サイト内検索|page:18

検索結果 合計:485件 表示位置:341 - 360

341.

Vol. 4 No. 4 心房細動患者におけるDAPTを考える

掃本 誠治 氏熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学はじめに高齢化で増加している心房細動には、抗凝固薬が必須である。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行症例、心筋梗塞、それぞれに合併する心房細動頻度は、海外では約10%、本邦では6~8%程度と報告されている1-3)。心房細動とステントを伴うPCIを合併すれば、DAPT+抗凝固薬の3剤併用と考えるが、出血リスクが上昇する4-6)。心房細動合併PCIあるいは急性冠症候群(ACS)患者に対する抗凝固薬と抗血小板薬の組み合わせは、原疾患による血栓塞栓症リスクと抗血栓薬による出血リスクの有効性と安全性を考慮することが重要である。WOEST試験WOEST試験7)は、心房細動や機械弁留置後に抗凝固薬を服用する患者で、冠動脈ステント挿入後、クロピドグレルと抗凝固薬の2剤併用群[経口抗凝固薬(ワルファリン)+クロピドグレル284例]と、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と抗凝固薬の3剤併用群(ワルファリン+クロピドグレル+アスピリン289例)で、安全性と有効性を比較した試験で、平均年齢70歳、男性80%、抗凝固薬投与の理由として、心房細動が2剤併用群で69.5%、3剤併用群では69.2%、機械弁はそれぞれ10.2%と10.7%だった。結果として、1年間の出血イベントは、3剤併用群が有意に高値だった(3剤44.4% vs. 2剤19.4%)。また心血管イベントは、2剤併用群が有意に低かった(複合エンドポイント;1次エンドポイント+脳卒中+全死亡+心筋梗塞+ステント血栓症+標的血管再血行再建術;3剤併用群17.6% vs. 2剤併用群11.1%)。抗凝固薬を服用している患者でステント留置術を受けたとき、アスピリンを止めてチエノピリジン系抗血小板薬単剤と抗凝固薬の合計2剤にするというこれまでの発想とは異なることが不可能ではないことを示した意義は大きい。また、心房細動合併のステント留置術後の患者において、CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2が日本の実情を表している3)。2005年~2007年、26施設、1,057例、退院時ワルファリン群506例(48%)、非ワルファリン群551例(52%)を5年間フォローし、脳卒中(虚血性、出血性)、全死亡、心筋梗塞、大出血を評価。非ワルファリン群は、高齢、急性心筋梗塞、頭蓋内出血、貧血が多く、男性、薬剤溶出性ステント(DES)、末梢動脈疾患(PAD)が少なかった。そもそも、心房細動があってもDAPTで上記の因子が複数あれば、臨床現場においてはワルファリンを躊躇するのかもしれない。脳卒中は、ワルファリン群と非ワルファリン群で有意差がなく、虚血性、出血性でも有意差はみられず、心筋梗塞は、ワルファリン群で少なかった。プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内時間(TTR)が65%以上群では、65%未満群に比し脳卒中発症率が低値だった。非弁膜症性心房細動(NVAF)ACSやPCI直後ではない非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象として、本邦からJAST試験においてNVAF患者へのアスピリン150~200mg/日投与は、大出血が多く、無効と報告されている8)。海外では、ACTIVE W試験において、脳卒中リスクの高い心房細動患者に対し(17.4%に心筋梗塞既往)、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)は、OAC(経口抗凝固薬)に比し心血管イベント抑制効果を示せなかった9)。さらに、NVAFでワルファリン不適合者に対するアスピリンとクロピドグレルのDAPTはアスピリン単独に比し脳梗塞抑制効果がみられたが、心筋梗塞死、血管死は差がなく、大出血イベントが多かった10)。以上の結果は、心房細動には抗血小板薬より抗凝固薬が必要であることを示している。ワルファリンのエビデンス冠動脈疾患には低用量アスピリンを終生投与するのが現在のガイドラインであるが、ワルファリンは50年以上日常臨床で使用されている薬剤で、急性心筋梗塞後のワルファリン vs. プラセボの大規模臨床研究でワルファリンの有効性が示されている11)。さらに心筋梗塞後、アスピリン vs. ワルファリン vs. アスピリン+ワルファリンの3群での比較研究では、アスピリン+ワルファリン併用群、ワルファリン群、アスピリン群の順に心血管イベント抑制効果が優れていた12)。しかし、この試験でのPT-INRは2.8~4.2と現在の実臨床より高値で設定されており、出血合併症が多かったこともあり推奨されなかった。安定冠動脈疾患を合併した心房細動患者のデンマークでのコホート研究では、ワルファリンに抗血小板薬を追加しても心血管イベントリスクは減少せずに出血リスクが増加した13)。以上は、出血リスクが低ければ、抗凝固薬が冠動脈疾患にも有効であることを示唆するものである。実臨床においては、本来抗凝固療法の適応でありながら、あえてコントロール不要の抗血小板薬を投与して、ワルファリンが躊躇される症例が存在した。そのようななかで、脳出血が少なく、PT-INRのコントロールが不要なNOACの登場は実臨床においては魅力的である。心房細動患者におけるACS合併またはステント留置時のガイドライン欧州心臓病学会からACS合併あるいはPCI施行の心房細動患者での抗血栓薬のjoint consensus documentが2014年に発表された14)。(1)脳卒中リスク CHA2DS2-VAScスコア(2)出血リスク HAS-BLEDスコア(3)病態 安定冠動脈疾患か急性冠症候群(待機的か緊急か)(4)抗血栓療法 どの抗血栓薬をどのくらい使用するか基本的には、出血リスクの高い3剤併用(DAPT+抗凝固薬)の期間を上記の条件にしたがって層別化し、可能なら抗血小板薬単剤+抗凝固薬に減量し、12か月以上では、左冠動脈主幹部病変などを除き可能なら抗凝固薬単剤への切り替えが推奨されている。また、VKAはTTR70%以上が推奨されており、VKAとクロピドグレルand/orアスピリンの症例ではINRは2.0~2.5が推奨されている。また、アクセス部位は橈骨動脈穿刺が推奨されている。AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドライン2014でも、PCI後CHA2DS2-VAScスコアが2点以上では、慢性期にはアスピリンを除いて、抗凝固薬+抗血小板薬単剤が合理的であると記載されている15)。現在進行中の試験ACSあるいはPCIを受けた心房細動患者に対するNOACの臨床試験が進行中である(本誌p16の表を参照)16)。 RE-DUAL PCI試験は、ステント留置を伴うPCIを受けた非弁膜性心房細動患者を対象に、ダビガトランの有効性および安全性を評価する試験である。PIONEER AF-PCI試験は、ACS合併心房細動患者において、抗血小板薬に追加するリバーロキサバンの用量を検討する試験で、アピキサバンでも同様の試験が進行している。これらはステント留置術後急性期からの試験だが、本邦ではステント留置術後慢性安定期の心房細動合併患者を対象としたOAC-ALONE試験やAFIRE試験が進行しており、結果が待たれるところである。今後現在進行中の試験から新たなエビデンスが創出されるが、個々の患者において最適な治療法を見つけ出す努力は常に必要とされる(表)。表 ステント留置AF患者における抗血栓療法画像を拡大する文献1)Kirchhof P et al. Management of atrial fibrillation in seven European countries after the publication of the 2010 ESC Guidelines on atrial fibrillation: primary results of the PREvention oF thromboemolic events--European Registry in Atrial Fibrillation (PREFER in AF). Europace 2014; 16: 6-14.2)Akao M et al. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-266.3)Goto K et al. Anticoagulant and antiplatelet therapy in patients with atrial fibrillation undergoing percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol 2014; 114: 70-78.4)Toyoda K et al. Dual antithrombotic therapy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke 2008; 39: 1740-1745.5)Uchida Y et al. Impact of anticoagulant therapy with dual antiplatelet therapy on prognosis after treatment with drug-eluting coronary stents. J Cardiol 2010; 55: 362-369.6)Sørensen R et al. Risk of bleeding in patients with acute myocardial infarction treated with different combinations of aspirin, clopidogrel, and vitamin K antagonists in Denmark: a retrospective analysis of nationwide registry data. Lancet 2009; 374: 1967-1974.7)Dewilde WJ et al. Use of clopidogrel with or without aspir in in patients taking oral anticoagulant therapy and under going percutaneous coronary intervention: an openlabel, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-1115.8)Sato H et al. Low-dose aspirin for prevention of stroke in low-risk patients with atrial fibrillation: Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial. Stroke 2006; 37: 447-451.9)Connolly S et al. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial. Lancet 2006; 367: 1903-1912.10)Connolly SJ et al. Effect of clopidogrel added to aspirin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 360: 2066-2078.11)Smith P et al. The effect of warfarin on mortality and reinfarction after myocardial infarction. N Engl J Med 1990; 323: 147-152.12)Hurlen M et al. Warfarin, aspirin, or both after myocardial infarction. N Engl J Med 2002; 347: 969-974.13)Lamberts M et al. Antiplatelet therapy for stable coronary artery disease in atrial fibrillation patients taking an oral anticoagulant: a nationwide cohort study. Circulation 2014; 129: 1577-1585.14)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.15)January CT et al. 2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. Circulation 2014; 130: 2071-2104.16)Capodanno D et al. Triple antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients with acute coronary syndromes or undergoing percutaneous coronary intervention or transcatheter aortic valve replacement. EuroIntervention 2015; 10: 1015-1021.

342.

統合失調症患者の過体重、アジア諸国の調査

 アジア諸国の統合失調症患者における過体重の割合や人口統計学および臨床的相関を、中国・マカオ大学のFei Wang氏らが調査した。International journal of clinical pharmacology and therapeutics誌2016年6月号の報告。 東アジアにおける向精神薬の国際共同処方調査であるREAP (psychotropic prescription patterns)のデータベースより、9つのアジア諸国と地域における統合失調症入院患者1,534例のデータを収集し、1ヵ月間の臨床面接により補完した医療ファイルによりレビューした。患者の社会人口統計学、臨床的特徴、向精神薬処方、BMIを標準化プロトコルとデータ収集手順で登録した。分析では、過体重をBMI 25以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・過体重率は、全体で35.8%(549/1,534例)、女性で39.7%(224/564例)、男性で33.5%(325/970例)(p=0.01)であり、各国間でばらつきがあった。・試験地で調整後の多重ロジスティック回帰分析では、過体重は気分安定薬の頻繁な使用(p<0.001、OR 1.4、95%CI:1.1~1.8)、罹患期間の長さ(p<0.001、OR 1.6、95%CI:1.2~2.1)と独立して関連していたが、この傾向は男性患者ではみられなかった(p=0.003、OR:0.7、95%CI:0.5~0.8)。 結果を踏まえ、著者らは「アジアの統合失調症患者の過体重率は、欧米諸国で報告されているよりも、有意に低かった。そして、アジア諸国・地域の中でも有病率にはばらつきがある」とまとめている。関連医療ニュース 日本人統合失調症患者のMets有病率を調査:新潟大学 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

343.

喫煙歴+呼吸器症状は呼吸機能悪化のリスク/NEJM

 呼吸機能保持が認められる現在・元喫煙者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断基準を満たさなくとも呼吸器症状がある人は、ない人に比べ、呼吸機能が悪化する割合が高く、活動制限や気道疾患の所見がみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPrescott G. Woodruff氏らが行った、2,736例を対象とした観察試験の結果、示された。COPDの診断は、気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーによる検査で1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が0.70未満の場合とされている。しかし、この定義を満たさなくとも多くの喫煙者で呼吸器症状が認められており、研究グループはその臨床的意味について検討を行った。NEJM誌2016年5月12日号掲載の報告より。CATスコア10以上を呼吸器症状ありと定義 研究グループは、現在喫煙者および喫煙歴のある人(元喫煙者)と、喫煙歴のない人(非喫煙者;対照群)、合わせて2,736例を対象に観察試験を行った。COPD評価テスト(CAT、スコア0~40で評価)を実施して、スパイロメトリーによる検査で呼吸機能が保持されている人について、呼吸器症状がある人(CATスコアが10以上:有症状群)はない人(CATスコアが10未満;無症状群)と比べ、呼吸増悪のリスクが高いかどうかを検証した。 呼吸機能保持の定義は、気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが0.70以上で、FVCが正常下限値を上回る場合とした。また、有症状群と無症状群の、6分間歩行距離、肺機能、胸部の高分解能CT画像所見の違いの有無を調べた。呼吸機能保持の現在・元喫煙者の半数が呼吸器症状あり 追跡期間の中央値は、829日だった。その結果、呼吸機能が保持されている現在・元喫煙者の50%で、呼吸器症状が認められた。 平均年間呼吸機能悪化率は、有症状の現在・元喫煙者0.27(SD:0.67)、無症状の現在・過去喫煙者は0.08(同:0.31)であり、対照群の非喫煙者の0.03(同:0.21)と比べ、いずれも有意に高率だった(両比較においてp<0.001)。 また、有症状の現在・元喫煙者は、喘息既往の有無を問わず、無症状の現在・過去喫煙者に比べ、活動制限が大きく、FEV1、FVCや最大吸気量の値がわずかだが低く、高分解能CTで肺気腫は認めなかったが、気道壁肥厚がより大きかった。 有症状の現在・元喫煙者の42%が気管支拡張薬を、また23%が吸入ステロイド薬を使用していた。著者は「有症状の現在・元喫煙者はCOPD基準を満たしていなくとも、呼吸機能の悪化、活動制限、気道疾患の所見が認められた。また、エビデンスがないままに多様な呼吸器疾患薬物治療をすでに受けていた」とまとめている。

344.

第2世代抗精神病薬、賦活と鎮静作用の違いを検証

 若者に対する第2世代抗精神病薬(SGAs)の賦活や鎮静の効果について、米国・ニューヨーク大学ランゴン医療センターのZainab Al-Dhaher氏らが検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年4月19日号の報告。 若者に対する第2世代抗精神病薬治療の適応症、有効性、忍容性(SATIETY)を評価する自然主義的コホート研究の一環として、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者における賦活や鎮静症状の主観的評価を、Treatment Emergent Symptoms尺度(TESS)を使用し、3ヵ月間毎月収集した。中止率、TESSからの報告症状率、重症度は、臨床や治療パラメータに関連していた。TESSの測定は、任意の日中の賦活(ACTIVATION+)と鎮静症状(SEDATION+)の2つが定義された。 主な結果は以下のとおり。・4件の研究から得られた、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者327例における鎮静による中断率は、クエチアピンが最も高く(13.0%)、次いでオランザピン(7.3%)、リスペリドン(4.2%)、アリピプラゾール(2.0%)であった(p=0.056)。・抗精神病薬未治療の若者257例(13.8±3.6歳、男性率:57.8%)の使用開始薬剤は、アリピプラゾール40例、オランザピン45例、クエチアピン36例、リスペリドン135例であり、ベースライン後1回以上のフォローアップを実施した。・ベースラインの有病率は、ACTIVATION+(39.9%)、SEDATION+(54.1%)で、SGAs間に差は認められなかった。・ACTIVATION+とSEDATION+は、時間とともに有意に変化した(ACTIVATION+ 減少:p=0.0002、SEDATION+ 増加:p<0.0001)。それぞれのSGAs間でわずかな違いが認められ、オランザピンのACTIVATION+は低く(p=0.002)、フォローアップ中のアリピプラゾールのACTIVATION+ はやや高く(p=0.018)、アリピプラゾールのSEDATION+ は低かった(p=0.018)。・4つのSGAsにおいて、不眠症は減少し(p=0.001)、過眠症が増加した(p<0.001)。・ベースライン後の傾眠の有病率は、最も頻繁にみられたが、TESSの訴えは85%が軽度であり、SGAs間の違いはなかった。・年齢の低さが、賦活症状と関連し、年齢の高さが鎮静症状と関連していた。そして、ベースライン時の機能の低さは、両方の増加と関連していた。・精神運動遅滞率は、統合失調スペクトラム障害において高かった。一方で、診断にかかわらず、ADHD治療と精神運動興奮との関連が認められた。 結果を踏まえ、著者らは「単独TESSによるレイティングの独立予測因子は、SGA間の特異的な差よりも、むしろ臨床パラメータを含んでいる。このことから、特定のSGAsに注意を払うよりも、慎重な個別化治療戦略の必要性が示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方 抗精神病薬の治療域、若年者と高齢者の差はどの程度か 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは

345.

EuroPCR 2016 注目の演題

2016年5月17~20日、フランス・パリでEuroPCR 2016が開催されます。EuroPCRでは今年も魅力的な最新研究が多数発表されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考としていただけるよう、Late Breaking Trialをはじめとした注目演題に関するアンケートを実施し、その結果を学会開催前にご紹介します。また、観光名所やレストランなど開催地パリのおすすめスポットについて、会員の方々から情報をお寄せいただきました。ぜひご活用ください。EuroPCR 2016 開催地パリのおすすめスポットはこちら欧州留学中の循環器内科医が選んだEuroPCR 2016注目の演題はこちら※演題名および発表順は4月20日時点でEuroPCR 2016のウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Update on BRSChairperson: A. Al Nooryani M. JonerPanellist: S. Cook M. Sabaté M. Valgimigli R. Vijayvergiya P. Vranckx A. Yildirim<5/17(火) 12:00-13:30、Theatre Bordeaux>1.Two-year clinical, angiographic and serial OCT follow-up after implantation of everolimus-eluting BRS and everolimus-eluting metallic stent: insights from the randomised ABSORB Japan trial2.Six-year follow-up of the first-in-man use of a polylactide everolimus-eluting BRS for the treatment of coronary stenosis: an assessment of FFR by multislice CT3.Effect of DAPT termination at 12 months on very late scaffold thrombosis in regular clinical practice: data of a regional collaboration including 868 patients 4.Thirty-day results of the Italian diffuse / multivessel disease ABSORB prospective registry (IT-DISAPPEARS)5.Clinical outcomes following coronary revascularisation with the everolimus-eluting BRS in patients with diabetes: the ABSORB trial diabetic study6.Thirty-day outcome of the Italian ABSORB registry (RAI), a prospective registry of consecutive patients treated with biovascular scaffold7.France ABSORB registry: in-hospital and one-month results in 2,000 patientsQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するLate-breaking trials and trial updates in coronary interventionsChairpersons: T. Cuisset J.F. TanguayPanellist: S. Cook M. Sabaté M. Valgimigli R. Vijayvergiya P. Vranckx A. Yildirim<5/17(火) 15:30-17:00、Theatre Bordeaux>1.The balance of thrombosis and bleeding in patients at high bleeding risk from Leaders Free trial2.Six-month versus 12-month DAPT following long-length everolimus-eluting stent implantation3.Randomised, double-blinded, placebo-controlled trial of intramyocardial autologous bone marrow CD133+ cells on left ventricle perfusion and function in patients with inducible ischaemia and refractory angina (REGENT-VSEL) 4.The final 5-year results from the COMPARE II trial: the first real long-term results between biodegradable polymer biolimus-eluting stent and durable polymer everolimus-eluting stent5.5-year non-enrolled TWENTE: clinical outcome of participants in the randomised TWENTE trial vs. non-enrolled eligible patients, treated with the same second-generation DES6.3-year clinical follow-up of the RIBS V randomised clinical trial7.A randomised control trial comparing two DES on the degree of early stent healing and late neointima progression using longitudinal sequential OCT follow-up: the OCT-ORION studyQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するTAVI-registriesChairpersons: A. Cribier A.S. PetronioPanellist: M. Chen U. Gerckens K. Hayashida<5/17(火) 15:30-17:00、Room Maillot>1.Late outcomes of TAVI in high-risk patients: FRANCE 2 registry2.SOURCE 3 post-approval registry - early outcomes in 1,946 TAVI patients with a third-generation balloon expandable transcatheter heart valve3.30-day registry results using a second generation transfemoral aortic valve implantation system for the treatment of patients with severe aortic stenosis 4.Implantation of novel balloon-expandable transcatheter heart valves into degenerated surgical aortic bioprostheses: matched comparison and insights from the Valve-In-Valve International Data (VIVID) registry 5.Acute and 30-day outcomes of women after TAVI: results from the first Women IN Transcatheter Aortic Valve Implantation (WIN-TAVI) real world registry 6.TAVI in hospitals with and without on-site cardiac surgery department: insights from the prospective German aortic valve replacement quality assurance registry (AQUA) in 17,919 patients7.The RESPOND study: safety and efficacy of a fully repositionable and retrievable aortic valve used in routine clinical practiceQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するAdvances in PCI procedural techniqueChairperson: I. Al Rashdan W. WijnsPanellist: D. Kettles R. Mohd Ali S. Nakamura S. Pala A.Pichard M. Singh Sandhu<5/18(水) 08:30-10:00、Theatre Bordeaux>1.Impact of radial vs. femoral access on acute kidney injury in patients with ACS invasively managed: the AKI-MATRIX (Acute Kidney Injury-Minimising adverse hemorrhagic events by TRansradial access site and systemic Implementation of angioX) substudy2.The first report of a prospective, controlled, randomised, open-labeled, multicentre, clinical study “rap and beat trial” to evaluate safety and efficacy of novel 6Fr small outer diameter sheath for transradial coronary angiography and intervention.3.What is the better stent and the better access for the treatment of the left main in the era of second-generation DES? Insights from the FAILS-2, a multicentre registry including 1,270 patients 4.Upper extremity function post-transradial (TR)-PCI: interim results 5.Sealing intermediate non-obstructive coronary SVG lesions with DES as a new approach to maintaining vein graft patency and reducing cardiac events: the VELETI II randomised clinical trial6.Prospective randomised comparison of clinical and angiographic outcomes between everolimus-eluting vs. zotarolimus-eluting stents for treatment of coronary restenosis in DES: IVUS volumetric analysis 7.Impact of coronary CT angiography on planning of bifurcation PCI8.Structural damage of jailed guidewire during the treatment of coronary bifurcations: a microscopic randomised trialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するNew valvular interventions and enabling technologiesChairpersons: M. Buchbinder T. FeldmanPanellists: P.J. Fitzgerald R. Makkar G. Manoharan I. Reda<5/18(水) 14:45-16:15、Room Maillot>1.Does use of a direct thrombin inhibitor prevent the occurrence of cerebral emboli during TAVI? Insights from the BRAVO-3 study2.A pooled analysis of triguard cerebral protection compared to unprotected transcatheter aortic valve replacement. Results of a pooled patient level analysis3.12-month results of a novel large access closure device: insights from the FRONTIER II trial4.LAA occlusion vs. standard care in patients with atrial fibrillation and intracranial hemorrhage: A propensity matched score follow-up study5.One-year follow-up date of a novel self-expanding TAVI system in a prospective, bi-centric, single arm pilot trial 6.Mitral valve repair using a novel percutaneous septal sinus shortening device7.Millipede percutaneous mitral annuloplasty ringQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するFFR/iFRChairperson: C. Di MarioPanellists: C. Berry N. Curzen J. Davies N.R. Holm<5/19(木) 10:30-12:00、Room Maillot>1.Impact of routine FFR on management decision and one-year clinical outcome of ACS patients insights from the POST-IT and R3F integrated multicentre registries - implementation of FFR in routine practice (PRIME-FFR)2.iFR/FFR and IVUS-guided percutaneous coronary revascularisation with new-generation DES in patients with De Novo three vessel disease: 30-day outcomes of the SYNTAX II trial3.DEFINE REAL: a prospective, observational, non-randomised, European, multicentre registry, collecting real-life information for the utilisation of instantaneous wave-free ratio (iFR) in assessing coronary stenosis relevance in the multivessel disease patients population4.Image-based FFR during coronary catheterisation5.Diagnostic accuracy of a fast computational approach to derive FFR from coronary X-ray angiography: results from the international multicentre FAVOR (Functional Assessment by Various flOw Reconstructions) pilot studyQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大する欧州留学中の循環器内科医が選んだEuroPCR 2016注目の演題EuroPCR 2016開催に当たり、欧州で循環器内科臨床医として活躍する金子 英弘氏が注目の演題を厳選して紹介する。さすが世界最大のカテーテルインターベンション・ライブコース!というラインアップで、どれも注目演題ですが、個人的な興味も含めて紹介させていただきます。Two-year clinical, angiographic and serial optical coherence tomographic follow-up after implantation of everolimus-eluting bioresorbable scaffold and everolimus-eluting metallic stent: insights from the randomised Absorb Japan trial今回のEuroPCRでもBRS(bioresorbable scaffold:生体吸収性スキャフォールド)についての演題が目立ちます。その中で、Absorb Japan trialからのデータが、late-breaking trialとして発表されます。Absorb Japanについては、治療後12ヵ月のメインデータがすでに昨年のEuropean Heart Journal誌に掲載されていますが1)、今回は術後2年の臨床成績、そして血管造影・OCT解析の結果が報告されます。EuroPCRのlate-breaking trialということで世界的にも大きな注目を集める発表になりますが、日本でのBRS導入を間近に控えた今、日本からの参加者にとっては間違いなく見逃せない演題です。TAVI関連からは2つの演題を選びました。SOURCE 3 post-approval registry - early outcomes in 1946 TAVI patients with a third generation balloon expandable transcatheter heart valveSOURCE 3は、次世代TAVIデバイスであるSapien 3(Edwards Lifesciences社)の、CEマーク取得後のヨーロッパでの多施設レジストリです。Sapien 3は、ヨーロッパではすでにTAVIの標準デバイスとしての地位を確立し、先のACC 2016では外科大動脈弁置換術を上回る良好な結果が報告されたばかりです2)。近々、日本でも導入が予定されていることから、日本でTAVIを行っている施設の先生方も注目されるのではないかと思います。Implantation of novel balloon-expandable transcatheter heart valves into degenerated surgical aortic bioprostheses: matched comparison and insights from the Valve-In-Valve International Data (VIVID) registry変性した生体外科大動脈弁に対するTAVI(valve-in-valve)のレジストリからのデータです。欧米では標準的な治療として行われているvalve-in-valveの手技ですが、日本ではTAVIの適応から外れています。一方で、日本人の患者さんは長寿の方が多く、今後、生体弁による外科大動脈弁置換術手術を受けた方の再治療で、TAVIを考えざるを得ない患者さんに出会う機会も増えてくるのではないかと予想されます。今回のような大規模レジストリで良好な結果が報告されれば、日本でも将来的にvalve-in-valveにもTAVIの適応が広がる可能性があります。そういった意味でも、本試験の結果には注目が集まります。New valvular interventions and enabling technologiesのセッションにも注目演題が並びます。LAA occlusion vs. standard care in patients with atrial fibrillation and intracranial haemorrhage: a propensity matched score follow-up study脳出血の既往のある心房細動患者に対する抗凝固療法は、実臨床において非常に難しい判断を要します。そして、このような患者さんこそが左心耳閉鎖の最も良い適応と考えられます。現在、勤務している施設では左心耳閉鎖についてはconservativeな適応としていますが、それでも脳出血の既往のある方には、積極的に左心耳閉鎖を行っています。日本でも、このような患者さんを念頭に置いた左心耳閉鎖デバイスへの期待は高まっており、きわめて実臨床のニーズに即した研究です。Mitral valve repair using a novel percutaneous septal sinus shortening deviceMillipede percutaneous mitral annuloplasty ring僧帽弁閉鎖不全(MR)に対するニューデバイスに関する発表です。MRに対するカテーテル治療のデバイスとしては、MitraClip(Abbott Vascular社)が最も普及しており、ヨーロッパでのMRに対するカテーテル治療の98%以上がMitraClipを用いて行われていると言われています。しかしながら、MitraClipですべてのMRが治療できるわけではなく、現在、約40種類ものデバイスが開発中です。本セッションで紹介されるデバイスがMitraClipに続くデバイスとなるのでしょうか?これ以外にもHot Lineセッションを含め、EuroPCR 2016は見どころ満載です。初夏のパリを舞台に発表される、カテーテルインターベンションの最新知見の数々、非常に楽しみです。参考文献1)Kimura T, et al. Eur Heart J. 2015;36:3332-3342.2)Thourani VH, et al. Lancet 2016 Apr 1 [Epub ahead of print] .

346.

閾値下うつ病に対する効果的なプログラム:広島大

 青年期にみられる閾値下うつ病の主な行動特性は、環境中の報酬知覚の頻度が低い。そのため、単純な介入が短いセッションで行われており、積極的な補強活動を増加させることに焦点を当てることは、報酬の可能性を高めるうえで有効であると考えられる。広島大学の高垣 耕企氏らは、毎週60分間のセッションを5週間実施した行動活性化プログラムの有効性を調べるため、ランダム化比較試験を実施した。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2016年3月22日号の報告。 18~19歳の閾値下うつ病の大学生は、治療群(n=62)、対照群(n=56)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、BDI-II ベック抑うつ質問票スコアとした。 主な結果は以下のとおり。・治療群は、対照群と比較して、抑うつ症状の有意な改善が認められた(エフェクトサイズ:-0.90、95%CI:-1.28~-0.51)。・治療群は、QOL質問票の評価と行動特性において有意な改善を示した。 著者らは、「この行動活性化プログラムの検討は短期間でシンプルな介入であったにもかかわらず、きわめて有意な効果を示しており、多くの異なる施設で利用可能であると考えられる。また、長期的影響については、今後の研究対象にすべきである」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのか 若者の新型うつ病へのアプローチとなりうるか 生徒のうつ病に対する教師サポートの影響は

347.

小児に対するLAI治療、その安全性は

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAIA)の数は、年々増加している。しかし、小児に対するLAIA治療の安全性、有効性は確立されていない。米国・ケースメディカルセンターのStephanie Pope氏らは、ケースシリーズにより小児に対するLAIA治療を研究することで、その知見不足を補うための試みを行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年3月30日号の報告。 本研究は、精神科急性期病棟の専門家により確認された、過去24ヵ月にLAIAによる新規初期治療を行ったすべての患者を含む、レトロスペクティブカルテレビューである。ケースシリーズ9例から、入院、退院時の臨床全般印象-重症度(CGI-S)スコアと臨床全般印象-改善度(CGI-I)スコアを収集した。そのほかに、主要な精神医学的診断報告、併存疾患、年齢、性別、前治療薬とLAIAの種類、LAIAによる治療理由、有害事象、CGI-SおよびCGI-Iスコア、治療を継続するために利用された外来患者のリソースが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・ケースシリーズは、14~17歳の女性2人と男性7人であった。・患者に投与されていた薬剤は、パルミチン酸パリペリドン5例、リスペリドン1例、フルフェナジン1例、アリピプラゾール1例であった。・患者の精神科1次診断は、統合失調症5例、統合失調感情障害1例、双極性障害I型1例、特定不能な双極性障害1例、特定不能な気分障害1例であった。・すべてのケースで、ノンコンプライアンスによりLAIAを選択した。・頻繁な逃走、疾患の重症度が各1例認められた。・すべての患者は、注射サービスの公共リソースを必要とした。・本研究は、母集団が小さく、薬物療法を越えたCGI-SやCGI-Iスコアに及ぼす他の要因、また、レトロスペクティブカルテレビューの性質上、限界がある。また、薬剤間の比較は行っていない。・維持治療および長期的安全性は、本研究の範疇を越えていた。今後、小児集団に対する安全性を明らかにするための、オープンラベル試験や無作為化二重盲検比較対照試験が必要とされる。関連医療ニュース 第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索 小児に対する抗精神病薬、心臓への影響は 若者に対する抗精神病薬、リスクを最小限にするためには

348.

成人期まで持続するADHD、その予測因子は

 注意欠如・多動症(ADHD)は、診断された症例の半数において成人期まで症状が持続する神経発達障害と考えられている。現在、疾患の経過に関連する因子を明らかにするエビデンスは得られていない。ブラジル・リオグランデドスール連邦大学のArthur Caye氏らは、ADHD症状の成人期までの持続を予測するため、小児期のリスクマーカーに関する文献を検索し、システマティックレビューを行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2016年3月28日号の報告。 著者らは、2万6,168件のアブストラクトを検討し、72件のフルテキストレビューを選択した。6件の集団ベースのレトロスペクティブサンプルと10件の臨床フォローアップ研究を含む16件の研究データを同定した。少なくとも3件の研究により評価された要因について、メタ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD症状の成人期までの持続を予測する小児期の因子は、ADHD重症度(OR:2.33、95%CI:1.6~3.39、p<0.001)、ADHD治療(OR:2.09、95%CI:1.04~4.18、p=0.037)、素行症の併存(OR:1.85、95%CI:1.06~3.24、p=0.030)、うつ病の併存(OR:1.8、95%CI:1.1~2.95、p=0.019)であった。関連医療ニュース 成人ADHDをどう見極める 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか

349.

Dr.中川の世界のカテまでイッテ究(キュウ) 第1回

静岡県立総合病院 循環器内科 多田朋弥氏:前編今回のゲストは、ドイツ心臓病センターミュンヘン(Deutshes Herzzentrum München)に2011年から留学された、静岡県立総合病院 循環器内科の多田朋弥氏。代役がきっかけとなった留学への道中川:多田先生、本日はありがとうございます。まず、先生の留学の経緯および留学先について教えていただけますか?多田:私は、北海道大学を2004年に卒業しました。その後、平成2007年から京都大学で循環器のトレーニングを受け、卒業から7年経った2011年に留学しました。留学先はドイツのミュンヘン工科大学(Technische Universität München)のドイツ心臓病センター ミュンヘン(Deutshes Herzzentrum München)です。2011年4月から3年間留学していました。中川:多田先生が留学先としてドイツ心臓病センターミュンヘンを選んだのはご自身の希望ですか? それとも、どなたかの紹介ですか?多田:留学の前年、私は京都大学で、後に留学先となるドイツ心臓病センターミュンヘンのAdnan Kastrati教授が主導する国際共同試験「ISAR-SAFE」試験の日本のenrollmentを担当していました。その年、ストックホルムでのESC(欧州心臓病学会)で、当試験の報告会議があり、京都大学の木村教授が参加する予定だったのですが、都合が合わず、私が代役で日本の状況を報告することになりました。中川:それがきっかけとなったのですね。その時の印象はいかがでしたか?多田:報告の際も感触が良かったので、帰国後、木村先生にその旨を伝えると、行きたかったら紹介するということ話になりました。向こうのチームも仲が良さそうで好印象だったということもあり、留学に至りました。中川:木村先生の代役がきっかけで、お互い好印象を抱き留学に至ったわけですね。ところで、ドイツへの留学ではドイツ語の試験に合格するといった規定はないのですか?多田:留学自体は語学試験に合格する必要はありません。診療行為をするのであれば試験に合格することが必要です。それに加えて日本の医師免許があれば診療できます。私は診療をするつもりはなかったので、その手続きは取りませんでした。中川:留学までの期間がかなり短いですね。ESCが10月、決めたのが11月、実際に行ったのが翌年の4月ですので、6ヵ月後ですね。最速コースですね?多田:はい。準備期間は非常に短かったですね。その間に結婚することになり、大変でした。そのようなこともあり、準備期間の間、ドイツ語の学校に通う余裕はありませんでした。語学試験は受けないとはいえ、それ以前にドイツ語と触れ合う機会は、ほとんどなし。不安はありましたが、英語で何とかなるだろうと淡い期待を抱いていました。しかし、この期待は、実際に現地に行き大きな誤算だったとわかるのですが。現地の人間のしたがらない仕事が、ポジション獲得につながった中川 義久氏中川:ドイツでは診療はされなかったわけですが、向こうでの仕事はどのようなものだったのですか?多田: BRS(生体吸収性スキャフォールド)など、向こうで使われているが日本未発売のデバイスに関する臨床試験が主体でした。コアラボでQCA(定量的冠動脈造影法)やフォローアップの手伝いをするのですが、当時、OCT(光干渉断層法)の担当者がいませんでした。私は、コアラボで測定をしながら、OCTを解析するのが仕事でした。もともとOCTを専門にしていたわけではありませんが、現地では細かい測定を嫌がる人が多いし、日本人だからできるだろう、ということで担当になりました。コアラボで測定をしながら、OCT症例があるとカテ室に行き、戻ってきたデータを自分で解析し、論文化するというワークフローです。そうしているうちに、OTCに関するデータは皆、私を経由するようになってきました。これは自分のポジションを見つけていくという意味で非常に良かったと思います。中川:ところで、Kastrati先生との仕事は英語でするのですよね?多田:いいえ。Kastrati先生は英語を話せますが、ドイツ語を使います。先生はアルバニア出身でポジションを得た方ですので、ドイツ語を使ってドイツ人のコミュニティに入っていくということを重視しておられました。そのような状況ですので、多国籍のフェローも皆ドイツ語を使っていました。中川:コアラボのスタッフもドイツ語ですか?多田:そうです。でも、現場の雑談の中での会話で鍛えられました。最初は本当にコミュニケーションを取れませんでしたが、仕事についても1年ちょっとで問題なくなりました。ただ、英語論文の指導もドイツ語で、これは本当に大変でした。中川:英語論文の指導をドイツ語でされ、さらに英語に訳していくとは、これは神業ですね。ドイツで論文は何本くらい発表されましたか?多田:留学中に5本、帰国後1本です。中川:3年間で6本は相当なハイペースですね?多田:最初の1年は生活の環境整備に費やすことがほとんどで、2年目からやっと芽が出始め、3年目に形になってきました。日本とは違い、Studyナースや学生アルバイトなどデータを取ってくれる人が常時いるシステムなので、解析の仕事に特化しやすかったですね。日本人の診療は丁寧なのか?多田 朋弥氏中川:カテ室でドイツの診療を見る機会もあったと思いますが、日本の診療行為との違いはありますか? 日本人は丁寧で、それが良い成績につながっているという意見を聞くことが多いですが、実際はいかがですか?多田:手技については同等だと思います。よく日本が優れているという意見を耳にしますが、差は感じませんでした。ただし、ドイツでは血管内イメージングのルーチンフォローアップはしないですね。自分がいた施設ではフォローアップCAG(冠動脈造影)をしていましたが、やらない施設がほとんどです。また、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)のガイドについても、ほぼ100%がアンギオガイドです。後でOCTをやりmalappositionが判明することもありました。これは100%アンギオガイドの限界かも知れません。そういう面では、日本のほうが丁寧だといえるでしょう。中川:PCIの適応で日本との違いは感じますか?多田:ドイツでのPCI適応は、年齢も含め合理的だと思います。病変も日本のように複雑なものではなく、比較的シンプルなものが多いという印象です。CTO(慢性完全閉塞病変)も日本より少なく、最近になり、CTOプログラムが始まって例数が増えてきたという状況です。新たなインターベンション・デバイスの可能性留学先のドイツ心臓病センター ミュンヘンにて中川:BRSなど日本でも早く使いたいと思ったものはありましたか?多田:正直なところ、第2世代DES(薬剤溶出ステント)を大きく上回る成績を上げたものは少ないと思います。生体吸収ポリマーと永久ポリマーステントの試験も数多くありますが、同等です。BRSは、若い人には非常に良いものの、高齢者には目を見張るような結果が出てきていません。中川:今のメタリックステントがすでに完成度が高いという印象ですか?多田:3年というスパンで見ると完成形に近づいていると言えるのではないでしょうか。しかし、neo atherosclerosisなど、そこから先のインパクトについては不明です。第3世代DESやBRSがそういったものを改善すれば、使うメリットが出てくると思います。中川:CAD(冠動脈疾患)へのインターベンションはかなり成熟してきていると思いますが、そのような中、ドイツの施設では、SHD(Structural Heart Disease)に向かって動き出していると感じたことはありますか?多田:内科も外科もTAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)をしていますが、自分がいた時には、大きな変化は感じませんでした。後編へ続く

350.

中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症、新世代TAVRの有用性/Lancet

 手術による死亡リスクが中等度の重症大動脈弁狭窄症患者において、SAPIEN 3生体弁を用いた経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、1年時の死亡率が低く、外科的大動脈弁置換術(SAVR)に比べ予後が良好であることが、米国・エモリー大学のVinod H Thourani氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月3日号に掲載された。新世代の生体弁であるSAPIEN 3を用いたTAVRは、中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症における30日時の短期的な臨床転帰の改善が報告されているが、長期的な転帰は不明であった。観察試験の長期データと、他試験との傾向スコア解析による比較 研究グループは、SAVRによる30日死亡のリスクが中等度の重症大動脈弁狭窄症に対するSAPIEN 3生体弁を用いたTAVRの長期的なデータを報告し(SAPIEN 3観察試験)、無作為化試験(PARTNER 2A試験)のSAVR群との臨床転帰の比較を行った(本研究は助成を受けていない。2つの試験はEdwards Lifesciences社の助成による)。 SAPIEN 3試験は、2014年2月17日~9月3日に米国とカナダの51施設で実施され、中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症患者1,077例(88%[952例]が経大腿動脈アクセス)が、SAPIEN 3生体弁を用いたTAVRを施行する群に割り付けられた。今回は、術後1年時のデータの解析を行った。 次いで、ベースラインの患者背景の試験間の差を考慮して事前に規定された傾向スコア解析を用いて、2011年12月23日~13年11月6日に米国とカナダの57施設で実施されたPARTNER 2A試験においてSAVR群に割り付けられた中等度リスクの患者944例と、SAPIEN 3試験のSAPIEN 3 TAVR群の患者の術後1年時の転帰を比較した。 2つの試験は、臨床イベント評価委員会が共通で、心エコー検査の方法が同じであった。 主要評価項目は、全死因死亡、脳卒中、中等度/重度の大動脈逆流の複合エンドポイントとした。傾向スコアを五分位法(Q1[スコアが最も低い20%]~Q5[最も高い20%])で解析し、非劣性(マージン:7.5%)および優越性の評価を行った。TAVR群の非劣性と優越性を確認、中等度/重度弁逆流の転帰は不良 ベースラインの患者背景は両群でほぼ同様であり、平均年齢はSAPIEN 3 TAVR群が81.9(6.6 SD)歳、PARTNER 2A SAVR群は81.6(6.76 SD)歳だった。NYHA心機能分類III/IV度がそれぞれ73%、76%含まれた。 TAVR群で男性(62 vs.55%、p=0.002)および酸素吸入を要する慢性閉塞性肺疾患(5 vs.3%、p=0.02)が多かったのに対し、SAVR群ではSTSスコア中央値(5.2 vs.5.4%、p=0.0002)が高く、平均大動脈弁圧較差(46.1 vs.44.7mmHg、p=0.01)および左室駆出率(58.5 vs.55.4%、p<0.0001)が低く、中等度/重度の僧帽弁逆流症(9 vs.18%、p<0.0001)が多かった。 入院期間中央値はTAVR群がSAVR群よりも短く(4[1~122] vs.9[1~77]日)、術後に帰宅した患者の割合が高かった(85 vs.46%)。 SAPIEN 3試験のフォローアップ期間中央値1年時のTAVR群の全死因死亡率は7.4%(79/1,077例)であった(経大腿動脈アクセス例は6.5%)。脳卒中の発症率は4.6%(49例)で、約半数の2.3%(24例)が後遺障害を伴う脳卒中であった。 1年時までに11%(119例)が手技関連または大動脈弁関連の理由で再入院したが、大動脈弁への再インターベンション(0.6%[6例])はまれだった。12%(132例)が新たに恒久的ペースメーカーの埋め込みを行った。また、心臓の症状は大きく改善し、1年時にはNYHA心機能分類I/II度が94%を占めた。 TAVR後30日時の大動脈弁口面積および大動脈弁圧較差は1年時にも維持されていた。1年時の中等度以上の弁周囲逆流は1.5%のみにみられ、40%は軽度であった。30日時に弁周囲逆流がみられないか、わずかであった患者の1年時の死亡率は4.5%と、軽度の患者の6.4%とほぼ同等であった(p=0.2306)が、中等度/重度の患者の1年死亡率は13.3%であり、有意な差が認められた(p=0.0184)。 傾向スコアの五分位解析(TAVR群:963例、SAVR群:747例)では、主要複合エンドポイントの発生率は、Q1(加重比率差[weighted proportion difference]:-14.5%)~Q5(同:-4.3%)のいずれにおいてもTAVR群が有意に良好であった。 全体の加重比率差は-9.2%であり、TAVR群のSAVR群に対する非劣性(95%信頼区間[CI]:-12.4~-6、p<0.0001)および優越性(95%CI:-13.0~-5.4、p<0.0001)が確認された。死亡(-5.2%、-8.0~-2.4、p=0.0003)および脳卒中(-3.5%、-5.9~-1.1、p=0.0038)はTAVR群で良好であったが、中等度/重度の大動脈弁逆流(1.2%、0.2~2.2、p=0.0149)はSAVR群が優れた。 著者は、「TAVRは、中等度リスクの患者においてSAVRよりも好ましい治療選択肢と考えられ、今後、適応が拡大する可能性がある」と指摘している。

351.

うつ病患者にみられる認知機能の変化は

 うつ病の青年には、実行機能、注意、記憶の欠損が見られる。神経認知機能の変化は寛解期ではなく急性期に見られるものもあるという事実にもかかわらず、縦断的研究も不足している。米国・ニューヨーク市立大学クイーンズ校のAl Amira Safa Shehab氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による急性期治療中のうつ病青年の神経認知機能の変化を調査した。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年3月14日号の報告。うつ病青年を治療する際に認知症状についてもチェックする必要 うつ病青年24人と健康対照者24人を対象に、ベースライン時および6、12週にケンブリッジ神経心理学テスト(CANTAB)のサブテストおよび臨床スケールを評価した。うつ病青年には、ベースライン評価後、fluoxetineを投与した。 うつ病青年の神経認知機能の変化を調査した主な結果は以下のとおり。・うつ病青年では、抑うつ症状の著しい改善にもかかわらず、健康対照者と比較して、視覚的記憶の継続的な欠損が認められた(p=0.001)。・持続的な注意および抑制の課題は、健康対照者では12週までより良い状態であったが、うつ病青年では持続的注意欠損が残存していた。・実行機能(計画)課題は、健康対照者では課題を学習し、12週にわたり改善したにもかかわらず、うつ病青年のパフォーマンスでは有意な変化がみられなかった(p=0.04)。 結果を踏まえ、著者らは「うつ病青年を治療する際に、臨床医は気分症状の改善後にみられる認知症状についてもチェックする必要がある」としている。

352.

ACC(米国心臓病学会)2016 注目のLate Breaking Clinical Trial

2016年4月2~4日、米国シカゴでACC2016(米国心臓病学会)が開催されます。今年のACCは、5つのLate Breaking Clinical Trialセッションと2つのFeatured Clinical Researchセッションで最新の研究が発表される予定です。ケアネットでは、聴講スケジュールの参考としていただくために、Late Breaking Trialでの注目演題のアンケートを実施いたしました。その結果をセッションごとに、北里大学医学部循環器内科学 教授 阿古潤哉氏のコメントとともにご紹介いたします。また、レストランをはじめ開催地シカゴのおすすめスポットについても、会員の方々から情報をお寄せいただきました。ぜひ、ご活用ください。開催地シカゴのおすすめスポットはこちらOpening Showcase and the Joint ACC/JACC Late-Breaking Clinical Trials<Session 401:4/2(土)8:00am~10:00am、Main Tent (North Hall B1)>Partner 2: Transcatheter Aortic Valve Replacement Compared with Surgery in Intermediate Risk Patients with Aortic Stenosis: Final Results from the Randomized Placement of Aortic Transcatheter Valves 2 StudyHOPE 3: Blood Pressure Lowering in People at Moderate RiskHOPE 3: Effects of Combined Lipid and BP-Lowering on Cardiovascular Disease in a Moderate Risk Global Primary Prevention PopulationQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はTAVRに注目が集まっている様子。最初は手術リスクが高い人にのみ行われてきたTAVRが、中等度リスクの患者でどのような結果になるか、無作為化試験に注目が集まる。結果次第では現在の適応を大きく変えていく可能性も。Joint American College of Cardiology/Journal of the American Medical Association Late-Breaking Clinical Trials<Session 404:4/3(日) 8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>ACCELERATE: Impact of the Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitor Evacetrapib on Cardiovascular Events: Results of the ACCELERATE trialGAUSS-3: Comparison of PCSK9 Inhibitor Evolocumab Versus Ezetimibe in Statin-intolerant Patients: The Goal Achievement After Utilizing an Anti-PCSK9 Antibody in Statin Intolerant Subjects 3 (GAUSS-3) TrialFH Mutations: Low-density Lipoprotein Cholesterol, Familial Hypercholesterolemia Mutation Status and Risk for Coronary Artery DiseaseStepathlon: Reproducible Impact of a Global Mobile Health (mHealth) Mass-Participation Physical Activity Intervention on Step Count, Sitting Behavior and Weight: the Stepathlon Cardiovascular Health StudyLow Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はGAUSS試験に注目が集まっている。わが国でも承認されたPCSK9阻害薬が、スタチンを投与することができない患者に対してどの程度、有効性・安全性を示すか注目される。ACCELERATEはCETP阻害薬の試験。今までHDL-Cを上げる治療はなかなか有効性が示されていないが、evacetrapibでどのような結果となるか?Joint American College of Cardiology/TCT Late-Breaking Clinical Trials<Session 405:4/3(日)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>DANish (DEFERred stent): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: DEFERred stent implantation in connection with primary PCIDANish (iPOST conditioning): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: iPOSTconditioning during primary PCIEarly-BAMI: Effect Of Early Administration Of Intravenous Beta Blockers In Patients With ST-elevation Myocardial Infarction Before Primary Percutaneous Coronary Intervention. The Early-BAMI trial.Sapien 3: Sapien 3 Transcatheter Aortic Valve Replacement versus Surgery in Intermediate-Risk Patients with Severe Aortic Stenosis: A Propensity-Matched Comparison of One-Year OutcomesTAVR Volume/Outcome: Relationship Between Procedure Volume and Outcome for Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: Insights from the STS/ACC TVT RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はSTEMIに対する試験が注目されている様子である。TAVRの演題は数字上低めとなっている。しかし、この日もSapienはintermediate riskの患者のデータであり、TAVR治療の今後の広がりを考える上では注目されよう。Featured Clinical Research Session I<Session 406:4/3(日)12:30pm~1:45pm、ACC.16 Main Tent (Room S103cd)>MR: Papillary Muscle Approximation versus Undersizing Restrictive Annuloplasty Alone for Severe Ischemic Mitral Regurgitation: a Randomized Clinical TrialIsch MR: Two-year Outcomes of Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation: A Randomized Clinical Trial from The Cardiothoracic Surgical Trials NetworkSurgery Ischemic HF: Ten-Year Outcome of Coronary Artery Bypass Graft Surgery Versus Medical Therapy in Patients with Ischemic Cardiomyopathy: Results of the Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure Extension StudyCoreValve: 3-Year Results From the CoreValve US Pivotal High Risk Randomized Trial Comparing Self-Expanding Transcatheter and Surgical Aortic ValvesValve Deterioration: Incidence and Outcomes of Valve Hemodynamic Deterioration in Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: A Report from the Society of Thoracic Surgery / American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はischemic MRに対する試験と、虚血性心筋症に対するバイパス術と内科的治療を比較した臨床試験が注目を集めている。いずれも、clinical decision makingの助けとなる臨床試験が不足している領域であり、今後のガイドラインにも影響を与えそうな試験内容である。Joint American College of Cardiology/New England Journal of Medicine Late-Breaking Clinical Trials<Session 410:4/4(月)8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>Resuscitation Outcomes: Antiarrhythmic Drugs for Shock-Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The Resuscitation Outcomes Consortium Amiodarone, Lidocaine or Placebo StudyFIRE AND ICE: Largest Randomized Trial Demonstrates an Effective Ablation of Atrial Fibrillation: the FIRE AND ICE TrialRate v Rhythm: A Randomized Trial of Rate Control Versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac SurgeryLATITUDE-TIMI 60: The Losmapimod To Inhibit P38 MAP Kinase As A Therapeutic Target And Modify Outcomes After An Acute Coronary Syndrome (LATITUDE-TIMI 60) Trial: Primary Results Of Part ACARIN: CMX-2043 for Prevention of Contrast Induced Acute Kidney Injury: The Primary Results of the CARIN TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はresuscitation、ablation、rate control or rhythm controlに注目が集まっているが、個人的にはLATITUDE試験の結果も興味深いのではないかと考える。Late-Breaking Clinical Trials<Session 412:4/4(月)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>ATMOSPHERE: Direct Renin-inhibition With Aliskiren Alone And In Combination With Enalapril, Compared With Enalapril, In Heart Failure (the ATMOSPHERE Trial)TRUE-AHF: Effect of Ularitide on Short- and Long-Term Clinical Course of Patients with Acutely Decompensated Heart Failure: Primary Results of the TRUE-AHF TrialIxCell-DCM: The Final Results of the IxCell-DCM Trial: Transendocardial Injection of Ixmyelocel-T in Patients with Ischemic Dilated CardiomyopathyINOVATE-HF: The Effect of Vagal Nerve Stimulation in Heart Failure: Primary Results of the INcrease Of VAgal TonE in chronic Heart Failure (INOVATE-HF) TrialIMPEDANCE-HF: Non-invasive Lung IMPEDANCE-Guided Preemptive Treatment in Chronic Heart Failure Patients: a Randomized Controlled Trial (IMPEDANCE-HF trial)Low Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日は心不全関連の演題が多く出されている。アリスキレンの演題の注目度が高いようだが、vagal stimulationなどの新たな試みも出てくるということで、心不全に関する新たな知見が期待される。Featured Clinical Research Session II<Session 416:4/4(月)2:00pm~3:30pm、Main Tent (Grand Ballroom S100bc)>PROMISE (Sex Differences): Sex Differences in Functional Stress Test vs CT Angiography Results and Prognosis in Symptomatic Patients with Suspected Coronary Artery Disease: Insights from the PROMISE TrialSTOP-CHAGAS: Short and Long Term Effects of Benznidazole, Posaconazole, Monotherapy and their Combination in Eliminating Parasites in Asymptomatic T. cruzi Carriers: The Study of Oral Posaconazole in the Treatment of Asymptomatic Chagas Disease (STOP-CHAGAS Trial)STAMPEDE: Bariatric Surgery vs. Intensive Medical Therapy for Long-term Glycemic Control and Complications of Diabetes: Final 5-Year STAMPEDE Trial ResultsVindicate: Vitamin D Supplementation Improves Cardiac Function In Patients With Chronic Heart Failure - Preliminary Results Of The Vitamin D Treating Chronic Heart Failure (vindicate) StudyRxEACH Trial: The Effect of Community Pharmacist Prescribing and Care on Cardiovascular Risk Reduction: The RxEACH Multicenter Randomized Controlled TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこのセッションにはさまざまなものが混じって入れられている。わが国にも関連があるのはsex differenceの演題かもしれないが、世界的にみるとCHAGAS病、肥満に対するbariatric surgeryなども重要な位置を占める。

353.

焦燥性興奮に対し、どうサポートしていくべきか

 認知症者や急性期病院のせん妄患者では、焦燥性興奮のみられる言動が認められるが、その発生率や病棟スタッフの対応法に関する研究はない。英国・ノッティンガム大学病院NHSトラストのFrancesca Inkley氏らは、混乱した高齢入院患者の焦燥性興奮のみられる言動の発生率およびスタッフによるマネジメント戦略について評価した。Nursing older people誌2016年2月26日号の報告。 8つの高齢者病棟において、言語上の焦燥性興奮が認められたすべての患者に対し、看護チームが2週間、毎日評価を行った。6項目の半構造化インタビューをスタッフと行い、3時間の非参与観察を行った。 主な結果は以下のとおり。・平均6%の患者(13/223例)において、言語上の焦燥性興奮が毎日認められた。・マネジメント戦略は、試行錯誤、気をそらすことや約束、安心感を与えること、コミュニケーションや親交を深めることなどであった。・病棟でのトレーニングやサポート、スタッフ・場所・活動などのリソース不足により、職員はこれら患者へのケアプランを作成する体系的なアプローチを実施できていなかった。 結果を踏まえ、著者らは「言葉上の焦燥性興奮が認められる患者に対して、サポートするスタッフのための介入法の開発や評価が必要とされる」としている。関連医療ニュース せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか せん妄管理における各抗精神病薬の違いは せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大

354.

18日より、日本循環器学会学術集会が仙台で開催

 第80回日本循環器学会学術集会(JCS2016)が2016年3月18日(金)~20日(日)、宮城県仙台市で開催される(会長:東北大学循環器内科学教授 下川 宏明氏)。3日間を通して、約2万人の参加を見込んでおり、循環器系学術集会としては欧州心臓病学会(ESC)に次いで、世界第2位の規模になる。17ヵ国、66人の海外からの招待演者らによる発表や、米国心臓病学会/心臓協会(ACC/AHA)、ESCなどとのジョイントシンポジウム7セッションをはじめとする、計3,294演題、815人の座長による発表が予定されている。 開催に先立ち今月10日に都内で開かれたプレスカンファレンスで、下川氏は「本学術集会は2つの意味で節目である」と述べた。1つは、同学術集会第80回目としての節目であり、これを記念してプログラムには日本発の循環器研究に関する発表や、今後20年の循環器学の展望を見据えた特別企画が盛り込まれていることを説明した。その1つである会長特別企画「日本循環器学会80年の歩み」には、聖路加国際病院名誉院長の日野原 重明氏や歴代理事長らが登壇する。 また、もう1つの節目は震災から5年という点であり、東日本大震災と医療に関する展示なども多数企画されている。この企画展示には、同時期に被災地訪問を計画されている天皇皇后両陛下も訪問される予定とのことだ。そのほか、注目のプログラムの1つとして、世界のトップジャーナル6誌(NEJM、EHJ、Circulation、JACC、ATVB、Circ J) の編集長が一堂に会するセッションも開催される。

355.

ジカウイルスとギラン・バレー症候群の関連、初のエビデンス/Lancet

 ジカウイルスがギラン・バレー症候群を引き起こすという、初となるエビデンス報告が、Lancet誌オンライン版2016年2月29日号で発表された。仏領ポリネシアのタヒチにあるInstitut Louis MalardeのVan-Mai Cao-Lormeau氏らの研究グループが、症例対照研究の結果、報告した。Cao-Lormeau氏は、「ジカウイルス感染症が南北・中央アメリカ中に広がりをみせている。リスクに曝されている国では、ギラン・バレー症候群患者を集中的に治療するための十分なベッドを確保しておく必要がある」と警告を発している。仏領ポリネシアでは2013年10月~14年4月の間に、ジカウイルス感染症の大規模なアウトブレイクを経験。同期間中に、ギラン・バレー症候群の患者が増大したことが報告され、ジカウイルスとの関連が指摘されていた。アウトブレイク中の患者を対象に症例対照研究で関与を検証 研究グループは、ギラン・バレー症候群発症において、ジカウイルス感染症およびデング熱ウイルス感染症が関与しているかを調べる症例対照研究を行った。 症例は、前述したアウトブレイク期間中に、タヒチ島の首都パペーテにあるCentre Hospitalier de Polynesie Francaiseで、ギラン・バレー症候群と診断された患者とした(症例群)。 対照は、年齢・性別・住所でマッチした非発熱性疾患患者(対照群1:98例)、年齢でマッチした急性ジカウイルス感染症患者で神経症状はみられない患者(対照群2:70例)とした。 症例群、対照群の感染ウイルス特定には、RT-PCR法、蛍光抗体マイクロスフェア(microsphere immunofluorescent)法、血清中和アッセイ法などが用いられた。ギラン・バレー症候群の診断では、ELISA法および複合マイクロアッセイを用いて、血清糖脂質抗体の測定が行われた。ギラン・バレー症候群患者98%がジカウイルスIgM/IgG陽性 試験期間中にギラン・バレー症候群と診断された患者は42例であった。そのうち41例(98%)がジカウイルスIgMまたはIgG陽性であった。 症例群の全患者(100%)が、ジカウイルス中和抗体を保有していた。一方、対照群1(98例)における保有者は54例(56%)であった(p<0.0001)。 症例群のうちジカウイルスIgM陽性は39例(93%)で、また、37例(88%)は、神経症状発症の中央値6日(IQR:4~10)前に、ジカウイルス感染症に罹患したことを示唆する一過性の疾患を有していた。 症例群では、電気生理学的検査で軸索型(AMAN)の所見、および急速進行(急速進行初期[installation phase]中央値6[IQR:4~9]日、静止期[plateau phase]中央値4[3~10]日)の所見が認められた。呼吸補助を必要としたのは12例(29%)、死亡例はなかった。 ELISA法による血清糖脂質抗体陽性は、13例(31%)で認められた。そのうちGA1抗体保有者が最も多く8例(19%)の患者で認められた。また、入院時の糖アッセイでは19/41例(46%)が陽性を示した。なお、典型的なAMANに関連する抗糖脂質抗体を有していた患者はまれであった。 デング熱ウイルス感染症歴については、症例群(95%)と、2つの対照群(89%、83%)で有意差はみられなかった。

356.

テロのストレスがもたらす心血管イベント増加:フランス

 2015年1月7日朝に起こった「シャルリー・エブド事件」は、3日間のパリにおけるテロ攻撃の幕開けとなった。その際、地元メディアは、攻撃の詳細な報道に、彼らのプログラムの大部分を割いた。Francesco Della Rosa氏らは、感情的なストレスが心血管関連入院の増加を引き起こすと仮定し、トゥールーズ(フランス)における2015年1月の胸痛ユニットの状況を分析した。Archives of Cardiovascular Diseases Supplements誌2016年1月号の掲載報告。 結果は以下のとおり。・2015年1月は合計346例の患者が胸痛ユニットに来診し、162例が入院あるいは最低1晩滞在、退院は184例であった。・テロ攻撃の3日間(2015年1月7~9日)の入院を要する心血管イベントの1日の罹患数は、2015年1月の他の日に比べ75%上昇した(4.85 vs.8.67、 95%CI:1.44~6.15、p=0.0025)。・翌週の同じ曜日の1日の入院率と比較しても同様の結果が得られた(3.67 vs. 8.67、95%CI:2.38~7.62、p=0.0061)。・テロ攻撃後の3日間では有意な減少が観察された(4.67 vs.8.67、95%CI:1.77~6.23、p=0.0058)。 ・心血管特異的に原因をみると、1月全体と比較してST上昇心筋梗塞は+180%(p=0.029)、非ST上昇心筋梗塞は+60.9%(p=0.014)、症候性不整脈は+71.9%(p=0.027)、心不全は+86.7%(p=0.035)と有意な増加を示した。 このデータは、メディアによるテロ攻撃の集中的な中継など、高ストレスな経験は、心血管イベントでの入院につながる胸痛の重要な受診を誘発することを示した。

357.

脳梗塞急性期には血栓除去術が有益/Lancet

 患者特性などを問わず大半の脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者にベネフィットをもたらす脳血管内治療は、血栓除去術であることが明らかにされた。カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らHERMES共同研究グループが、5つの無作為化試験に参加した全被験者データをメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2016年2月18日号で発表した。著者は、「この結果は、脳主幹動脈梗塞による急性虚血性脳卒中患者へのタイムリーな治療を提供するケアシステム構築において大きな意味を持つだろう」と述べている。5つの無作為化試験の患者データをメタ解析 2015年現在までに、5つの無作為化試験で、脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中(以下、脳梗塞急性期)患者には、血栓除去術が標準的内科治療よりも有効であることが示されている。研究グループは、それら試験に参加した全被験者データを分析し、背景が異なる患者集団全体で治療の有効性が認められるか、メタ解析で調べた。 対象となった試験は、2010年12月~14年12月に行われたMR CLEAN、ESCAPE、REVASCAT、SWIFT PRIME、EXTEND IA。これらの試験では、脳梗塞急性期患者を、発症後12時間以内に血栓除去術を行う群または標準的内科治療(対照)群に無作為に割り付けて、90日時点の障害重症度の軽減を修正Rankinスケール(mRS)で評価(主要アウトカム)する検討が行われていた。 研究グループは、各試験データベースから直接、被験者データを集めて、プール集団で90日時点のmRS評価による障害軽減について評価した。また、その治療効果の不均一性について、事前に規定したサブグループ全体で検証した。 試験間のばらつきは、混合効果モデルと着目したパラメータのランダム効果を用いて補足した。そのうえで、混合効果順序ロジスティック回帰モデルを用いて、全集団における主要アウトカムの共通オッズ比(cOR)を算出した(シフト解析)。また、年齢、性別、ベースライン脳卒中重症度(National Institutes of Health Stroke Scale score)、閉塞部位(内頸動脈 vs.中大脳動脈M1 vs.同M2)、rt-PA静注療法(実施 vs.未実施)、ベースラインのAlberta Stroke Program Early CTスコア、発症から無作為化までの時間で補正後のサブグループ評価も行った。標準的内科治療と比較した90日時点の障害重症度軽減オッズ比は2.49 解析には、1,287例の患者データが組み込まれた(血栓除去群634例、対照群653例)。 血栓除去群は、対照群と比べて90日時点の障害重症度が有意に低かった(補正後cOR:2.49、95%信頼区間[CI]:1.76~3.53、p<0.0001)。NTTを試算すると、血栓除去術2.6例施行につき1例の患者で、mRS評価で1単位以上の障害重症度の軽減が認められた。 主要エンドポイントのサブグループ解析では、事前規定のサブグループ全体で障害重症度軽減への治療効果の不均一性は認められなかった(交互作用p=0.43)。 また、80歳以上の患者(cOR:3.68、95%CI:1.95~6.92)、発症から無作為化までの時間が300分超の患者(1.76、1.05~2.97)、rt-PA静注療法不適の患者(2.43、1.30~4.55)といった注目すべき階層群で、対照よりも血栓除去術の効果サイズが大きかった。 90日時点の死亡率、硬膜下血腫および症候性頭蓋内出血リスクは、治療群間で差はみられなかった。

358.

循環器内科 米国臨床留学記 第6回

第6回:米国で使用されている冠動脈疾患に対する新しい薬 ticagrelor、ranolazine前回に引き続き、日本では未承認ですがアメリカでは処方されている薬を紹介したいと思います。ticagrelor(商品名:Brilinta、日本では2016年2月現在、承認申請中)ticagrelorは、比較的新しいP2Y12受容体拮抗薬です。日本ではチカグレロルと呼ばれていると思いますが、アメリカではタイカグレロールと発音します。ご存じのとおり、日本では長らくチクロピジンしか使用できませんでしたが、その後クロピドグレルが登場し、最近ではプラスグレルも使用されていると思います。ticagrelorは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新しい薬剤です。プロドラッグであるチエノピリジン系(クロピドグレルやプラスグレル)は肝臓で代謝された後、非可逆的にP2Y12受容体を阻害します。一方、ticagrelorは同じ受容体に直接かつ可逆的に作用します。結果として、作用が発現するまでの時間は短くなります。また、可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能も回復します。プラスグレルやticagrelorは血小板機能の抑制作用がクロピドグレルよりも早いため、急性冠症候群(ACS)の患者においては、より早い効果が期待できます。また、クロピドグレルに抵抗性のある患者は2割程度いますが、プラスグレルやticagrelorはその点でも優れています。ACS患者を対象にしたランダマイズド試験であるPLATO試験において、ticagrelorは、クロピドグレルに比べて死亡や心筋梗塞、脳卒中が少ないことが示されました(大出血イベントは同等、バイパス術に関連しない出血は増加)(図1)。表1 12ヵ月の時点での複合一次エンドポイント(心血管イベントによる死亡、心筋梗塞、脳卒中)の発生(PLATO試験) バイパス手術が必要となる3枝病変が予想されるようなACSの患者においては、P2Y12受容体拮抗薬の選択や投与のタイミングは難しい問題です。米国では、日本と比べて診断から手術までの時間が圧倒的に短いため、バイパス術が冠動脈造影の翌日となることも珍しくありません。初期投与(loading dose)だけなら気にされない心臓外科医もいますが、クロピドグレルやプラスグレルは手術を遅らせる原因となります(クロピドグレルやプラスグレルの使用中止後5~7日待つことが勧められている)。また、プラスグレルは、クロピドグレルに比べて、バイパスに関連した大出血イベントが有意に増加する可能性があります(TRITON-TIMI 38試験)。ticagrelorは可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能が回復します。実際、欧州心臓病学会(ESC)からの勧告でも、バイパス前の中止期間は、クロピドグレルとticagrelorでは最低でも3日となっていますが、プラスグレルは5日となっています。この待機時間は、入院費用が高い米国においては大きな問題です。このような背景から、現状では、費用の問題を除けばticagrelorが最も使いやすいP2Y12受容体拮抗薬と考えられています。同様の薬で静注薬であるcangrelorも2015年に認可されています。ranolazine(商品名:Ranexa、日本では未承認)ranolazineは、2006年に承認された慢性狭心症の薬です。2012年のガイドラインでは、β遮断薬に忍容性がないもしくは有効でない患者に、β遮断薬の代わりとしてもしくはβ遮断薬と組み合わせて用いることが、class IIaとして推奨されています。狭心症患者が多い米国では、経皮的冠動脈血行再建術(PCI)によって改善できない慢性狭心症の患者が非常に多く、治療に難渋することがあります。内向きの遅延ナトリウムチャネルを阻害し、心筋内のカルシウムを減らし、心筋の酸素消費を減らすと考えられていますが、詳しい効果の機序は不明です。TERISA試験は、14ヵ国で行われた、2型糖尿病と慢性狭心症を有する患者に対する前向きのプラセボ対照比較試験です。薬剤投与前の観察期間中の狭心症発作は、ranolazine群6.6回/週とプラセボ群で6.8回/週でしたが、薬剤投与開始後2~8週間後では、それぞれ3.8回/週(95% CI:3.57~4.05)と4.3回/週(95% CI:4.01~4.52)で、プラセボ群と比較してranolazine群で有意に減少したという結果でした(図2)。表2 ranolazine投与前後の狭心症状発生回数(TERISA試験) しかし、解釈には注意が必要です。というのも、有意といっても週0.5回というわずかなものでしたし、プラセボでも発作が減っていたのです。個人的には、プラセボ群でも発作が減る、狭心症状は経過とともに頻度が減っていくという結果のほうが、興味深く感じられました。実際には、ranolazineは最後の切り札といった感じで使用しています。なぜなら、前述のような軽度の改善効果に加えて、高価(1錠6ドル)であることもネックになっているからです。大規模で見ると改善効果があるのかもしれませんが、実際の臨床で効果を感じるのは難しい印象です。次回は、米国の心疾患治療で使用されている新しいデバイスについて書きたいと思います。

359.

糖尿病患者へのRAS阻害薬、他の降圧薬より優れるのか?/BMJ

 糖尿病患者へのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用について、他の降圧薬と比べて心血管リスクや末期腎不全リスクへの影響に関して優越性は認められないことを、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが、19の無作為化試験について行ったメタ解析で明らかにした。多くのガイドライン(2015米国糖尿病学会ガイドライン、2013米国高血圧学会/国際高血圧学会ガイドラインなど)で、糖尿病を有する患者に対しRAS阻害薬を第1選択薬として推奨しているが、その根拠となっているのは、20年前に行われたプラセボ対照試験。対照的に、2013 ESH/ESCガイドラインや2014米国合同委員会による高血圧ガイドライン(JNC8)は、近年に行われた他の降圧薬との試験結果を根拠とし、RAS阻害薬と他の降圧薬は同等としている。BMJ誌オンライン版2016年2月11日号掲載の報告。死亡、心血管死、心筋梗塞や末期腎不全などの臨床的アウトカムを比較 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane centralを基に、糖尿病患者を対象とした、RAS阻害薬 vs.その他の降圧薬に関する無作為化試験についてメタ解析を行った。 主要評価項目は、死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、末期腎不全だった。心血管・腎不全の臨床的アウトカムで、RASは他の降圧薬と同等 メタ解析の対象となったのは、19の無作為化試験で、糖尿病被験者総数2万5,414例、延べ追跡期間9万5,910患者年だった。 RAS阻害薬はその他の降圧薬と比較して、全死因死亡(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.93~1.05)、心血管死(同:1.02、同:0.83~1.24)、心筋梗塞(同:0.87、同:0.64~1.18)、狭心症(同:0.80、同:0.58~1.11)、脳卒中(同:1.04、同:0.92~1.17)、心不全(同:0.90、同:0.76~1.07)、血行再建術(同:0.97、同:0.77~1.22)のいずれのエンドポイントのリスクについても同等だった。 また、末期腎不全の臨床アウトカムについても、他の降圧薬との比較で、有意差はなかった(同:0.99、同:0.78~1.28)。 結果を踏まえて著者は、「初見は、ESH/ESCガイドラインやJNC8の推奨を支持するものであった。それらのガイドラインでは、腎障害を有していない糖尿病患者に対しては、いずれの降圧薬も同等に推奨されている」とまとめている。

360.

うつ病患者の予後に影響する生活習慣病

 肥満、メタボリックシンドローム(Mets)、地中海式ダイエットの低い順守率は、うつ病患者で頻繁にみられ、それぞれが予後と関連している。うつ病のアウトカムに対する、これらの要因の6、12ヵ月の予測力を分析するため、スペイン・バレアレス大学のRachel H B Mitchell氏らは、検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月19日号の報告。 273例のうつ病患者から、うつ症状評価のためにベックうつ病評価尺度と14項目の地中海式ダイエット順守スコアを収集した。Metsは、国際糖尿病連合(IDF)の基準に従って診断した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の地中海式ダイエット順守は、抑うつ症状と逆相関していた(p=0.007)。・うつ病への反応は、正常体重の患者(p=0.006)、非Mets患者(p=0.013)で高かったが、地中海式ダイエットの順守率との関連は認められなかった(p=0.625)。・Metsである肥満患者は、Metsでない肥満患者よりもうつ症状の改善傾向が低かった。・肥満やMets(ベースライン時における地中海式ダイエットの低い順守率を除く)は、12ヵ月時点でのうつ病の不良転帰を予測した。 結果を踏まえ、著者らは「肥満や食事よりむしろMetsが、うつ病の予後に対し負の影響を与える重要な要因であることが、本研究で示唆された。このことから、臨床医は、肥満うつ病患者(とくに治療成果が十分でない場合)におけるMets診断と治療について認識しておく必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か MetSリスクの高い抗うつ薬は うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

検索結果 合計:485件 表示位置:341 - 360