えて、経口JAK阻害薬が承認されたことによって、今後、治療戦略に変化が出てくるのではないか、との考えを述べた。関連コンテンツ特集「関節リウマチ」

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(11)〕 JAK阻害薬は関節リウマチの診療に2回目のパラダイムシフトをもたらすか?

炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤の登場により、関節リウマチ(RA)に対する治療指針は大きく変革し、関節破壊進行の抑制と身体機能の改善を目標に、疾患活動性を寛解にコントロールすることが重要と考えられるようになった。一方で生物学的製剤抵抗例も未だ存在し、また生物学的製剤は注射製剤で薬価が高いという問題点がある。 今回、平均年齢50歳、平均罹病期間8年で既存の治療に抵抗性(85%がMTX抵抗例、20%が生物学的製剤抵抗例)の難治例に対して、新規経口薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(トファシチニブ)の第3相無作為化試験の結果が示された。JAK阻害薬はIL-2,4,7,9,15,21のシグナルを阻害し、自己免疫応答を抑制すると考えられている。 治療開始3ヵ月で、トファシチニブ投与群の60%の患者が、腫脹関節数、圧痛関節数、患者あるいは医師の評価、身体機能評価、CRPの20%の改善を達成し、35%の患者が50%の改善、25%が70%の改善を示し、プラセボ群の26.7%,12.5%, 5.8%より有意に高く、治療開始後比較的速やかに疾患活動性が改善することが示された。身体機能についてもトファシチニブ投与群で有意に改善することが示された。腫脹関節数0-1、圧痛関節数0-1の寛解状態の達成は早期RA患者の治療目標であり予後を改善させると考えられているが、本研究にエントリーされたRA患者は難治例で罹病期間が長く寛解の達成は困難と予想され、トファシチニブ投与群の寛解率、低疾患活動性の達成率は8.7%、17%にとどまり、寛解達成率に関してはプラセボ群と比較して有意な改善は認められなかった。RAの治療は免疫抑制を伴うことから抗生剤の静脈投与を必要とするような重篤感染症の発生が問題となることがあるが、トファシチニブ投与群では610例中6例で6ヵ月以内に重篤感染症が発生した。 今後、早期例に対する寛解達成率、関節破壊進行の抑制効果、MTXの併用の治療成績、市販後全例調査等による安全性の評価などが検討されれば、経口薬であることで本剤の薬価が生物学的製剤より低く設定され、現在のRAの治療ストラテジーが再度大きく変革する可能性がある。

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