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レベチラセタムの神経活性阻害、新たな機序が判明:熊本機能病院

 抗てんかん薬レベチラセタム(LEV)はユニークな作用機序を有するが、その機序は完全には解明されていない。熊本機能病院の脇田 真仁氏らは、LEVの作用機序を詳細に解明するため、ラットを用いてLEVが海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼす影響を検討した。その結果、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることを示した。Journal of Pharmacology Experimental Therapeutics誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットから単離した神経シナプスボタンを材料とし、海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼすLEVの作用を検討した。活動電位誘発性の興奮性シナプス後電流(eEPSCs)を、従来の全細胞記録によるパッチクランプ法を用い、電位固定による電流記録(ボルテージクランプ)により波形を記録した。 主な結果は以下のとおり。・抗てんかん薬フェニトインは、電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流を阻害し、濃度依存的にグルタミン作動性eEPSCs を減少させた。・一方LEVは、eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさなかった。・神経終末部のGABA A 受容体の活性化は、神経伝達物質の1つであるムッシモールによるeEPSCs阻害の結果、苔状線維終末部を脱分極させた。・eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさない低濃度Zn2+は、ムッシモールに誘発されるシナプス前抑制を低下させた。・LEVを1μM濃度のムッシモールおよび1μM濃度のZn2+に持続的に曝露すると、Zn2+のeEPSCsに対する修飾を回復させた。・LEVのZn2+誘発性のシナプス前GABA A 受容体阻害に対する拮抗的作用は、Zn2+キレート、Ca-EDTAおよびRhodozin-3においても観察された。・以上のことから、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることが明らかとなった。これは、LEVが神経活性を阻害する新たなメカニズムを示唆する知見である。■関連記事難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. Utility of new classification based on clinical and lesional factors after self-expandable nitinol stenting in the superficial femoral artery. J Vasc Surg 2011; 54: 1058-1066.3)Tosaka A et al. Classification and clinical impact of restenosis after femoropopliteal stenting. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 16-23.4)Iida O et al. Endovascular Treatment for Infrainguinal Vessels in Patients with Critical Limb Ischemia: OLIVE Registry, a Prospective, Multicenter Study in Japan with 12-month Followup. Circulation Cardiovasc Interv 2013, in press.5)Romiti M et al. Mata-analysis of infrapopliteal angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg 2008; 47: 975-981.6)Laird JR et al. Nitinol stent implantation vs balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral and proximal popliteal arteries of patients with claudication: Three-year follow-up from RESILIENT randomized trial. J Endvasc Ther 2012; 19: 1-9.7)Dake MD et al. Paclitaxel-eluting stents show superiority to balloon angioplasty and bare metal stents in femoropopliteal disease. Twelve-month Zilver PTX Randomized study results. Circ Cardiovasc Interv 2011; 4: 495-504.8)Dake MD et al. Nitinol stents with polymer-free paclitaxel coating for lesions in the superficial femoral and popliteal arteries above the knee; Twelve month safety and effectiveness results from the Zilver PTX single-arm clinical study. J Endvasc Therapy 2011; 18: 613-623.9)Bosiers M et al. Randomized comparison of evelolimus-eluting versus bare-metal stents in patients with critical limb ischemia and infrapopliteal arterial occlusive disease. J Vasc Surg 2012; 55: 390-398.10)Saxon RR et al. Randomized, multicenter study comparing expanded polytetrafluoroethylene covered endoprosthesis placement with percutaneous transluminal angioplasty in the treatment of superficial femoral artery occlusive disease. J Vasc Interv Radiol 2008; 19: 823-832.11)Welten GMJM et al. Long-term prognosis of patients with peripheral artery disease. A comparison in patients with coronary artert disease. JACC 2008; 51: 1588-1596.12)Pande RL et al. Secondary prevention and mortality in peripheral artery disease: national health and nutrition exsamination study, 1999 to 2004. Circulation 2011; 124: 17-23.13)Sigvant B et al. Asymptomatic peripheral arterial disease; is pharmacological prevention of cardiovascular risk cost-effective? European J of cardiovasc prevent & rehabilitation 2011; 18: 254-261.14)Hussein AA et al. Peripheral arterial disease and progression atherosclerosis. J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1220-1225.15)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease. A mata-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.16)CAPRIE Steering Committee. A randomized, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischemic events(CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.17)Ishikawa Y et al. Preventive effects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease-subanalysis of the JELIS trial-. Circ J 2010; 74: 1451-1457.

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日本を含む主要国の喫煙率の最新情報を発表~国際肺がん連盟による21ヵ国同時調査

 がんはわが国の死因の約3割を占め、その中でも肺がんが約2割と最も多い。肺がんの7割は喫煙が原因とされ、禁煙によって肺がんの発症を大幅に減らせることは確実である。 このたび、喫煙率と肺がん初期症状の認知度について、肺がん患者支援団体の国際組織である国際肺がん連盟(Global Lung Cancer Coalition:GLCC)が、2013年6月~8月、世界同時にアンケート調査を実施した結果が報告された。その中で、日本では男性の喫煙率が高く、また喫煙者における肺がん初期症状の認知度が低いことが示された。11月22日(金)、都内で開催された日本肺癌学会主催プレスセミナーにて、GLCC日本代表の澤 祥幸氏(岐阜市民病院診療局長)が報告した。日本では喫煙率の男女差が大きい GLCCの調査は今回が2回目(1回目は2010年)である。今回は2013年6月2日~8月16日に21ヵ国(文末の【試験概要】を参照)の成人に対して、喫煙状況(喫煙者率)と肺がん初期症状の認知度について、電話または対面での聞き取り調査を行った。わが国では、7月5日~15日に1,204人に対して、電話により聞き取り調査を実施した。 その結果、現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)の割合は、ブルガリア(41%)、スペイン(33%)、フランス(30%)が高く、スウェーデン(12%)とオーストラリア(13%)は低かった。日本は24%と、21ヵ国中7番目に多く、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)の割合は21%であった。非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の割合は、エジプト(70%)が最も高く、次いでメキシコ(66%)、イタリア(60%)で、日本は55%であった。既喫煙者の割合が高かったのは、2010年からタバコ規制を強く推進しているカナダ(31%)、ノルウェー(29%)、スウェーデン(29%)であった。 喫煙者率の男女差は顕著であり、ほとんどの国で女性と比較して男性の喫煙者率が高かった(現喫煙者率:女性18%に対し男性28%、既喫煙者率:女性17%に対し男性26%、非喫煙者率:女性64%に対し男性46%)。日本の現喫煙者率は、女性10%に対し男性38%と、男女差がとくに大きかった。澤氏は、「喫煙者率の男女差が大きいということは、たとえば家庭内で、非喫煙者である女性が受動喫煙により肺がんになる危険があるということ」と懸念する。GLCCでもこれを非常に問題視しているという。 一方、WHOによると、男性の喫煙者率が減少しているのに対して、欧州では女性の喫煙者率が上昇傾向にあり、カナダ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイスでは喫煙者率の男女差がなかった。日本では喫煙者のほうが肺がん症状の認知度が低い 肺がん初期症状の認知度については、呼吸困難(40%)と非特異的な咳嗽(39%)が他の症状を大きく上回った。咳嗽関連の症状や疲労の認知度は10%以上であったが、ばち状指(1%)と頸部リンパ節腫脹(2%)の認知度は低かった。日本では、非特異的な咳嗽の認知度が50%と最も高いが、それに比較して呼吸困難の認知度が22%と低いことが特徴的である。 また、肺がんの初期症状をまったく知らない回答者の割合は全体で23%であったが、国による違いが大きく、エジプト(48%)、アルゼンチン(42%)で高いのに対し、フランス(7%)、アイルランド(9%)では低かった。このように国による認知度の違いが大きいことから、認知度の向上にはキャンペーンが有効と考えられた。 さらに、現喫煙者、既喫煙者、非喫煙者ごとに肺がん初期症状の認知度をみたところ、日本では、非喫煙者、既喫煙者、現喫煙者の順で低くなっており、澤氏は「喫煙者のほうが肺がんを心配していないと考えられる」と指摘した。【調査概要】●調査期間:2013年6月2日~8月16日●調査対象(カッコ内は人数):オーストラリア(1,000)、アルゼンチン(500)、ブルガリア(1,148)、カナダ(1,005)、デンマーク(650)、エジプト(1,009)、フランス(953)、英国(957)、ドイツ(1,073)、アイルランド(1,000)、イタリア(510)、日本(1,204)、メキシコ(600)、オランダ(1,004)、ノルウェー(529)、ポルトガル(1,203)、スロベニア(580)、スペイン(500)、スウェーデン(550)、スイス(510)、米国(1,000)計21ヵ国の成人(成人年齢は各国の定義による)●調査方法:電話または対面による聞き取り●調査内容:喫煙状況と肺がん初期症状の認知度の2項目-喫煙状況現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)、非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の3群に分類した。-肺がん初期症状の認知度回答者に初期症状を思いつく限り挙げさせ、それを「非特異的な咳嗽」「継続する咳嗽」「悪化していく咳嗽」「血痰」「咳嗽または呼吸時の痛み」「呼吸困難」「嗄声」「嚥下困難または嚥下痛」「体重減少」「食欲減退」「疲労・エネルギー低下」「胸部感染症持続」「胸部・肩部痛」「頸部リンパ節腫脹」「指先の肥大化(ばち状指)」「その他」「肺がん初期症状を知らない」の17種の回答に分類した。●結果解析:年齢、性別とともに集計し、各国の成人人口で重み付けして解析

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やはり女の子にとってアトピーは大問題:健康関連QOLに及ぼす影響

 アトピー性皮膚炎を有する思春期前(9~12歳)の女児では、主観的健康感が損なわれている一方、男児ではその影響が見られなかったことが、スウェーデン・カロリンスカ環境医学研究所のNatalia Ballardini氏らにより調査、報告された。Acta dermato-venereologica誌オンライン版2013年10月24日掲載の報告。 試験の目的は、アトピー性皮膚炎が健康関連QOLに及ぼす影響を調査することであった。対象は、住民ベースの出生コホート研究「BAMSE」に登録された、思春期前の小児2,756人であった。すべての小児が主観的健康感に関する3つの質問に回答した。質問内容は、(1)気分はどうか、(2)自分自身をどのくらい健康だと思っているか、(3)今の自分の生活にどのくらい満足しているか、であった。また、アトピー性皮膚炎を有する小児は、小児皮膚疾患QOL評価尺度(CDLQI)にも回答した。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎を有する小児は350例(12.7%)で、平均CDLQI値は3.98(95%信頼区間:3.37~4.58)であった。・アトピー性皮膚炎を有する女児では、主観的健康感が損なわれていた。3つの質問の補正後オッズ比はそれぞれ、(1)1.72(95%CI:1.16~2.55)、(2)1.89(95%CI:1.29~2.76)、(3)1.69(95%CI:1.18~2.42)であった。・一方で、アトピー性皮膚炎を有する男児では、主観的健康感への影響が見られなかった。 著者は、「思春期前の女児の20%近くがアトピー性皮膚炎に罹患するため、これらの結果は、医療提供者および社会全体にとっても意味がある」と述べている。

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うつ病患者の予後を予測するセロトニン関連遺伝子多型

 セロトニン経路は、抗うつ薬が効果を発揮する際にきわめて重要な役割を担っており、セロトニン受容体およびトランスポーター遺伝子の多型が重要な因子として特定されてきた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJulia Staeker氏らは、うつ病患者の臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験のデータを用いて検討を行った。その結果、セロトニン経路の受容体およびトランスポーター多型が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果ならびに副作用と関連していることを報告した。Genetic Testing and Molecular Biomarkers誌オンライン版2013年11月5日号の掲載報告。 研究グループは、臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験において検討を行った。精神科入院患者273例の効果と副作用に関して、5-hydroxytryptamine transporter(5-HTT)の縦列反復変数(variable number of tandem repeats:VNTR)、5-HTTLPR/rs25531、5-HTR2A intron 2 SNPの影響を調べた。Clinical Global Impression(CGI)、Paranoid-Depression Scale (PD-S)、自己評価尺度およびDosage Record, and Treatment Emergent Symptoms(DOTES)Scaleなどの尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・SSRIによる治療を受けている患者100例において、5-HTTLPR/rs25531 S/LGアレルと効果および副作用との間に有意な関連が認められた(CGI-I≦2:0%vs. 19%、p=0.037/DOTES cluster c:0.76 vs. 0.19、p=0.0005)。・5-HTT VNTRおよび5-HTR2A intron 2 多型は、選択的および非選択的SRIの治療を受けている患者の副作用と有意に関連していた(5-HTT VNTR 12/12:170例、副作用発現率:51% vs. 19%、p=0.0001/rs7997012[A/A]:50例、副作用発現率:43% vs. 11%、p=0.020)。・ミルタザピン治療に関しては、遺伝子多型の影響はみられなかった。・セロトニン経路の受容体およびトランスポーターの遺伝子多型が、SSRIの効果と副作用に影響を及ぼすことが確認された。今回の結果は、さまざまな試験デザインで実施されたこれまでの試験の結果を支持するものであった。今回のような自然的研究でも明確な結果が臨床的に確認されたが、遺伝子多型の状況を治療前にスクリーニングすることの臨床的有用性に関しては、無作為化対照試験により明らかにする必要があると、著者は最後にまとめている。関連医療ニュース 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学 抗うつ薬の効果発現を加速するポイントは

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ビタミンDは気管支喘息にも効果あり

 中等症から重症の気管支喘息の管理において、ビタミンDは標準治療の補助剤となることがインドのラオトゥーララム記念病院のMadhu Yadav氏らにより報告された。The Indian Journal of Pediatrics誌オンライン版2013年11月6日の掲載報告。 本研究の目的は、中等症から重症の気管支喘息を有する小児に対し、ビタミンDが標準治療の補助剤としてどのような治療的な役割を果たすのかを定義することである。 対象は、呼吸器または喘息のクリニックを受診した小児喘息の男女100例。喘息の診断は既往歴と臨床検査に基づき行い、割り付けは封筒法により無作為に行った。Global Initiative for Asthma(GINA)に基づいた治療に加え、一方のグループでは経口のビタミンD3製剤(コレカルシフェロール)60,000IU/月を6ヵ月間投与し、他方のグループでは、プラセボの粉末をオブラートに包み投与した(二重盲検)。 毎月の受診時に、重症度の変化、管理状況、最大呼気速度、ステロイドの投与量、増悪の回数、救急搬送の回数を調べた。 主な結果は以下のとおり。プラセボ投与群に比べて、ビタミンD投与群では・増悪の回数が有意に低かった(p=0.011)。・最大呼気速度が有意に増加した(p=0.000)。・ステロイドの使用と救急搬送が有意に低かった(それぞれ、p=0.013、p=0.015)。・より早期に症状が安定し、6ヵ月後の喘息重症度が有意に低下していた(p=0.016)。

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脳卒中の国別発症率:貧富の差が発症率の差に/Lancet

 過去20年間の脳卒中の疾患負荷について世界的および各国の状況を調べた結果、年齢標準化した死亡率は世界的に減少した一方で、脳卒中の発症者数、生存者数、関連死、および全身的な疾患負荷(障害調整生命年[DALY]損失)は大きく増大していることが報告された。国別では、高所得国で発生が減少した一方、低・中所得国では発生が増大し、とくに同国では小児~中高年(65歳未満)の増大が顕著であることも明らかにされた。ニュージーランド・オークランド工科大学のValery L Feigin氏らが、世界疾病負担研究(GBD)2010のデータおよび解析手法を基に1990~2010年に発表された研究調査論文119本のデータを分析して明らかにした。GBD 2010では、脳卒中が世界の死亡原因の第2位であることが明らかにされたが、大半の地域の発生率、有病率、死亡率、障害や疫学的傾向については評価されなかった。Lancet誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。1990年から2010年の世界各国の脳卒中の動向を分析 分析は、Medline、Embase、LILACS、Scopus、PubMed、Science Direct、Global Health Database、WHO libraryとWHOの関連地域データベース(1990~2012年)を検索し、1990~2010年に発表された関連研究を特定して行われた。GBD 2010の解析手法(DisMod-MR)を適用して、1990年、2005年、2010年時点の、地域および特定の国の脳卒中の発生率、有病率、死亡率、年齢ごと(75歳未満、75歳以上、全体)にみたDALYの損失、また国の所得レベル(高所得国、低・中所得国)について調べた。 解析には119本の研究報告が組み込まれた(高所得国報告58本、低・中所得国報告61本)。死亡率は低下、しかし疾患負荷は増大し、とくに低・中所得国の負荷が大きい 1990~2010年の間の脳卒中の年齢標準化発生率は、高額所得国では有意に12%(95%CI:6~17)減少した一方、低・中所得国では、有意ではなかったが12%(同:-3~22)増大していた。 死亡率は、全体で有意に25%低下し、高所得国(37%)、低・中所得国(20%)共に有意に低下していた。 しかし、1990年と比べて2010年では、初発脳卒中発症者(1,690万例、40%増)、脳卒中生存者(3,300万例、46%増)、脳卒中関連死(590万例、20%増)、DALY損失者(1億200万例、16%増)がいずれも有意に増大していた。また低・中所得国での負荷が大きい(脳卒中発生の68.6%、脳卒中罹患者の52.2%、脳卒中死の70.9%、DALY損失の77.7%)ことも明らかになった。 また、2010年における、小児(20歳未満)と若者・中高年(20~64歳)の脳卒中例は520万(31%)で、低・中所得国がその大半を占めていた。同国の小児発生例は7万4,000例(89%)、若者・中高年では400万例(78%)であった。 さらに、GBDでみた地域および国の間には、脳卒中の負荷に関する3~10倍の有意な地理的相違があることも認められた。 脳卒中新規発症者(62%)、脳卒中罹患者(69.8%)、脳卒中死(45.5%)、脳卒中によるDALY損失者(71.7%)は、75年未満者のほうが多かった。 今回の結果を踏まえて著者は「脳卒中の原因と負荷の理解を世界的に向上させること、また所得レベルが異なる国の間における脳卒中負荷の格差の原因と改善の要因を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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ホルモン補充療法、慢性疾患予防として支持されず/JAMA

 閉経後女性に対するホルモン療法は、症状の管理に有効な場合があるものの、慢性疾患の予防法としては適切でないことが、Women’s Health Initiative(WHI)試験の長期的追跡の結果から明らかとなった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E Manson氏らが、JAMA誌2013年10月3日号で報告した。米国では、当初、ホルモン療法は主に血管運動症状の治療法として用いられていたが、次第に冠動脈心疾患(CHD)や認知機能障害など加齢に伴う多くの慢性疾患の予防法とみなされるようになったという。現在も日常臨床で施行されているが、慢性疾患の予防におけるリスクやベネフィットに関する疑問は解消されずに残されたままだった。ホルモン療法に関する2つの研究を統合解析 研究グループは、WHI試験のホルモン療法に関する2つの研究について、介入終了後に長期的な追跡調査を行い、包括的な統合解析を実施した。対象は、1993~1998年までに米国の40施設に登録された50~79歳の閉経後女性2万7,347人。 子宮が切除されていない女性は、結合型ウマエストロゲン(CEE、0.625mg/日)+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA、2.5mg/日)を投与する群(8,506例)またはプラセボ群(8,102例)に、子宮切除術を受けた女性は、CEE(0.625mg/日)単独群(5,310例)またはプラセボ群(5,429例)に無作為に割り付けられた。 介入期間中央値はCEE+MPA試験が5.6年、CEE単独試験は7.2年で、通算13年のフォローアップが行われた(2010年9月30日まで)。有効性の主要評価項目はCHD、安全性の主要評価項目は浸潤性乳がんの発症とした。リスク、ベネフィットともに複雑なパターン示す CEE+MPA療法の介入期間中のCHDの発症数は、CEE+MPA療法群が196例、プラセボ群は159例であり、むしろプラセボ群で良好な傾向を認めたが有意な差はなかった(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.95~1.45、p=0.13)。また、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ206例、155例であり、プラセボ群で有意に良好だった(HR:1.24、95%CI:1.01~1.53、p=0.04)。 介入期間中にCEE+MPA療法群でリスクが増大した疾患として、脳卒中(p=0.01)、肺塞栓症(p<0.001)、深部静脈血栓症(p<0.001)、全心血管イベント(p=0.02)、認知症(65歳以上)(p=0.01)、胆嚢疾患(p<0.001)、尿失禁(p<0.001)、乳房圧痛(p<0.001)が挙げられ、ベネフィットは大腸がん(p=0.009)、大腿骨頸部骨折(p=0.03)、椎骨骨折(p=0.03)、糖尿病(p=0.005)、血管運動症状(p<0.001)、関節痛(p<0.001)などで認められた。 介入期間終了後には、ほとんどのリスクおよびベネフィットは消失したが、浸潤性乳がんの発症リスクは全期間を通じてCEE+MPA療法群で有意に高かった(HR:1.28、95%CI:1.11~1.48、p<0.001)。 一方、CEE単独療法群の介入期間中のCHDの発症数は204例、プラセボ群は222例(HR:0.94、95%CI:0.78~1.14)で、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ104例、135例(HR:0.79、95%CI:0.61~1.02)であり、いずれも両群間に有意な差は認めなかった。また、他の疾患のアウトカムはCEE+MPA療法群と類似していた。 2つのホルモン療法はいずれも全死因死亡には影響を及ぼさなかった(介入期間中:p=0.76、p=0.68、全期間:p=0.87、p=0.92)。CEE単独療法群では、全死因死亡、心筋梗塞、global indexが若い年齢層(50~59歳)で良好であった(傾向検定:p<0.05)。 CEE+MPA療法群における10,000人年当たりの有害事象の絶対リスク(global indexで評価)は、プラセボ群に比べ50~59歳で12件増えており、60~69歳では22件、70~79歳では38件増加していた。CEE単独群では50~59歳で19件低下したが、70~79歳では51件増加した。QOLのアウトカムは両治療群ともに一定の傾向はみられなかった。 著者は、「閉経後ホルモン療法のリスクおよびベネフィットは複雑なパターンを示した」と総括し、「一部の女性では症状の管理に有効であるが、慢性疾患の予防法としては支持されない」と結論づけている。

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健全な批判精神を評価(コメンテーター:野間 重孝 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(138)より-

この論文の要旨が掲載されてからかなり時間がたっていること、抄録の訳文には除外規定に関する言及がなかったこともあり、まずは本論文の要旨をまとめておきたい。1. 目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)治療に関してdoor-to-balloon timeの短縮が実際に患者の短期予後(院内死亡率・30日以内死亡率)の低下に繋がっているかを検討する。2. 方法 2005年7月~2009年6月までにCathPCIレジストリー参加施設から登録されたprimary PCI施行を施行されたSTEMI患者から次の除外規定を設けて患者を抽出し、結果として515施設9万6,738例の患者について検討を行った。 《除外規定》  1) 別の組織経由で搬送されてPCIが施行された患者  2) 非緊急PCI例  3) door-to-balloon timeが3時間を越えた患者  4) 登録期間中にコンスタントにデータ登録を行わなかったりデータに抜けのあった組織の取り扱い患者 さらにこの検討に加えて、高リスク群(75歳以上、前壁梗塞、心原性ショック)を抽出して別個に同様の検討を行った。3. 結果 1) door-to-balloon timeの中央値は初年度(05年7月~06年6月)の83分から、最終年(08年7月~09年6月)には67分と有意に低下した(p

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統合失調症の寛解予測因子は初発時の認知機能

 統合失調症では認知機能障害が一般的にみられる。しかし、初回エピソード患者におけるこれら障害の長期転帰の予測因子は不明であった。スウェーデン・ウプサラ大学のRobert Boden氏らは、初回エピソード統合失調症患者の5年後アウトカムの予測因子としての思考力の低下および認知機能障害について調べた。その結果、思考速度が社会性や症状寛解に関する長期転帰と関連していることを報告した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年9月20日号の掲載報告。 研究グループは、初回エピソード統合失調症と診断され、臨床的症状が安定した患者46例について、総合的認知機能(Synonyms, Reasoning, and Block Design:SRB)、思考速度(Trail Making Test:TMT、およびフィンガータッピング)、言語学習(Claeson-Dahl Verbal Learning Test)について評価した。また、5年後の転帰は、自立生活、職業的機能、社会性、症状寛解に関して評価した。 主な結果は以下のとおり。・思考速度の低下が、5年後の社会性の低下と関連していた。抗精神病薬使用で補正後のオッズ比(OR)は3.37(95%信頼区間[CI]:1.08~10.51)であった。・利き手ではない手のフィンガータッピングの成績が良好であることは、5年後の症状の非寛解リスク増大と関連していた(補正後OR:0.42、95%CI:0.19~0.96)。・職業的機能と自立生活は、評価したいずれのテストとも関連がみられなかった。関連医療ニュース 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か? 初回エピソード統合失調症患者に対する薬物治療効果の予測因子は 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

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重度精神障害の機能評価ツール、その信頼性は

 スペイン・オビエド大学のMaria P. Garcia-Portilla氏らは、統合失調症および双極性障害患者を対象とし、重度精神障害患者の機能評価ツールとしてUniversity of California Performance Skills Assessment(UPSA)スペイン版の信頼性、妥当性の評価を行った。その結果、UPSAスペイン版はその他の機能評価ツールと良好な相関を示し、信頼性の高い検証ツールであり、「機能アウトカムのモニタリング手段として臨床試験および日常診療での活用が望ましい」と報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年9月18日号の掲載報告。 重度精神障害患者における、UPSAスペイン版の検証を目的とし、自然的、6ヵ月間フォローアップ、多施設共同、バリデーション試験を行った。対象は、統合失調症患者139例、双極性障害患者57例、対照31例とし、スペイン版UPSA(Sp-UPSA)、Clinical Global Impression, Severity(CGI-S)、Global Assessment of Functioning(GAF)および Personal and Social Performance(PSP)などのスケールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。<信頼性>・統合失調症における内部整合性(クロンバックのα係数)は0.81、双極性障害では0.58であった。Test-retestは、それぞれ0.74、0.65(p<0.0001)であった。<構成のValidity>・Sp-UPSAとPSP総スコア間のピアソン相関係数は、統合失調症が0.42(p<0.0001)、双極性障害が0.44(p=0.001)であった。・Sp-UPSAとGAFスコアの相関係数は、それぞれ0.43、0.52(p<0.0001)であった。<弁別的Validity>・ Sp-UPSAにより、患者と対照が識別された。・統合失調症患者において、CGI-Sスコアによる疾患重症度の相違が識別された。・統合失調症における対照/患者の曲線下面積は0.89、カットオフ値85における感度は82.7%、特異度は77.4%であった。・双極性障害における対照/患者の曲線下面積は0.85、カットオフ値90における感度は82.5%、特異度は64.5%であった。関連医療ニュース 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには 認知機能トレーニング/リハビリテーションはどの程度有効なのか? 治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

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女性の腹圧性尿失禁、初回療法は手術が優れる/NEJM

 女性の腹圧性尿失禁に対する初回療法として、中部尿道スリング手術を行ったほうが理学療法(骨盤底筋訓練など)を行うよりも、1年時点の主観的改善率、および主観的・客観的治癒率が高いことが、多施設共同無作為化試験の結果、明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJulien Labrie氏らが報告した。腹圧性尿失禁に対しては、理学療法を第一選択治療とすることとされており、理学療法が失敗した場合に手術療法を行うことが推奨されている。一方で、初回療法としてこれら2つのオプションを比較した無作為化試験によるデータは不足していた。NEJM誌2013年9月19日号掲載の報告より。手術群と理学療法群に割り付け1年後の主観的改善率を比較 試験は、4大学19病院から被験者(35~80歳女性、腹圧性尿失禁が中等度~重度)を募って行われた。被験者を無作為に、手術群と理学療法群に割り付け、それぞれクロスオーバーでの受療も可能とした。 主要アウトカムは、12ヵ月時点でPatient Global Impression of Improvement(PGI-I)を用いて測定した主観的改善とした。初回手術群と、理学療法群→手術を受けた被験者とのアウトカムは同程度 初回療法として、手術群に230例、理学療法群に230例が無作為に割り付けられた。そのうち理学療法群の49.0%が、また手術群の11.2%がクロスオーバーしての治療を受けた。 intention-to-treat解析において、主観的改善率は、手術群90.8%、理学療法群64.4%であった(絶対差:26.4ポイント、95%信頼区間[CI]:18.1~34.5)。 また主観的治癒率は、手術群85.2%、理学療法群53.4%(同:31.8ポイント、22.6~40.3)であり、客観的治癒率は、同76.5%、58.8%(同:17.8ポイント、7.9~27.3)だった。 事後のプロトコル解析の結果、手術群にクロスオーバーした被験者のアウトカムは、最初から手術群に割り付けられた被験者のアウトカムと同程度であることが示された。また、それら手術を受けた被験者のアウトカムは、手術群にクロスオーバーせず手術を受けなかった被験者のアウトカムよりも優れていた。

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PCIを病院到着から90分以内に施行することで院内死亡率は改善したか?/NEJM

 米国では2005年~2009年の4年間で、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の、病院到着から経皮的冠動脈インターベンション(PCI)開始までの時間(door-to-balloon time)が16分短縮し、90分以内PCI開始率は23.4ポイント上昇した。しかし、院内死亡率は0.1ポイントの低下でほとんど変化していないことが、ミシガン大学のDaniel S. Menees氏らの調査で判明した。現行のACC/AHAガイドラインでは、STEMI患者に対し病院到着から90分以内のプライマリPCI施行開始を強く推奨(Class I)している。door-to-balloon timeは医療施設の評価指標とされ、地域および国による医療の質向上戦略の中心に位置づけられるが、実際にdoor-to-balloon timeの改善が死亡率の低下に結びついているかは、これまで検証されていなかったという。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告。約9万7,000人の患者データを解析 研究グループは、プライマリPCI施行STEMI患者におけるdoor-to-balloon timeの短縮と院内死亡率の変化の関連を明らかにするために、米国のレジストリ・データに基づく解析を行った。 2005年7月~2009年6月までに、515のCathPCIレジストリ参加施設から登録された、プライマリPCI施行STEMI患者9万6,738例のデータを用い、4年間の各年度別解析を行った。 全体の平均年齢は60.8歳、女性が28.0%であった。高血圧が61.0%、糖尿病が18.8%、脂質異常症が59.2%、喫煙が43.3%、慢性肺疾患が11.4%、心筋梗塞の既往が18.5%に認められた。また、PCI歴ありが20.5%、CABG歴ありが5.6%で、平均入院期間は4.3日であった。 血栓除去術が20.5%、ステント留置術が89.3%で行われ、アプローチは大腿動脈が98.5%、橈骨動脈は0.8%であった。標的冠動脈は左主幹動脈が3.0%、左前下行枝が55.4%、左回旋枝が33.0%、右冠動脈は59.7%だった。高リスク群の予後も改善せず 解析の結果、door-to-balloon time中央値は、初年度(2005年7月~2006年6月)の83分から、最終年度(2008年7月~2009年6月)には67分へと有意に低下した(p<0.001)。同様に、door-to-balloon time90分以内の患者の割合は、初年度の59.7%から最終年度には81.3%まで有意に増加した(p<0.001)。 しかし、このようなdoor-to-balloon timeの改善にもかかわらず、全体的な未補正院内死亡率には有意な変化は認めず(初年度:4.8%、最終年度:4.7%、傾向検定p=0.43)、リスク補正院内死亡率(同:5.0%、4.7%、p=0.34)および未補正30日死亡率(同:9.7%、9.8%、p=0.64)にも有意な変化はなかった。 高リスクのサブグループである75歳以上(1万5,121例)、前壁梗塞(1万8,709例)、心原性ショック合併(9,535例)の患者においても、同様にdoor-to-balloon timeは有意に短縮したが、全体の院内死亡率に変化はみられなかった(75歳以上:初年度12.5%、最終年度11.1%、p=0.19/前壁梗塞:7.2%、6.9%、p=0.79/心原性ショック合併:27.4%、27.2%、p=0.60)。 著者は、「STEMI患者の院内死亡率を改善するには、door-to-balloon time以外の戦略が必要である」とし、「医療施設の評価指標や一般向けの報告にdoor-to-balloon timeを使用することには疑問が生じる」と指摘している。

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新規静注抗血小板薬の実力はいかに/Lancet

 新規静注P2Y12阻害薬カングレロール(国内未承認)について、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後30日間の有害心イベント予防に関する臨床ベネフィットが報告された。フランス・パリ第7大学のPhilippe Gabriel Steg氏らCHAMPION研究グループが、カングロレルの有効性と安全性について検証された3つの大規模二重盲検無作為化試験「CHAMPION-PCI」「CHAMPION-PLATFORM」「CHAMPION-PHOENIX」についてプール解析を行い報告した。解析の結果、カングレロールは対照群[クロピドグレル(商品名:プラビックス)またはプラセボ]と比較して、PCI周術期の血栓合併症を減少することが示された。一方で出血の増大も認められたという。カングレロールは、強力で急速、可逆的な抗血小板作用を特徴とする。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告より。カングレロールに関する3試験の結果をプール解析 本解析の実施は「CHAMPION-PHOENIX」試験前に決められていたもので、カングレロールと対照薬のPCI術中・術後の血栓合併症の予防について比較することが目的であった。 3試験に参加した被験者は、ST上昇型心筋梗塞(11.6%)、非ST上昇型急性冠症候群(57.4%)、安定型冠動脈疾患(31.0%)によりPCIを受けた患者であった。 有効性については、修正intention-to-treat集団2万4,910例を対象に評価が行われ、事前規定の主要有効性評価は、48時間時点の全死因死亡・心筋梗塞・虚血による血行再建術・ステント血栓症の複合アウトカムだった。また主要安全性評価は、48時間時点の重篤または生命に関わる非冠動脈バイパス移植関連GUSTO(Global Use of Strategies to Open Occluded Coronary Arteries)基準の出血だった。カングレロールはステント血栓症を有意に41%抑制 結果、カングレロールは主要有効性複合アウトカムの発生を、オッズ比で有意に19%抑制したことが示された(カングレロール群3.8%、対照群4.7%、オッズ比[OR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.71~0.91、p=0.0007)。 アウトカムを個別にみるとステント血栓症の発生率の低下が最も大きく、カングレロールの投与によりオッズ比で有意に41%抑制された(0.5%vs. 0.8%、OR:0.59、95%CI:0.43~0.80、p=0.0008)。また、副次有効性複合アウトカム(48時間時点の全死因死亡・心筋梗塞・虚血による血行再建術)は19%の低下であった(3.6%vs. 4.4%、OR:0.81、95%CI:0.71~0.92、p=0.0014)。 これら有効性アウトカムの結果は、試験全体および主要サブセット患者においても一貫しており、またそのベネフィットは30日時点の解析においても維持されていた。 主要安全性評価のアウトカムについては、カングレロール群と対照群で差はみられなかった(両群とも発生率0.2%)。またGUSTO中等度出血(0.6%vs. 0.4%)、輸血(0.7%vs. 0.6%)についても有意差はみられなかったが、GUSTO軽度出血についてカングレロール群の有意な増大がみられた(16.8%vs. 13.0%、p<0.0001)。

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アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か

 抗精神病薬の治療効果を見極めるタイミングは難しい。韓国・全北大学医学部のPark Jong-Il氏らは、初回エピソード精神疾患におけるアリピプラゾール治療の有効性および安全性を確認するとともに、同治療の3週時点の反応が2週時点の反応よりもその後の反応を正確に予測することが示されたことを報告した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年8月21日号の掲載報告。 研究グループは、初回エピソード精神疾患の治療について、アリピプラゾールの有効性と安全性を調べること、また同治療の早期反応と後発反応の関連について調べる、6週間の非盲検多施設共同試験を行った。被験者は、DSM-IV診断分類で、統合失調症様障害、統合失調情動障害、統合失調症、あるいはその他の特定できない精神障害を有した59例であった。主要評価尺度は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、Clinical Global Impression-Severity(CGI-S)尺度であった。安全性の評価は、薬物関連有害事象、体重、脂質関連変数の測定にて行った。また、2週時点、3週時点の反応がその後の6週時点の反応をどの程度予測するかについて感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・被験者59例のうち、38例が6週間の試験を完了できた。・アリピプラゾール治療は、PANSSとCGIスコアにおいて、時間とともに有意な改善を示した。・治療反応率(ベースラインから最終観察までのPANSS総スコアの減少が30%以上と定義)は、69.1%であった。・後発反応を最も正確に予測した(陰性適中率と特異度による)のは、ベースラインから3週時点のPANSS総スコア20%以上の減少であった。・アリピプラゾールの副作用による負荷はわずかであった。体重および代謝への副作用に関しては安全なプロファイルの特徴が示された。・以上から、アリピプラゾールは初回エピソード精神疾患の治療において有効かつ安全であることが示された。治療反応は3週時点のほうが2週時点よりも、その後の反応を正確に予測した。関連医療ニュース 抗精神病薬の効果をどのタイミングで見極めるべきか? どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

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インフルエンザのリスク因子、エビデンスが弱い/BMJ

 インフルエンザ関連合併症のリスク因子を定義するエビデンスのレベルは低いことが、カナダ・マックマスター大学のDominik Mertz氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。インフルエンザ発症において一部の患者集団では合併症の併発や重症化するリスクが報告され、ハイリスク集団にワクチン接種を優先する勧告がWHOおよび世界各国で行われている。しかし、これまで同集団を定義するエビデンスの質について包括的かつシステマティックなレビューは行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年8月23日号掲載の報告より。234論文61万例データをメタ解析 研究グループは、季節性またはパンデミック・インフルエンザ患者における重症アウトカムのリスク因子の評価を目的にシステマティックレビューを行った。 Medline、Embase、CINAHL、Global Health、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータソースに、2011年3月までに公表された論文について検索し、インフルエンザの罹患者でリスク因子とアウトカム(死亡、人工呼吸器装着、入院、ICU入室、肺炎、複合アウトカムなど)の組み合せについて興味深い報告がされていた観察研究を選定した。 エビデンスの評価は、バイアスリスクを評価するNewcastle-Ottawaスケールによる評価と、GRADEフレームワークを用いて行った。 検索の結果、6万3,537論文の中から、包含基準を満たした234論文、61万782例分のデータを特定し解析に組み込んだ。いかなるリスク因子もエビデンスレベルが低い 解析の結果、インフルエンザの重症アウトカムに関するリスク因子のエビデンス支持は、Newcastle-Ottawaスケール評価で限界値から0の範囲であった。これはとくに、2009H1N1パンデミック以外のデータおよび季節性インフルエンザの研究データが、相対的に不足していたことと関連していた。 また、公表論文は、検出力の不足と交絡因子についての補正の不足などが広範囲に及んでおり、解析には限りがあった。たとえば、補正後推定リスク値が得られたのは260試験のうち39例(15%)で、そのうちリスク因子とアウトカムの比較のデータが得られたのは5%のみにとどまった。 エビデンスのレベルは「いかなるリスク因子」においても低かった。死亡のオッズ比は、パンデミック・インフルエンザ2.77(95%信頼区間[CI]:1.90~4.05)、季節性インフルエンザ2.04(同:1.74~2.39)だった。同様に、肥満症については、パンデミック2.74(同:1.56~4.80)、季節性30.1(同:1.17~773.12)、心血管疾患は同2.92(1.76~4.86)と1.97(1.06~3.67)、神経筋疾患は同2.68(1.91~3.75)と3.21(1.84~5.58)だった。 その他のすべてのリスク因子に関してもエビデンスレベルは非常に低かった。よく言われる妊娠や民族性の性質をリスク因子として同定することはできなかった。一方で、分娩後4週未満の女性において、パンデミック・インフルエンザの死亡リスクが有意に高いことが認められた(4.43、1.24~15.81)。 上記の結果を踏まえて著者は、「インフルエンザ関連の合併症に関するリスク因子を支持するエビデンスレベルは低く、よく言われる妊婦や民族性のリスク因子もリスク因子として確認することはできなかった。厳密で十分検出力のある研究が必要である」と結論している。

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重度ADへのリバスチグミンは高用量が優れる

 重度アルツハイマー型認知症(AD)に対するパッチ剤リバスチグミン(商品名:イクセロン、リバスタッチ)の投与は、高用量パッチ(13.3mg)のほうが低用量パッチ(4.6mg)よりも、有効性に優れ重大有害事象は増大せず、ベネフィット・リスクプロファイルは良好であることが示された。米国・インディアナ医科大学のMartin R. Farlow氏らが行った前向き無作為化二重盲検試験の結果、報告された。CNS Neuroscience & Therapeutics誌オンライン版2013年8月7日号の掲載報告。 研究グループは、重度AD患者におけるリバスチグミンパッチ剤の13.3mg対4.6mg(いずれも /24時間)の有効性、安全性、忍容性を検討する、24週間の前向き無作為化二重盲検ACTION研究を行った。ADが疑われる、MMSEスコア3~12の患者を被験者とした。主要評価項目は、Severe Impairment Battery(SIB)、AD Cooperative Study-Activities of Daily Living scale-Severe Impairment Version(ADCS-ADL-SIV)とした。副次評価項目は、ADCS-Clinical Global Impression of Change(ADCS-CGIC)、12項目Neuropsychiatric Inventory(NPI-12)、安全性ならびに忍容性であった。 主な結果は以下のとおり。・1,014例の患者がスクリーニングを受け、716例が無作為化され(13.3mg群に356例、4.6mg群に360例)。ベースライン特性および人口統計学的特性は似通っていた。試験を完了したのは、13.3mg群64.3%(229例)、4.6mg群65.0%(234例)であった。・結果、13.3mg群は、認知機能(SIBで評価)および身体機能(ADCS-ADL-SIVで評価)について4.6mg群よりも有意に優れていた。16週時点(各p<0.0001、p=0.049)、主要エンドポイントの24週時点(各p<0.0001、p=0.025)ともに有意差がみられた。・24週時点の両群間の有意差は、ADCS-CGICについても認められた(p=0.0023)。しかし、NPI-12ではみられなかった(p=0.1437)。・有害事象の報告は両群で同程度であった(13.3mg群74.6%、4.6mg群73.3%)。重篤な有害事象も同程度であった(14.9%、13.6%)。・以上のように、13.3mg/24時間パッチ剤は4.6mg/24時間パッチ剤よりも、SIB、ADCS-ADL-SIVにおいて有効性に優れること、また有害事象は増大しないことが示され、重度ADにおいて高用量パッチは良好なベネフィット・リスクプロファイルを示した。関連医療ニュース 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能

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ACS症例に対するカテのタイミング:どこまで早く、どこまで慎重に?(コメンテーター:香坂 俊 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(124)より-

2013年現在、虚血性心疾患に対するカテーテル治療の適応は大まかに以下のようになっている。ST上昇心筋梗塞(STEMI) 基本的に緊急PCIは早ければ早いほど良い。発症から12時間以内であればほぼ適応となり、なるべくならばdoor-to-balloon time 90分以内で。12時間を経てしまった症例に関しては状態によって判断。なお、48~72時間を経てしまった症例に関しては、欧米のガイドラインではPCIの適応はないとされている。非ST上昇心筋梗塞/不安定狭心症(NSTEMI/UA) 緊急PCIの適応はリスクによる(後述)。安定狭心症(Stable Ischemic Heart Disease:SIHD) 症状が安定していれば基本的にPCI適応はない(至適薬物療法を行う)。ただし、虚血の領域が大きいなどリスクが高いと判断される場合はPCIやCABGが考慮される。  さて、今回の論文でもトピックとなっているNSTEMI/UAであるが、緊急PCIの適応についてはここ10年間大きな議論を呼んできた。2013年現在のスタンスは、基本的にTIMIスコアやGRACEスコアなどの定量的なリスク評価システムを使い、そのリスクが高ければ早めにPCIを考えるし、そうでなければ時間をおいて、ということになっている。 今回のカナダのグループの解析結果は、早期の侵襲的に治療によってAKIの発症に早期の侵襲的治療が関連しているとされており(長期的には透析の導入といった大きな問題はない)、この分野に一石を投じる内容となっている。 PCIを考えるにあたって常につきまとうのが合併症の問題だが、なかでも造影剤の使用による腎症の発症は大きな問題である。従来は、STEMIを筆頭として、緊急カテやPCIは早ければ早いほどよいと信じられてきたが、現在はリスクとのバランスを考えて適切な治療を選ぶ時代となっており、そのときにはこうした腎症のリスクというものは避けては通ることができない。 なおPCI後のAKI発症に関しては、最近PCI施行中の出血の大小が大きく関連しているとの報告もなされている(Ohno Y et al. J Am Coll Cardiol. 2013 Jun 12.)。蛇足ながら、AKI予防のためのヒントとして提示させていただく。

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てんかんと診断されることは怖くない

2013年7月4日、東京都港区において小児てんかんをテーマにしたプレスセミナー(共催:大塚製薬・UCBジャパン)が開催された。そこで行われた、岩崎 俊之氏(北里大学医学部小児科学講師)による講演「てんかん治療と家庭生活・学校生活への影響」についてレポートする。岩崎氏は、日常的に小児てんかん患児を診ており、てんかん患児が安全で快適な日常生活を過ごすためには、てんかんについて正しい知識を持つことが重要である、と訴えた。小児において、てんかんは約100人に1人の割合でみられる決して珍しくない疾患である1)。痙攣や意識消失などの発作が主な症状である。小児てんかんの治療には、抗てんかん薬による薬物治療と並んで、家庭と医療機関、そして教育現場がともに連携することが、非常に重要である。セミナーでは、それを物語るひとつの事例が紹介された。症例:7歳の男児。抗てんかん薬を内服していたが、発熱時に全身性の強直間代性痙攣が出現するため、解熱の坐剤を併用していた。幼稚園までは、男児の発熱時に職員が坐剤を挿肛する対応ができたため、治療による発作の抑制が可能であった。しかし、小学校では、教師による医療行為が法的に許可されていないため、男児の発熱時に坐剤投与ができずにいた。この問題について家族は、主治医・教育委員会職員・校長・担任および養護教諭との話し合いを重ね、緊急時の医療行為の必要性について訴えた。ついには、市の教育委員会が現場の小学校と連携して、特例として男児の発熱時の坐剤使用を認めた。この動きにより、小児てんかんに限らず、必要不可欠な場合には医療行為が可能になるよう検討が進められている。これは、家族が積極的に働きかけを行ったことによって、問題が明らかになった典型的な事例である。現在、保健師助産師看護師法第4章第31条により、保育所・幼稚園と特別支援学校では、主治医からの指示があれば医療行為を行うことができるが、小学校の教師にはこの法律が適用されない。このような状況では、関係者全員が話し合い協力することで、ケースごとに解決策を見出すほかなく、ときには、主治医と学校関係者が直接話すことも重要であると岩崎氏は語る。てんかんは、てんかん発作を主症状とする大脳の慢性疾患であるため、罹患すると完治は難しいと考えられてきたが、小児てんかんについては、適切な時期に適正な治療を行うことで、発作抑制が可能である。薬剤によってコントロールされれば、ほとんどの学校行事に参加可能であり、海外旅行も不可能ではないという。しかし、てんかんの症状は、痙攣に限ったものではない。家族は日ごろから、子供の性格の変化(怒りっぽくなったなど)や成績の悪化、同じ動作を繰り返すなどのサインを見逃さないことが重要である。小児てんかんと診断されても薬剤によるコントロールが可能となった今、てんかんの症状や治療に対する誤解を少しでも減らし、各々が正しい理解を持って、てんかん患児と接することが必要なのではないだろうか。出典:1) Murray CJL, et al. Global Comparative Assessment in the Health Sector: Disease Burden. Expenditures, and Intervention Packages. Geneva. World Health Organization. 1994.(ケアネット 岸田有希子)

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高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクは?

 順天堂大学医学部附属病院練馬病院・先任准教授の八田 耕太郎氏らは、一般病院入院中にせん妄を発症した高齢者を対象に1年間の前向き観察研究を実施し、抗精神病薬による有害事象の発現状況を検討した。その結果、重篤な有害事象の発現頻度は0.2%であり、死亡例もなく、リスクは低いことを報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2013年6月25日号の掲載報告。 高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクについて注意が喚起されているが、研究グループは、「一般病院においても、リスクが有効性を上回るかどうかは臨床上の疑問である」として、1人以上の常勤精神科医のいる一般病院33施設において1年間の前向き観察研究を行った。対象は、急性身体疾患または手術のため入院中にせん妄を発症し、せん妄に対する治療が行われた患者とした。主要アウトカムは、重篤な有害事象の発現率と種類であった。 主な結果は以下のとおり。・せん妄を発症したのは2,834例であった。・そのうち2,453例が、リスペリドン(34%)、クエチアピン(32%)、非経口ハロペリドール(20%)などの抗精神病薬を投与された。・2,453例中、重篤な有害事象は22例(0.9%)報告された。誤嚥性肺炎が最も多く(17例、0.7%)、次いで心血管イベント(4例、0.2%)、血栓塞栓症(1例、0.0%)の順であった。・転倒による骨折または頭蓋内外傷を認めた患者はいなかった。・抗精神病薬の副作用により死亡した患者はいなかった。・臨床全般印象改善尺度(Clinical Global Impressions-Improvement Scale)の平均スコアは、2.02(SD:1.09)であった。・半数以上の患者(54%)で、せん妄は1週間以内に回復した。・以上より、一般病院でも適切な用量調整と副作用の早期発見が行われれば、高齢者せん妄に対する抗精神病薬のリスクは、介護施設あるいは外来の認知症患者に対する抗精神病薬のリスクに比べて低いと考えられた。ポイントは、抗精神病薬の使用を避けることではなく、リスクをいかに観察するかである。関連医療ニュース 抗精神病薬は“せん妄”の予防に有用か? せん妄の早期発見が可能に せん妄はレビー小体型認知症のサイン?!

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