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STEMI患者でDIDO時間が30分超は、30分以下に比べ院内死亡率が約1.6倍に

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)のために、別の病院に転送されたST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者で、最初の病院に着いてから他院に向けて出発するまでの時間(door-in to door-out:DIDO)が30分以下の人は、全体の1割強にとどまるが、そうした人のPCI実施までの所要時間は短く、院内死亡率は低率であることが明らかにされた。米国・デューク大学のTracy Y. Wang氏らが、1万5,000人弱について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。米国病院の約75%は、緊急PCIに対応できないため、STEMI患者の多くが、最初に訪れた病院から他の病院へ転送されているのが現状という。DIDOは新たな臨床パフォーマンスの指標とされ、適切な再灌流治療のためには、DIDO時間30分以下が推奨されている。DIDO時間中央値は68分、30分以下は11%研究グループは、ACTION Registry-Get With the Guidelines登録患者で、2007年1月~2010年3月に、STEMIで病院を訪れ、プライマリPCIのために別の298ヵ所の病院に転送された、合わせて1万4,821人について後ろ向きコホート試験を行った。主要アウトカムは、DIDO時間とそれに関連する因子、来院から初回バルーン拡張までの時間(door-to-balloon:DTB)、補正後院内死亡率であった。その結果、DIDO時間の中央値は68分(四分位範囲:43~120)だった。また、DIDO時間が30分以下だったのは、1,627人(11%)にとどまった。DIDO時間が30分超だと、30分以下に比べ院内死亡率が1.56倍にDIDO時間が30分以下だった人のうち、DTB時間が90分以下だった人の割合は60%(95%信頼区間:57~62)と、DIDO時間が30分超だった人の同13%(同:12~13)に比べ、有意に低率だった(p<0.001)。また院内死亡率も、DIDO時間が30分以下の人は2.7%(同:1.9~3.5)であったのに対し、同30分超の人は5.9%(同:5.5~6.3)と、有意に高率だった(p<0.001、補正後オッズ比:1.56、95%信頼区間:1.15~2.12)。DIDO時間が30分超の関連因子は、高齢、女性、時間外の来院、最初の来院が救急車ではないなどであった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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10~24歳の若年人口の世界疾病負担がWHOの調査で明らかに

10~24歳の若年人口は、世界的に保健医療の対象としては概して看過されてきたが、障害調整生存年数(disability-adjusted life-years; DALY)で評価した世界疾病負担(global burden of disease)は全人口の15.5%に及ぶことが、世界保健機構(WHO)のFiona M Gore氏らの調査で示された。2008年、世界の10~24歳の若年者人口は18億人を超え、全人口の27%という最大規模の集団を形成するに至った。2032年にはピークに達し約20億人にまで増加すると予測されるが、その90%は低~中所得国の住民だという。最近になって、この年齢層の壮年以降の健康問題や疾患リスク因子の重要性が浮上しているが、世界疾病負担に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月7日号)掲載の報告。WHOデータを用いて若年者の疾病負担を系統的に解析研究グループは、若年者における疾病負担の現況およびリスク因子がその負担に及ぼす影響について系統的な解析を行った。解析には、WHOの「2004年度世界疾病負担研究」のデータを用いた。疾患の罹患率、有病率、重症度、死亡率のデータを基に、10~24歳における原因別のDALYを地域別、低~高所得国別に評価した。比較リスク評価法(comparative risk assessment method)を用いて、特定の健康リスク因子に起因するDALYを算出した。DALYは、早死による損失生存年数(YLL)と障害による損失生存年数(YLD)に分け、年齢層別、地域別に検討した。精神神経疾患、不慮の外傷、感染症/寄生虫症がYLDの3大原因10~24歳の罹患率に関するDALYの総計は約2億3,600万年で、これは全年齢の総DALYの15.5%に相当する。この年齢層ではアフリカのDALYが最も高く、高所得国に比べ約2.5倍に達した(1,000人当たりのDALY:208 vs. 82)。全地域を合わせると、15~19歳の年齢層では男性に比べ女性のDALYが約12%高かった(1,000人当たりのDALY:137 vs. 153)。世界的にみて、10~24歳の年齢層におけるYLDの3大原因として、精神神経疾患(45%)、不慮の外傷(12%)、感染症/寄生虫症(10%)が挙げられた。この年齢層の罹患率DALYの主なリスク因子は、アルコール飲用(総DALYの7%)、危険な性交渉(同4%)、鉄欠乏症(同3%)、避妊の不履行(同2%)、非合法薬物の使用(同2%)であった。著者は、「これまで、若年層は比較的健康であるとみなされ、世界的に保健医療の対象としては概して看過されてきた。一方、この年齢層の疾患や外傷の予防機会は十分には活かされていない」とまとめ、「今回のデータは、青少年の健康は保健医療への関心の高まりによって改善される可能性があることを示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。ニーズが最も高い被援助国に対して供与すべきODAを調査研究グループは、2007年と2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対する援助の流れ、および以前に実施された2003~2006年の予測の達成度を解析した。研究グループが開発したODAの追跡法を用いて、2007年と2008年の経済協力開発機構(OECD)の援助活動の完全データベースを手作業でコード化して解析を行った。援助供与額および推定人口の新たなデータを用いて、2003~2006年のデータを改訂。妊婦および子どもの健康に関するニーズが最も高い被援助国に対して、援助国はどの程度のODA供与の対象とすべきかを解析し、2003~2008年の6年間の傾向を調査した。2007、2008年の妊婦、子どもの健康関連OADの70%以上が優先国へ全開発途上国における妊婦、新生児、子どもの健康関連の活動への支援として、2007年に47億米ドル、2008年には54億米ドルが供与されていた(2008年の不変ドル換算)。これらの総額は2003年から2008年までに105%増加したが、健康関連ODAの総額も同じく105%増加したため相対的には不変であった。2015年へのカウントダウンの優先国は、2007年に34億米ドル、2008年には41億米ドルを受け取っており、これは妊婦、新生児、子どもの健康に対する全供与額のそれぞれ71.6%、75.6%に相当するものだった。妊婦および子どもの死亡率が高い国へのODAは6年間で改善されていたが、この期間を通じて、死亡率がより低く所得が高い国に比べ一人当たりのODAがはるかに低い国もあった。2003~2008年のワクチン予防接種世界同盟(GAVI Alliance)の基金および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)は、各国機関による中核的基金を上回っており、二国間共同基金も特にイギリスとアメリカによるものが著明に増加していた。著者は、「2003~2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対するODAの増加は歓迎すべきであり、より多くのニーズのある国へのODAの配分も多少改善している。にもかかわらず、これらの供与額の増加は他の健康分野に比べて優先順位が高くなったことを示すわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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大人のADHD患者には、服薬治療とともに認知行動療法を

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、成人においてもみられるようになっている。成人期ADHDは薬物療法だけでの治療は難しく、一方で心理社会的治療のエビデンスは十分ではない。そこで米国マサチューセッツ総合病院のSteven A. Safren氏らは、認知行動療法の有効性を検討する無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月25日号より。認知行動療法かリラクセーション法を受けてもらい追跡研究グループは、薬物療法を受けているが臨床症状が改善していないADHD成人患者86例を対象に、認知行動療法の有効性を評価する無作為化比較対照試験を行った。被験者は、認知行動療法または問題行動に対して教育的支援で行動修正を図っていくリラクセーション法のいずれかの治療を受ける群に無作為化され、12回の個別セッションを受けた。試験は2004年11月から2008年6月(追跡調査は2009年7月まで)にかけて実施された。無作為化された86例のうち治療を完了したのは79例、追跡評価まで完了したのは70例だった。主要評価項目は、ベースライン時、治療後、6~12ヵ月時点でのADHD症状(ADHD評価スケールとClinical Global Impressionスケールによる)とされた。なお評価者には、どちらの治療を受けたかは知らされなかった。副次評価項目は、ADHD症状の自己報告とした。認知行動療法の方がADHD症状を改善認知行動療法群の治療後スコアは、リラクセーション法群と比較して、Clinical Global Impressionスケール(-0.0531、95%信頼区間:-1.01~-0.05、P=0.03)、ADHD評価スケール(-4.631、95%CI -8.30~-0.963、P=0.02)のいずれも低かった。治療全体を通して、自己申告による症状は、認知行動療法群がより有意に改善されていた(β=-0.41、-0.64~-0.17、P

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STEMI患者へのPCI、システム1時間遅延ごとに死亡率1割上昇

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の、救急通報を受けてからの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施までの所要時間(システム遅延)が、1時間増すごとに、死亡率が1割上昇することが明らかにされた。デンマークAarhus大学病院循環器部門のChristian Juhl Terkelsen氏らが、6,000人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。STEMI患者が、医療機関に到着してから再潅流治療を受けるまでの、いわゆる「ドアからバルーンまで」(door-to-balloon)の遅延とアウトカムに関する研究はこれまでにも発表されているが、救急通報時点から医療機関到着までの時間を含む、システム遅延とアウトカムに関する研究は、これが初めてという。6,209人を中央値3.4年追跡研究グループは、2002年1月1日~2008年12月31日にかけて、デンマーク内で多数の症例数をこなす3ヵ所のプライマリPCIセンターで、発症から12時間以内にPCIを実施した、合わせて6,209人を対象に試験を行った。救急通報を受けてからPCIのガイド・カテーテル挿入までの所要時間を「システム遅延」、通報からPCIセンター到着までの所要時間を「前病院遅延」、PCIセンター到着からカテーテル挿入までの所要時間を、「ドアからバルーンまで遅延」と定義した。追跡期間の中央値は、3.4年(四分位範囲:1.8~5.2)だった。システム遅延、前病院遅延、ドアからバルーンまで遅延のそれぞれが長期死亡の独立因子結果、システム遅延が0~60分までの群(347人)では、長期死亡率が15.4%(43人)だった。システム遅延が増大するにしたがって同死亡率も増加し、61~120分(2,643人)では23.3%(380人)、121~180分(2,092人)では28.1%(378人)、181~360分(1,127人)では30.8%(275人)だった(p

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効:BALANCE試験

長期的な治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウム(商品名:リーマスなど)とバルプロ酸(同:デパケンなど)の併用がバルプロ酸単剤よりも有効なことが、イギリス・オックスフォード大学精神科のJohn R Geddes氏らが行った無作為化試験(BALANCE試験)で示された。双極性障害は寛解が得られても多くが再発、慢性化し、世界的に15~44歳の障害の原因として最も重要な疾患の一つとされる。炭酸リチウムとバルプロ酸セミナトリウムはいずれも単剤で双極性障害の再発予防薬として推奨されているが、十分な効果が得られない患者も多い。再発例には、エビデンスがほとんどないにもかかわらず両薬剤の併用療法が推奨されているのが現状だという。Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2009年12月23日号)掲載の報告。単剤と併用を比較するオープンラベル無作為化試験BALANCE試験の研究グループは、リチウムとバルプロ酸の併用療法がそれぞれの単剤療法よりも双極性I型障害の再発予防に有効か否かを検討する、オープンラベル無作為化試験を実施した。イギリス、フランス、アメリカ、イタリアの41施設から16歳以上の双極性I型障害患者330例が登録され、リチウム単剤群(血漿濃度0.4~1.0mmol/L、110例)、バルプロ酸単剤群(同750~1,250mg、110例)、両薬剤併用群(110例)に無作為に割り付けられた。患者と医師には治療割り付け情報が伝えられたが、予後イベントの評価を行う試験管理チームには知らされなかった。最長で24ヵ月間のフォローアップが行われた。主要評価項目は「緊急の気分障害エピソードに対する新たな介入の開始」とし、intention-to-treat解析を行った。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない緊急の気分障害エピソードで介入を受けた患者は、併用群が54%(59/110例)、リチウム単剤群が59%(65/110例)、バルプロ酸単剤群は69%(76/110例)であった。併用群は、バルプロ酸単剤群よりもエピソードに対する介入が有意に低減した(ハザード比:0.59、p=0.0023)が、リチウム単剤群との比較では有意な差は認めなかった(ハザード比:0.82、p=0.27)。リチウム単剤群はバルプロ酸単剤群よりも介入の低減効果が高かった(ハザード比:0.71、p=0.0472)。16例に重篤な有害事象がみられた。そのうち7例がバルプロ酸単剤群で、3例が死亡した。5例がリチウム単剤群で2例が死亡、4例は併用群で死亡は1例であった。著者は、「臨床的に長期の治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウムとバルプロ酸の併用あるいはリチウム単剤がバルプロ酸単剤よりも有効なことが示唆される。このベネフィットは、試験開始時の重症度とは関連せずに認められ、2年間持続した。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない」と結論している。さらに、「アメリカやイギリスの双極性障害治療ガイドラインでは、長期的治療の1次治療としてバルプロ酸単剤を推奨しているが、リチウムとの併用あるいはリチウム単剤を考慮すべきである。また、リチウム単剤療法中に再発を繰り返す患者にはバルプロ酸単剤への切り替えが推奨されているが、この場合は併用療法がより有効であろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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ticagrelorは、急性冠症候群の予後をクロピドグレルに比べ有意に改善:PLATO試験

新たな経口P2Y12受容体阻害薬であるticagrelorは、侵襲的治療が適用とされる急性冠症候群(ACS)患者の抗血小板療法において、クロピドグレル(商品名:プラビックス)に比べ有意に予後を改善することが、米国Brigham and Women’s病院TIMI study groupのChristopher P Cannon氏らが実施したplatelet inhibition and patient outcomes(PLATO)試験で示された。クロピドグレルの抗血小板作用には個人差がみられ、不可逆的であるため、ACS患者における至適な用量や投与のタイミングについては議論がある。ticagrelorはクロピドグレルと同じP2Y12受容体阻害薬であるが、その作用は可逆的で、より強力かつ長期に持続するという。Lancet誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。約13,000例を対象とした二重盲検ダブルダミー無作為化試験PLATO試験の研究グループは、入院後できるだけ早期に治療を開始する必要があるため侵襲的治療が計画されたACS患者を対象に、ticagrelorとクロピドグレルの予後改善効果および出血リスクを比較する二重盲検ダブルダミー無作為化試験を実施した。ST上昇あるいは非上昇ACSで入院中の患者18,624例が登録され、そのうち侵襲的治療が計画された13,408(72.0%)例が、ticagrelorとプラセボを投与する群(負荷用量180mg投与後、90mg×2回/日を投与)あるいはクロピドグレルとプラセボを投与する群(負荷用量あるいは維持用量として300~600mgを投与後、75mg/日を投与)に無作為に割り付けられ、6~12ヵ月の治療が行われた。全例にアスピリンが投与された。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を実施した。1,000例当たり年間11例の死亡、13例の心筋梗塞、6例のステント血栓症を防止ticagrelor群に6,732例が、クロピドグレル群には6,676例が割り付けられた。治療開始後360日における複合エンドポイントのイベント発生率は、ticagrelor群が9.0%とクロピドグレル群の10.7%に比べ有意に低かった(ハザード比:0.84、p=0.0025)。大出血の発生率は、ticagrelor群が11.5%、クロピドグレル群は11.6%と両群間に差を認めなかった(ハザード比:0.99、p=0.8803)。GUSTO(Global Use of Strategies To Open occluded coronary arteries)の出血基準に基づく重篤な出血についても、それぞれ2.9%、3.2%と同等であった(ハザード比:0.91、p=0.3785)。著者は、「薬物療法開始時に侵襲的治療が計画されているACS患者に対する抗血小板療法としては、ticagrelorがより有用な選択肢と考えられる」と結論している。これらの知見に基づいて推算すると、ticagrelorはクロピドグレルに比べ大出血や輸血の頻度を上昇させずに、年間にACS患者1,000例当たり11例の死亡を回避し、13例の心筋梗塞および6例のステント血栓症を防止するという。また、今回の結果は、「血小板P2Y12受容体の阻害を増強すれば、大出血を増加させずに死亡率を低減させることが可能との考え方を支持するもの」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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防げる子宮頸がん…防がないのは罪 ~HPVワクチンの接種により73%の子宮頸がんが減少。社会・経済的効果も190憶円~

諸外国に遅れをとりながらわが国でも子宮頸がんの予防ワクチンが承認された。そのような中『子宮頸がんと予防ワクチン』と題し、国立がんセンター中央病院にて講演会が開催された。講演会では、主催者の国立がんセンター中央病院院長土屋了介氏に加え3名の演者が製薬企業、医療者、患者それぞれの立場でHPVワクチンを日本の医療環境に取り入れていく中での課題や問題点について発表した。そのなかから自治医大埼玉医療センター産婦人科今野良氏の講演内容を中心に紹介する。日本と世界に於ける子宮頸がんの状況世界では、子宮頸がんにより毎年50万人が亡くなっている。日本での子宮頸がん発生率は人口10万人当たり約8人、死亡率は2.6人であり、世界的にみても少ないといえる。これは、日本の子宮頸がん検診は導入、充実が世界的にも早かったためである。しかし、近年は若年者での発生率が増加しているという問題が発生している。実際、20~29歳の浸潤がんの発生率は1984年に比べ1996年で4倍である。その原因としては若年者の子宮頸がん検診受診率が極めて低いことが挙げられる。欧米先進国の子宮頸がん検診受診率は80%以上であるが、日本の受診率は既に24%と極端に低くなっている。これは若い世代に検診の重要性を伝えきれていない結果である。このまま若年者の検診受診の習慣付けをしないと患者数が大幅に増加すると予想される。検診での過ちをワクチンでも繰り返すべきではないと考える。成人女性であれば特別なこととはいえないHPVの感染HPV(Human Papiloma Virus)感染は子宮頸がん発生の必要条件として報告されており、HPV感染の有無は500倍のodds比であり関連度は99%である。HPV感染は通常の性交渉によって起こる。HPVは子宮頸部の非常に微細な上皮の傷から感染し増殖する。そのため、成人女性であれば大部分の方が一度は感染しているといえ、非常にありふれたものといってもおかしくない。いまだ一部誤解があるようだが、問題がある性交渉を行ったから発生するというものではない。また、HPV感染の90%は一過性感染である。残りの10%が持続感染になり、その中からがんに至るものがでてくる。HPVワクチンの効果は非常に高く日本での臨床試験ではHPV16、18感染に関して共に100%予防可能であった。HPVワクチンと検診の両輪で子宮頸がんを克服する子宮頸がんは、リスクファクターもその前がん病変も明らかである。前がん病変は検診時の細胞診で従来から判定が可能である。それに加えリスクファクターであるHPV感染を予防するワクチンが出現した。つまり、子宮頸がんは、一次予防のHPVワクチンと二次予防の検診の両輪で予防可能な疾患なのである。*HPVワクチンについて会場質問と回答も追記・HPVワクチンは成人に接種しても意味がない:現在HPV16、18に感染している方には効果がないが、過去に感染があっても現在陰性であれば年齢に関係なく有効。90%の方は陰性であり成人に対する接種も医学的には有効である。 ・HPV感染者への接種で抗体価が上がる:抗体価は上がらない。また、感染者に接種しても良くも悪くもならない・腺がんの対策:腺がんは検診では鑑別できないため現状の対策はHPVがワクチンしかないHPVワクチン導入による社会・経済的効果本邦におけるHPVワクチン接種による医学的効果と経済評価を行った。その結果、12歳の女児全員に接種すると子宮頸がんの発生率、死亡率ともに73%抑えることが推計された。経済的には、治療費用、機会費用を合せ400億円が削減され、ワクチン費用約210億円(ワクチン1コース36,000円と仮定)を差し引くと社会全体で約190億円の費用削減効果が期待された。さらに、10~45歳の女性全員にワクチンを接種させた場合、約430億円の社会的費用が削減さると推計された。増分費用効果比からみても45歳までの接種が許容されるという計算になる。 子宮頸がん後進国にならないためにHPVがワクチン接種の公費負担をHPVワクチンは100ヵ国以上の国で承認され、約30ヵ国で公費負担により12歳前後の女子に対し接種が行われている。そして、オーストラリア、欧州、米国でも医療保険、民間保険で費用の一部あるいは全額がカバーされている。WHOからも今年の4月にPositionPaperが提示され、世界の多くの国や機関でワクチン政策に組み入れることを推奨している。検診率が高い欧州は、更にHPVワクチン接種を組み込むことによって子宮頸がんを根絶しようという戦略である。一方、経済資源がなく検診の充実が期待できないアフリカなどでもGAVI(Global Alliance for Vaccines and Immunization)のような世界的支援機関の援助でHPVワクチン接種が始められている。日本では、発売されたものの公費負担は認可されていない。公費負担がないとワクチン接種率は5%程度と予想される。前出の費用効果分析の手法でシミュレーションしても、それでは子宮頸がんの発症抑制は全く期待できないことになる。このままだと日本は子宮頸がん対策に取り残されることになるのである。ワクチンの普及には行政がイニシアチブをとることが必要である。まずは11~14歳のHPVワクチンの全額公費負担を、次に15~45歳の保険償還での補助などでHPVワクチン接種の費用負担を実現させたい。 最後に座長の土屋了介氏は、HPVがワクチン公費負担についての会場署名およびWebサイト公募署名を長妻大臣に届けることを会場で宣言し会を締めくくった。(ケアネット 細田 雅之)

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認知症は失明よりも身体障害の重大な要因:低~中所得国の高齢者

 認知症は、低~中所得国の高齢者の身体障害に寄与する最大の要因であることが、イギリスKing’s College London精神研究所精神保健センターのRenata M Sousa氏らによる地域住民ベースの調査で明らかとなった。2004年の世界疾病負担(Global Burden of Disease)の推計では、身体障害を伴う生存年(YLD)は全世界で7億5,100万年であり、その68%は非伝染性の慢性疾患によるものだが、この慢性疾患に起因する身体障害の負担の84%は低~中所得国で発生している。しかし、特に低~中所得国の高齢者の身体障害について検討した調査はほとんどないという。Lancet誌2009年11月28日号掲載の報告。7ヵ国11地域に居住する高齢者1万5,000人を対象とした横断的調査 研究グループは、身体的、精神的、認知的な疾患が身体障害に及ぼす影響を評価し、健康に関する社会人口学的な特性によって身体障害の地理的分布の差をどの程度説明できるかについて検討するために横断的な調査を実施した。 低~中所得の7ヵ国(中国、インド、キューバ、ドミニカ、ベネズエラ、メキシコ、ペルー)の11地域に居住する65歳以上の高齢者1万5,022人が対象となった。身体障害の評価には、12項目からなるWHOの身体障害評価スケジュール2.0を使用した。認知症、うつ、高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を確認するための臨床評価として、種々の疾患について自己申告に基づく診断を行った。 人口寄与有病率分画(population-attributable prevalence fraction; PAPF)を算出するために、負の2項分布回帰およびPoisson回帰分析によって、身体障害スコアに対する独立の要因の評価を行った。認知症のPAPFが最も高い、慢性的な脳や心の疾患は優先順位を高くすべき インドとベネズエラの農村部を除き、身体障害に寄与する最大の要因は認知症であった(PAPF中央値:25.1%)。それ以外の実質的な要因としては、脳卒中(同:11.4%)、四肢障害(同:10.5%)、関節炎(同:9.9%)、うつ(同:8.3%)、視力障害(同:6.8%)、消化器障害(同:6.5%)が確認された。 身体障害の地域間差は、健康に関する社会人口学的な特性の構造的な差によるところが大きかった。 著者は、「世界疾病負担の解析では、低~中所得国の高齢者における身体障害の最大の要因は失明とされていたが、今回の実証的な調査では認知症の寄与が最も大きかった」と結論し、「慢性的な脳や心の疾患は優先順位を高くすべきである。身体障害に加え、介護者への依存にともない、ストレスの多い複雑で長期的な課題を介護者にもたらすことから、社会的なコストが膨大なものになる」と指摘する。

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慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者、転倒リスク約1.5倍

 >慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者は、転倒リスクがおよそ1.5倍に増大するようだ。米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合内科・プライマリ・ケア部門のSuzanne G. Leveille氏らによる試験で明らかになった。高齢者の慢性痛と転倒リスクについての研究結果はこれまでほとんど見られていない。JAMA誌2009年11月25日号掲載より。日常生活自立の70歳以上、約750人を18ヵ月追跡 Leveille氏らは2005年9月~2008年1月にかけて、自宅で自立した生活をしている70歳以上高齢者749人について検討した試験「MOBILIZEボストンスタディ」を行った(MOBILIZE:Maintenance of Balance, Independent Living, Intellect, and Zest in the Elderly)。追跡期間は18ヵ月だった。 追跡期間中に発生した転倒件数は、1,029件だった。慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある300人の、年齢補正後の転倒率は、1.18件/人・年(95%信頼区間:1.13~1.23)だった。慢性骨格痛が1ヵ所のみの181人の同転倒率は、0.90件/人・年(同:0.87~0.92)だった。また、関節痛の全くない267人の同転倒率は、0.78件/人・年(同:0.74~0.81)だった。強い痛みのある人の転倒リスクも5割増に 転倒リスクが最も高かったのは、慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある群で、痛みが全くない群に比べて、転倒に関する補正後発生率は1.53倍(95%信頼区間:1.17~1.99)だった。 また、痛みの程度(3分位)と転倒発生との比較では、痛みが強い3分位群の補正後発生率が、低い3分位群に比べて1.53倍(同:1.12~2.08)だった。活動の妨げの程度(3分位群)で検討した場合も、強い群が低い群に比べ1.53倍(同:1.15~2.05)だった。

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「包括的眼科検診」のすすめ 受けたことがない人は70%以上

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニーは27日、眼科検診に対する考えや受診率、視力に対する意識の調査を目的に、グローバル規模で実施した「日本を含む世界13カ国における眼科検診の実態調査-2008 Global Eye Exam Study」の中から、日本における眼科検診の実態について発表した。調査は、日本、中国、香港、台湾、シンガポール、韓国、オーストラリア、ロシア、フランス、イタリア、英国、米国、ブラジルの13ヵ国、合計6,500名(1ヵ国につき500名)の、経済的に自立した18歳から54歳の男女を対象に行われた。調査時期は、2008年4月~7月。調査から、日本人の約8割(76%)は、五感のうち「視覚」を最も重要な感覚とあげているにもかかわらず、半分以上(56%)が眼の健康状態を「良い」とは感じていないことがわかった。さらに、目の機能や眼疾患の有無を確認する検査と眼科医による分析などを含む「包括的眼科検診」を全く受診したことがない人が7割(72%)と多く、その理由としては「時間がない」(33%)がトップで、先進国の中では群を抜いていた。日本人のほとんどが視覚(視力)のトラブルを経験しており、その最も多い原因として、長時間にわたるパソコン操作が考えられるという。加えて、テレビを長時間見続ける、携帯電話のモニターを見る、小さなビデオゲームで遊ぶなど、現代人の眼が過酷な環境に曝されていることがうかがわれる。詳細はこちらhttp://acuvue.jnj.co.jp/corp/press/p0057.htm

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世界で1万人以上の心房細動患者が加する新たな大規模症例登録調査が開始

仏サノフィ・アベンティス社は16日、心房細動患者を対象とした国際的な横断的観察研究であるRealiseAF症例登録調査(Real life global Survey Evaluating patients with Atrial Fibrillation:心房細動の患者を評価する実際的な世界的調査)を開始したことを発表した。同社の日本法人が19日に報告した。RealiseAFは、心房細動のコントロールについて評価し、ヨーロッパ、中南米、アジア、中東、および北アフリカの幅広い心房細動患者集団の心血管リスクプロファイルを調査することを目的として設計された。この症例登録調査では、発作性、持続性、永続性心房細動の患者さんや、一過性の原因による心房細動患者を含む、幅広い心房細動患者集団に関する新たなデータを収集することを目指す。RealiseAF症例登録調査は、心房細動の罹病歴があり、過去12ヵ月間に1件以上の心房細動エピソードを経験したか、または現在心房細動を抱える27ヵ国1926施設の1万人以上の患者について、追跡調査を行うもの。対象には、発作性、持続性、永続性心房細動の成人患者、小児患者、一過性の原因(甲状腺機能亢進症、アルコール中毒、心筋梗塞の急性期、心膜炎、心筋炎、電撃症、肺塞栓症またはその他の肺疾患、水電解質異常、代謝障害など)による心房細動患者が含まれる。収集されるデータに含まれる尺度は、家族または本人の心血管リスク因子の有無、併存疾患の罹病歴、過去12ヵ月間の入院につながる心血管イベント、心血管系の介入治療、心房細動の罹病歴・特徴、心房細動の管理、およびQOL評価である。試験に参加する心臓専門医(開業医および勤務医)と内科医は、無作為に選ばれる。患者募集は2009年10月末に開始されており、最終結果は2010年末に得られる見込み。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/CBC868FD-8DE7-430E-BF5F-60B78B3098F5.pdf

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人工透析患者の死亡リスクは8倍強、心血管疾患死以外も増加の傾向

人工透析患者の死亡リスクは、心血管疾患死に限らず、透析を受けていない人の8倍強に上ることが明らかにされた。オランダLeiden大学のDinanda J. de Jager氏らが、12万人超の透析患者について調べた結果で、JAMA誌2009年10月28日号で発表した。これまで、人工透析を受けている患者は心血管疾患死のリスクが、10~20倍に増大することは報告されていたが、それ以外の死亡リスクの増大については明らかではなかった。総死亡率は一般12人/1,000人・年に対し、透析患者は192人/1,000人・年Jager氏らは、1994年1月1日~2007年1月1日に、ヨーロッパで透析を受けていた成人患者12万3407人について、平均1.8年(標準偏差1.1年)追跡調査(ERA-EDTA)を行い、その死亡率について、ヨーロッパ一般人口集団(Eurostat)の統計と比較した。その結果、総死亡率は一般群12.055人/1,000人・年(95%信頼区間:12.05~12.06)だったのに対し、透析患者群では192人/1,000人・年(同:190~193)と大幅に高かった。死亡原因が明らかだったのは、一般群99%、透析患者群で90%だった。原因別に死亡率を比較すると、一般群ではその40%が心血管疾患死で、58%が非心血管疾患死だった。一方透析患者群では、同率はそれぞれ39%と51%だった。心血管疾患以外の死亡原因による死亡率も増加透析患者群の心血管疾患による死亡率は、一般群に比べ38.1人/1,000人・年(95%信頼区間:37.2~39.0)高く、非心血管疾患による死亡率は50.1人/1,000人・年(同:48.9~51.2)高かった。透析患者群の心血管疾患による標準化死亡率は、一般群に比べ約8.8倍(95%信頼区間:8.6~9.0)、非心血管疾患の同率は約8.1倍(同:7.9~8.3)だった。透析患者群の死亡率増加に関して、その原因が心血管疾患の場合、非心血管疾患の場合に対しての割合は、1.09(同:1.06~1.12)だった。ただしこの割合は、死亡原因が不明だった被験者について、死亡原因を心血管疾患と仮定した場合は0.90に、非心血管疾患と仮定した場合には1.39と変化した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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点眼薬における新しい抗菌コントロールメカニズムを新たに解明

ライオン株式会社 生物科学研究所及び薬品第1研究所は15日、一般用点眼薬に防腐剤として広く配合されている「塩化ベンザルコニウム」を使用せず、「トロメタモール」、「ホウ酸」、「EDTA(エデト酸)」の3つの成分(以下、TBEと略)の菌をコントロールするメカニズムについて初めて解明したと発表した。「塩化ベンザルコニウム」は、健常な状態の目に点眼する上では問題はないが、ドライアイやコンタクトレンズの長時間装着により、表面に微小な損傷のある場合や用法・用量を超えて点眼した場合、角膜に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。同研究所はTBEを最適比率で混合することで菌をコントロールする独自技術を開発し、そのメカニズムを解明している。(1)TBEは菌を殺さずに増殖を抑制する静菌作用であり、(2)その効果は、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌などの細菌だけでなく、カンジタ菌、カビなどの真菌に対しても発揮されることが分かった(2003年当社点眼薬技術)。さらに今回、(3)3つの成分が菌体内部や外膜表層に対してどのように影響を及ぼしているか、その一端を生科学的に解明したという。詳細はプレスリリースへhttp://www.lion.co.jp/ja/company/press/2009/2009088.htm

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10~24歳の青少年の死因は、交通事故死が最も多い

世界の10~24歳の死因について調べたところ、交通事故による死亡が最も多く、男性で14%、女性では5%を占めていた。その他の死亡で顕著なのは、暴力事件による死因(男性で12%)、自殺(全体の6%)があった。女性の死因で一番多いのは、妊産婦死亡で全体の15%を占めた。エイズウイルスへの感染や結核による死亡は全体で11%だった。調査を行ったのは、オーストラリア・王立小児病院のGeorge C Patton氏らで、Lancet誌2009年9月12日号で発表している。近年、青少年期の健康を取り巻く状況が著しく変化しているにもかかわらず、全世界の青少年の死因に関する調査は初めて行われたという。10~24歳死亡の97%が低・中所得国同氏らは、WHO(世界保健機関)の「World Health Report 2006」と、「Global Burden of Disease Study 2004」などを元に、10~24歳の死因について調査を行った。結果は、WHOによる地域や、5歳ごとの年齢グループごとなどに集計した。その結果、2004年に死亡した10~24歳は、世界中で260万人に上った。そのうち、97%に当たる256万人が、低所得・中所得の国で発生していた。また、約3分の2に当たる167万人が、サハラ以南アフリカ地域や東南アジア地域で発生したものだった。相対死亡率はアフリカ地域で最も高く、高所得国のおよそ7倍にも上った。高所得国の交通事故による死亡は男性32%、女性27%早期成人期(20~24歳)の死亡率は、早期青年期(10~14歳)の2.4倍にも上った。なかでも、高所得国ではこの傾向が強かった。高所得国の男性死因について見てみると、交通事故による死亡が32%、暴力が10%、自殺が15%を占めた。早期成人期は早期青年期に比べ、交通事故による死亡率は約7.7倍、自殺は同16倍、暴力は同18倍に上った。また、高所得国の女性の死因では、交通事故が27%、自殺が12%だった。早期青年期(10~14歳)と早期成人期(20~24歳)で死亡率の増加が見られたが、死因については、地域や性別によって差があった。同研究グループは、青少年期の死因の5人に2人が意図的・非意図的な外傷によるものであることから、現行のエイズウイルスや妊産婦死亡を中心とした世界的な健康政策は、重要ではあるが効率的ではないと指摘している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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統合失調症治療剤「ルラシドン」の第III相試験(PEARL2試験)の結果が発表される

 大日本住友製薬株式会社は26日、自社開発中の統合失調症治療剤「ルラシドン」の2本目の第III相試験(PEARL2試験)の結果を発表した。この試験は急性期の統合失調症患者を対象とした6週間投与のプラセボ対照二重盲検比較試験であり、ルラシドン40mg/日および120mg/日の両投与群は、主要評価項目および主な副次評価項目において、プラセボ投与群に比べ有意に高い有効性を示したという。また、ルラシドン投与群はプラセボ投与群と同程度の中止脱落率であり、良好な忍容性を示し、体重や脂質への影響もプラセボ投与群と同程度だったとのこと。 PEARL2試験は、統合失調症治療におけるルラシドンの有効性と安全性を評価するため、全世界規模で2,000人以上の患者が参加しているPEARL(Program to Evaluate the Antipsychotic Response to Lurasidone)と同社が名づけた第III相試験プログラムの一つ。PEARL2試験では、急性期の統合失調症の入院患者478人を、ルラシドン40mg/日、120mg/日、オランザピン15mg/日の固定用量とプラセボ群に分けて6週間投与した。オランザピンは、分析感度を確認するための参照薬として用いられた。ルラシドン40mg/日投与群と120mg/日投与群(いずれも1日1回投与)は、試験終了点における有効性の主要評価項目のPANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)の2総合点で、投与前と比べた試験終了時の変化量が、プラセボ投与群の-16.0 に対し、40mg/日投与群で-25.7、120mg/日投与群で-23.6 であり、プラセボ投与群に比較して有意に高い有効性を示したという。投与前後のPANSSの総合点で30%以上の改善が認められた患者の割合は、ルラシドン40mg/日投与群では53%、120mg/日投与群では47%、プラセボ投与群では38%だった。 また、主な副次評価項目のCGI-S(Clinical Global Impressions Severity scale)においても、プラセボ投与群に比較して有意に高い有効性を示しました。投与前後における変化量ではプラセボ投与群の-1.1 に対し、40mg/日投与群で-1.5、120mg/日投与群で-1.4であった。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20090826.pdf

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低~中所得国への世界的基金やNGOによる健康支援が大幅に増大

近年、低~中所得国への健康関連リソースの流入は実質的に増大しており、国連機関などを通じた援助が減る一方で、公的、私的な世界的基金や非政府組織(NGO)による支援が大幅に増えていることが、アメリカWashington大学健康指標評価研究所(IHME)のNirmala Ravishankar氏らの調査で明らかとなった。低~中所得国への世界的健康リソースに関する時宜を得た信頼性の高い情報提供の必要性は広く認知されるところだが、その現状はよくわかっていないという。Lancet誌6月20日号掲載の報告。DAH総額を算出、被援助国における支援の構成内容を分析研究グループは、1990~2007年の健康開発支援(development assistance for health; DAH)について包括的な評価を行った。DAHとは、「低~中所得国への開発支援を主目的とする公的あるいは私的な機関からの健康関連リソースの全流入」と定義した。複数のデータ源を利用して2007年のUSドル換算でDAHの年間総額を算出し、プロジェクトの統合データベースを構築して被援助国における支援の構成内容を分析した。DAHは約4倍に、global health initiativeの役割が大きいDAHは、1990年の56億ドルから2007年には218億ドルへ増大していた。国連機関や開発銀行を通じて導入されたDAHの割合は1990年から2007年にかけて減少したのに対し、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」「ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)」およびNGOが、増加するDAH負担の窓口となっていた。DAHは2002年以降急速に上昇しているが、これは特にアメリカからの公的助成金が増えたことや、私的な資金として慈善団体による寄付および企業供与の現物出資が増加したためである。2007年度のDAHで計画時の情報が入手できた145億ドルのうち、51億ドルがHIV/AIDSに配分され、結核には7億ドル、マラリアには8億ドル、保健セクター支援に9億ドルが割り当てられていた。低~中所得国が受けたDAHの総額は疾病負担と正の相関を示したのに対し、1人当たりのDAHは1人当たりの国内総生産(GDP)と負の相関を示した。著者は、「世界的な健康関連リソースは近年実質的に増大した。DAHの増加によってHIV/AIDS支援の増大が生じたが、他の領域への援助も拡大していた」とまとめ、「基金の流入には、世界的健康に関する制度状況の大きな変化が伴っており、いわゆる世界的基金やGAVIなどの世界的健康イニシアチブ(global health initiative)が資金の動員や関係づくりにおいて中心的な役割を担っていた」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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中国における最新の精神疾患有病率の実態が明らかに

2001~2005年の中国の18歳以上人口における精神疾患の有病率は17.5%で、受診率は5%に過ぎず、WHOの世界疾病負担の調査との間に実質的な乖離があることが、北京Hui Long Guan病院自殺予防研究訓練センターWHO共同研究部のMichael R Phillips氏らの検討で明らかとなった。中国などの中所得国では、健康障害の最も重大な原因は男女ともに神経精神病学的な病態であるが、精神疾患の有病率や治療法、関連障害に関する質の高い固有のデータがないことが、精神健康サービス拡充の努力の妨げとなってきたという。Lancet誌2009年6月13日号掲載の報告。約6万人を抽出、1万6,577人をSCID-Iで診断研究グループは、2001~2005年に中国の4つの省で実施された一連の疫学研究に基づき中国における精神疾患の現況について解析した。多段層化無作為抽出法(multistage stratified random sampling method)を用いて1次サンプル地域(都市部96地区、地方267地区)を決定し、18歳以上の1億1,300万人が抽出された。これには中国の成人の12%が含まれる。サンプル地区において単純無作為選択法(simple random selection method)で抽出された6万3千4人が、精神健康調査票(General Health Questionnaire; GHQ)によるスクリーニングを受けた。選ばれた1万6,577人が、精神科医によってDSM-IV 1軸障害の構造化臨床面接法(Structured Clinical Interview for Diagnostic and Statistical Manual (DSM)-IV axis I disorders; SCID-I)の中国版による診断を受けた。その国固有の詳細な精神疾患の状況分析が必要過去1ヵ月における精神疾患の補正後有病率は17.5%(95%信頼区間:16.6~18.5%)であった。気分障害が6.1%(5.7~6.6%)、不安障害が5.6%(5.0~6.3%)、薬物濫用障害が5.9%(5.3~6.5%)、精神病性障害が1.0%(0.8~1.1%)に見られた。気分障害と不安障害の有病率は男性よりも女性で高く、40歳未満よりも40歳以上の年齢で高かった。アルコール使用障害の有病率は男性が女性の48倍も高かった。抑うつ障害やアルコール依存症は都市部よりも地方で多い傾向が見られた。診断が可能であった精神病患者のうち、24%が当該疾患による中等度~重度の身体障害を有していた。専門的な支援を求めたことがあるのは8%、精神科専門医を受診したことがあるのは5%であった。著者は、「今回の結果と、WHOの世界疾病負担(global burden of disease)の解析で推算された中国における精神疾患の有病率、身体障害率、治療を受けている患者の割合には実質的な乖離が見られた」と結論し、「低~中所得国では、精神健康サービスの拡充を図る前に、その国固有の詳細な精神疾患の状況分析を行う必要性に留意すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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MDR結核、中国、旧ソビエト諸国でなお脅威

結核の最新統計が、Global Project on Anti-Tuberculosis Drug Resistanceから発表された。Lancet誌2009年5月30日号(オンライン版2009年4月15日号)で公表されたのは、2002~2007年の83ヵ国の集計結果。それによると、多剤耐性(MDR)結核の脅威が、中国の2つの行政区と旧ソビエトの9ヵ国で続いていることが明らかになった。一方で、特にアフリカで顕著だが、薬剤耐性に関するデータが適切に集計できない国が多く、より簡単にデータを収集する方法の開発が必要だとしている。中国7.0%、旧ソビエト諸国は6.8~22.3%83ヵ国におけるMDR結核の罹患率は、中央値11.1%(IQR:7.0~22.3)だった。罹患率0%だったのは8ヵ国で、キューバ、ウルグアイ、アンドラ公国、アイスランド、ルクセンブルク、マルタ共和国、スロベニア、バヌアツ。一方、中国の2つの行政区(内モンゴル自治区、黒龍江省)で7%台、北マリアナ諸島で11.1%(ただし報告例は2例)、また旧ソビエト連邦諸国のうちの9ヵ国(アルメニア、アゼルバイジャンの首都バクー:22.3%、エストニア、グルジア、ラトビア、リトアニア、モルドヴァ:19.4%、ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン)で6.8%~22.3%と高い罹患率を示した。なお、日本は2002年時点の報告で、0.7%(19例)*。*最新統計は、財団法人結核予防協会結核研究所疫学情報センターを参照。http://jata.or.jp/rit/ekigaku/超多剤耐性結核(XDR)は37ヵ国で確認同プロジェクトは1994年から統計を公表しているが、2007年までの間の傾向を見ると、MDR結核が増大したのは、韓国およびロシアの2つの州(トムスク、オリョール)で、エストニアとラトビアでは一定であった。また、全結核例におけるMDR結核の罹患率は、香港とアメリカでは減少していた。さらに、MDRのうち超多剤耐性結核(XDR)は37ヵ国で確認されていた。旧ソビエト諸国のうち8ヵ国におけるMDRの約10%がXDRで、そのうち5ヵ国のXDR症例数は25例以上が報告されていた。

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