サイト内検索|page:13

検索結果 合計:485件 表示位置:241 - 260

241.

若年世代のがん啓発・患者支援チャリティーライブ「Remember Girl’s Power!! 2019」開催

 15歳以下の小児期に発症するがんや、15~39歳のいわゆる“AYA(Adolescent and Young Adult)世代”のがんについての啓発および患者支援を目的としたチャリティーライブ「Remember Girl’s Power!!」が、本年9月に東京で開催される。主催は、がんに関連する治験・臨床試験など情報を発信するwebサイト「オンコロ」で、現在、チケットを一般先行発売中。 チャリティーライブ「Remember Girl’s Power!!」は、39歳までの主に若年世代のがんについて、広く理解と支援を呼びかけることを目的に、2016年から毎年、同世代のがん啓発月間である9月に開催され、今年で4回目。ライブゲストは、自身ががん体験者や啓発活動に積極的なアイドルグループなどで、今回は、麻美ゆまさんや夢見るアドレセンスなど、計7組の女性アーティストのほか、スペシャルゲストとして、「home」などのヒット曲で知られる歌手・木山裕策さんの出演が予定されている。 本チャリティーライブは、9月1日(日)、東京の渋谷ストリームホールで開催される。7月21日(日)まで、チケットぴあにて先行チケット販売中で、27日(土)より一般発売開始。なお、本イベントには、がん体験者は無料招待される。<Remember Girl’s Power!! 2019 概要>日時:2019年9月1日(日) 15:00開場/16:00開演会場:渋谷ストリームホール(東京・渋谷駅16b出口直結)料金:5,500円(税込)  ※すべての参加者に1ドリンク代(500円)が別途必要(3歳以上) ※がん体験者は無料招待。詳細および応募フォームはこちらからRemember Girl’s Power!! 2019公式ホームページ

242.

非左脚ブロックに対するCRT-Dの効果【Dr.河田pick up】

 非左脚ブロックに対する心臓再同期療法(CRT)の有効性については、賛否両論があり、いまだ結論が出ていない。本研究では、米国のナショナルデータベースである、全米心血管データ登録(NCDR)の植込み型除細動器(ICD)レジストリを用いて、非左脚ブロック患者を右脚ブロック群と非特異的心室内伝導障害群に分け、除細動器を伴った心臓再同期ペースメーカー(CRT-D)の有効性を評価した。 この論文は、私(Hiro Kawata)とJonathan Hsu氏らがJournal of the American College of Cardiology誌6月号に発表した。非左脚ブロック患者11,505例を多変量解析 メディケアは主に65歳以上の高齢者を対象とする保険制度である。NCDRは、メディケア対象患者のエビデンスを構築するために作られ、米国心臓病学会(ACC)が管理するNCDRのデータにICD患者の情報を登録することが義務付けられている。この種のデータでは世界でも最大規模である。今回の研究は、そのNCDR-ICDデータベースを用いて、2010年~13年にICDが植込まれた患者のうち、CRTの植込みの適応がある11,505例が対象。ICDが植込まれた患者とCRT-Dが植込まれた患者の予後を、右脚ブロック群と非特異的心室内伝導障害群に分けて多変量解析を行った。右脚ブロック群、QRS幅に関わらず、CRT-D(ICDと比べて)で予後は改善せず このうち右脚ブロック群においては、QRSの長さにかかわらず、ICDと比較しても予後の改善が見られなかった。一方、非特異的心室内伝導障害群においては、QRSが150ms以上の患者で、3年後における死亡率低下との関連が認められた(ハザード比[HR]:0.602、95%信頼区間[CI]:0.416~0.871、p=0.0071)。非特異的心室内伝導障害、QRS≧150ならCRT-Dが有用 今回の研究において、右脚ブロック群では、QRSの長さにかかわらずCRT-DはICDを上回る効果を示すことができなかった。つまり、右脚ブロックへのCRT-D移植を支持するエビデンスはなく、やみくもにCRT-Dを植え込むことは避けるべきであると思われる。一方、非特異的心室内伝導障害を有するケースでは、QRSが150ms以上であればCRT-Dが有用な可能性がある。 右脚ブロックでCRT-D適応が不明確なケースにおいては、最近では行われなくなってはいるものの、心エコーでの同期不全による評価も有用との報告もある1)。現在、非特異的心室内伝導障害に対するCRT-D移植を評価する無作為試験が進行中であり、今後その報告が待たれる2)。1)Hara H,et al.European heart journal. 2012 Nov;33(21);2680-91. doi: 10.1093/eurheartj/ehs013.2)Eschalier R,et al. BMJ open. 2016 11 11;6(11);e012383. doi: 10.1136/bmjopen-2016-012383.(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

243.

ASCO2019レポート 消化器がん(Lower GI)

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで、イリノイ州シカゴにあるMcCormick Placeにて2019 ASCO Annual Meetingが開催された。本稿では、その中から大腸がん関連の演題をいくつか紹介したい。進行再発大腸がんに対する新しい薬剤はここ数年登場しておらず、残念ながら今年のASCOでも、すぐに臨床現場に登場するような新規薬剤の発表はなかった。しかし、臨床家として興味深い演題は多数みられ、そのうちのいくつかを周術期化学療法、進行再発大腸がんに対する化学療法、手術手技のそれぞれに分けて紹介する。周術期化学療法ASCOにおける大腸がんに対する周術期化学療法の発表としては、2017年のIDEA collaborationが記憶に新しい。StageIII結腸がんに対する術後補助化学療法の至適投与期間についての検討である。標準治療であるオキサリプラチン併用レジメ(FOLFOXもしくはCAPOX)の6ヵ月投与に対して、試験治療である3ヵ月投与の非劣性が検証された。試験全体の結果はnegativeであったものの、リスク、治療レジメによる差がみられ、その後の各ガイドラインの記載、日常診療に影響を与えた。#3501:Prospective pooled analysis of four randomized trials investigating duration of adjuvant (adj) oxaliplatin-based therapy (3 vs 6 months {m}) for patients (pts) with high-risk stage II colorectal cancer (CC).IDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)ではStageIIIとともにハイリスクStageII症例も登録されており、その結果が報告された。ハイリスクの因子として挙げられたのは、T4、低分化、不十分なリンパ節郭清、血管・神経浸潤、閉塞、穿孔である。統計学的にはオキサリプラチンの上乗せ効果が60%まで低下することを許容し、非劣性マージンは1.2、80%の検出力で542イベントが必要との仮説であった。ハイリスクStageII症例3,273例が、試験治療である3ヵ月群と標準治療である6ヵ月群に無作為割り付けされ、3ヵ月群では有意に有害事象の低減がみられたものの(p<0.0001)、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は3ヵ月群80.7% vs.6ヵ月群83.9%であり非劣性は証明されず、試験全体としてはnegative studyであった(HR:1.18、80%CI:1.05~1.31、p=0.3851)。レジメと期間ごとの5年DFSはCAPOX 3ヵ月81.7% vs.6ヵ月82.0%、FOLFOX 3ヵ月79.2% vs.6ヵ月86.5%であり、CAPOXにおいてその差は小さい傾向にあった。これらの結果から発表者は、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合、CAPOXなら3ヵ月、FOLFOXなら6ヵ月と結論付けていた。#3504:FOxTROT: an international randomised controlled trial in 1052 patients (pts) evaluating neoadjuvant chemotherapy (NAC) for colon cancer.切除可能大腸がんに対しては術後補助化学療法が標準治療であるが、術前化学療法は切除前に化学療法を行うことにより腫瘍縮小による切除率の向上、微小転移の抑制などが期待される。FoxTROT試験は、切除可能大腸がんにおいて術前化学療法が治療成績を改善するか、を検証した第III相試験である。T3-4、N0-2、M0かつFOLFOX療法、手術が可能と考えられる1,052例が、試験治療である術前化学療法群(FOLFOX 3コース→手術→FOLFOX 9コース:NAC群)、もしくは標準治療である術後補助化学療法群(手術→FOLFOX 12コース:術後治療群)に2:1で無作為割り付けされた。NAC群においてRAS野生型であればパニツムマブの併用が許容された。2点において主治医の裁量での変更が可能であり、治療全体の期間が高齢者や再発リスクの低い症例では全体の投与期間が24週ではなく12週でもよい、FOLFOXの代わりにCAPOXでもよい、という設定であった。術前化学療法は安全に施行され全体として大きな合併症の増加はみられなかった。不完全切除率(R1、R2もしくは非切除)はNAC群4.8%、術後治療群11.1%であり、NAC群において有意に低かった(p=0.0001)。病理組織学的検討では、pT0は4.1% vs.0%、pN0は59.4% vs.48.8%で、いずれもNAC群においてdown stagingが得られていた(p<0.0001)。NACによる病理組織学的効果は59%の症例で確認され、pCRの症例を3.5%認めた。主要評価項目である2年後の再発もしくは腫瘍残存はNAC群13.6%、術後治療群17.2%であり、NAC群において予後良好な傾向を認めたものの有意差を認めなかった(HR:0.75、p=0.08)。NAC群におけるパニツムマブの上乗せ効果は認めなかった(p=0.30)。主要評価項目では統計学的有意差を認めなかったものの、大腸がんに対するNACは新たな概念であり、今後の続報を待ちたい発表であった。進行再発大腸がんに対する化学療法ここ数年のASCOでは免疫チェックポイント阻害剤(Immune Checkpoint Inhibitor: ICI)が大きな話題である。大腸がんにおいてはマイクロサテライト不安定性を認める症例(MSI-high)ではICIの効果が期待されるものの、その割合は大腸がん症例全体の数%にすぎず、大腸がんの多くを占めるMSS症例に対する効果は期待できなかった。#2522:Regorafenib plus nivolumab in patients with advanced gastric (GC) or colorectal cancer (CRC): An open-label, dose-finding, and dose-expansion phase 1b trial (REGONIVO, EPOC1603).制御性T細胞(regulatory T cells:Tregs)や腫瘍関連貪食細胞(tumor-associated macrophages:TAMs)は抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体治療に対する抵抗性に関与すると考えられている。レゴラフェニブは大腸がんにおいていわゆるLate lineで使用される薬剤であるが、血管新生阻害作用や腫瘍関連キナーゼ阻害作用を持ち、TAMsを減らすことが腫瘍モデルにて示されている。本試験は、標準治療に不応・不耐となった進行・再発胃がん、大腸がん症例を対象としたレゴラフェニブとニボルマブの併用療法の第Ib相試験である。主要評価項目は用量制限毒性(DLT)、最大耐用量(MTD)と推奨用量(RD)であり、副次評価項目は奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)であった。レゴラフェニブの1日1回で21日間内服・7日間休薬とニボルマブの3mg/kgを2週ごとに点滴静注を併用する投与スケジュールであった。レゴラフェニブの用量は80mg/day、120mg/day、160mg/dayの3レベルが設定され、低いほうから3例ずつ投与し有害事象がなければ増量していくdose-escalation cohortと、求められたRDで治療を行うexpansion cohortが設定された。胃がん25例、大腸がん25例が登録され、MSI-highは1例(2%)、MSSが49例(98%)であった。レゴラフェニブのdose-escalation cohortにおいて80mg/day、120mg/day、160mg/dayにそれぞれ4例、7例、3例が登録され、160mg/dayのレベルにてGrade3の発疹、蛋白尿、結腸穿孔を認めた。この結果から推奨用量は120mg/dayとなったが、その後Grade3の皮膚症状の頻度が多かったため最終的にレゴラフェニブの用量は80mg/dayとされた。胃がん、大腸がんを合わせた50例全体のORRは40%(95%CI:26~55)、DCRは88%(95%CI:76~96)であった。レゴラフェニブの用量別のORRの検討では、80mgは45%、120mgは36%、160mgは33%であった。大腸がん全体のORRは36%であり、MSSだけに限ると33%であった。胃がんのORRは44%であり全例がMSSであった。全体のPFS中央値は6.3ヵ月であった。消化器がんにおいて今までICIの効果が期待できなかったMSS症例で、レゴラフェニブとの併用においてICIの効果を認めたことは特筆すべきと考える。レゴラフェニブをTregsやTAMsを抑えるために使用するという発想も興味深く、今後の第II相、第III相試験の結果が待たれる。手術手技ASCOは化学療法のみの学会ではなく手術手技、放射線治療、支持療法、緩和ケア、予防、早期発見、医療経済、サバイバーシップなど多岐にわたる発表が行われる。本邦からの大腸がん手術手技に関する演題がPoster Discussion Sessionにおいて発表された。#3515:A randomized controlled trial of the conventional technique versus the no-touch isolation technique for primary tumor resection in patients with colon cancer: Primary analysis of Japan Clinical Oncology Group study JCOG1006.大腸がん手術時に最初に血管の結紮を行うno-touch isolation technique(NTIT)は、手術手技による腫瘍細胞の血行性転移を防ぐことに有効と考えられていたが、大規模な有効性のデータは存在しなかった。JCOG1006はこのNTITの有効性を検証した第III相試験である。主な適格症例は組織学的に確認された大腸がん(回盲部~Rs直腸まで)、T3-4、N0-2、M0などである。症例はconventional technique(CoT:[1]腸管の剥離・授動→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]脈管根部での結紮)もしくはNTIT([1]脈管根部での結紮→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]腸管の剥離・授動)に無作為化された。手術はすべて開腹手術であり、術後病理組織学的にStageIIIと診断された症例はカペシタビンによる術後補助化学療法を受けた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。2011年1月~2015年11月に853例が登録され、CoT 427例、NTIT 426例に無作為化された。3年DFSはCoT 77.3%、NTIT 76.2%であり、NTITの優越性は証明されなかった(HR:1.029、95%CI:0.800~1.324、p=0.59)。3年OSはCoT 94.8%、NTIT 93.4%であった(HR:1.006、95%CI:0.674~1.501)。これらの結果からNTITは術後再発率、生存率に寄与しないと結論付けられた。本試験は結果としてnegative studyであったが、臨床現場のClinical Questionに対してきちんとした第III相試験を立案、実施、解析、発表するその姿勢は素晴らしく、そのことが評価されてのPoster Discussionへの採択であったと感じられた。最後に今年のASCO大腸がん領域の演題からいくつかを紹介したが、上記演題のほかにも進行再発がんに対するTripletレジメや、抗PD-1抗体+抗CTL-4抗体、抗PD-1抗体+放射線治療など、さまざまな興味深い演題の発表があった。ASCO2019のテーマは“Caring for Every Patient, Learning from Every Patient”であり、上記のようなさまざまなエビデンスを理解したうえで、患者一人ひとりから学び、患者一人ひとりに最良の治療、ケアを提供していくことが大切であると考えられた。

244.

症候性AFの第一選択にアブレーション加わる/不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)

 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは2011年改訂の「不整脈非薬物治療ガイドライン」、および2012年発表の「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)で、ガイドライン作成の合同研究班班長である栗田 隆志氏(近畿大学病院 心臓血管センター)、野上 昭彦氏(筑波大学医学医療系 循環器不整脈学)が、植込み型心臓電気デバイス(CIED)とカテーテルアブレーションの主な改訂点についてそれぞれ講演した。ICD適応を日本のエビデンスで裏付け CIEDでは、虚血性の冠動脈疾患および非虚血性心筋症に対する植込み型除細動器(ICD)の適応を、フローチャートの形で整理。ともに考え方や推奨度そのものは、2011年版から大きな変化はない。しかし非虚血性心筋症に対する一次予防では、DANISH試験を含むメタ解析や日本発のエビデンスなど、最新試験結果による推奨度の裏付けがなされた。 栗田氏は、「とくに2つの日本のデータから、非虚血性心筋症の一次予防におけるICD適応の根拠を得ることができたことは大きい。2015年発表のCHART-2試験によって示された、1次予防適応のクラスIならびにクラスIIa相当の患者における致死的不整脈の発生率はこの推奨度を支持する。また、2018年発表のNippon Stormからは、非虚血性の一次予防における適切作動率が、虚血性の二次予防と同程度という結果が得られており、有用性が示されている」と述べた。ESCではQRS幅130ms未満はCRT禁忌、しかし日本では? 心臓再同期療法(CRT)の適応は非常に複雑なため、NYHA心機能分類、薬物治療の施行、LVEF、QRS波形、QRS幅、調律に応じた推奨度を一覧化した表を不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)で初めて掲載している。この中で議論となったのが、CRT 適応とするQRS幅の下限値だ。2013年のEchoCRT試験の結果を受けて、ESC(欧州心臓病学会)の2016年のガイドラインでは、130ms未満はクラスIII(禁忌)となっている。 しかし、日本では120~130msの心筋症患者でもCRTレスポンダーの報告があること、またEchoCRT試験のサブ解析では、左室拡張末期容量(LVEDV)の小さな症例ではCRTの有用性が示されていることなどから、本改訂版では変更なく、下限値を120msとしている。 その他、旧版以降に登場した、リードレスペースメーカ、ヒス束ペーシング、経皮的リード抜去術などの新たな治療法についてもガイドラインでは項目立てされ、エビデンスが整理されている。症候性AFでは、薬物治療とカテーテルアブレーションが第一選択に 野上氏は、まず大前提として甲状腺機能亢進症、肥満、高血圧、糖尿病といった心房細動(AF)のリスク因子の適切な治療なくして、カテーテルアブレーションの施行はないことを強調。そのうえで、症候性AFにおいては、近年発表された3つのRCTやメタ解析でその有用性が示されたことから、抗不整脈薬の投与を経ないカテーテルアブレーションの施行を、抗不整脈薬投与とともに第一選択としてガイドラインでは推奨したと説明した。発作性/持続性AFでは、第一選択としてクラスIIaの推奨度が示されている。長期持続性AFについてはエビデンスが十分ではないが、抗不整脈薬による治療効果が乏しいため、同じくIIbの推奨度がガイドラインでは示されている。 一方、無症候性AFでは、長期予後を改善するというエビデンスは十分ではない。そのため不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では2012年版と変更なく、推奨度はIIbのままとなっている。周術期の抗凝固療法についての改訂点は まず、ワルファリンとダビガトランを投薬中の患者については、休薬なしでAFアブレーションを施行することにクラスI、その他のDOACについてはクラスIIaの推奨度が不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では示された。一方、多くの病院で行われている、DOACの術前1回ないし2回の休薬についても、ABRIDGE-J試験の結果などからIIaの推奨度となっている。 その他、単形性持続性心室頻拍(VT)におけるアミオダロン投与有の患者、右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源の心室期外収縮(PVC)契機の多形性VT・心室細動(VF)に対するアブレーションに、クラスIの推奨度が示されている。■関連記事「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会急性冠症候群ガイドラインの改定点は?/日本循環器学会

245.

がん終末期は減薬を/Cancer

 がん終末期における予防薬の投与はいつまで行われているのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLucas Morin氏らは、高齢の進行がん患者における降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬の継続について調査を行い、これらは死亡前1年間においても処方され、しばしば最後の数週間まで続けられていたことを明らかにした。著者は、「終末期の患者において、予防薬が臨床的有用性を達成する可能性は低い。死期が近づいたころの臨床的有用性が限られた薬剤の負担を減らすため、適切な減薬(deprescribing)戦略が必要である」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年3月25日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンのデータベースを用い、2007~13年に死亡した65歳以上の高齢固形がん患者について、患者が死亡する前1年間における予防薬の毎月の使用と費用を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は15万1,201例(平均年齢81.3歳)で、死亡前1年間において、平均投与薬剤数は6.9剤から10.1剤に増加していた。・降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬は、しばしば死亡月まで継続されていた。・1人当たりの薬剤費(中央値)は、1,482ドル(四分位範囲[IQR]:700~2,896ドル)に達し、そのうち213ドル(IQR:77~490ドル)が予防薬であった。・予防薬の費用は、肺がんで死亡した高齢患者(1人当たりの薬剤費[中央値]:205ドル、IQR:61~523ドル)と比較して、膵がん患者(補正後群間差:13ドル、95%CI:5~22ドル)、婦人科系がん患者(補正後群間差:27ドル、95%CI:18~36ドル)で高かった。・死亡前1年間を通して、予防薬の費用に関して減少は認められなかった。

246.

「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会

 「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」および2011年発表の「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)において、心筋症診療ガイドライン作成の合同研究班班長を務めた北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学)が、その内容について講演した。 同氏は、心筋症診療ガイドラインの本改訂において重視した点として下記3つのポイントを挙げたうえで、心筋症全体の定義と分類、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)の診断・治療について、主な改訂点を解説した。1.これまでの心筋症の分類法を参考にしながら、わが国の診療実態に即した心筋症の新しい定義の作成2.HCMは、EBMの十分でない疾患であるため、ACCF/AHA、ESCのガイドラインを参考に、わが国より発信されたエビデンスを盛り込みながら、診療現場での実際の意思決定に有用であること3.DCMにおける病因解明の進歩を折り込み、本症が左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の代表的な疾患であることより、急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参照した最新の診療・治療方針を明示すること心筋症診療ガイドラインでは心筋症を4つの基本病態に整理 心筋症の分類としては、米国心臓協会(AHA)の病因による分類(2006年発表)、欧州心臓病学会(ESC)の形態による分類(2008年発表)が知られる。心筋症診療ガイドラインでは、従来通り形態や機能から心筋症を診断する。その際には、“常に病因としての遺伝性/非遺伝性を意識し、心アミロイドーシスやファブリー病など二次性心筋症を鑑別したうえで確定されるべきである”とされた。 原発性(特発性)心筋症としての病名を、肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性右室心筋症、拘束型心筋症の4つに分類している。さらに“これらの病型にOverlapがあることを明示した”ことも重要なポイントである。新ガイドラインでは肥大型心筋症は安静時に圧較差がなくても負荷をかけて心エコー推奨 肥大型心筋症については、近年の報告から「左室壁15mm(家族歴がある場合は13 mm)以上の心肥大」と診断上の定義を心筋症診療ガイドラインでは明記。そして閉塞性肥大型心筋症(HOCM)については、安静時に圧較差がある症例に加えて、負荷によって30mmHg以上の圧較差を認める場合もHOCMとして定義している。北岡氏は、「従来、HOCMは安静時の圧較差30mmHg以上と提唱されてきた。しかしこの10年ほどで、安静時には圧較差が認められなくても、負荷をかけると認められる症例が多く存在し、HCM全体の7割程度で、圧較差が病態と関係するということが分かってきた」とその背景を解説した。HCMと確定診断された患者では、バルサルバ手技などによる負荷を、心エコー検査中に行うことを推奨している。 そのほか新たな心筋症診療ガイドラインでは、MRIは形態学的評価だけでなく、二次性心筋症との鑑別あるいは予後予測において、最も推奨度の高いクラスIに変更された。心筋生検については、MRIの進歩などによりルーチンでの実施は不要と位置付けられている。「ただし、決して心筋生検の重要性が後退したということではなく、不明の場合の最終検査としては非常に重要」と同氏は補足。また、遺伝子診断についての推奨度が2012年版から大きく再整理・変更されていることも説明された。肥大型心筋症の突然死予防にガイドラインでICD植込み適応をフローチャート化 肥大型心筋症の薬物治療については、従来通りで新ガイドラインに大きな変更はない。突然死予防は、ICD植込み適応の考え方が再整理された。2012年度版から5つの主要リスク因子および修飾因子を一部変更。これまで重みづけされていなかった各主要リスク因子についてエビデンスを基に重みづけし、フローチャートの形でICD植込み適応の推奨度を示した。 そのほか、圧較差と不整脈に対する治療法は、近年の知見を盛り込んだ形に一部変更されている。不整脈については、心房細動患者に対する抗凝固療法にクラスIの推奨度とエビデンスレベルが記された。エビデンスの充実からワルファリン使用の推奨が明記され、DOACについても「有用性が期待される」という形で新たに記載された。抗がん剤によるリスクを整理、またクラスIの推奨となった遺伝子検査も(DCM) 新たな心筋症診療ガイドラインでは、DCMの定義に大きな変更はないが、近年左室機能障害を引き起こす重要な原因として指摘されている抗がん剤について、報告されている発症率とともに一覧化された表が初めて掲載された。 検査に関しては、HCM同様二次性心筋症との鑑別や予後予測においてもMRIによる評価に推奨度が記載された。「ただし、HCMほどデータが十分ではないという判断から、クラスIIaの推奨度となっている」と同氏は話した。心筋生検の位置づけはHCMと同様となっている。 DCMにおける遺伝子検査については、「40以上ある原因遺伝子の中で、特にタイチンとラミンについては検査に臨床的意義があると判断された」と述べ、タイチンにIIa、ラミンにIの推奨度が記載されている。MitraClipの COAPT試験の結果を反映 DCMの治療に関しては、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」に基づく内容となっている。加えて、その後の知見としてMitraClipの COAPT試験の結果も反映された。 また、ラミンA/C変異を有する患者は予後が悪いことが、日本人を対象とした試験でも報告されている。そのため、新たな心筋症診療ガイドラインでは“提言”の形で、ESCあるいはAHA/ACC/HRSガイドラインにおけるICD植込み適応(リスク因子と推奨度)を紹介している。

247.

ACC/AHAガイドライン、ESCガイドラインのエビデンスレベルは?/JAMA

 主要な心臓血管関連学会のガイドラインでは、複数の無作為化臨床試験(RCT)または単一の大規模RCTのエビデンスによって支持される推奨の割合はきわめて低く、このパターンは、2008~18年の改訂でも意義のある改善はなされていないことが、米国・デューク大学のAlexander C. Fanaroff氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2019年3月19日号に掲載された。臨床決定は、臨床転帰を評価した複数のRCTによるエビデンスに基づくのが理想だが、歴史的には、この種のエビデンスに完全に基づく臨床ガイドラインの推奨はほとんどないという。ACC/AHAガイドラインおよびESCガイドラインの現行と旧版を調査 研究グループは、現行の主要な心臓血管関連学会のガイドラインの推奨を支持するエビデンスのクラス(I~III)とレベル(LOE、A~C)について解析し、経時的なLOEの割合の変化を調査した。 学会のウェブサイトで同定された現行の米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)および欧州心臓病学会(ESC)の臨床ガイドライン(2008~18年)と、現行のガイドラインが参照した直近の旧版(1999~2014年)のガイドラインを調査の対象とした。 各ガイドラインについて、推奨の数とLOEの分布を検討した(LOE A:複数のRCTまたは単一の大規模RCTのデータによって支持されている、LOE B:観察研究または単一のRCTのデータで支持されている、LOE C:専門家の意見のみ)。主要評価項目は、LOE Aのエビデンスで支持されている推奨の割合とした。LOE A推奨の割合はACC/AHAガイドライン 8.5%、ESCガイドライン 14.2% 現行の26のACC/AHAガイドラインには、推奨が2,930件(1つのガイドライン当たりの中央値121件[四分位範囲:76~155])含まれた。そのうち、248件(8.5%)の推奨がLOE Aに分類され、1,465件(50.0%)がLOE B、1,217件(41.5%)はLOE Cであった。LOE A推奨の割合の中央値は7.9%(四分位範囲:0.9~15.2%)だった。 一方、現行の25のESCガイドラインには推奨が3,399件(1つのガイドライン当たりの中央値130件[四分位範囲:111~154])掲載されていた。484件(14.2%)の推奨がLOE Aに分類され、1,053件(31.0%)がLOE B、1,862件(54.8%)はLOE Cであった。 現行ガイドラインを旧版と比較すると、LOE Aの推奨の割合の中央値は、ACC/AHAガイドライン(現行9.0% vs.旧版11.7%)およびESCガイドライン(15.1% vs.17.6%)のいずれもが、増加していなかった。 下位専門分野別の解析では、LOE A推奨の割合は冠動脈疾患が最も高く、先天性心疾患/心臓弁膜症が最も低かった。また、先天性心疾患/心臓弁膜症を除き、LOE A推奨の割合は、ESCガイドラインがACC/AHAガイドラインよりも高かった。 著者は、「今回の結果は、過去10年にわたる臨床試験の簡略化と促進に向けた努力が、RCTによってより良く支持されたエビデンスに基づく推奨へと転換されていないことを示している」と指摘している。

248.

学会でツイッター活用、日循の取り組みはどこまでバズったか?

 2019年3月29日から31日まで開催された第83回 日本循環器学会学術集会において、同学会は、日本国内の医学系学会では初めて、学術集会中の発表内容をツイッター上で公開した。 #19JCSのハッシュタグを付けて投稿されたツイート総数は、リツイートも含み、約8,000。公式アカウント@JCIRC_IPRのインプレッション数は期間中だけで77万を超え、フォロワーが約2,000人から4,000人強へ倍増した。 投稿内容は、一般演題を除くシンポジウムをはじめとした講演の全演者の9割・330名以上から事前に撮影の許諾を得た、スライド写真や文字によるサマリ、発表後のインタビュー動画。スライド写真のツイートを行ったのは、同学会情報広報部会および事前に承諾を得た公式サポーターの学会員約20名。公式サポーターは医師を筆頭とした循環器診療に関わる医療者だ。 今回の結果について、同情報広報部会は「予想よりもスムーズだった」と評している。演題の9割をカバーし、同部会と公式サポーターによる専門的見地からコメントを付けた投稿も中には含まれたことで、批判的吟味を含めた議論の土壌を作れたからだ。 また、学術集会初日に合わせて「日本循環器学会ツイッター利用指針」を国内医学系学会で初めて公開し、公式な学会活動としてコンプライアンス体制を整えてツイッターを活用したことも今後につながる成果だ。 一方、今後の課題は学会員へのツイッター活用の普及にある。専門家による適切な医療情報の提供、議論がより多くなされることでより質の高い情報発信が可能となるからだ。 公式アカウントのフォロワーが、学術集会中に2,000人以上増えた結果を踏まえ、今後もメリットが周知されればツイッターを活用する学会員の増加を期待できると同部会は考えている。 この取り組みはほかの診療科へも波及している。#19JCSでのツイートを見ると、救急や整形外科、精神科などの医師がこの活動に共感し、所属学会に問い合わせをしている様子が伺える。 膨大な数の演題が登録される学術集会において、興味があるテーマのすべてを聞くことは不可能だが、SNSは物理的制約を乗り越えて知見を広げる助けになる。またリアルタイムでの専門医・医療関連者同士のディスカッションがSNSを通じて活発になれば、研究・臨床・教育の質向上にも寄与する可能性も広がる。 海外では、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)のように活発にSNSを使用する学会もあれば、米国糖尿病学会(ADA)のように否定的な立場をとる学会もある。 SNSをどう使うかは学会によって異なる見解があると予想されるが、今回の日本循環器学会の取り組みが国内学術集会におけるSNS活用の在り方に影響を与えることは間違いなさそうだ。■リンク日本循環器学会情報広報部会@JCIRC_IPRハッシュタグ #19JCS■参考文献米国主要循環器系学会で2014年から2016年にかけて急速に進んだSNS活用の現状2018年欧州心臓病学会学術集会でのツイッター活用

249.

β遮断薬長期投与、肝硬変の代償不全を予防/Lancet

 代償性肝硬変および臨床的に重要な門脈圧亢進症(CSPH)の患者では、β遮断薬の長期投与により代償不全(腹水、胃腸出血、脳症)のない生存が改善されることが、スペイン・バルセロナ自治大学のCandid Villanueva氏らが実施したPREDESCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年3月22日号に掲載された。肝硬変における臨床的な代償不全は予後不良とされる。CSPHは、肝静脈圧較差(HVPG)≧10mmHgで定義され、代償不全の最も強力な予測因子だという。代償不全/死亡をプラセボと比較 本研究は、β遮断薬によるHVPG低下が、CSPHを伴う代償性肝硬変における代償不全や死亡のリスクを低減するかを検証する研究者主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験である(Spanish Ministries of Health and Economyの助成による)。 高リスクの静脈瘤のない代償性肝硬変およびCSPHで、HVPG≧10mmHgの患者(年齢18~80歳)を登録し、プロプラノロール静脈内投与によるHVPGの急性反応を評価した。レスポンダー(HVPGがベースラインから>10%低下)は、プロプラノロール(40~160mg、1日2回)またはプラセボを投与する群に、非レスポンダーはカルベジロール(≦25mg/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、肝硬変の代償不全(腹水、門脈圧亢進症関連の胃腸出血、顕性肝性脳症の発現と定義)または死亡とした。代償性肝硬変では、代償不全が発症する前の死亡は、ほとんどが肝臓とは関連がないため、肝臓非関連死を競合イベントとしたintention-to-treat解析が行われた。主要エンドポイント:16% vs.27%、腹水の発生低下が主要因 2010年1月~2013年7月の期間に、スペインの8施設で201例が登録され、β遮断薬群に100例(平均年齢60歳、男性59%、プロプラノロール67例、カルベジロール33例)、プラセボ群には101例(59歳、63%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は37ヵ月だった。 主要エンドポイントの発生率は、β遮断薬群が16%(16/100例)と、プラセボ群の27%(27/101例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.26~0.97、p=0.041)。 この両群の差は、β遮断薬群で腹水の発生が少なかったためであり(9% vs.20%、0.42、0.19~0.92、p=0.0297)、胃腸出血(4% vs.3%、1.52、0.34~6.82、p=0.61)および顕性肝性脳症(4% vs.5%、0.92、0.40~2.21、p=0.98)には差はみられなかった。 全体の有害事象の発生は、両群でほぼ同等であった(β遮断薬群84% vs.プラセボ群87%)。治療に関連する可能性があると判定された有害事象は、それぞれ39%、30%、その可能性が高いと判定された有害事象は16%、15%であった。6例に重度の有害事象が認められ、β遮断薬群が4例、プラセボ群は2例だった。 著者は、「この非選択的β遮断薬の新たな適応は、患者転帰の改善や医療費の抑制に多大な効果をもたらし、今後、臨床ガイドラインに影響を及ぼす可能性がある」としている。

250.

第16回 心臓の“しゃっくり”とは何ぞや?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第16回:心臓の“しゃっくり”とは何ぞや?正常ならほぼ規則正しい心臓の収縮も、時には乱れます。今回は、単発で生じる不整脈として最も多い「期外収縮」を取り上げ、基本的な用語や心電図の見方についてDr.ヒロがレクチャーします。症例提示71歳、女性。高血圧で加療中。不定期の動悸とめまいの訴えがあるため、ホルター心電図検査が行われた。総心拍数:8.1万/日(35~92/分)、期外収縮:2,900回/日、ポーズ(2秒以上):440回/日。心房細動・粗動なし。この患者の心電図(拡大波形)を抜粋して以下に示す(図1)。(図1)ホルター心電図画像を拡大する【問題1】AおよびBの心電図に色帯で示した波形の名称を答えよ。解答はこちらA:(心房)期外収縮B:(房室接合部)補充収縮解説はこちら上段Aと下段B、どちらも途中まではP-QRS-Tのリズムがレギュラー(整)に続いていますね。Dr.ヒロは安定したP-QRS-Tの連続を各波形の頭文字をとって“ピクット”と呼んでいます(Pの“ピ”,Qが“クッ”で、Tは“ト”ってこと)。心臓が収縮しているイメージにも良く合ってますでしょ? でも、安定なはずの“ピクット”がAの6拍目、Bの4拍目でグラついています。ともに、本来予想される心拍の出現タイミングからズレており、多くの人が「期外収縮」の診断を真っ先に思いつくのではないでしょうか?ここでは、それが正しいかどうかを問うています。今回は最も基本的な不整脈として、単発のものを扱いましょう。本問では、珍しくホルター心電図を題材にしています。これまでの12誘導とは違い、不整脈を中心にチェックする心電図なだけで、基本的な読みは変わりません。このように多くのホルター心電図は2段構えの構成で、上段(ch.1:チャンネル1)が12誘導のV5誘導、下段(ch.2)はV1ないしaVF誘導に類した波形を呈します。どちらを見てもいいですが、不整脈の解析に重要なP波が見やすいのはch.2であることが多いので、抜き出して説明しましょう(図2)。(図2)ch.2(NASA誘導)のみ抜粋画像を拡大するP-QRS-Tの“ピクット”の等間隔性を意識してビヨーンと図中にR-R間隔を弧線で表現しました。正常な洞調律が続いた場合、Aの6拍目、Bの4拍目のQRS波が来るべき本来の場所を点線で示しました。そうすると、AとBとで違いに気づきますよね?そう、まずAでは想定よりも“早い”タイミングでQRS波(▼)が出現しており、これが「期外収縮」です。「早期収縮」という別称のほうが意味はとりやすいですが、市民権を得ているのは前者です。英語の教科書でも、premature beat/contraction/systole/complexextrasystoleectopic beatなどの言い方が紹介*されています。(*:日本循環器学会編.循環器学用語集、Wagner GS, et al. Marriott Practical Electrocardiography 12th ed. Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkins;2014.p.314.)この女性の動悸の原因はコレで、1日に約3,000回、Aと同様の(心房)期外収縮が出ていました。Dr.ヒロは“心臓のしゃっくり”とか“心臓がスキップしているみたい”(skipped beatと、ある外国人の患者さんが言っていたっけ)と説明していますが、皆さんなら何と説明しますか?では、もう一方のBは何でしょう…こちらも想定されるタイミングからズレている点はAと同じですが、こちらのQRS波(▼)は“遅ればせ”な感じがします。油断すると、これも「期外収縮」と言ってしまいそうですが、正しくは「補充収縮」と言うんです。英語表現はescape beat。せっかちで落ち着きがない“しゃっくり”のような期外収縮が動悸の原因となる一方、“遅刻”を思わせる負のイメージとは裏腹に、補充収縮はありがたい“安全網”、セーフティ・ネットなんです。これがなければ、心臓はしばらく止まってしまうわけですから…非常にありがたいワケ。実は、Bでは色帯(3拍目)に続く4拍目のビートも本来の洞収縮のタイミングからは遅れています。つまり、これも「補充収縮」なんです。このように2回以上連続で補充収縮が見られる時には、定義上は「補充調律」が見られたという表現が正しいです。勘のいい方は、途中からP波がしばらく出ていないことに気づいたでしょうか(最後の6拍目の直前にようやくP波があります)。よって、この女性のめまいの原因は、洞(結節)機能低下、すなわち「洞不全症候群」ということがわかります。では、期外収縮に関して、もう一問いきましょう。症例提示85歳、男性。慢性腎臓病(CKD)、高尿酸血症で通院中。脳梗塞の既往あり、頸動脈ステント留置術後。起床時の胸部苦悶感、息苦しさを主訴に救急受診した。脈拍75/分、血圧152/79mmHg、酸素飽和度99%、下腿浮腫あり。Hb:7.7g/dL、BUN:47.7mg/dL、CRE:5.31mg/dL、K:5.5mEq/L。心電図(図3)を以下に示す。(図3)救急外来時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図3)の所見として誤っているものを2つ選べ。1)洞調律2)左軸偏位3)心房細動4)心室期外収縮5)完全左脚ブロック解答はこちら1)、5)解説はこちらいつも通りの“レーサー・チェック”です(第1回)。R-R間隔は不整で心拍数66/分(検脈法:10秒)、洞性P波はどうでしょう?「不整脈」がありそうですが…。1)☓:期外収縮らしきQRS波を除いた部分ではR-R間隔が整に見えます。ただ、それは“まやかし”です。根拠なきサイナス宣言はDr.ヒロ的には大罪です! “イチニエフの法則”で確認すると、洞性P波はないので自信を持って“非洞調律”と言えます。2)◯:QRS電気軸の定性的評価では、IとaVF(II)誘導でQRS波の向きに着目します(第8回)。I:上向き、aVF(II):下向きは「左軸偏位」、これでオッケーです。偏位角度は“トントン法Neo”で「-60°」となります。3)◯:「不整脈」かなと思いつつ診断に悩むなら、まずは長めに心電図を記録することから始めて下さい。情報が増えるほうが診断しやすいので、アタリマエのように思えて実はコレが“金言”なんです(笑)。以下に別の時間帯にとった12誘導心電図を示します(図4)。(図4)別の時間帯のII誘導・V1誘導(非同時[連続]記録)画像を拡大するII誘導では判然としませんが、V1誘導の3~4拍目のR-R間隔が空いた部分に、わずかな“さざ波”が見つけられたらアナタの勝ち。これがf波(細動波)ですよね。R-R不整とあわせて「心房細動(AF)」が正解です(第4回)。しかも、f波(細動波)が1mmに満たない場合はとくに「ファイン心房細動」と呼ばれます(fineは微細な、かすかなの意)。4)◯:図3では、2種類のQRS波が確認できます。普通は幅広くいびつなQRS-T波形のほうが(心室)期外収縮です。5)☓:QRS幅がワイドで特徴的なV1波形(rSR'型)、イチエルゴロク(I、aVL、Ⅴ5、V6)の側壁誘導でS波が目立つので(スラーという)、完全「右脚」ブロックであれば○でした。期外収縮のほうは「左脚」ブロックに似た形をしていますが、波形診断は房室伝導したQRS波形で行います。CKD stage5の高齢男性の症例です。胸部症状の原因は、溢水・尿毒症をはじめ、心不全や虚血性心疾患、不整脈など複数が考えられると思います。ほかに高カリウム血症も要注意です。Dr.ヒロの当セミナーでは、心電図を中心に解説しますが、実臨床では病歴、血液検査、胸部X線、心エコーなどの結果とともに総合的に判断して下さいね。ベースがR-R不整の場合にも「期外収縮」は出るんです。問題1のように洞調律だったら、先行R-R間隔よりも早いタイミングであることをもって診断できますが、今回のようにAFの場合はそうはいきません。“派手”な印象のQRS波形があれば、多くはそちらが「心室期外収縮:PVC」でしょう。これは、QRS幅がワイドになるのに加えて、T波もQRS波と向きが反転して大きく目立つ性質があるためです。肢誘導に着目すると、3拍目と5拍目がPVC、胸部誘導なら2拍目と5拍目がそうなりますね。もちろん、以前の(期外収縮が [少] ない)心電図を用意して、今回の波形と比べて房室結節を経由した正規のQRS波を認識し、もしもそれがなければ、少し長めに記録してメイン“じゃない”かつ”派手”な波形が PVCと考えてもOKでしょう。もちろん、まれに例外もあります。最後の最後にちょっとだけややこしい話を…。AFで見られる”派手”でおかしなQRS波形がすべて「期外収縮」、すなわちPVCの”一択”なら話はカンタンですよね?でも、実際には違うんです。もちろん、心房が高頻度で興奮するAFだと「心房期外収縮:PAC」は原理的にありえません。房室結節を過ぎた後、心室に入ってからの電気の進み方が通常と変わってしまう場合に平常とは異なるPVC類似のQRS波形を呈することがあるのです。これは「(心室内)変行伝導」と呼ばれる現象です(聞いたことない、難しいなと感じたら、今回は名前だけでも覚えましょう)。以上のことから考えられる今回の心電図診断をまとめます。心電図診断ファイン心房細動心室期外収縮(頻発性)完全右脚ブロック左軸偏位(左脚前枝ブロック疑い)時計回転このケースは心房では”痙攣”(AF)が続いていて、心室では頻繁に“しゃっくり”(PVC)が起こるややこしい方ということになりました。付随所見も多く、背景に心疾患もありそうな心電図だと思います。今回は、「期外収縮」をテーマに、ごく基本的な話をしました。紛らわしい「補充収縮」や基本調律がAFの場合なども扱いました。良く復習しておきましょうね!Take-home Message1)先行R-R間隔から想定されるタイミングよりも早期に出現するのが「期外収縮」の基本概念2)「補充収縮」を間違って「期外収縮」と言うなかれ3)不整脈の診断に迷ったら、まずは長く記録して判断材料を増やすべし【古都のこと~北野天満宮~】弥生の京都、桜の季節になる前に行っておきたいのは上京区にある北野天満宮です。2月下旬から約1ヵ月間、“見事”の一言に尽きる梅苑が公開されています。曇り空の朝、懐かしい景色の広がる北門から入ると、境内の随所で梅の木が香りを放っており、なかでも本殿前の「飛梅」は見事でした。“学問の神様”でもある菅原道真公が鎮座するこの神社は、受験生や修学旅行生の定番スポット。スマホ片手の制服姿の集団で賑わい始めた頃、桐箱の御守を手に“天神さん”を後にしたのでした。

251.

低リスク大動脈弁狭窄症にバルーン拡張型弁のTAVRは有効か/NEJM

 手術死のリスクが低い重度の大動脈弁狭窄症患者の治療において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は外科的大動脈弁置換術と比較して、1年時の死亡を含む複合エンドポイントが良好であることが、米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが実施したPARTNER 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月16日号に掲載された。手術死のリスクが中等度~高度な患者では、これら2つの手技の主要アウトカムは同等とされるが、低リスク例におけるエビデンスは十分でないという。5ヵ国71施設が参加、非劣性を検証する無作為化試験 本研究は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の71施設が参加した多施設共同無作為化試験であり、2016年3月~2017年10月に患者登録が行われた(Edwards Lifesciencesの助成による)。 対象は、重度の石灰化大動脈弁狭窄症を有し、臨床的および解剖学的評価で手術死のリスクが低いと判定された患者であった。被験者は、経大腿動脈アプローチでバルーン拡張型大動脈弁を留置する群(TAVR群)または外科的大動脈弁置換術を行う群(手術群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、術後1年時の死亡、脳卒中、再入院の複合とした。事前に規定された非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の上限6ポイント)を下回っている場合に非劣性と判定された。主要複合エンドポイント:8.5% vs.15.1%、優越性も確認 1,000例が登録され、950例(TAVR群496例、手術群454例)がas-treated集団に含まれた。ベースラインの全体の平均年齢は73歳、69.3%が男性で、米国胸部外科学会の予測死亡リスク(STS-PROM、0~100%、スコアが高いほど術後30日以内の死亡リスクが高い)の平均スコアは1.9%だった。 1年時の主要複合エンドポイントの発生率は、TAVR群が手術群に比べ有意に低く(8.5% vs.15.1%、絶対差:-6.6ポイント、95%CI:-10.8~-2.5)、95%CI上限が非劣性マージン6ポイントを下回ったため、TAVR群の手術群に対する非劣性が示された(非劣性:p<0.001)。ハザード比(HR)は0.54(95%CI:0.37~0.79、優越性:p=0.001)で、TAVR群の優越性も示された。 術後30日の時点で、TAVR群は手術群に比べ、脳卒中(0.6% vs.2.4%、HR:0.25、95%CI:0.07~0.88、p=0.02)、死亡または脳卒中の複合エンドポイント(1.0% vs.3.3%、HR:0.30、95%CI:0.11~0.83、p=0.01)、心房細動の新規発症(5.0% vs.39.5%、HR:0.10、95%CI:0.06~0.16、p<0.001)が有意に低かった。 また、TAVR群は、初回入院期間中央値が短く(3日vs.7日、p<0.001)、30日の時点の不良な治療アウトカム(死亡またはKansas City Cardiomyopathy Questionnaire[KCCQ]スコアが低値)の割合が低かった(3.9% vs.30.6%、p<0.001)。 安全性については、両群間で、重大な血管合併症、新規の恒久的ペースメーカー植え込み、中等度~重度の弁周囲逆流の発生率に有意な差はみられなかった。また、1年時の新規左脚ブロックの発生率はTAVR群のほうが高かった(23.7% vs.8.0%、HR:3.43、95%CI:2.32~5.08)が、生命に関わる出血や大出血の発生率は低かった(3.6% vs.24.5%、HR:0.12、95%CI:0.07~0.21)。 著者は、「今回は、1年という短い期間の結果であり、長期的な弁の構造的劣化の問題は評価していない。手術と比較したTAVRの利益と不利益に関する明確な結論を得るには長期のフォローアップを要し、本試験では少なくとも10年は臨床検査と心エコー検査を継続する予定である」としている。

252.

JCS2019で日循公式ツイッターが全力発信 #19JCSでタグ付けを

 2019年3月29~31日にパシフィコ横浜にて開催される、第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)において、日本循環器学会 情報広報部会は、公式ツイッターアカウントを活用した情報発信を行うと発表した。 欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)などの海外の主要な学会では、SNS上でタイムリーな情報発信が行われ、多くの人が最新の医学知識に触れて、勉強・議論できる体制が整えられている。日本の学会における情報発信の先駆けとして、JCS2019にて行われる発表内容をツイッター上でオープンに発信していくのが今回の試みだ。 発信内容は、JCS2019において登壇者から許諾を得た発表のスライド等の画像や、セッション終了後の座長や演者のインタビュー動画。 発信元は、日本循環器学会の公式ツイッターアカウントである、日本循環器学会 情報広報部会@JCIRC_IPR。ツイートにハッシュタグ #19JCS を付けて発信する。 ツイッター投稿を目的とした講演中の撮影は同情報広報部会および事前に決定した協力者に限られるが、参加者が自身の感想や意見を積極的に投稿することを学会として推奨している。 ハッシュタグ #19JCS では、公式アカウントからのツイート以外の関連情報もカバーすることも可能だ。学会でのSNS活用は、日本ではまだ珍しい。この機会に学術活動の一助としてツイッターを活用してみてはどうだろうか。第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)会  長  : 小室 一成(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)会  場  : パシフィコ横浜        (神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)会  期  : 2019年3月29日(金)~31日(日)メインテーマ: 循環器病学Renaissance-未来医療への処方箋公式ツイッター(日本循環器学会 情報広報部会)@JCIRC_IPRハッシュタグ #19JCS■関連記事Dr.倉原の“おどろき”医学論文 第109回 Twitterでカンファレンスする時代?

253.

初回エピソード統合失調症患者における長時間作用型パリペリドンパルミチン酸の有効性と忍容性

 クロアチア・Clinical Hospital Centre RijekaのDaniela Petric氏らは、思春期の初回エピソード統合失調症患者に対する長時間作用型パリペリドンパルミチン酸の有効性および忍容性について、経口抗精神病薬リスペリドンとの比較検討を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2019年2月13日号の報告。 思春期の初回エピソード統合失調症患者を対象に、治療開始12ヵ月間におけるパリペリドンとリスペリドンの有効性および忍容性を比較するため、レトロスペクティブ研究が実施された。データには、一般的な人口統計学的特徴、入院回数、副作用および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、臨床全般印象度(CGI-I、CGI-S)、治療満足度アンケート(TSQM)の結果を含めた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月の研究期間中、パリペリドン群およびリスペリドン群においてPANSS、PSP、CGI-I、CGI-Sの有意な改善が認められた。・パリペリドン群は、リスペリドン群と比較し、PANSS、CGI-S、PSPの有意な改善が認められた。・リスペリドン群は、パリペリドン群と比較し、入院回数が有意に多かった。・パリペリドン群のTSQMでは、便宜尺度、全体満足度、全体的な結果においてより高いスコアを達成したが、有効性尺度に差は認められなかった。・報告された副作用は、パリペリドン群で高プロラクチン血症5.5%、体重増加5.5%、リスペリドン群ではそれぞれ5.5%、16.7%であった。 著者らは「パリペリドンは、思春期の初回エピソード統合失調症患者に対し有効かつ安全な薬剤であると考えられる。さらに、リスペリドンと比較し、臨床反応、副作用、入院回数に対し好影響をもたらすであろう」としている。■関連記事急性期統合失調症に対するパリペリドンの6週間オープン試験パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果統合失調症におけるパリペリドンパルミチン酸とリスペリドンの持効性注射剤の比較

254.

高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。投与開始時期と血流感染症、入院、死亡との関連を評価 研究グループは、イングランドにおける高齢UTI患者への抗菌薬治療と重度有害アウトカムとの関連の評価を目的に、住民ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 英国のClinical Practice Research Datalink(2007~15年)のプライマリケアのデータを、イングランドの全入院情報を含むhospital episode statisticsおよび死亡記録と関連付けた。2007年11月1日~2015年5月31日の期間に、プライマリケア医を受診し、下部UTI疑い、または確定診断が1回以上なされた65歳以上の患者15万7,264例が解析の対象となった。 主要アウトカムは、UTIのインデックス診断日から60日以内の血流感染症、入院ならびに平均入院期間、全死因死亡率とした。抗菌薬の即時投与(初回UTI診断時または同日)、待機的投与(初回UTI診断から7日以内)、非投与の患者に分けて比較した。とくに85歳以上の男性患者でリスクが高い 全体の平均年齢は76.7(SD 9.2)歳で、22.1%が85歳以上、78.8%が女性であった。UTIエピソード31万2,896件(15万7,264例)のうち、7.2%(2万2,534件)で抗菌薬処方の記録がなく、6.2%(1万9,292件)では遅延投与の処方が記録されていた。 初診時に処方された抗菌薬(27万1,070件)は、トリメトプリム(54.7%)が最も多く、次いでnitrofurantoin(19.1%)、セファロスポリン系(11.5%)、アモキシシリン/クラブラン酸(9.5%)、キノロン系(4.4%)の順であった。 初回UTI診断から60日以内に、1,539件(0.5%)の血流感染症エピソードが記録されていた。血流感染症の発症率は、初診時に抗菌薬が処方された患者の0.2%に比べ、初診から7日以内の再診時に処方された患者は2.2%、処方されなかった患者は2.9%であり、いずれも有意に高率だった(p=0.001)。 主な共変量で補正すると、抗菌薬の即時投与群と比較して、待機的投与群(補正後オッズ比[OR]:7.12、95%信頼区間[CI]:6.22~8.14)および非投与群(8.08、7.12~9.16)は、いずれも血流感染症を経験する可能性が有意に高かった。 また、抗菌薬即時投与群と比較した血流感染症の有害必要数(number needed to harm:NNH)は、非投与群が37例と、待機的投与群の51例よりも少なく、非投与のリスクがより高いことが示された。これは、抗菌薬即時投与群では発症しないと予測される血流感染症が、非投与群では37例に1例、待機的投与群では51例に1例の割合で発症することを意味する。 入院の割合は、待機的投与群が26.8%、非投与群は27.0%と、いずれも即時投与群の14.8%の約2倍であり、有意な差が認められた(p=0.001)。平均入院日数は、非投与群が12.1日であり、待機的投与群の7.7日、即時投与群の6.3日よりも長かった(p<0.001)。 60日以内の全死因死亡率は、即時投与群が1.6%、待機的投与群が2.8%、非投与群は5.4%であった。死亡リスクは、60日のフォローアップ期間中のどの時期においても、即時投与群に比べ待機的投与群(補正後OR:1.16、95%CI:1.06~1.27)および非投与群(2.18、2.04~2.33)で有意に高かった。 85歳以上の男性は、血流感染症および60日以内の全死因死亡のリスクが、とくに高かった。 著者は、「イングランドでは、大腸菌による血流感染症が増加していることを考慮し、高齢UTI患者に対しては、推奨される1次治療薬の早期の投与開始を提唱する」としている。

255.

MitraClipは低左心機能(HFrEF)に伴う二次性MR症例に有効(COAPT試験)(解説:許俊鋭 氏)-977

 MitraClip僧帽弁形成術の臨床的有効性に関する先行のEVEREST II試験は、僧帽弁逆流(MR)3~4度の症例を対象としたMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術との無作為比較試験(RCT)である。EVEREST II試験の1年後までの経過観察ではMitraClip群のMR軽減効果は低く、MitraClip群では残存MRに対して外科的再修復をより高率に必要とした。しかし、その後の1~5年の経過では両群ともに外科的再修復を必要とした頻度は同程度に低く、死亡率にも有意差はなかったものの、MitraClipの外科手術に対する著明な有効性は示せなかった。 本試験(COAPT試験)は、より予後不良な二次性MRを伴うHFrEF症例を対象とした、MitraClip僧帽弁形成術群と単独内科治療群のRCTである。対象は米国とカナダの78施設でガイドラインに沿った最大限の内科治療が行われているにもかかわらず、中等度〜重度または重度の二次性MRが持続した心不全患者である。患者は無作為に、MitraClip僧帽弁形成術+内科治療(デバイス群)または単独内科治療(対照群)に割り付けられた。主な効果エンドポイントは、追跡調査24ヵ月以内の心不全入院。主要な安全性のエンドポイントは、12ヵ月間のデバイス関連の合併症回避率(事前に設定されたデバイス関連の合併症回避率達成目標は88.0%である)。対象とした614人のうち、302人がデバイス群、312人が対照群に割り付けられた。24ヵ月以内の心不全入院は患者1人年当たり、デバイス群では35.8%、対照群で67.9%であった(p<0.001)。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は96.6%であり、安全達成目標は達成された(p<0.001)。24ヵ月以内の全死因死亡率は、デバイス群で29.1%、対照群で46.1%(p<0.001)であった。症候性の中等度〜重度または重度の二次性MRを合併した心不全に対して、MitraClip僧帽弁形成術は単独内科治療に対して24ヵ月以内の心不全入院率と全死因死亡率を低下させた。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は、事前に設定された安全達成目標を上回った。 COAPT試験では、デバイス群は対照群に対して2年間の死亡率を17%削減していて、これまでHFrEFに起因したMR症例に対するこれほど有効な治療法はACE阻害薬以外報告されていない。しかしながら、2018年8月にObadiaにより報告されたMITRA-FR試験(ESC Congress Munich 2018)では、重度の二次性MRを伴った心不全患者において、単独内科治療とMitraClip僧帽弁形成術+内科治療を比較したが、1年の死亡率および心不全による予定外の入院率を低下させなかった。このように二次性MRを伴うHFrEF症例を対象としたRCTであるCOAPT試験とMITRA-FR試験では異なった結果が出ているが、この差異については慎重な検討が必要である。経過観察期間に1年と2年の差があり、MITRA-FR試験でも1年以降の経過観察でMitraClip僧帽弁形成術の効果が顕著に表れ、1年以降にMitraClipの有効性が示される可能性はある。一方、HFrEFに伴う二次性MR症例に対するMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術の長期成績に関するRCTによる検討も待たれるところである。

256.

急性期脳梗塞治療で高知県が抜群の成績を上げている理由

 発症4.5時間までのrt-PA投与、主幹動脈閉塞に対する16時間までの血栓回収療法。2017年の脳卒中診療ガイドライン改訂で、6時間以内の血栓回収療法がグレードAの推奨となり、急性期脳梗塞治療の現場は変革を迫られているが、全国各地で診療体制が十分に整っているとはいえないのが現状だ。 そんな中、全国でも際立って多い血栓回収療法治療数を誇る県は四国にある。高知県だ。「脳卒中スクランブル」体制構築、禁忌例以外は全例rt-PA 日本では2016年の人口 10 万人当たりの血栓回収療法の治療件数は全国平均で6.06件と報告されている1)。しかし、海外文献では血栓回収療法は20件/10万人/年まで増えるだろう、との試算もあり、確実に治療できる体制を整えることが急務。また、治療件数の地域格差も問題視されている。 その中で高知県の取り組みは全国的に注目されている。人口10万人当たりの専門医数はさほど多いわけではないが、高知県の人口10万人当たりの同治療件数は非常に多い。つまり治療件数の増加に、同県の診療体制そのものが大きく影響していることが容易に想像できよう。 こうした高知の急性期脳梗塞治療の中心にあるのが高知医療センター。高知にはrt-PA投与および血栓回収療法を実施できる病院は5ヵ所しかなく、同医療センター脳神経外科診療科長の太田 剛史氏が主導し、2015年1月にスタートした「脳卒中スクランブル」が“躍進”の原動力になっている2)。 「脳卒中スクランブル」とは、救急隊が現場でその患者に脳卒中の疑いがあると判断した場合、「脳卒中スクランブル」を宣言し、病院側が一斉に体制を整えるもの。いわば、救急隊と院内各部の間で合意した取り決めだ。 具体的には、救急隊から連絡を受けた救急担当医は、「脳卒中スクランブル」がかかると、すぐに脳神経外科医に連絡。担当看護師、放射線技師にもただちに情報を共有し、当該脳卒中疑い患者への対応を病院を挙げて最優先する。CT撮影、検査などを迅速に行い、1分1秒を争うrt-PA投与、血栓回収療法までの時間を可能な限り圧縮するための措置だ。 救急隊に対しても当然そうした病院側の体制を事前に説明。「脳卒中疑い」の判断をしやすくするために、チェックすべき症状などを示した搬送前に確認すべき事項を記したカードを作成し、配布して啓発した。 たった、それだけのこと?と思われるかもしれないが、「このような体制が全県規模でしっかり取れている地域はまだまだ少ないようだ」と太田氏は言う。 さらに、rt-PA投与では、禁忌以外は基本的には全例投与という独自の適応基準を採用した。「日本では、rt-PA投与の適応が厳しく考えられすぎているように思う。2013年の報告だが、当時の基準の発症3時間以内に搬送された症例でも、16%にしかrt-PAが投与されていない。しかし、海外ではすでに積極的投与が推奨されているし、自験例で検証した結果、慎重投与例に投与してリスクがとくに高まることはなかった3)」(太田氏)。 「脳卒中スクランブル」導入前後で、rt-PAを投与した患者は飛躍的に伸びた。導入前2年半では、4.5時間以内に搬送された患者の32%だったのに対し、導入後の同期間では86%に達した。救急隊の協力などで4.5時間以内の搬送数そのものも35%から41%に向上した。独自ルールで血栓回収療法を迅速実施、転帰も飛躍的に向上 血栓回収療法も「脳卒中スクランブル」導入とほぼ同時に積極的に取り組み始めた。「それ以前は血栓回収療法の有効性を示すエビデンスがなかったが、ちょうど2015年2月に米国ナッシュビルで開催された国際脳卒中学会で立て続けに有効性を示す4つのRCT(MR CLEAN、ESCAPE、EXTEND-IA、SWIFT PRIME)が発表され、よいタイミングだった」と太田氏。 rt-PA静注療法、血栓回収療法は数分単位の遅れが転帰に大きく影響するため、施行までの時間を一刻でも短縮するために、rt-PA投与の判断ではMRIではなくCTを使用、血栓回収療法の開始までの時間もできるだけ短くなるよう、さまざまな工夫を実臨床で取り入れている。それらの結果、件数は、年間20件前後から50件へと劇的に伸び、冒頭で述べたように全国的にもトップクラスといえる病院となった。 もちろんrt-PA投与、血栓回収療法の実施件数が増えても、転帰が改善していなければ意味がない。これに関しても、きわめて良好な結果が出ている。 2012年9月から2014年12月の脳卒中スクランブル導入前と2015年1月から2017年4月の導入後の治療成績を比較したところ、退院時のmRS(modified Rankin Scale)が0または1の患者は36%から59%に増加。出血などの副作用も増えておらず、死亡率も7.0%から5.7%に、わずかだが有意に減少した。「虚血性脳卒中の6割が社会復帰できているというのは、かなり喜ばしいことだと思う」と太田氏は笑顔で語る。 高知医療センターの脳神経外科は7人全員が脳神経外科専門医であり、脳血管内治療専門医は指導医である太田氏のほかに3人。地域によって状況が違うことを考慮しても、急性期脳梗塞診療に関しては、理想に近い高いパフォーマンスを示しているといえそうだ。■参考1)Ohta T, et al.J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018;27:1844-1851. 2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nkc/advpub/0/advpub_oa.2018-0003/_article/-char/ja/3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nkc/advpub/0/advpub_oa.2018-0005/_article/-char/ja/

257.

脳梗塞、70歳未満なら180分で再開通できれば9割転帰良好

 急性期脳梗塞に対する血行再建治療では、若年で再開通までの時間が短いほど転帰がよく、とりわけ70歳未満ならば180分未満で再開通できれば、9割で良好な転帰が得られる。大阪大学医学部附属病院の藤堂 謙一氏らは、こうした結果をRESCUE Japan Registry2のデータを用いた解析で明らかにした。2018年11月22日~24日、仙台で開催された日本脳神経血管内治療学会で発表した。 解析は、2014年10月から2017年1月に46施設で登録された急性脳主幹動脈閉塞2,399例のうち、緊急血行再建治療を実施しTICI(Thrombolysis In Cerebral Infarction)スコア2b以上の有効再開通を獲得した1,094例を対象に行われた。70歳未満、70歳以上80歳未満、80歳以上の各年齢層において、最終確認から再開通までの時間カテゴリごと(180分未満、180分以上240分未満、240分以上)の転帰を比較。3ヵ月後のmRS (Modified Rankin Scale)2以下を転帰良好とし、性別、発症前mRSスコア、NIHSSスコア、ASPECTS(またはDWI-ASPECTS、pc-ASPECTS)、心房細動の有無、搬入時血圧・血糖値で調整し、転帰良好に対する再開通遅延(1カテゴリ遅延)のオッズ比を算出した。 各年齢層における最終確認-再開通時間180分未満/180分以上240分未満/240分以上の転帰良好の頻度は、70歳未満では90%/68%/55%(p<0.01)、70歳以上80歳未満では65%/48%/39%(p<0.01)、80歳以上では41%/34%/25%(p<0.05)。いずれの年齢層も再開通までの時間が短いほど、転帰は有意に良好だった。遅延による転帰良好の減少幅は、若い年齢層ほど大きい傾向であったが、有意ではなかった(交互作用のp=0.11)。 また、最終確認-再開通遅延(1カテゴリ遅延)のオッズ比は、70歳未満0.35(0.23~0.53)、70歳以上80歳未満0.48(0.34~0.67)、80歳以上0.68(0.49~0.94)だった。 「いずれの年齢層でも再開通時間短縮による転帰改善を確認できた。若年層は短時間で再開通できれば、高率で良好な転帰を獲得できるが、遅延するほど、転帰良好の割合の減少幅が大きくなり、時間短縮の重みがより大きいといえる」と藤堂氏は話している。

258.

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。3ヵ国32治療センターで被験者を集めて無作為化試験 De-ESCALaTE HPV試験は、アイルランド、オランダ、英国の頭頸部治療センター32ヵ所で行われた。対象者は、18歳以上で低リスクHPV陽性中咽頭がん(非喫煙者もしくは生涯喫煙が10 pack-year未満)の患者。 適格患者は臨床担当医によって集められ、放射線療法(35回照射で計70Gy)に加えて、シスプラチン静脈内投与(100mg/m2を放射線照射日1、22、43日に投与)、またはセツキシマブ静脈内投与(初回400mg/m2投与後、7週ごとに250mg/m2投与)を受けるよう1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了後24ヵ月時点で評価したすべて(急性および遅発性)の重篤(Grade3~5)毒性イベントで、intention-to-treat集団およびper-protocol集団で解析・評価した。標準レジメンを用いるべき 2012年11月12日~2016年10月1日に、334例の患者が集められた(シスプラチン群166例、セツキシマブ群168例)。 主要評価項目の発生について、群間で有意な差はなかった。患者当たりの平均イベント件数は、シスプラチン群4.8件(95%信頼区間[CI]:4.2~5.4)、セツキシマブ群4.8件(4.2~5.4)であった(p=0.98)。24ヵ月時点で、全グレードの毒性イベントについても群間で有意な差はなかった。患者当たりの平均イベント件数は、シスプラチン群29.2件(27.3~31.0)、セツキシマブ群30.1件(28.3~31.9)であった(p=0.49)。 一方で、2年時点の全生存率(OS)については有意差が認められ、シスプラチン群97.5 vs.セツキシマブ群89.4%であった(ハザード比[HR]:5.0[95%CI:1.7~14.7]、p=0.001)。また、2年再発率にも有意な差があった(6.0 vs.16.1%、HR:3.4[1.6~7.2]、p=0.0007)。 結果を踏まえて著者は、「シスプラチンに忍容性がある低リスクHPV陽性中咽頭がん患者に対しては、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンを用いるべきである」とまとめている。

259.

第16回 内科からのレボフロキサシンの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?肺炎球菌・・・11名全員診療報酬明細書を確認 清水直明さん(病院)その場で肺炎球菌と言い切るということは、グラム染色で確認できたのでしょう。肺炎球菌尿中抗原・呼吸器検体中抗原迅速検査を行っている可能性もありますが、感度・特異度が決して高くなく、既感染の場合でも陽性になる場合があります。行った検査についての記載が診療報酬明細書にあると思うので、可能であれば確認します。HIV感染の可能性も 荒川隆之さん(病院)気管支炎なら連鎖球菌、肺炎ならインフルエンザ菌など他の原因菌も考えられますが、肺炎球菌と医師が断定しているということなので、尿中抗原もしくはグラム染色にて確定診断しているものと考えます。肺炎球菌感染ありきで考えますと、この感染の原因としてさらにHIV感染(初期の感冒様症状)が隠れている可能性もあるかもしれません。肺炎球菌以外の可能性も JITHURYOUさん(病院)恐らく迅速診断キットを使用し、医師から肺炎球菌と言われたと考えられます。肺炎球菌以外で考えると、グラム陽性菌では黄色ブドウ球菌など、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌なども可能性があります。また喘息でステロイド使用例では、肺炎桿菌やエンテロバクターなどのグラム陰性桿菌も検出されることがあるようです。ライノウイルスなどのウイルスやマイコプラズマ、クラミジア・ニューモニエなどの非定型菌も無視できないと思います。これらのウイルスなどの2次感染の可能性はないでしょうか。季節によってはインフルエンザウイルスなども考慮すべきではないかと考えます。そもそも細菌性肺炎? 児玉暁人さん(病院)成人の市中肺炎の可能性を考えれば、予想される原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ、モラクセラ、マイコプラズマなどが考えられます。どのような説明で肺炎球菌と言われたのか不明なのと、レボフロキサシンの処方から肺炎球菌による肺炎なのか、そもそも細菌性肺炎なのかは不明です。点滴内容も不明ですが、喘息があり、点滴で改善していることから、ステロイドの点滴だった可能性もあります(または抗菌薬との併用)。喘息悪化を契機に肺炎を併発した可能性もあるかと思います。Q2 患者さんに確認することは?医師からどのような説明をされているか 荒川隆之さん(病院)なぜレボフロキサシンを3 日後から始めるのかわからないので、まず患者さんに医師からどのように聞いているのか確認します。患者さんの説明で要領を得ない場合は、疑義照会することになると思います。発熱や次回受診日について ふな3さん(薬局)点滴治療開始前の発熱の有無血液検査の結果(あれば)合併症「肺炎球菌」と言われたのは、今回か?「以前」か?次回通院予定日併用歴、副作用歴、既往歴など 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬、副作用歴、既往歴と腎機能も確認したいところです。あとはA-DROPに従って考えると、年齢は若く、脱水も意識低下もなさそうですし、入院が必要になるぐらい重篤な感染症の可能性は低い気がします。発熱の情報もないですし。この受診の前にOTCのかぜ薬を服用しているのであれば、アスピリン喘息も疑う必要がありますね。過去に鎮痛薬や感冒薬で咳嗽が悪化したことはないかも確認してみたいです。A-DROPシステムA(age):男性70 歳以上、女性75 歳以上D(dehydration):BUN 21mg/dL以上または脱水ありR(respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)O(orientation):意識障害ありP(pressure):血圧(収縮期)90mmHg以下軽 症:上記5 つの項目のいずれも満足しないもの。中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの。重 症:上記項目の3つを有するもの。超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。どのような検査をしたか 奥村雪男さん(薬局)肺炎球菌と仮定した場合、definitive therapyで第一選択はペニシリンであり、仮にエンピリックに広域抗菌薬で開始したとしても、狭域抗菌薬にde-escalationしていない点が気になります。レスピラトリーキノロンのレボフロキサシンが選択されているのは疑問ですが、患者は βラクタムアレルギーがあるのかもしれません。また、喀痰の培養はしたのか。感受性まで分かるので、ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)か、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)かが分かれば、確認したいです。MIC>4.0μg/mLの高度耐性でレボフロキサシンを選択肢に挙げている書籍もあります1)。次に、点滴は何を使用したのか知りたいです。点滴から内服に切り替える場合、通常はクラスを変えないので1)、レボフロキサシン点滴静注の可能性が高いかと思います。いつから薬を飲むように言われているか?喘息治療は? わらび餅さん(病院)患者に、「○月○日から飲むように言われているか?」を確認します。1回/日投与のセフトリアキソン、もしくはレボフロキサシンを点滴したと予想しますが、切り替えに3日空けることが不思議です。また3日開けてしまうと、治療期間の考え方でも違和感があります。点滴2日+内服5日=計7日で効果判定、がしっくりきます。喘息治療はどうしているか?コントローラーは使用しているのか、リリーバーだけかを確認します。肺炎だったとしても、コントローラーは必要なので、アドヒアランスや肺炎治療中に発作が出たときにどう指示が出ているかを確認します。吸入薬の残量や使用期限を確認します。点滴の中身 中西剛明さん(薬局)点滴の中身が知りたいので、診療報酬明細書を確認させてもらいます。そして、次回の通院を確認し、点滴をいつまでするのか聞きます。その回答次第で、レボフロキサシンの開始日が特定できると思います。担当した薬剤師が聞き取った内容身長は175cm、体重53kg。1人暮らしの会社員。食欲がなく、朝から何も食べていなかった体温:37.8℃今回の受診のきっかけとなった咳の状況:夜、寝苦しい、横になると苦しくなって咳き込む、痰がよく出る診療報酬明細書の内容:点滴はセフトリアキソン1g+生理食塩液100mL(キット製剤)血液検査の結果はもらっておらず、詳細は不明今後の受診予定:明日、明後日の2日間は通院して点滴を受けるよう指示があった服用中の内服薬、吸入薬:なし日ごろの食事:朝は牛乳と食パン1枚、昼は会社の食堂で定食を、夜は外食して帰宅飲酒、喫煙習慣:なし副作用歴、アレルギー歴:医薬品ではなし。ハウスダストのアレルギーあり以上を踏まえて・・・後編では、本症例の疑義照会をする/しない、抗菌薬について、患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.

260.

薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

検索結果 合計:485件 表示位置:241 - 260