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第187回 医師の処方モラル崩壊、肥満症治療薬の発売でさらに加速か?

新たな医薬品不足騒動が勃発するのか? 11月16日、持続性GLP-1受容体作動薬で肥満症を適応とするセマグルチド製剤ウゴービ皮下注の薬価収載が中央社会保険医療協議会で了承されたことに関して私が思ったことだ。ご存じのようにセマグルチドはもともと2型糖尿病を適応とし、用量も異なる注射剤(商品名:オゼンピック)と経口薬(同:リベルサス)がすでに発売されているが、体重減少効果の高さから「GLP-1ダイエット」を謳う不適正使用の自由診療が跳梁跋扈し、その結果、在庫不足による限定出荷が続いている。実はまったくの偶然だが、数年前、セマグルチドの肥満症の治験に参加登録した友人から、冗談交じりで「参加してみる?」と誘われたことがあった。その治験参加条件は、BMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、あるいはBMIが35以上で今のウゴービ皮下注の適応と同じである。当時の私はBMIが26.8、血圧値は150/100mmHg、検査値上は高トリグリセライド血症だったので、“もうちょっと頑張れば”基準を満たす状態だった。だが、この誘いは断った。適応上のボーダーラインにいる自分が薬の力を使って痩せようとするのはあまりにも邪道だと思ったからだ(もちろん適応を満たす人が使うことを批判はしない)。そして数ヵ月後、この友人の姿を目にし、誘いを断って良かったと思った。確かに彼は私の目から見ても驚くほど痩せた。しかし、その様をあえて言葉を選ばずに表現すると、魚の干物のようにしわがれた痩せ方だったのだ。本人はそこそこに満足気だったが、一方で周囲に「最近はビールの匂いを嗅ぐと気持ち悪くなる」と、何とも微妙な物言いをしていたらしい。結局、私は彼の姿を見たことをきっかけに運動量を増やすという地味な取り組みを行い、約2年でBMIは22、収縮期血圧が120mmHg弱、脂質検査もすべて正常値まで改善し、今もほぼ維持できている。もっともここまでに至る努力は、かなり大変だったとの実感もあるため、誰かに勧めようとも、何もしない人を怠慢とも思わない。むしろダイエット目的でGLP-1受容体作動薬を入手するために自由診療を利用する人のほうがよっぽど問題だとすら思う。今回のウゴービ皮下注に関して言えば、「最適使用推進ガイドライン」も策定され、処方できる施設要件や患者要件も定められた。製造販売元のノボ ノルディスクファーマも厚生労働省に対し、保険診療、自由診療に関係なく、同ガイドラインの施設要件を満たした施設のみでの流通を前提にすると伝えているらしい。しかし、本当にこれで今の問題が解決するのだろうか? 正直、疑問である。そもそも「オゼンピック」や「リベルサス」のほうは何も縛りがなく、しかも世の人の潜在的なダイエット願望はかなりすそ野が広いからだ。今やインターネットで「オゼンピック」「リベルサス」のキーワード検索をすれば、SNS上では一部のインフルエンサーも含む使用体験者の話がごまんと登場し、吐いて捨てるほど自由診療クリニックが引っ掛かる。希望する人もどうかと思うが、それ以上に安易に処方する医師のモラルとはいかがなものか?ちなみに以前、この件について私自身が一時期に周辺調査した情報に基づくと、GLP-1受容体作動薬を使ったダイエット目的の自由診療を受診すると、最も使用を勧められるのはオゼンピックだという。リベルサスのほうがダイエット希望者には簡便だと思ってしまいがちだが、私が話を聞いた両手指を超える受診経験者(というかこの状況、なんとかならんものか)の中でリベルサスを第一選択として勧められた人は1人しかいない。しかもそうした人に話を聞くと、オゼンピックを第一選択にする医師はほぼ一様に「経口薬は服用方法が複雑(やや少なめの水で服用し、服用後30分は飲食できない)で、これを厳守しないと効果ありませんよ。注射のほうが確実です」と言うらしい(この証言には複数の経営母体の違うクリニックの受診者が含まれている)。妙なところだけエビデンスっぽいというか、患者に寄り添うかのような言い方をするところが、正直言って不快である。さらにこの件ではあちこちから出所不明で裏取りしようのない情報が大量に発信されてくるのも特徴である。私がこれまで直接、あるいは信頼性の高い間接情報として聞いた話をざっと列挙してみよう。「正直、明らかに自由診療に使うんだろうなという発注はありますよ。ただ、保険診療も行っている医療機関だと、必要以上に詮索することはできない」(関東地方の卸関係者)「限定出荷のオゼンピックは直近の納入実績で配分され、自由診療クリニック同士で奪い合い状態。そこに糖尿病患者の多い医療機関の門前薬局が絡んで、自由診療クリニックに在庫の一部を横流ししているらしい」(東北地方の保険薬局薬剤師)「先日、知人の紹介で注射の痩せ薬を保険診療で手に入れたと喜んでいた人がいましたよ。確かにその人はオゼンピックを持っていたのですが、それ以外に医師から『飲まなくていいけど、これも出しておくね』と言われた薬があり、よく調べるとほかの経口糖尿病治療薬でした。本人は健康診断でも血糖値が高いと指摘されたことはないと言っていました」(都内の運輸系会社勤務)「自分で使ってますよ」(40代の女性医師)これは私がこの件に関連して耳にした話のほんの一部に過ぎない。こうした話を書き出したらきりがないほどだ。同時に日本の医療も「モラル・ハザードの総合商社」化がかなり進行しているのか、と残念な思いで一杯である。

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セマグルチド、非糖尿病の肥満患者でも心血管アウトカム改善/NEJM

 心血管疾患既往で過体重または肥満だが糖尿病既往のない患者において、セマグルチド皮下投与はプラセボと比較し、平均追跡期間39.8ヵ月における心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合エンドポイントの発生率を有意に減少した。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学Cleveland Clinic Lerner College of MedicineのA Michael Lincoff氏らが、41ヵ国804施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「SELECT試験」の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは、糖尿病患者において有害心血管イベントのリスクを減らすことが示されているが、糖尿病既往のない過体重または肥満患者において、心血管リスク減少が可能か否かについては明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。約1万7,600例をセマグルチド群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、45歳以上でBMI値27以上、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、症候性末梢動脈疾患)既往だが糖尿病既往のない患者を登録し、セマグルチド群とプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、週1回皮下投与した。 糖尿病と診断されたことがある、スクリーニング時のHbA1c値が6.5%以上、過去90日以内に血糖降下薬またはGLP-1受容体作動薬を投与、といった患者は除外した。投与量は0.24mgの週1回投与より開始し、16週後に目標用量の2.4mgに達するまで4週ごとに増量した。 主要エンドポイントは、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合とし、time-to-first-event解析を行った。副次エンドポイントは心血管死、心不全複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院または緊急受診)および全死因死亡で、階層的に評価した。安全性も評価した。 2018年10月~2021年3月に計1万7,604例が登録され、8,803例がセマグルチド群、8,801例がプラセボ群に割り付けられた。セマグルチドまたはプラセボの曝露期間(平均±SD)は34.2±13.7ヵ月、追跡期間は39.8±9.4ヵ月であった。心血管イベントはセマグルチド群で20%有意に減少 主要エンドポイントの心血管イベントの発生は、セマグルチド群8,803例中569例(6.5%)、プラセボ群8,801例中701例(8.0%)で、セマグルチド群のプラセボ群に対する優越性が示された(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.72~0.90、p<0.001)。 副次エンドポイントの心血管死の発生は、セマグルチド群223例(2.5%)に対し、プラセボ群262例(3.0%)であったが、セマグルチド群のプラセボ群に対する優越性が示されず(HR:0.85、95%CI:0.71~1.01、p=0.07)、以降の副次エンドポイントの評価は行われなかった。 投与中止に至った有害事象は、セマグルチド群で1,461例(16.6%)、プラセボ群で718例(8.2%)に認められた(p<0.001)。

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第171回 医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会

<先週の動き>1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会日本医師会の松本 吉郎会長は、病院団体の代表らとともに11月15日に官邸を訪れ、岸田 文雄首相と面会し、医療現場で働く職員の賃上げを「非常に重要な事項」として診療報酬の改定での増額を求めた。この面会に先立ち、松本会長は日本病院会などからなる四病院団体協議会の幹部と記者会見を開き、2024年度の診療報酬改定に向けて大幅な引き上げを強く求める合同声明を発表した。医療業界は物価高騰や賃金上昇による経営環境の厳しさに直面しており、とくに入院基本料の引き上げを要望している。入院基本料は15年間据え置かれており、病院経営の持続可能性に影響を与えている。財務省側の診療報酬マイナス改定の求めに対して、日本病院会の島副会長は、「赤字病院が8割を超えており、診療報酬の引き下げが入院医療の質の低下につながる」と懸念を表明したほか、全日本病院協会の猪口会長は、賃上げの余裕がない現状を指摘し、財政支援の必要性を訴えた。来年の診療報酬の改定の幅は年末までに決定される見込みで、今後は厚生労働省、財務省とさらに折衝が行われる。参考1)類を見ない物価高騰「大幅な診療報酬引き上げを」日本医師会と四病協が合同で声明(CB News)2)日医・四病協が合同声明 24年度診療報酬改定「大幅引上げ強く求める」 日病「入院基本料引上げは悲願」(ミクスオンライン)3)首相「医療職賃上げ重要」 日医会長らと面会(東京新聞)4)令和6年度診療報酬改定に向けた日本医師会・四病院団体協議会合同声明(日医)2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協厚生労働省は、11月15日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、肥満症治療の新薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)の薬価収載について了承した。肥満症の治療薬として約30年ぶりに公的医療保険の対象として承認された。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、肥満症の治療に用いる場合は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法や運動療法で十分な効果が得られない、特定のBMI基準を満たす患者に限定されている。ウゴービと同一成分のオゼンピック注は、すでに糖尿病治療薬として使用されており、ウゴービの薬価償還により美容・ダイエット目的での不適切な使用が増え、供給不足のため必要な患者への薬剤供給が困難となる可能性が懸念されている。厚労省や医療関係者は、GLP-1受容体作動薬の適切な使用を強く呼びかけ、不適切な使用による健康被害や供給不足の問題を防ぐための対策を求めている。また、セマグルチドの供給に関しては、製薬会社が安定供給を確保できると報告しているが、実際の供給状況や使用実態については、引き続き注視が必要。参考1)オゼンピック皮下注2mg供給(限定出荷)に関するお知らせ(ノボ ノルディスクファーマ)2)中医協総会 肥満症治療薬・ウゴービ収載で厚労省に対応求める ダイエット目的の使用で供給不安を懸念(ミクスオンライン)3)肥満症薬ウゴービ22日収載、ピーク時328億円 中医協・総会が了承(CB News)4)肥満症に30年ぶり新薬、ウゴービを保険適用へ…ダイエット目的の使用に懸念も(読売新聞)5)糖尿病治療薬は「やせ薬」? ネットで広まり品薄状態に(産経新聞)3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協厚生労働省は、11月17日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、不妊治療を取り上げた。2022年度の診療報酬改定に合わせて、不妊治療が保険適用され、患者側や医療機関側の反応と金額について議論を行った。保険適用後の不妊治療の実施状況は、医療費895億円、レセプト件数125万件、実患者数37万人。一般不妊治療管理料は31万回、生殖補助医療管理料は合計61万回以上算定されていた。しかし、保険適用にあたって設けられた範囲や年齢・回数制限に関して、見直しを求める意見が出されたほか、凍結保存胚の維持管理期間の延長が検討された。また、不妊治療の全体像を正確に把握するために、今後も日本産婦人科学会のデータ検証が必要とされた。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(第565回) 議事次第2)不妊治療の保険適用、昨年度の医療費895億円 対象拡大後 厚労省(朝日新聞)3)「不妊治療の保険適用」は効果をあげているが「年齢・回数制限の見直し」求める声も、凍結胚の維持管理期間を延長してはどうか-中医協総会(Gem Med)4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省2025年4月に施行される「かかりつけ医機能報告」制度に向けて、厚生労働省は「第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を11月15日に開き、議論を開始した。かかりつけ医機能報告制度は、慢性疾患患者や高齢者など継続的な医療が必要な人々に対して、地域での「かかりつけ医機能」を確保・強化することを目的としている。分科会では、医療機関が都道府県に報告する「かかりつけ医機能」の内容や、報告制度の対象となる医療機関の範囲などを具体化することが議題となっている。分科会では、患者が適切な受診先を選択できるように「かかりつけ医機能」をカバーする医療機関の基準設定の必要性が指摘された。このほか、地域医療機関の連携強化や患者が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を容易に検索できる仕組みの構築が重要であるとの意見も出された。医療提供側からは、幅広い医療機関が参加できるような仕組みへの期待を寄せる声が上がったほか、患者側と医療側で「かかりつけ医機能」に関する意識のズレも明らかとなった。今後は議論を重ね、実効性のある「かかりつけ医機能」の具体化に進め、来年の夏までに取りまとめを行い、法律改正を経て、令和7(2025)年度の発足を目指す見込み。参考1)第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」具体化へ分科会が初会合 プレゼン・ヒアリングでまず実態把握(CB News)3)かかりつけ報告、来年夏に取りまとめへ 厚労省分科会が初会合(MEDIFAX)5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省厚生労働省は、緊急避妊薬(アフターピル)の試験販売が11月28日から開始されることを明らかにした。全国約145~150の薬局で、医師の処方箋なしで販売される予定。価格は7,000~9,000円で、16歳以上の女性を対象としているが、18歳未満では保護者の同伴が必要となる。緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用することで妊娠を高確率で回避でき、現在は、医師の処方箋が必要であり、避妊失敗や性暴力による望まない妊娠を防ぐために市販化を求める声が上がっていた。試験販売は来年3月29日までの予定で、厚労省が求める要件を満たす薬局で実施される。要件としては夜間や休日の対応、近隣の産婦人科との連携、プライバシーが確保できる個室の有無などが含まれ、購入者は研究への参加に同意する必要がある。参考1)緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する取組について(厚労省)2)緊急避妊薬、薬局で試験販売 28日から、全国145店舗 厚労省(時事通信)3)緊急避妊薬28日試験販売 全国145薬局、16歳以上(日経新聞)4)医師の処方箋なしで緊急避妊薬、28日から全国150薬局で試験販売…薬剤師の面前で薬を服用(読売新聞)6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省厚生労働省麻薬取締部は、大麻の類似成分を含むとされるグミによって体調不良を訴える人が相次いでいることを受け、東京と大阪の販売店に対して販売停止命令を出した。これらのグミは「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という未規制の成分を含んでいるとされ、武見 敬三厚生労働大臣は使用・流通の禁止を検討している。今回の事件は、東京都内や大阪市での祭りや公共の場での配布により、体調不良を訴え、病院に搬送される患者から発覚した。厚労省は、これらのグミが健康被害を引き起こす可能性があるとして、成分分析を行っている。また、CBD(カンナビジオール)を含む合法的な「CBDグミ」との混同を避けるための情報提供も行っている。販売する「ワンインチ」社の社長は、同社のCBDグミは安全であり、大麻グミとは異なると主張している。また、厚労省は、CBD製品は、大麻取締法に該当しないことを明らかにしている。大麻草から抽出した成分を用いて製造した医薬品の国内での使用解禁を含む、大麻取締法の改正案が11月14日に衆議院本会議で可決されたばかりで、武見厚労働大臣は、17日の閣議後の会見で、成分が特定されれば、「速やかに指定薬物として指定し、使用・流通を禁止する」方針を明らかにしている。参考1)大麻グミ騒動 「CBDグミ」販売元が訴え「味覚糖製造、安全」「HHCHとは大きく異なる…大変迷惑」(スポニチ)2)「グミ」店に販売停止命令 麻薬取締部、大麻類似成分(東京新聞)3)「大麻グミ」規制へ 搬送相次ぎ、厚労相「使用・流通禁止を検討」(朝日新聞)4)大麻法改正案、衆院通過 成分含む薬、使用可能に(産経新聞)

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第170回 外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協

<先週の動き>1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府1.外来管理加算の廃止提案に医師会は強く反発/中医協厚生労働省は、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を11月10日に開催。2024年度の診療報酬改定に向けて議論が行われた。とくに外来医療に関する「外来管理加算(52点)」については、支払い側が廃止を求め、激しい議論となった。外来管理加算は、2008年の診療報酬改定で再診患者に対する計画的な医学管理を評価するため導入された。当初は「おおむね5分を超える診察」の要件(いわゆる「5分ルール」)が含まれていたが、医療現場の強い反発で、このルールは2年後に廃止された代わりに、「簡単な症状の確認」だけで処方を行った場合は加算を算定できないことが明確化されていた。支払側委員の松本 真人氏(健康保険組合連合会理事)は、外来管理加算の算定要件があいまいで、その評価の妥当性に疑問を提起した。さらに、外来管理加算と「特定疾患療養管理料」、「生活習慣病管理料」、「地域包括診療加算」の併せて算定が許される現状についても、患者や保険者にとって理解しづらいと指摘し、廃止を主張した。これに対して、診療側の委員たちは強く反発。長島 公之委員(日本医師会常任理事)は、松本委員の意見を「暴論」と断じ、まったく容認できないと強調した。池端 幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、廃止の主張に全面的に反対する意向を示した。参考1)中医協資料 外来(その3)について(厚労省)2)外来管理加算の廃止を主張、支払側の松本委員 長島委員は「暴論、容認できない」(CB news)3)「外来管理加算の廃止」の支払側提案に、診療側委員は猛反発、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価をどう考えるか-中医協総会(1)(Gem Med)2.地域医療構想で進む病床再編、急性期病床が減少、回復期は増加/厚労省厚生労働省は、11月9日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の進捗について報告した。厚労省が最新の病床機能報告を基に行った集計によれば、2025年までに急性期病床が約7.1万床減少する一方、回復期病床は約7.9万床増加する見込み。政府は、高齢化や人口減少に対応するため、2025年までに各地域の医療体制を効率化することを目的として地域医療構想の実現を目指し、病床再編を行っている。病床再編により、一部の地域では医療機関の存続が危ぶまれ、とくにコロナ禍での病床削減への疑問符が生じている。たとえば、岐阜県東濃地方では、公営病院の病床数削減や民間への譲渡が進められているが、地域全体での病床利用率は高くなく、病床削減による共倒れの懸念が指摘されている。新型コロナウイルスのパンデミックは、病床削減の方針に再考を迫っており、急性期病床の役割の重要性が再認識されているが、今後は、コロナ禍の経験や在宅医療の需要も考慮に入れた新たな医療再編の議論が求められている。参考1)地域医療構想の進捗等について(厚生労働省)2)急性期7.1万床減少見込み、15-25年に 回復期は7.9万床増、全国ベースで(CB News)3)目標の2025年迫る「地域医療構想」 病床再編 議論が“再燃” 地域医療の崩壊に危機感(東京新聞)3.日本の公的医療支出が高水準、病床数と在院日数で2位/OECD経済協力開発機構(OECD)の最新報告によれば、わが国の公的医療支出はGDPの11.5%であり、政府支出の22%を占めることが判明した。これは、加盟38ヵ国中最高の割合であることが明らかになった。わが国の人口当たり病床数(12.6)は韓国に次いで2位で、平均在院日数も16.0日と、OECDの平均の約2倍である。人口1,000人当たりの医師数は2.6人で、OECDの平均3.7人に及ばない。また、わが国は、65歳以上の高齢者割合が29%と最も高く、1人当たりの受診回数も11回で2番目に多い。OECDは、これらの現状をもとにわが国の医療資源の効率的な活用を促している。人口10万人当たりの薬剤師数は199人でトップに立つ一方で、ノルウェーやスウェーデンの65歳以上の人口100人当たり介護従事者の数は約12人に対して、わが国は6.8人である。そのほか、開業医の電子カルテ利用率は平均93%に対し、日本は42%と低くOECDの武内 良樹事務次長は、わが国の医療提供の効率化と介護の費用対効果の向上を求めている。さらにわが国の病院依存型の医療制度が非効率であると指摘し、遠隔医療の利用拡大やかかりつけ医の医療質向上のほか、スキルの高い介護人材の確保と労働条件の改善も必要とも述べている。参考1)図表でみる医療 2023:日本(OECD)2)公的医療支出の割合、日本がトップ OECD、病床数・在院日数は2位(MEDIFAX)4.GLP-1受容体作動薬の供給不足、卸に対して美容目的の出荷抑制を指示/厚労省厚生労働省は、2型糖尿病治療に使用されるGLP-1受容体作動薬の在庫が逼迫していることを受け、7月下旬に医療機関と薬局に対して、GLP-1受容体作動薬の買い込みを控え、必要量のみの購入を行うよう求め、薬剤の適正使用を依頼した。GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者以外への使用(主に美容・痩身目的)については有害事象の報告もあり、懸念が広がる一方、海外承認のニュースにより急速に処方が増えている。厚労省は、2型糖尿病患者に対して適切に供給されるように、医薬品卸売販売業者に対して、注文を受けた際に治療目的を確認し、糖尿病治療以外の目的での使用が明らかな注文に対しては、納入を控えるよう11月9日付けで通知を発出した。参考1)GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(その2)(厚労省)2)GLP-1、糖尿病治療以外は納入しないよう卸に要請 厚労省(日刊薬業)5.美容目的のエクソソーム使用に規制を、死亡事例の報告も/再生医療学会厚生労働省が、11月10日に開催した厚生科学審議会の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会は、細胞から分泌される微粒子「エクソソーム」が含まれる幹細胞培養上清液が、美容目的やアンチエイジング目的で自由診療の医療機関で使用されているとして、「何らかの規制下に置かれることが望ましい」とする提言書を国に提出した。エクソソームは組織再生を促す物質を含んでいるが、現行の再生医療の安全に関する法律の対象外のため、管理が不十分な場合には重大な事故を引き起こす可能性があると指摘されている。すでに、幹細胞培養上清液を使用した治療による患者の死亡事例も報告されており、研究者らはエクソソームの体内での効果や安全性に関する科学的根拠が不足しており、一部のクリニックが効果を誇張して宣伝されていることを問題視しており、大阪大学の曽宮 正晴助教は、このような未確立の治療法には倫理的、科学的な問題があると指摘している。これに対して、実施しているクリニックが所属している日本再生医療抗加齢学会側は、現在の状況を改善するためのガイドライン作成や問題点の精査を急務としている。参考1)エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言(日本再生医療学会)2)幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について(再生医療抗加齢学会)3)エクソソーム 美容目的などに利用 “将来的に規制を”学会提言(NHK)4)エクソソーム治療「規制下が望ましい」学会が提言 死亡例の報告も(朝日新聞)5)幹細胞培養上清液で死亡例 研究者「エクソソームの投与で何かを治したと人で実証された例はない」「身体にリスクも」“若返りや美容効果”うたうクリニックに警鐘(ABEMA TIMES)6.介護職員の待遇改善へ、来年2月から月6,000円の賃上げ決定/政府政府は、介護職員と看護補助者の賃金を2023年2月から月額6,000円引き上げることを含む補正予算を閣議決定した。この措置は、介護分野と他の産業との間で開いた待遇格差を埋め、介護職員の離職を防ぐための措置で、賃上げには関連経費が2023年度補正予算案に盛り込まれ、都道府県を通じて事業所や医療機関に補助される。今回の賃上げは、介護報酬の3年ごと、診療報酬の2年ごとの見直しに先立つ「つなぎ」としての措置であり、来年度の報酬改定で恒久的な賃上げを目指している。厚生労働省によれば、2022年の介護職員の給与平均は29.3万円、看護補助者は25.5万円で、全産業平均(36.1万円)と比べて低く、介護分野では低賃金のために他産業への人材流出が続いており、離職者数が増加している。全国老人保健施設協会の調査では、介護職員の2023年度の賃上げ率は1.42%で、春闘の平均賃上げ率3.58%を大きく下回っている。岸田 文雄首相は、医療介護における賃上げや人材確保を重要な課題として挙げ、「必要な処遇改善の検討を行わなければならない」と述べている。参考1)介護職、月6000円賃上げ 人材流出抑制で-厚労省・補正予算(時事通信)2)介護職員の賃金、来年2月から月6000円引き上げ…離職の歯止め措置で補正予算案に盛り込む(読売新聞)3)コロナ交付金に6,143億円、補正予算案決定 月6千円相当の看護職賃上げへ(CB news

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厚生労働省に糖尿病治療薬の安定供給を要望/糖尿病関係三団体

 糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬の適用外処方が社会問題となり、その供給不足が報道されている。また、後発医薬品メーカーの不祥事や原料の不足などで糖尿病患者への必要な既存の治療薬の供給にも不安が生じている。 こうした現在の状況に鑑み、2023年11月7日に日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏、患者代表理事:中園 徳斗士氏)、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)、日本くすりと糖尿病学会(理事長:朝倉 俊成氏)の三団体は連名で厚生労働省に対し「糖尿病治療薬の安定供給に関する要望書」を提出した。厚生労働省に患者代表も参加させ、患者視点の対策を要望 要望書の要旨は、以下のとおり。・厚生労働省で「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を設置し、現状把握と対策を検討していること、また、先発品だけでなく、後発品にも不安定供給が発生しているが、それらの薬価見直しについて検討していることへの謝意を表明。・しかしながら、状況はいまだ改善しているとは言い難く、現在も糖尿病医療の現場では、医療者、患者双方から、不安な思いが寄せられていることを報告。この状況の早期解消への一層の注力を要望。・また、問題解決には、医薬品を用いた治療を受ける患者の視点が重要であるため、今後の検討を進める際は、日本糖尿病協会の患者代表理事を加えて、当事者の意見を聴くことを要望。

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第168回 インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省厚生労働省は10月27日、全国の定点医療機関からの報告に基づき、インフルエンザの感染者数が前週比1.48倍の約54万4,000人に増加したと発表した。とくに愛媛県では1医療機関当たりの感染者数が最も多い39.90人となり、「警報」の基準を超えていた。千葉県と埼玉県も警報の基準に迫る感染者数を記録している。全国の教育施設で、休校や学級閉鎖となった施設は合計3751施設にのぼる。2020年の新型コロナウイルスの流行以降、インフルエンザの流行規模は縮小していたが、免疫の低下などの影響で感染が広がっているとみられている。厚労省は、マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染対策の徹底を呼びかけている。参考1)インフルエンザの患者数 前週比1.5倍に 増加傾向続く(NHK)2)インフル感染者数、前週比1.48倍 推計54万人 愛媛で「警報」(毎日新聞)2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協10月に入り、中央社会保険医療協議会(中医協)では、医療従事者の処遇改善を巡る議論が活発化している。物価高に対して賃上げ対応ができないため、医療・介護分野から人材の流出によって、地域医療の存続が危機にさらされている。看護職員に対しては、昨年10月に3%程度(月額平均1万2,000円相当)給与を引き上げる「看護職員処遇改善評価料」を新設したが、薬剤師などは対象外となっていた。一方、厚生労働省は2024年度の診療報酬改定に向けて、人材確保や働き方改革を重点課題として提案。とくに看護師や准看護師の求人倍率が「全職種」を上回る状況が指摘され、地方における医療の確保が重要な課題となっている。参考1)来年度の診療報酬改定 “処遇改善し人材確保など重点” 厚労省(NHK)2)医療従事者の処遇改善の議論始まる、中医協で 人材流出「地域医療の存続に関わる」と日医委員(CB news)3)改定基本方針の重点課題に「人材確保」、厚労省案「他産業の賃上げに追いつかず、状況悪化」(同)4)医療従事者の給与アップ財源を「診療報酬引き上げ」に求めるか、「医療機関内の財源配分」(高給職種→低い給与職種)に求めるか-中医協総会(Gem Med)3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT日本臓器移植ネットワーク(JOT)は28日、国内の脳死判定が累計1,000例に、臓器移植法施行から26年で達成したと発表した。当初は脳死判定は伸び悩んでいたが、2010年の法改正によって、本人の意思が不明でも家族の承諾で臓器提供が可能になったことが、増加の大きな要因となっている。また、同法改正で15歳未満の子供からの提供も認められるようになった。累計1,000例目は、中国・四国地方の病院に脳出血で入院していた60代男性が、家族の承諾を得て脳死と判定された例である。今年に入り、脳死提供数は過去最多の100件となっている。しかし、欧米諸国との比較では、国内の提供者数は依然として少なく、移植を希望する患者の待機期間が長引く課題が続いている。JOTの公表資料によれば、都道府県別の脳死下の臓器提供件数にはばらつきがあり、提供の意思を積極的に生かす地域が多いと指摘されている。また、移植を希望してJOTに登録している患者数は、9月末時点で約1万5千人以上おり、昨年は待機中の429人が亡くなっている。参考1)脳死判定、累計1,000例に 臓器移植法施行から26年(共同通信)2)脳死臓器提供1,000例目は60代男性…法施行から26年、欧米と比べドナー少なく(読売新聞)3)脳死下の臓器提供、救急医学の専門家「提供の意思を生かせる体制作りを」(同)4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会日本医師会は10月25日に開いた記者会見で、急増する「GLP-1ダイエット」に関して懸念を明らかにした。近年、糖尿病の治療にGLP-1受容体作動薬が承認され、臨床で用いられるようになったが、食欲抑制の副作用を用いてダイエット療法を行うため、個人輸入を行ったり、自由診療を行う医療機関を受診する患者が増えている。医師会は、臨床試験で示されている一部の副作用、とくに吐き気や下痢などがある上、GLP-1ダイエットの長期的な効果や安全性に関するデータがまだ不十分であることを指摘し、「GLP-1ダイエットを試みる際には、専門家のアドバイスや監督のもとで行うことが非常に重要である」と強調した。さらに、GLP-1ダイエットが一般の人々の間で流行する前に、適切なガイドラインや教育の提供が必要であるとの考えを示した。医師会の声明には、健康や美容目的で新しいダイエット方法を追求する中で、安全性と効果についての十分な情報を持って選択することが重要であり、不適正な処方によって出荷調整するメーカーが出現するなど、糖尿病治療に影響が出ているため、「禁止すべき」と見解を明らかにした。参考1)糖尿病治療薬等の適応外使用について(日本医師会)2)GLP-1ダイエット「禁止すべき」-日医会見で見解(日本医事新報)3)ダイエットのために糖尿病治療薬、日医が懸念「入手困難」な医療機関も(CB news)4)「糖尿病治療薬でダイエット」が横行か 品薄で薬が必要な人に届かない…専門家が「罪深い」と語る理由(東京新聞)5)日医・宮川常任理事 GLP-1ダイエット「処方ではない」 適応外使用で顕在化しない副作用に警鐘(ミクスオンライン)5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省厚生労働省は、10月26日に2023年度の研修医マッチングの結果を公表した。全国の研修医受け入れ能力の拡大に伴い、受験者全体の約98.5%が希望する施設とマッチングした。これは前年度に比べて0.3ポイントの上昇で、マッチング率の向上が続いている。とくに注目されるのは、地方都市や過疎地域でのマッチング率の上昇であり、これまでは地方都市や過疎地では研修医の確保が難しく、医師不足が深刻な問題となっていた。しかし、今年度は都市部と地方都市でのマッチング率の差が縮小。過疎地域では、地域医療の充実を目指す取り組みやインセンティブの提供などが奏功したと分析されている。一方、都市部では引き続き高いマッチング率が維持されているが、一部の大学病院や指定都市での競争率が高まる傾向がみられ、研修の質や研修施設の評価、将来のキャリアパスなどが受験者の選択に影響しているとの声もある。マッチング結果を受け、医学教育の関係者や自治体は、今後の研修医制度のさらなる充実や地域医療への取り組みを強化する方針を示している。参考1)令和5年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省)2)医師臨床研修マッチングの内定者数が減少 厚労省が23年度の結果を公表(CB news)3)市中病院にマッチした医学生は64.2% マッチング最終結果、フルマッチは21校(日経メディカル)6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省厚生労働省は、2021年度の国民医療費が前年度比4.8%増の45兆359億円となり、初めて45兆円を突破したことを発表した。医療費の増大の要因としては、新型コロナウイルス関連の医療費や、医療技術の進展、高齢化の進行が主な要因とみられる。1人当たりの医療費も前年度比で5.3%増の35万8,800円となり、とくに0~14歳の年齢層での増加が顕著だった。年齢別の医療費では、65歳以上が全体の約60.6%を占めるなど、高齢者の医療費が大きなシェアを占めていた。また、傷病別では、循環器系の疾患の医療費が全体の約19%と最も多かった。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えや、感染症の流行減少などで医療費が減少したが、21年度には再び増加に転じた。医療費の財源については、保険料が全体の半数、国費などの公費が全体の38%を占めていた。参考1)令和3(2021)年度 国民医療費の概況(厚労省)2)令和3年度の国民医療費は45兆359億円で過去最高(社会保険研究所)3)国民医療費は45兆円超 21年度確定値、コロナ対応で増-厚労省(時事通信)4)国民医療費、21年度4.8%増の45兆円 過去最高を更新(日経新聞)5)国民医療費が初の45兆円超え、1人あたり5.3%増の35万8,800円…21年度(読売新聞)

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減量目的のGLP-1作動薬、膵炎・腸閉塞・胃不全麻痺のリスク増加か/JAMA

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として用いられるが、体重減少の目的にも用いられている。糖尿病患者において消化器有害事象のリスクが増加していることが報告されており、2023年9月22日に米国食品医薬品局(FDA)よりセマグルチド(商品名:オゼンピック)について、腸閉塞の注意喚起が追加された1)。しかし、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を検討した臨床試験はサンプル数が少なく、追跡期間が短いため、これらの有害事象を収集する試験デザインにはなっていない。そこで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMohit Sodhi氏らの研究グループは、米国の大規模保険請求データベースを用いて、実臨床における体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用と消化器有害事象の関連を検討した。その結果、体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用は、bupropion・naltrexone配合剤と比較して、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクを増加させた。本研究結果は、JAMA誌オンライン版2023年10月5日号にResearch Letterとして掲載された。GLP-1作動薬群は膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクが有意に増加 本研究では、米国のPharMetrics Plusデータベースを使用して、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド、リラグルチド)使用者(GLP-1群)、bupropion・naltrexone配合剤使用者(対照群)を抽出し、消化器有害事象(胆道系疾患、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺)の発現を検討した。なお、コホートへの登録前90日間または登録後30日間に肥満を有していた患者を対象とし、糖尿病の診断または糖尿病治療薬の使用があった患者を除外した。 体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用と膵炎など消化器有害事象の関連を検討した主な結果は以下のとおり。・本研究のコホートにおいて、リラグルチド使用患者は4,144例、セマグルチド使用患者は613例、bupropion・naltrexone配合剤使用患者は654例であった。・GLP-1群は対照群と比較して、胆道系疾患の有意なリスク増加は認められなかったが、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクが有意に増加した。GLP-1群の対照群に対する調整ハザード比(aHR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -胆道系疾患:1.50、0.89~2.53 -膵炎:9.09、1.25~66.00 -腸閉塞:4.22、1.02~17.40 -胃不全麻痺:3.67、1.15~11.90・感度分析において、解析に非肥満患者のGLP-1受容体作動薬使用例を含めても、結果は同様であった。aHR、95%CIは以下のとおり。 -胆道系疾患:1.20、0.85~1.69 -膵炎:5.94、1.90~18.60 -腸閉塞:2.44、1.00~5.95 -胃不全麻痺:2.35、1.20~4.58・感度分析において、BMIは上記の結果に影響を及ぼさないことが示唆された。  本研究結果について、著者らは「膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺はまれな有害事象ではあるが、GLP-1受容体作動薬が広く用いられていることを考えると、体重減少を目的としてGLP-1受容体作動薬を使用する患者は、注意深く観察する必要がある」と考察した。

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肥満を合併したEFの保たれた心不全に対するGLP-1受容体作動薬の効果―STEP-HFpEF試験(解説:加藤貴雄氏)

 週1回、2.4mgのセマグルチド皮下注射(GLP-1受容体作動薬)は、長期体重管理薬として承認されており、過体重または肥満の患者において大幅な体重減少をもたらし、心代謝リスク因子に良好な影響を及ぼすことがこれまでに示されている(Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002., Kosiborod MN, et al. Diabetes Obes Metab. 2023;25:468-478.)。 今回、ESC2023で発表され、NEJM誌に掲載されたSTEP-HFpEF試験は、BMI≧30.0kg/m2で心不全症状(NYHA class II-IV)があり、かつ、左室駆出率(LVEF)≧45%で、糖尿病の既往がない患者を対象に、週1回のセマグルチド(2.4mg)またはプラセボを52週間投与した二重盲検無作為割り付け試験である。主要評価項目は、心不全患者のQOLを評価する指標であるカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の点数のベースラインからの変化と体重のベースラインからの変化。副次評価項目に、複合心血管イベント、6分間歩行距離やCRPの変化が設定されていた。 結果は、セマグルチド投与群でKCCQの点数の改善を認め、体重はセマグルチド投与群 -13.3%、プラセボ群-2.6%と有意な低下、6分間歩行距離は21.5m改善と1.2m改善、CRPの低下も-43.5%と-7.3%であり、また、探索的に設定されたNT-proBNPも-20.9%と-5.3%(ぞれぞれ、セマグルチド投与群・プラセボ群)であった。以上の結果から、心不全のサロゲートマーカーの改善を伴って、体重減少・自覚症状の改善・6分間歩行距離の延長が得られており、CRPの減少など内臓脂肪の減少を示唆する機序も推測される結果であった。 多彩な表現型を持つHFpEFであるが、1つの表現型(肥満+HFpEF)の患者群に有用性が示唆される結果である。今後の、アウトカム研究の結果が待たれるところである。本研究の平均BMIは37kg/m2であった。WHOの肥満の基準が組み入れ基準のBMI≧30.0kg/m2であるが、日本人の肥満の基準が25kg/m2であり、本試験を日本の臨床に当てはめた場合、どのくらいの肥満のHFpEF患者に有効な可能性があるかについても、研究が待たれるところである。

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経口GLP-1受容体作動薬の画期的な開発への期待(解説:安孫子亜津子氏)

 現在使用されているGLP-1受容体作動薬はペプチド製剤で、注射薬が主体であり、2型糖尿病の治療として使用されている。とくに、週に1回の注射製剤はその簡便性と有効性から使用患者が増加している。2021年には世界初の経口GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが登場し、さらにその使用者層が広がった。ただし、経口セマグルチドは空腹状態の胃から吸収される必要があるため、その内服方法に制約があり、適切な内服ができない場合には効果が減弱する。 このたび、新規経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬であるorforglipronが開発され、第II相臨床試験の結果がLancet誌に発表された。本試験の対象は、18歳以上、BMIが23以上の2型糖尿病患者で、4ヵ国45施設で実施された。プラセボ群、デュラグルチド1.5mg群と、orforglipronは3mg、12mg、24mg、36mg、45mg(1日1回投与)各群に無作為に割り付けられ、36mgと45mgは、それぞれ2つの異なる用量漸増レジメンが試された。 主要有効性アウトカムである、orforglipron各用量群vs.プラセボ群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化は、orforglipron群で-1.2%(3mg群)~-2.1%(45mg群)、プラセボ群-0.4%、デュラグルチド群-1.1%であった。orforglipronの全用量群で、HbA1c低下に関してプラセボ群に対する優越性が認められ、さらにorforglipronの12mg以上の用量群ではデュラグルチド群に対する優越性が認められた。26週時の体重の平均変化は、orforglipronで-3.7kg(3mg群)~-10.1kg(45mg群)、プラセボ群-2.2kg、デュラグルチド群-3.9kgであった。有害事象の発現率は、orforglipron群61.8%~88.9%、プラセボ群61.8%、デュラグルチド群56.0%で、多くは軽度から中等度の胃腸障害であった。 この試験の結果から、新規経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬のorforglipronは12mg以上でデュラグルチドに対して優越性が認められ、そのHbA1c低下効果と体重減少効果が示された。GLP-1製剤全般に一般的に起こりうる胃腸障害には本薬剤も注意を要するが、低血糖を起こしにくく、内服方法に制約がないことが大きな魅力であり、さらに糖尿病を持つ多くの人たちの良好な血糖管理が可能となることが期待される。今後、本薬剤の第III相試験の結果が待たれる。

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セマグルチドが肥満HFpEF患者の症状軽減、減量効果も/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)を呈する肥満の患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドはプラセボと比較して、症状と身体的制限を軽減するとともに、運動機能を改善し、減量効果をもたらすことが、米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMikhail N. Kosiborod氏らが実施した「STEP-HFpEF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号で発表された。13ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 STEP-HFpEF試験は、日本を含む13ヵ国96施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年3月~2022年3月の期間に患者の登録を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢18歳以上、LVEF 45%以上でBMI30以上の心不全患者を、セマグルチド(2.4mg、週1回)またはプラセボを52週間にわたり皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、23項目の質問から成るカンザスシティ心筋症質問票の臨床要約スコア(KCCQ-CSS、スコア範囲:0~100点、点数が高いほど症状と身体的制限が軽度)と体重のベースラインから52週までの変化であった。 529例を登録し、セマグルチド群に263例、プラセボ群に266例を割り付けた。全体のベースラインの年齢中央値は69歳、女性が56.1%、白人が95.8%であり、体重中央値は105.1kg、BMI中央値は37.0(66.0%が35以上)、KCCQ-CSS中央値は58.9点、LVEF中央値は57.0%であった。KCCQ-CSSの改善度は8点近く高い、重篤な有害事象も少ない KCCQ-CSSのベースラインから52週までの平均変化量は、プラセボ群が8.7点であったのに対し、セマグルチド群は16.6点と有意に優れた(推定群間差:7.8点、95%信頼区間[CI]:4.8~10.9、p<0.001)。また、体重の平均変化率は、プラセボ群の-2.6%と比較して、セマグルチド群は-13.3%と減量効果が有意に良好だった(推定群間差:-10.7ポイント、95%CI:-11.9~-9.4、p<0.001)。 6分間歩行距離の変化量は、プラセボ群の1.2mに比べ、セマグルチド群は21.5mであり、有意に延長した(推定群間差:20.3m、95%CI:8.6~32.1、p<0.001)。 階層法を用いた複合エンドポイント(全死因死亡、心不全イベント、KCCQ-CSSのベースラインからの変化量がそれぞれ15点、10点、5点以上、6分間歩行距離のベースラインからの変化量が30m以上)のwin比(win ratio)の解析では、プラセボ群に比べセマグルチド群でwin(勝利)の数が多かった(win比:1.72、95%CI:1.37~2.15、p<0.001)。 また、C反応性蛋白(CRP)値の平均変化率は、プラセボ群の-7.3%に比べ、セマグルチド群は-43.5%と有意に改善した(推定比:0.61、95%CI:0.51~0.72、p<0.001)。 重篤な有害事象は、セマグルチド群が35例(13.3%)、プラセボ群は71例(26.7%)で発現した(p<0.001)。各群6例ずつが、重篤な有害事象により投与を中止した。全有害事象による投与中止は、セマグルチド群が35例、プラセボ群は14例だった。 著者は、「KCCQ-CSS、体重減少、6分間歩行距離の改善度が、いずれも大きいことは注目に値する。これらの結果を先行研究の成果と統合すると、セマグルチドは肥満者のHFpEFの管理において、価値のある治療アプローチとなる可能性がある」としている。

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2型糖尿病治療薬としてのGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutide(解説:住谷哲氏)

 筆者はこれまで、血糖降下薬多剤併用でも血糖管理目標が達成できない患者を少なからず経験したが、その多くは食欲がコントロールできない肥満合併患者であった。しかしGLP-1受容体作動薬の登場で、食欲抑制を介して体重を減少させることが可能となり、2型糖尿病治療は大きく前進した。最新のADA/EASDの血糖降下薬使用アルゴリズムにおいて、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬と同様に臓器保護薬として位置付けられている1)。しかし、GLP-1受容体作動薬はcardiovascular disease dominoのより上流に位置する肥満を制御することが可能な薬剤であり、この点がSGLT2阻害薬とは異なっている。 本試験は、GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの血糖降下薬としての有効性を検証した第II相臨床試験であるが、肥満症治療薬としての有効性を検証した試験の結果がほぼ同時に報告されている2)。そこでは約1年(48週)投与後の体重減少率が24%と、驚くべき効果が示されている。これはセマグルチド、チルゼパチドの体重減少作用を凌駕している。GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)が登場するまでは、最強のGLP-1受容体作動薬はセマグルチド(同:オゼンピック)であった。しかしretatrutideが投与可能となれば、チルゼパチドは最強のGLP-1受容体作動薬の座をretatrutideに明け渡すことになるだろう。 開発企業のEli Lillyは、すでにretatrutideの臨床開発プログラムであるTRIUMPH programを開始しており、対象には肥満を合併した2型糖尿病だけではなく、睡眠時無呼吸症候群、変形性膝関節症の患者も含まれている。つまり、肥満を基礎とする広範な疾患に対する治療薬としての位置付けを目指しているようだ。 わが国で肥満症治療薬として認可されているGLP-1受容体作動薬はセマグルチド(同:ウゴービ)だけであるが、近い将来にチルゼパチドもretatrutideも認可されるだろう。わが国でも増加し続けている肥満症患者のすべてに、これらの薬剤を投与することが医療経済的に正当化されるか否かは議論が必要だろう。英国のNICEのガイダンスのように3)、対象患者、投薬期間を明確にして無制限な使用に歯止めをかけることも必要かもしれない。

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第180回 エビやキノコなどの食物繊維キチンは肥満を生じ難くする/GLP-1薬セマグルチドが1型糖尿病にも有効らしい

エビやキノコなどの食物繊維キチンは肥満を生じ難くする食物繊維の摂取は代謝を好調にし、肥満などの代謝疾患が生じ難くなることと関連します。とはいうものの食物繊維の代謝への恩恵をわれわれの体が引き出す仕組みはあまりわかっていません。不溶性の多糖繊維のほとんどは哺乳類の酵素で消化されず、腸の微生物による分解もごく限られています。しかしエビやカニなどの甲殻類、昆虫、真菌(キノコ)などの外骨格や細胞壁の主成分であるキチンは例外的で、ほかの食物繊維と一線を画します。マウスやヒトはキチンを作れませんが、キトトリオシダーゼ(Chit1)と酸性哺乳類キチナーゼ(AMCase)と呼ばれるキチン分解酵素2つを作ることができます。摂取したキチンがその消化を促す胃でのAMCase発現亢進を導くまでの免疫反応絡みの回路が新たな研究で同定され、AMCase欠如マウスにキチンを与え続けると高脂肪食にもかかわらずあまり太らずに済むことが示されました1)。キチンとともに高脂肪食が与えられたAMCase欠如マウスは、キチンを与えなかったマウスやキチンを与えたけれどもそれを分解できるマウスに比べて体重増加や脂肪量が少なくて済み、肥満になりにくいという結果が得られています。今後の課題として研究チームはヒトではどうかを検討する予定です2)。食事にキチンを含めることで肥満を予防できるかどうかを調べることを目標としています。また、胃のキチン分解酵素の阻害とキチン補給を組み合わせることでAMCase欠如マウスのキチン摂取と同様の最大の効果を引き出せそうと研究チームは考えています。チームのリーダーSteven Van Dyken氏によると胃のキチン分解酵素を阻害する手段はいくつか存在するとのことです。GLP-1薬セマグルチドが1型糖尿病にも有効らしい肥満治療といえば2型糖尿病(T2D)治療薬として出発したノボ ノルディスク ファーマのGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)セマグルチドが大人気ですが、同剤がT2Dのみならず1型糖尿病(T1D)にも有効らしいことを示す米国・バッファロー大学のチームによる症例解析がNEJM誌に先週掲載されました3)。T1Dになったばかりの患者のほとんどはまっとうなβ細胞を有しています。そういう初期段階であればインスリン分泌を促すセマグルチドが効くかもしれず、バッファロー大学の研究者はT1D診断後3ヵ月後以内に同剤投与が始まった患者10例の1年間の経過を調べました。10例とも食事の際のインスリンと基礎インスリンを使っていましたが、セマグルチド開始から3ヵ月以内に全員が食事時のインスリンを使わずに済むようになりました。また、10例中7例は6ヵ月以内に基礎インスリンも不要となってその後もそうして過ごせました。血糖値も落ち着き、もとは12%ほどもあった糖化ヘモグロビン値はセマグルチド使用開始後半年時点では5.9%、1年時点では5.7%に落ち着きました。セマグルチドの用量を増やしている期間に軽い低血糖が生じましたが、投与量が一定になって以降の発生は認められませんでした。T1D診断後すぐからのセマグルチド投与をより大人数の無作為化試験で検討する価値があると著者は言っています。T1Dへの有効性が示唆されたことが示すようにセマグルチドなどのGLP-1薬は代謝疾患の領域で手広い用途がありそうです。もっと言うと、その域を超えて依存症分野でも活躍できる可能性を秘めています。そういう可能性の臨床検討はすでに始まっており、たとえばセマグルチドと飲酒や喫煙量の変化の関連がノースカロライナ大学主催の試験で調べられています4,5)。参考1)Kim DH, et al. Science. 2023;381:1092-1098.2)Fiber from crustaceans, insects, mushrooms promotes digestion / Eurekalert3)Dandona P, et al. N Engl J Med. 2023;389:958-959.4)ClinicalTrials.gov(NCT05520775)5)ClinicalTrials.gov(NCT05530577)

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第162回 2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省

<先週の動き>1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2022年度の日本の概算医療費が46兆円に達し、2年連続で過去最高を更新したことが厚生労働省から発表された。前年度に比べて4.0%増加しており、新型コロナウイルスの感染拡大と高齢化が主な影響因子とされている。厚労省によると、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が、とくに影響を与え、発熱外来などの患者数が大幅に増加した。コロナ患者の医療費は前年度の倍近い8,600億円に上った。また、75歳以上の人々が全体の医療費の約39.1%(18兆円)を占め、その1人当たりの医療費が95万6千円であり、75歳未満の24万5千円に比べ3.9倍だった。診療種類別では、医科が34.3兆円(4.5%増)、歯科が3.2兆円(2.6%増)、調剤が7.9兆円(1.7%増)といずれも増加。とくに、医科の外来や在宅などの入院外が16.2兆円(6.3%増)と目立つ伸びをみせた。診療所においては、不妊治療の保険適用が拡大したことで、産婦人科が前年度比41.7%増と大幅に伸びた。このような背景から、医療費の増加が持続している現状において、その抑制方法が課題となっている。とくに新型コロナウイルスの影響と高齢化が相まって、今後も医療費の増加が予想される。参考1)令和4年度 医療費の動向-MEDIAS-(厚労省)2)医療費が過去最大46兆円 4年度概算、コロナ影響(産経新聞)3)医療費1.8兆円増の46兆円 2年連続過去最高 新型コロナが影響(朝日新聞)4)22年度概算医療費46兆円、2年連続で過去最高 前年度比4%増(CB news)2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省厚生労働省によると、全国の新型コロナの患者数は前週比で1.07倍増となり、とくに岩手、青森、宮城の患者数が多い状況が明らかとなった。新たな入院者数は全国で1万3,501人と、前週よりは減少しているものの、重症患者数は増加している。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、学校における影響も顕著になっており、とくに新学期が始まった地域で学級閉鎖が相次いでいる。日本学校保健会によると、全国の小中高校と幼稚園、保育園で149クラスが閉鎖されている。長野県では、新学期が始まったばかりで31クラスが閉鎖され、これは5月以降で最多。感染症の専門家は、学校が再開されることで、子供たちでの感染がさらに広がる可能性を指摘している。また、ワクチン接種から時間が経過すると効果が下がるため、高齢者や基礎疾患のある人は、次の接種が必要になると警告している。自治体や学校は、発熱や倦怠感などがある場合には、無理に登校しないよう呼びかけており、基本的な感染対策の徹底を求めている。参考1)新型コロナで学級閉鎖相次ぐ 「5類移行」後、最多更新の地域も(毎日新聞)2)新型コロナ 全国の感染状況 前週の1.07倍 2週連続の増加(NHK)3)コロナ感染者数、2週続けて増加 前週比1.07倍 5類後最多に(朝日新聞)3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省厚生労働省は、9月1日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開き、自治体が管理している予防接種の記録や、国が保有する副反応の情報などをまとめた全国的なデータベースを作成する方針を明らかにした。これまでの手書きでの報告を改訂し、効率的に情報収集を行う予定。データベースには、接種記録や副反応疑い報告などが匿名化されて格納され、他のデータベースと連携し、予防接種の有効性・安全性の調査・研究が可能となるため、大学研究機関などに第三者提供も行われる予定。これらの取り組みで、ワクチン接種後の副反応や重篤な有害事象の発生について、副反応の情報と接種歴を結びつけて詳細な分析を可能になる見込み。また、データベースの情報は、レセプト(診療報酬明細書)とも結びつけられ、接種した人としていない人の間で副反応が疑われる症状が起きる割合に差があるかを調査することも計画されている。厚労省は、このデータベースを令和8年度中に稼働させ、ワクチンの有効性や安全性の分析に役立てる方針としている。参考1)予防接種データベースについて(厚労省)2)予防接種データベース「整備イメージ」提示 厚労省、報告様式改訂し情報収集を効率化(CB news)3)ワクチン分析 自治体や国保有の情報データベース作成へ 厚労省(NHK)4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省今春、肥満症治療の新薬「セマグルチド(商品名:ウゴービ)」が承認され、1992年に承認されたマジンドール(同:マサノレックス)以来、約30年ぶりの肥満症治療の新薬の登場で、肥満症の治療は大きく進歩している。さらに糖尿病治療薬として承認された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド(同:マンジャロ)」は20%の体重減少効果が確認されており、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、糖尿病の治療だけでなく、肥満症の治療としても注目されている。その一方、近年、痩せるために糖尿病薬を処方する「メディカルダイエット」が横行し、その弊害として欠品が問題となっている。厚生労働省は、この問題に対処するために、医療機関や卸業者に対してGLP-1受容体作動薬について「買い込みを控え適正使用」を呼びかけ、適正な使用と供給の優先を求めている。メーカー側は「医師の処方権」や「独占禁止法」により、適応外処方を厳しく規制することができないとしている。しかし、GLP-1受容体作動薬が適応外使用での処方や適応外でありながら大量に広告されていることから有害事象の発生など懸念が広がっている。参考1)GLP-1 受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚労省)2)30年ぶりの肥満症新薬と、「メディカルダイエット」が招く弊害(毎日新聞)3)“体重20%減”のダイエット効果があだに、糖尿病薬「空前の品不足」で診療に支障も(ダイヤモンド・オンライン)5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会日本産科婦人科学会は、生殖補助医療の倫理的課題やデータ管理に対応するための公的機関設立の準備を始めたと発表した。医療技術の進展に伴い、第三者からの精子や卵子の提供など、新たな治療法が増加している一方で、倫理的な議論や法制度の整備が遅れている現状に対処するよう国側に強く働きかけたいとして同学会が決定した。1978年に世界で初めて体外受精が成功して以降、多くの国では親子関係や提供者の情報管理に関する法制度が整備されているのに対し、わが国では、生殖補助医療に関する法整備が世界に比べて遅れており、法整備が進まず、議論が始まったのは比較的最近であり、その結果としての法制度も不十分な状態が続いている。2020年には「生殖補助医療法」が成立し、一定の規定は確立されたが、提供者と子の「出自を知る権利」などがいまだに十分に考慮されていないのが現状。この法には2年以内に詳細を検討するという付則があったが、その期限が過ぎても議論は進展していない状態となっている。具体的には、新たな改正案で提案されている公的機関(独立行政法人)は、提供者の氏名や住所、生年月日などを100年間保存するよう求められている。しかし、この機関が情報を開示するかどうかは、提供者の同意に依存しており、その点が問題視されている。また、法案では提供を受けられるのは法律上の夫婦に限定されているなど、性的マイノリティーや代理出産に対する規定も不明確となっている。これらの課題を解決するためには、公的機関の設立だけでなく、広範な倫理的、法的議論が必要であり、産婦人科学会は国や関連団体に対して、専門の調査委員会を設けて、これらの課題に十分に議論を重ねることを求めている。参考1)“生殖補助医療の課題対応” 学会 公的機関の設立準備委(NHK)2)世界から遅れ 生殖補助医療法の必要性を指摘してきた識者の憂い(毎日新聞)3)生殖補助医療法、2年の改正期限過ぎるも議論混迷、次期国会どうなる(朝日新聞)6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省厚生労働省は、2021年度の介護費用(保険給付と自己負担を含む)が11兆2,838億円に達し、過去最大を更新したと発表した。この額は2年連続で11兆円を超え、高齢化に伴い、介護サービスの利用者が増加している。同時に、介護保険の給付費(利用者負担を除く)も前年度比2.0%増の10兆4,317億円となり、これもまた過去最高を更新した。介護や支援が必要とされる人々も、21年度末時点で前年度比1.1%増の690万人となり、うち601万人が75歳以上であることが明らかとなり、これも過去最多の数値。給付費の内訳については、訪問介護などの「居宅サービス」が4兆9,604億円で最も多く、次いで特別養護老人ホームなどの「施設サービス」が3兆1,938億円となっている。高齢化が進む中で、介護費用と給付費の増加は持続的な問題となっている。とくに、75歳以上の高齢者が多くを占めていることから、今後もこの傾向は続くと予想される。参考1)令和3年度 介護保険事業状況報告(厚労省)2)介護費、最大の11兆円 21年度(日経新聞)3)介護給付費、10兆4千億円 21年度、高齢化で更新続く(共同通信)

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経口セマグルチド(リベルサス)の最大投与量は50mgで決着か?(解説:住谷哲氏)

 現在(2023年8月)、わが国ではGLP-1受容体作動薬の注射製剤の供給に問題が生じており、使いやすい週1回製剤であるトルリシティ、オゼンピック、マンジャロ(厳密にはGIP/GLP-1受容体作動薬)の新規処方はできず、使用できるのは毎日注射製剤のビクトーザ、リキスミアとバイエッタのみとなっている。経口セマグルチドであるリベルサスに関しては処方制限の噂は聞かないので、当面は新規処方に問題は生じないと信じたい。 セマグルチド注射薬は血糖降下薬としての最大投与量は1.0mg/週であるが、肥満症治療薬としては2.4mg/週までの投与が、わが国でも製造承認されている。つまり、肥満症治療薬としては血糖降下薬よりも投与量を増やす必要があることになる。経口セマグルチドは現時点で血糖降下薬としてのみ承認されているが、同じセマグルチドなので当然肥満症治療薬として使用可能である。すでにそのための臨床試験であるOASIS 1の結果が報告されて、経口セマグルチド50mg/日が肥満症治療薬として有効であることが示された1)。 経口セマグルチドの第II相臨床試験では、経口セマグルチドの血糖降下作用には40mgまで用量依存性のあることが報告されている2)。しかしリベルサスの最大投与量は14mgに設定されて、40mgではない。それでは、なぜ今になって25mgと50mgとの有効性を検証する本試験が実施されたのだろうか? セマグルチドの血糖降下作用および体重減少作用は、注射薬および経口薬を問わず、達成されたセマグルチドの血中濃度に依存する3)。その論文では、経口セマグルチド14mg投与患者の血中セマグルチド濃度には最大で10倍程度の個人差があることが示されている。単純に言えば、14mg投与しても1.4mg投与したのと同様の効果しか出ない患者が存在することになる。したがって、血中セマグルチド濃度の上昇が少ない患者では50mg投与すれば、血中濃度の増加に伴って血糖降下作用および体重減少作用が増大することが期待される。それを証明するのが本試験の目的だったのだろうと筆者は推測している。 経口薬であれ注射薬であれ、GLP-1受容体作動薬の有用性は確立している。供給問題の一刻も早い収束を期待したい。

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アミリンアナログとGLP-1受容体作動薬の配合剤は肥満を伴う2型糖尿病に有効である(解説:小川大輔氏)

 肥満を伴う2型糖尿病の治療として、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが有効であることは周知のとおりである。一方、新規のアミリンアナログであるcagrilintideは肥満症の治療薬として期待が高まっている。今回、BMI 27以上の2型糖尿病患者を対象に、週1回投与のセマグルチド2.4mgとcagrilintide 2.4mgの配合剤(CagriSema)の第II相臨床試験の結果がLancet誌に発表された1)。 アミリンは高血糖時にインスリンと共に膵β細胞から分泌されるホルモンであり、視床下部の食欲中枢に作用して胃の内容物排出速度を低下させ、満腹感を促進する。アミリンアナログであるpramlintideは1型および2型糖尿病の治療薬として2005年にFDAによって承認された。しかし作用時間が短く、1日2~3回注射しなければいけないため実際にはほとんど使用されていない。その後、長時間作用型のアミリンアナログであるcagrilintideが開発され、GLP-1受容体作動薬と共に肥満症の治療薬として期待されている2)。 この試験は米国の17施設において、BMI値27以上でメトホルミン治療中の2型糖尿病成人患者92例を無作為に1対1対1の3群に割り付け、CagriSema、セマグルチド、cagrilintide(いずれも2.4mgまで漸増)をそれぞれ週1回皮下投与した。主要エンドポイントはHbA1cのベースラインから32週目までの変化量で、副次エンドポイントは体重、空腹時血糖値、CGMパラメータ、安全性であった。 ベースラインから32週までのHbA1c値と空腹時血糖値の平均変化は、CagriSema群は、cagrilintide群よりも有意に変化幅が大きかったが、セマグルチド群とは有意差は認められなかった。また体重の平均変化は、CagriSema群-15.6%、セマグルチド群-5.1%、cagrilintide群-8.1%と、CagriSema群はセマグルチド群、cagrilintide群のいずれよりも減少幅が有意に大きかった。これらの結果より、セマグルチドとcagrilintideの併用は、セマグルチド単独に比べてHbA1c値と空腹時血糖値の有意な改善は認めないが、体重に関してはセマグルチド単独よりさらに減少することが示された。 有害事象については、CagriSema群、セマグルチド群、cagrilintide群のいずれの群も同程度であり、消化器系有害事象の頻度が高かった。レベル2およびレベル3の低血糖の発現はいずれの群にも認めなかった。またDexcom G6を用いたCGMのデータにおいても低血糖を伴わず良好な血糖プロファイルが確認された。 今回発表されたCagriSemaの第II相試験で、週1回投与のセマグルチド2.4mgとcagrilintide 2.4mgの配合剤は、過体重の2型糖尿病患者の減量に有効である可能性が示された。第III相試験では症例数を1,200例に増やして現在検討が行われているので、その結果を待ちたい。残念ながら、日本ではセマグルチドはまだ1mgまでしか使えず、アミリンアナログは承認されていない。肥満を伴う2型糖尿病の治療の格差はますます広がるばかりである。

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経口GLP-1受容体作動薬の肥満症に対する効果(解説:小川大輔氏)

 2023年8月現在、欧米で肥満症の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬は、リラグルチドとセマグルチドの2製剤であり、いずれも注射薬である。一方、GLP-1受容体作動薬の経口薬(経口セマグルチドの最大用量は14mg)は、2型糖尿病の治療薬として承認されており、その減量効果は注射薬と比べて低い。今回、2型糖尿病を伴わない肥満症の成人を対象とした、経口GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド50mgの1日1回投与の試験結果が、第83回米国糖尿病学会年次学術総会で発表され、Lancet誌に掲載された1)。 この第III相試験は北米や欧州など9ヵ国、50医療機関において実施された。2型糖尿病のないBMI値30以上、もしくは27以上で体重関連の合併症あるいは併存疾患がある患者667例を無作為に1対1の2群に割り付け、セマグルチド50mgあるいはプラセボを投与し、68週間後の体重の変化率と、ベースラインより体重が5%以上減少した症例の割合を評価した。 その結果、ベースラインから68週までの体重の平均変化率は、セマグルチド群では15.1%の体重減少を達成し(プラセボ投与群では2.4%)、マイナス12.7パーセントポイントの有意な減量効果が示された。また、68週間後に5%以上の体重減少を達成した割合は、プラセボ群が26%に対しセマグルチド群が85%と有意差を認めた。さらに、10%以上の体重減少はセマグルチド群69%対プラセボ群12%、20%以上の体重減少はセマグルチド群34%対プラセボ群3%であった。有害事象については消化器系有害事象が最も多く、セマグルチド群で80%、プラセボ群で46%と報告された。 食事療法と運動療法で十分な減量効果が得られない肥満症患者に対し、欧米ではGLP-1受容体作動薬の注射薬が処方可能である。そして今回の試験により、経口投与可能なGLP-1受容体作動薬が肥満症治療の選択肢に加わったことになる。実は今年の米国糖尿病学会で、別の経口GLP-1受容体作動薬の試験結果も発表されている2)。GLP-1受容体作動薬の注射薬すら使用できない日本においては、肥満症の治療は従来通り食事療法と運動療法を継続する、あるいは減量手術を考慮することになる。

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2型糖尿病の肝硬変、GLP-1受容体作動薬により死亡リスク減

 肝硬変は2型糖尿病と関連していることが多いものの、肝硬変患者を対象とした2型糖尿病治療に関する研究はほとんどない。今回、台湾・Dr. Yen's ClinicのFu-Shun Yen氏らは2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した。その結果、2型糖尿病の肝硬変(代償性)患者がGLP-1受容体作動薬を使用した場合、死亡、心血管イベント、非代償性肝硬変、肝性脳症、肝不全のリスクが有意に低くなることが示された。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。2型糖尿病の肝硬変患者はGLP-1受容体作動薬による治療で死亡リスク減 研究者らは台湾の国民健康保険研究データベースを用い、傾向スコアマッチング法により2008年1月1日~2019年12月31日のGLP-1受容体作動薬の使用者と未使用者467組を選定した。 2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は、GLP-1受容体作動薬の使用者で3.28年、未使用者で3.06年だった。・それぞれの死亡率は、1,000人年当たり27.46例と55.90例だった。・多変量解析の結果、GLP-1受容体作動薬の使用者は未使用者に比べ、死亡(調整ハザード比[aHR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.69)、心血管イベント(aHR:0.6、95%CI:0.41~0.87)、非代償性肝硬変(aHR:0.7、95%CI:0.49~0.99)、肝性脳症(aHR:0.59、95%CI:0.36~0.97)、肝不全(aHR:0.54、95%CI:0.34~0.85)のリスクが低いことが示された。・GLP-1受容体作動薬の累積使用期間が長いほど、GLP-1受容体作動薬を使用しなかった場合よりもこれらのリスクが低くなった。

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バイアスドリガンドorforglipronは2型糖尿病・肥満症治療のgame changerになり得るか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者に対する血糖降下作用、体重減少作用および臓器保護作用が明らかにされている。さらに肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が製造承認されて現在薬価収載待ちの状況である。GLP-1受容体作動薬は有用な薬剤であるが注射薬のバリアはなかなか手ごわく、必要な患者に導入できないことが少なくない。そこで登場したのが経口セマグルチド(リベルサス)であったが、早朝空腹時に120mL以下の水で服用してその後30分は飲食不可、となっているので注射薬ほどではないが服薬アドヒアランスを維持するのが難しい。orforglipronは1日1回服用の非ペプチド性GLP-1受容体作動薬であり、本試験は糖尿病を合併しない肥満患者に対するorforglipronの体重減少作用を主要評価項目とした第II相臨床試験である。orforglipronの2型糖尿病患者に対する血糖降下作用を主要評価項目とした第II相臨床試験の結果は、ほぼ同時にLancetに掲載された1)。両試験の結果をみると、orforglipronの体重減少作用および血糖降下作用はきわめて有効であった。 本論文をみたときに経口セマグルチドと同様の薬剤かと思っていたが、筆者の勉強不足であった。医薬品は大きく分けると低分子医薬品(分子量<500)、高分子医薬品(分子量>10,000~15,000)と、その中間の中分子医薬品とになる。orforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833(分子量883)が、2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた歴史がある。中分子医薬品は、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction)を修飾することによる細胞内シグナル伝達調節作用が期待されており、世界中の製薬企業が開発に注力している。 GLP-1受容体はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)に分類される(ちなみにGIPおよびグルカゴン受容体もGPCRに分類される)。GLP-1はGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。orforglipronはGLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが報告されている2)。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子をバイアスドリガンド(biased ligand)という3)。つまりorforglipronは、これまでのGLP-1受容体作動薬とは異なるまったく新しい作用機序を有する薬剤であり、2型糖尿病・肥満症治療における画期的な新薬となる可能性がある。 すでにEli Lillyは第III相臨床開発プログラムであるACHIEVE(対象は2型糖尿病)およびATTAIN(対象は肥満症)を開始することを発表しており、数年後には2型糖尿病・肥満症治療に新たな展開が期待される。

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医療系YouTuberが認定制に!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第114回

皆さんの周りで医療系のYouTube配信をしている人はいますか? YouTuberとはどのくらいの登録者数がいる人を指すのかは不明ですが、医療者で医療系情報を発信する人は少なくないようです。YouTubeで配信をしてもなかなか収益につながることは難しいらしく、収益を得ながら継続して発信を行っている人は多くないのかもしれませんが、自分が思うことや世の中が求めていることを発信し、広めるには効果的なツールの1つであることには間違いないでしょう。今回、YouTubeを運営するGoogleが、医療情報の発信に関して、一定の規制を設けることを発表しました。グーグルが動画投稿サイト「YouTube」で、医療関連コンテンツの信頼性を高めるため、医師や看護師などの医療系ユーチューバーに「認定制度」を年内に導入する。申請して基準を満たせば、配信者は「信頼できる情報源」であることを表示できるようになる。一方で、信頼性が低い情報源の配信者に関しては、削除や表示されにくくする措置をとる。「GLP-1ダイエット」を宣伝する自由診療クリニックの医師は資格制度の対象外となる見通し。GLP-1ダイエットに関しては、学会や製薬企業が警告しているが、グーグルも不適切情報の氾濫に歯止めをかける方針だ。(2023年7月24日付 RISFAX)現在のところ、上記の認定制度の対象資格は「医師」「看護師」「心理カウンセラー」の3職種とされており、薬剤師は対象外となっています。認定を得るための申請条件は、全米医学アカデミー(NAM)や世界保健機関(WHO)の健康に関する情報共有の原則に従っていることの証明のほか、直近12ヵ月間の総再生数が2,000時間以上あるなどの厳しい基準をクリアする必要があります。認定にはその情報の正確さや信頼だけでなくチャンネルの人気も必要なようです。この取り組みにより、医療者がYouTubeからお墨付きをもらうことで、「信頼できる情報源」として情報を発信できるというメリットは大きいでしょう。健康や医療関連の情報を求めてYouTubeで検索するユーザーに対して、より信頼できる情報を届けやすくなるのではないでしょうか。今回、GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で自費診療として用いる、いわゆる「GLP-1ダイエット」についてはGoogleも問題視していると明言していて、おそらくこの発表の要因の1つになったのでしょう。GLP-1受容体作動薬の適応外使用を促す医師については、ガイドラインやポリシーに則り、動画削除や表示を下位にする措置を取るとしています。全体をみると、この対策は医療分野だけというわけではありません。情報の正確性がとくに重要な政治、医療、科学情報などのトピックに関しては、信頼できる情報源から情報を検索しやすく、お勧めの動画として優先的に表示し、誤情報・フェイクニュースなどに対しては取り締まる対策を行うという大きな流れの1つであるようです。医療や健康関連の情報で疑問を持っている人や悩んでいる人が、インターネットで情報を検索するというケースは増加していると言われていますが、その情報は玉石混交です。また、医療情報はどんどん変わっていきます。患者さんがタイムリーかつ正確な情報を得られやすくなり、健康の向上や不安の解消に役立てばいいなと思います。

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GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。米国の無作為化プラセボ/実薬対照第II相試験 本研究は、米国の42施設が参加した二重盲検無作為化ダブルダミー・プラセボ/実薬対照第II相試験であり、2021年5月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングと無作為化が行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HbA1c値7.0~10.5%(53.0~91.3mmol/mol)、BMI値25~50の2型糖尿病患者が、スクリーニング前の少なくとも3ヵ月間、食事療法と運動療法のみの治療、または安定用量のメトホルミン(≧1,000mg、1日1回)による治療を受けた後、次の8つの群(いずれも週1回皮下投与)に、2対2対2対1対1対1対1対2の割合で無作為に割り付けられた。 (1)プラセボ、(2)デュラグルチド1.5mg、(3)retatrutide 0.5mg、(4)同4mg(開始用量2mg)、(5)同4mg(漸増せず)、(6)同8mg(開始用量2mg)、(7)同8mg(開始用量4mg)、(8)同12mg(開始用量2mg)。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのHbA1cの変化であり、副次エンドポイントには、36週時点までのHbA1cおよび体重の変化が含まれた。 281例が登録され、プラセボ群に45例、デュラグルチド1.5mg群に46例、retatrutide 0.5mg群に47例、同4mg漸増群に23例、同4mg群に24例、同8mg緩徐漸増群に26例、同8mg急速漸増群に24例、同12mg漸増群に46例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.2(SD 9.7)歳、女性が156例(56%)で、平均糖尿病罹患期間は8.1(SD 7.0)年、白人が235例(84%)であり、平均HbA1cは8.3%(SD 1.1)、平均BMI値は35.0(SD 6.3)、平均体重は98.2kg(SD 21.1)であった。脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させる効果も 24週時におけるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、プラセボ群が-0.01%(SE 0.21)、デュラグルチド1.5mg群が-1.41%(0.12)であったのに対し、retatrutide 0.5mg群は-0.43%(0.20)、4mg漸増群は-1.39%(0.14)、4mg群は-1.30%(0.22)、8mg緩徐漸増群は-1.99%(0.15)、8mg急速漸増群は-1.88%(0.21)、12mg漸増群は-2.02%(0.11)であった。 retatrutideによるHbA1cの低下は、プラセボ群と比較して0.5mg群を除く5つの群で有意に大きく(いずれもp<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較では8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)で有意に大きかった。36週時にも、これらと一致した知見が得られた。 また、体重は36週の時点でretatrutideの用量依存性に減少し、減少率は0.5mg群3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群7.92%(1.28)、4mg群10.37%(1.56)、8mg緩徐漸増群16.81%(1.59)、8mg急速漸増群16.34%(1.65)、12mg漸増群16.94%(1.30)であった。プラセボ群の体重減少率は3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg群は2.02%(0.72)だった。 体重減少は、プラセボ群と比較してretatrutideの用量が4mg以上の群ではいずれも有意に大きく(4mg漸増群:p=0.0017、これ以外のすべての群:p<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較でも4mg以上の群で有意に大きかった(いずれもp<0.0001)。 軽度~中等度の消化器系の有害事象(吐き気、下痢、嘔吐、便秘など)が、retatrutide群の35%(67/190例、0.5mg群の13%[6/47例]から8mg急速漸増群の50%[12/24例]までの範囲)、プラセボ群の13%(6/45例)、デュラグルチド1.5mg群の35%(16/46例)で発現した。試験期間中に重篤な低血糖の報告はなく、死亡例もなかった。 著者は、「同時に、retatrutideは脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させ、心代謝系のアウトカムを全般的に改善した」とし、「これら第II相試験の知見は、2型糖尿病および他の肥満関連合併症を有する肥満患者を対象とする第III相試験において、retatrutideの有効性と安全性をさらに検討することを支持するものである」と指摘している。

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